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五十九話目 勇者と神
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「ライルはいったん下がって怪我の手当てを」
「す、すまないエリオ。すぐに戻ってくる!」
砦は三階まで上がると、さすがにオークの数も多くなり、先に進むのが困難になってきた。このままいけば砦の奪還は問題なくいけるはずだとは思う。問題があるとすれば、魔王軍四天王オークキングに逃げられてしまう可能性があることだ。
多分、そう思っているのは私だけではなく、他のみんなも焦りを感じ始めているのが手に取るようにわかる。ミスも増え、怪我をするケースが多くなってきている。このままではよくない。
回復させるためにシャルロットの魔力も減少していく。事態を打開させようとクリストフの付与魔法も増えていく。このままでは……。
「エリオ様、あなたは四階へ。エリオ様だけでも四階へ行ってください。私たちはここからオークを絶対に上の階に行かせません」
「ここの目途がついたら、私たちもすぐに向かいますわ」
「だから、エリオは、オークキングを。あと、このポーションを持っていけ」
「わ、わかった。みんな、必ず無事でいてね」
四天王は必ず倒す。魔王の側近を倒すこと、力を削ぐことがレックスと再び会えることに繋がるはずだから。
だから、絶対に逃がさないし、オークキングは必ず私が倒す。
最上階に上がる階段を登っていくと、信じられない魔力の奔流が上空へと突き抜けていった。
「な、な、何なの、この魔力は……」
私の必殺技などまるで話にならないレベルの桁違いの魔法攻撃。まさか、オークキングが!? 四天王の強さというのは、ここまでのものだったというの。そ、それよりも一体誰と戦っているの? 最上階にはまだ誰も行っていないはずなのに……。
ここからは慎重に歩みを進めていく。この階にはオークの姿はいないようだ。おそらく、奥に見えているあの部屋にオークキングがいる。扉があったと思われる場所は激しく損傷しており、そのまま天井を突き抜けるように崩れている。
部屋のなかからは、何やら話し声のようなものが聞こえてくる。
「……んあっ……だ、だめ、うぐっ、あぁん……」
それは、艶めかしい女性の喘ぎ声……。
こんな場所で、な、な、何をしているのよ!
部屋の様子を伺おうと、そっと近づいていくと、やはり誰かがいる。オークキングがまるで居ないかのように呆然と突っ立っていて、男女一組が激しい接吻を繰り返している。そして男の手はいやらしく女性の胸を揉みしだいている……。
「な、な、何をしているんですか!」
「ああ!?」
五月蝿そうに耳を塞ぐようにして、振り返ったその男は間違いなく忘れもしない人。それは少しだけ身長の伸びた愛しい人。顔の表情は少しだけ大人っぽくなっただろうか。やっぱりレックス、レックスが来てくれていたのだ。
「レックスなの? レックスなんだよね?」
目を細めてこちらの様子を窺うレックスは、少し考えるようにして喋りはじめた。その間も隣のエルフの女性の胸を触ったまま綺麗な金髪の髪を撫でている。
「勇者エリオか。今のこいつはお前の知っているレックスではないが、まぁレックスで間違いないな」
「ど、どういうこと。そ、そのエルフの女性は、レックスとはどういう関係なの?」
頬を紅く染めながら、レックスとエルフの女性を交互に見ては目を逸らしてしまう。エルフは長命種でありながらその容姿は若々しく美しい。目の前にいるエルフの女性もご多分に漏れず絶世の美しさといっていい。特訓によって固くなった手や筋肉質になっている腕や足。怪我をしてボロボロになっている肌を見るとエリオは劣等感を感じてしまう。
「こいつか、こいつはレックスの部下のようなものだな。気になるか?」
「き、気になります! だいたい、人と会話している時にどこ触っているんですか! あ、あなたは誰なんですか? あなたはレックスとは雰囲気が違う。ば、場合によっては……」
「場合によっては、斬るか? 愛しのレックスを斬れるのか?」
「なっ、何で、そのことを!?」
「そんなことよりも、あいつを倒すんじゃないのか?」
そう。まるで空気のように固まっている魔王軍四天王が一人オズワルドピグマン。自分に視線が集まったことで冷や汗をかいている。
「そ、そうだ! オークキング」
「多分、あいつどうやってここから逃げ出そうか考えてると思うぜ」
目の前には関わってはいけない第三勢力のレックス、そしてこの短時間で勇者まで来てしまった。つまり、砦にいる同胞は制圧されはじめている可能性が高い。レックスと戦ったところで勝ち目はない。せめてこの女勇者だけなら何とかなったはずなのに何てついていないんだ。逃げようにも、レックスの魔力がまとわりつくように俺を逃がしてくれそうにない。
「レックスがゴブリンキングは自分が倒しちまったから、オークキングは勇者エリオ、お前に倒させたいと言っていた。あまり時間はないが、少しぐらいなら手伝ってやるぞ」
「や、やっぱり、ゴブリンキングを倒したのはレックスだったのね。そう、レックスがそんなことを……。ならば、私はその期待に応えてオークキングを倒すのみ。あなたの手助けなんていらない」
「そうか、ならば俺は勇者様の戦いを見学させてもらおうか。しっかり経験値を稼いでくれよ」
そういって、隣のエルフの女性を抱き寄せるとまた胸を揉みつつ頬にキスをしていく。こ、こいつ、レックスの体で……。
「見学するつもり、これっぽっちもなーい!!」
