職業が魔王なので勇者の村を追放されたけど、幼馴染が女勇者になったので陰ながら手助けしようと思う

つちねこ

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五十六話目 魔力過剰

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「ほらっ、アイミー起きて」

「あと、もう少しにゃ……」

 何故か食料庫はとても平和で、一度たりともオークがやって来ることはなかった。昨日の騒ぎに続いて、大量の兵が砦に向かっている情報が入ってるからなのかもしれない。おかげで体調も万全だし、存分に暴れることが出来そうだ。

「シュナちゃん、ウサ吉から連絡が入った。予定通り、勇者パーティを含む王国兵と冒険者たちが北の砦に向かって出発しているそうだよ」

「ということは、昼前には到着するのだな。では、我々はそろそろ行動開始と行こうか。ほらっ、アイミーも早く起きないと置いてくぞ」

 食料庫で何でここまで熟睡出来るのか不思議でならないが、すっかり体調も良くなったようなので安心だ。今日はしっかり頑張ってもらおうと思う。

「じゃあ、作戦は昨日伝えた通りに」
「心得た!」
「了解にゃ」

 攻撃に破壊力のあるアイミーには、勇者パーティが入ってきやすいようにタイミングをみて砦の下層部分を破壊して入口を作ってもらう。それまでは、周辺のオークを適度に倒しておいてもらう。

 続いてシュナちゃんには、砦の二階、三階部分を中心に適度に暴れてもらう予定だ。僕は、四階のオークを倒しながら、オークキングを弱らせる役割となっている。

「ある程度数を減らしたら、私も四階に向かおう。レックス殿も油断をしないように。自身の力を過信してはならぬぞ」

「うん、ありがとうシュナちゃん。じゃあ、また後で」


 アイミーとシュナちゃんはそれぞれの場所へと向かっていった。よし、僕も行動に移そう。


 まずは、ドレインオークにもそろそろ活動を再開してもらおうか。オーク達に僕たちが向かうルートを確保してもらいながら、各々、敵を倒すように指示を出す感じでいいかな。

 僕に繋がっているドレインを通じて三百を超えるオーク達に一斉に命令を出す。

 しかし、ここで想定外のことが起こってしまう。

 命令に対して、ごっそりと大量の魔力が持っていかれてしまったのだ。

「くっ、あ、あれっ……。か、体に力が入ら……ない……」

 し、しまった……。再命令にここまで魔力が必要になるとは思ってもみなかった。ドレインする時は一体づつだったけど、命令する時は三百体だからなのか!? 兎にも角にも魔力が抜けて体に力が入らず、立ち上がることすら出来ない。

 こんな状態で敵オークに発見されてしまったら、なす術もなく殺されてしまう。しかしながら、そういう悪い考えは的中してしまうわけで……。

 通路を曲がって歩いてくるオーク二体と目が合ってしまった。

「ぶひっひ、ぶひー!!」
「ぶひぶひ!」

 ぶひぶひと何を言っているかはわからないけど、その表情からは碌でもないことを考えているのは確かだろう。口角がグイッと上がり、お互いに笑いながら、楽しそうに武器を担ぎあげている。

 動けない敵を見て、楽に殺しが出来るとか思っているのだろう。迷っている時間はない。ドレインしたオークから魔力を回収しなければ。

 でも、どのくらいだ? 少なすぎて迫ってくるオークに対処出来ないのはまずい。とりあえず、五十体分の魔力エネルギーを戻そう。

 ドレインの糸を通じて、魔力エネルギーを一気に回収していく。大量に抜けた魔力が僕の体に戻って来る。あと、少し……。

 しかしながら、オーク二体は既に僕の目の前まで迫っていて、僕が動けないのを確認してなのか、手に持つ武器を大きく振りかぶってニヤニヤしている。後は振り下ろすだけ……。

 ま、間に合え! も、もっと、魔力エネルギーを!

「ド、ドレイン!」

 間一髪で戻ってきた魔力を、すぐ様、目の前のオークにぶつける。すると、二体のオークは何が起こったのかもわからずに、まるっと消え去ってしまった。や、やり過ぎた。

「い、いや、助かったのか……」

 と、とりあえず、通路にいてはまずい。近くの部屋に移動を……。魔力が減ったり増えたりを繰り返しながら、何とかこの危機を乗り越えられたものの、その安心感とは裏腹に猛烈な体のダルさがあり、頭がとても重い。

「そ、それにしても、この魔力どんどん増えていくけど……あ、あれっ、止められない!?」

 さっきから、ドレインオークの魔力を止めようとしているのに、まるで言うこを聞かない。

 魔力エネルギーは、どんどん僕の体に蓄積していき、更に、倒したオークの魔力エネルギーも合わさりながら入り込んでくる。

「ダ、ダメだ……。頭が重くて、体も動かない……」

 急激な魔力の消失や増加がここまで身体に負担を強いるものだとは知らなかった。様々な特訓をしてきたつもりだけど、ドレインによって魔力を安定的に手に入れていたせいで、こういった事態を想定していなかったのだ。

 僕が覚えているのはここまでで、視界が暗転すると同時に僕は気を失ってしまった。
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