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四十七話目 四人目の四天王

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 僕たちは、ゴブリンのいた森を後にして、騎士団に見つからないように川沿いを進み王都に戻っていた。


「よかったのか? レックス」

 ちょっとソワソワしていたシュナちゃんが気にしていたのか声を掛けてきた。

「最初からそのつもりだったからね。僕の目的は英雄になることではないし、誰かに認められることでもない」

 つい先程まで自分の腕の中にいたエリオは、ゴブリンのいた森に置いてきた。後は、マックスに扮したレイスのプリサイファが上手く演じてくれるはずだ。手柄はなるべくエリオに渡して、魔王討伐に突き進んでもらいたい。最終的には、それが僕がブンボッパ村に戻れることに繋がる。

「それにしても、レムちゃんのアイデアには驚いたよ。プリサイファを助けて味方につければ魔王討伐も早くなるってね」

「ふ、ふんっ、レックスのカリスマ性スキルを使えば、プリサイファは絶対に裏切れない。魔王を簡単に出し抜ける可能性がある。しかも、人族の貴族階級とイシス教にも伝手があるブリューナク男爵家を押さえているのは大きい」

 ブリューナク男爵家には申し訳ないけど、魔王を倒すまでの間、僕たちの勢力下におかせてもらうことにした。一応、取り憑いた状態が長く続いても本体に影響はないということはプリサイファから聞いている。

「でも、あいつステータスが爆上がりしてるにゃ。魔王やリュカスにバレないかにゃ?」

「一応、イシス教に探りを入れるという名目で拠点を王都に置くことは部下を通じて伝えさせたんだ。なるべく魔王とは、直接合わないようにしようということにしている」

「魔王も勇者の情報を適度に入れれば、そう疑うこともないだろう。王都にいることを強みに感じさせればいい。そして、上手く情報を操作しながら、オークキングやリュカスを呼び出せばいいのだろう」

 シュナちゃんの言う通り、次の標的はオークキング、オズワルドピグマン。魔王軍四天王の一人だ。ゴブリンキングより相当強いとプリサイファから情報をもらっている。あと、オズワルドピグマンの弱点も。

「丸焼きにしてやるにゃ!」
「あいつら、ブヒブヒうるせぇーんだよな」
「うむ、視線がエロいから気持ち悪いのだ」

 かなり女性受けの悪いモンスターだということはわかった。ゴブリンしかり、オークも他種族でもお構いなく子孫を残すことが可能で、特に女性は捕まってしまうと短期間で何度も出産を行われるらしく、精神的にも体力的にも相当ダメージを受ける。というか、一ヶ月も持たずに体力が持たず死んでしまうだろう……。プリサイファ情報では、勇者が女ということでブヒブヒ言っていたらしい。うん、早めに殺さないとね。

 今後の流れとしては、冒険者活動をしながら勇者パーティを追い掛け、四天王を撃破するお手伝いをさせてもらおうと思っている。

 そう、冒険者だけど、難しい身分証の確認など必要でないことがわかったのだ。

 アイミーとシュナちゃんは既にFランク冒険者のカードを持っている。僕とレムちゃんもこの後、登録するつもりでいる。やっぱり、ちゃんと門から街へ入りたいからね。これから他の街へ行くにも必要不可欠と思われるし、街に入れる冒険者カード素敵です。

「助かるよウサ吉。この薬草をギルドへ持っていけばお金になるのだよ」

 ウサ吉達が、集めてきた薬草をシュナちゃんに渡していた。全員分あって、布製の袋には大量に詰め込まれている。

「薬草採取は常時依頼クエストって話だったよね。僕たちも登録がてらクエスト完了といこうか」

 ちょっとずるではあるけど、Fランクにできるクエストは、採取系以外はお手伝い的なものが多いので、街の人とあまり関わりたくない僕らにとっては採取一択となる。

 ブリューナク男爵家がバックにいるので、そうお金に困ることはないと思うけど、ある程度はギルドのランクは上げておきたい。低ランクのままだと馬鹿にされたり、変にちょっかいを掛けられることが多いらしい。

「じゃあ、さっさと登録を済ませて戻ろうか」

「バーカウンターにいる髭の奴らは臭いから気をつけた方がいいにゃ。無視しても絡んでくる面倒くさい奴らにゃ」

「冒険者というのは、誰にでもなれる。最初は一獲千金を夢見ていた者も、徐々に現実を知ることになる」

「それだけに、いつまでも低ランクの者は酒に溺れ、新人の足を引っばろうとするらしいにゃ」

「なるほど、そういうこともあるんだね」


 古めかしく大きな扉を開くと、中から多くの視線を感じた。女の子三人と少年一人のパーティは目立つのかもしれない。冒険者になる女性って、とても少ないらしいからね。

「この間のお嬢ちゃんじゃねぇか……ひひっ。何だよ、すげー量しゃねぇか。薬草と雑草を間違えてないか、俺が調べてやるぜ、ひひっ」
「チェック代、百イシス払えよ」

「臭いから近寄るにゃ!」
「アイミー、会話するだけ無駄であろう。さあ、レックス殿、あちらが登録カウンターになる」

「おいおいおい、そっちの子供も新人かよ。よしっ、お前らの新人教育係は俺がやってやる。一日五百イシスでいいぜ」

 こういう人達の取り締まりみたいなのって、冒険者ギルドでは見て見ぬふりなのだろうか。視線の先にいる受付のお姉さんはそっと目を逸らした……。いや、お姉さんに何とか出来るとは思ってないんだけどね。
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