職業が魔王なので勇者の村を追放されたけど、幼馴染が女勇者になったので陰ながら手助けしようと思う

つちねこ

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五十七話目 奪還作戦

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 勇者パーティとしては、これが最初の仕事になる。一応、公式にはゴブリンキング討伐ということになっているのだけど、私たちに討伐した記憶はない。やってないことを実績にされても戸惑ってしまう。

 だからこそ、エリオは燃えていた。

「これが私たちの本格的なデビュー戦といってもいい。多くの人も見ているから、弱い姿を見せるわけにはいかないわ」

 そんな姿を見て、シャルロットとクリストフも心配をしている。

「エリオ様、少々気負いすぎではないでしょうか。心配ですわ」
「ゴブリンキングを討伐したという、あの日から妙にテンションが高いと申しますか……」

「そ、そうかな。でも、この砦を奪還することは、プリメラに住む人達にとっても大事なことよ。失敗は許されないわ」

「もちろんでございます」

「いいんじゃねぇの。これから魔王軍四天王との戦いが始まるんだ。それぐらい気合い入ってないとな!」

 剣聖ライルはいつも通りというか、おそらく何も考えていない。何で俺が駆けつける前にゴブリンキング倒しちゃうんだよと強気に文句を言っていたぐらいだ。


 エリオは昨夜もほとんど寝ていない。アドレナリンが出ているのもあるが、ひょっとしたら、四天王との戦いにレックスが現れるのではないかと思っているのだ。

 数日前のゴブリンキングを思い出す。あの場にレックスはきっといた。ひょっとしたら、私のピンチに颯爽と登場して助けてくれたのではないだろうか。その後、姿を現さずに居なくなったのには何か理由があったから? わからないけど、そんな気がしてならない。

 勇者よりも強い村人なんているはずがない。レックスがゴブリンキングを倒したとは思えない。頭では理解している。でも、レックスの職業は魔王。ひょっとしたら、すごい強さが備わっていることだってあるかもしれない。

 会いたい。レックスに会いたい。

「勇者様、こちらの陣形は整いました。早速お願いいたします」

「はい、わかりました」

 砦には、私の魔法を撃ち込むことで戦いの火蓋が切られる。今現在、私が使える最高の必殺技。この魔法で砦に穴を開けて、砦にいるオーク共を倒す。そして、私たちは力を温存しながら、一番上の階にいるであろうオークキングとの戦いに備えることになる。

「それでは、みなさん離れていてください」

 魔力を高めながら、聖剣に光りの珠をいくつも増やしていく。どこか調子の良さを感じる。この高密度の魔力の珠を狙いを定めて砦に放っていく。

「光りの珠よ、炸裂せよ! ディバインストライク!」

 魔法は砦に当ると、大きな破壊音と共に予想以上に壊れていった。土煙が晴れると、我先にと冒険者たちが砦に空いた隙間をこじ開けるように崩しながら乗り込んでいく。そして、その後を追うようにして王国兵が続いていく。

 砦攻略で一番に懸念していた、オーク軍による上方からの攻撃も今のところない。何か策略があるのかもしれないが、私たちは砦に乗り込まなければ何も始まらない。進むのみ!

「進めぇぇー! 進むのだぁぁぁ! オークは勇者様の攻撃に恐れをなしているぞぉぉぉ」

 砦からは傷だらけのオークの姿も見えている。ここからは乱戦になるだろう。

「私たちも行きましょう。ライル、無理をせずに上方の階に進むことを優先するよ」

「ああ、わかってる!」

「シャルロットとクリストフも魔力消費は必要最小限度に抑えて」

「えぇ」「わかっております。行きましょう」

 緊張しながらも砦に入っていくと、予想よりもオークは弱く感じられた。先に入った冒険者や王国兵が次々に仕留めている姿がある。圧倒している! 魔法攻撃の余波なのか怪我を負っているオークが多い。

「この分なら、一階は大丈夫そうね。二階へのルート、中央奥へ急ぐよ」



※※※


「ウサ吉、お前達はこのまま各階のオーク達を殲滅していけ。ただ、目立ちすぎるな。疑われたらすぐに脱出しろ。それから、ある程度時間が経過したら四階に誰も上がれないようにバリケードを張る。通すのは勇者パーティだけでいい」

 深くフードをかぶったレムリアの指示に従って、オーク達に向かっていくウサ吉軍団。この砦にいる、どの冒険者よりも強いだろう。

「ぴょん子、私の出る幕はなかったな。あの勇者、攻撃力だけはあるようだ。それでも、内側から壊れやすいようにアイミーが手を打っていたのだろうがな」

 ぴょん子には、緊急の連絡用として俺のそばに居てもらうことにしている。これで、レックスに何かあったらすぐに駆けつけられる。ぴょん子は首を傾げながら俺の肩をポンポンとたたいてくる。

「あ、ああ、そうだな。砦の物見は勇者の攻撃に合わせて、俺が殆ど無効化しておいたからな。少しは役に立てたか」



「ああぁぁ! レムちゃんみっけっ! ぴょん子も相変わらずモフってるね」

 冒険者に扮してフードをかぶっているアイミーが、オークをぶっ飛ばしながらこっちにやってくる。

「お、おい、何いきなり目立ってんだよ。お前やっぱりアホだろ!」

 一階は、人数が少なくなっているとはいえ、まだ多くの冒険者が残っている。彼らは、信じられないものを見るような視線をこちらに向けている。小さい女の子が大きなオークを吹っ飛ばすのは常識では考えられない。

「にゃはっ」
「にゃは、じゃねぇし」

 アイミーが親指をぐっと上げると、周囲の冒険者達から歓声が上がった。

「小さいくせに、やるじゃねぇかよ」
「俺たちも負けてられねぇぞ。このオーク、思っているよりも強くねぇ」
「ここを早く片付けて二階に向かうぞ!」
「おおおぅ!!」

「ったく、気をつけろよ」
「ご、ごめんにゃ」

 この階はもう残っているオークの数も少ない。アイミーがボコボコにしておいた傷だらけのオークなので、ここにいる冒険者たちでも問題ないだろう。

「上へ行くか」
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