エリオは怒りに身を任せながら、聖剣を抜くと勢いのままオークキングに向かっていった。
「す、すまないエリオ。すぐに戻ってくる!」
砦は三階まで上がると、さすがにオークの数も多くなり、先に進むのが困難になってきた。このままいけば砦の奪還は問題なくいけるはずだとは思う。問題があるとすれば、魔王軍四天王オークキングに逃げられてしまう可能性があることだ。
多分、そう思っているのは私だけではなく、他のみんなも焦りを感じ始めているのが手に取るようにわかる。ミスも増え、怪我をするケースが多くなってきている。このままではよくない。
回復させるためにシャルロットの魔力も減少していく。事態を打開させようとクリストフの付与魔法も増えていく。このままでは……。
「エリオ様、あなたは四階へ。エリオ様だけでも四階へ行ってください。私たちはここからオークを絶対に上の階に行かせません」
「ここの目途がついたら、私たちもすぐに向かいますわ」
「だから、エリオは、オークキングを。あと、このポーションを持っていけ」
「わ、わかった。みんな、必ず無事でいてね」
四天王は必ず倒す。魔王の側近を倒すこと、力を削ぐことがレックスと再び会えることに繋がるはずだから。
だから、絶対に逃がさないし、オークキングは必ず私が倒す。
最上階に上がる階段を登っていくと、信じられない魔力の奔流が上空へと突き抜けていった。
「な、な、何なの、この魔力は……」
私の必殺技などまるで話にならないレベルの桁違いの魔法攻撃。まさか、オークキングが!? 四天王の強さというのは、ここまでのものだったというの。そ、それよりも一体誰と戦っているの? 最上階にはまだ誰も行っていないはずなのに……。
ここからは慎重に歩みを進めていく。この階にはオークの姿はいないようだ。おそらく、奥に見えているあの部屋にオークキングがいる。扉があったと思われる場所は激しく損傷しており、そのまま天井を突き抜けるように崩れている。
部屋のなかからは、何やら話し声のようなものが聞こえてくる。
「……んあっ……だ、だめ、うぐっ、あぁん……」
それは、艶めかしい女性の喘ぎ声……。
こんな場所で、な、な、何をしているのよ!
部屋の様子を伺おうと、そっと近づいていくと、やはり誰かがいる。オークキングがまるで居ないかのように呆然と突っ立っていて、男女一組が激しい接吻を繰り返している。そして男の手はいやらしく女性の胸を揉みしだいている……。
「な、な、何をしているんですか!」
「ああ!?」
五月蝿そうに耳を塞ぐようにして、振り返ったその男は間違いなく忘れもしない人。それは少しだけ身長の伸びた愛しい人。顔の表情は少しだけ大人っぽくなっただろうか。やっぱりレックス、レックスが来てくれていたのだ。
「レックスなの? レックスなんだよね?」
目を細めてこちらの様子を窺うレックスは、少し考えるようにして喋りはじめた。その間も隣のエルフの女性の胸を触ったまま綺麗な金髪の髪を撫でている。
「勇者エリオか。今のこいつはお前の知っているレックスではないが、まぁレックスで間違いないな」
「ど、どういうこと。そ、そのエルフの女性は、レックスとはどういう関係なの?」
頬を紅く染めながら、レックスとエルフの女性を交互に見ては目を逸らしてしまう。エルフは長命種でありながらその容姿は若々しく美しい。目の前にいるエルフの女性もご多分に漏れず絶世の美しさといっていい。特訓によって固くなった手や筋肉質になっている腕や足。怪我をしてボロボロになっている肌を見るとエリオは劣等感を感じてしまう。
「こいつか、こいつはレックスの部下のようなものだな。気になるか?」
「き、気になります! だいたい、人と会話している時にどこ触っているんですか! あ、あなたは誰なんですか? あなたはレックスとは雰囲気が違う。ば、場合によっては……」
「場合によっては、斬るか? 愛しのレックスを斬れるのか?」
「なっ、何で、そのことを!?」
「そんなことよりも、あいつを倒すんじゃないのか?」
そう。まるで空気のように固まっている魔王軍四天王が一人オズワルドピグマン。自分に視線が集まったことで冷や汗をかいている。
「そ、そうだ! オークキング」
「多分、あいつどうやってここから逃げ出そうか考えてると思うぜ」
目の前には関わってはいけない第三勢力のレックス、そしてこの短時間で勇者まで来てしまった。つまり、砦にいる同胞は制圧されはじめている可能性が高い。レックスと戦ったところで勝ち目はない。せめてこの女勇者だけなら何とかなったはずなのに何てついていないんだ。逃げようにも、レックスの魔力がまとわりつくように俺を逃がしてくれそうにない。
「レックスがゴブリンキングは自分が倒しちまったから、オークキングは勇者エリオ、お前に倒させたいと言っていた。あまり時間はないが、少しぐらいなら手伝ってやるぞ」
「や、やっぱり、ゴブリンキングを倒したのはレックスだったのね。そう、レックスがそんなことを……。ならば、私はその期待に応えてオークキングを倒すのみ。あなたの手助けなんていらない」
「そうか、ならば俺は勇者様の戦いを見学させてもらおうか。しっかり経験値を稼いでくれよ」
そういって、隣のエルフの女性を抱き寄せるとまた胸を揉みつつ頬にキスをしていく。こ、こいつ、レックスの体で……。
「見学するつもり、これっぽっちもなーい!!」
エリオは怒りに身を任せながら、聖剣を抜くと勢いのままオークキングに向かっていった。
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