61 / 71
六十話目 勇者対オークキング
しおりを挟む
エリオはとても混乱していた。
レックスがちゃんと生きていた。少しだけ大人の姿になったレックス。でも、その中身は違う人っぽくて……でもゴブリンキングを倒したのはレックスなのだという。
私の前に姿を現さない理由は、何かあるのだろうか。
で、でも、今はレックスが生きていて、目の前にいることの嬉しさが勝っている。隣のエルフとか物凄く気になるけど、でもあれは、レックスであって中身は違うわけで。うーん……。
い、いや、今は目の前のオークキングに集中しなくちゃ。何故か動きが硬いけど、あれでも魔王軍四天王の一角。油断してはいけない。相手の動きをよく見て先の先を読んでいく。ドゥマーニ様に言われた言葉を思い出す。
どうやら、オークキングは剣と盾で受けに回ろうとしている。私の剣をいなしてから剣で攻撃を加えようとしているのだろう。それならば……。
「光の波よ、伸びよ! ホーリークロス!」
剣の攻撃に身構えているオークキングに対して、先に魔法攻撃を与える。ホーリークロスは前後左右に波となって何度も攻撃を加える聖光魔法。盾で防げるのは前方からの攻撃のみ。左右、後ろからの攻撃には対処できない。
「ふんっ、この程度の攻撃なら何発くらってもダメージにもならんわ! ぶひっ」
命中した魔法攻撃もオークキングの皮膚を少し切り裂いた程度。想像以上に、オークキングの防御力が高い。あの全身筋肉のような体にダメージを通すにはどうすればいいのか。
「ええいっ! シャインソード、連撃」
「やはり情報通り、勇者の力はそこまで成長していないらしいな。ぶひっ!」
聖剣での攻撃はオークキングの盾で防がれ、二撃目は持っている剣で簡単に弾き返されてしまう。体重差があるせいか、攻撃の一つ一つが重い。
「ぐっ、やはり、かたいか……」
しかし、私の攻撃の方が先に届いている。つまり、スピードでは私の方が勝っているということだ。
「どうした、勇者エリオ。大変そうなら少しぐらい手伝ってやろうか?」
「わ、私が倒します。あなたはそこで見ていてください!」
今の私でオークキングに通る攻撃手段は、砦を破壊したディバインストライクしかない。魔力の残量的にも最後の一回になるだろう。絶対に外せない以上、ここぞという瞬間を狙い、いかに無防備な状態を作って発動するかにかかっている。
私に出来ること、とにかくスピードで翻弄する。一撃で倒せないのなら、何度でも攻撃を重ねるのみ。
残り僅かとなった魔力ポーションを飲み干すと覚えたばかりの支援魔法を発動させる。
「光の輝きよ、我、能力を上昇させよ。オーバーオール!」
この魔法はあらゆる能力を上昇させる魔法であるが、まだ初級段階のため身体能力を僅かに向上させる程度でしかない。それでも、スピードで優位に立っていた私の身体能力が更にアップすれば、より攻撃が通りやすくなるはずだ。
「シャインソード、三連撃!」
足を狙う、とにかく機動力を奪っていく。支援魔法が消滅しても有利に戦いを進められるようにするために。
一撃目はあっさりと入り、同じ場所を狙うように二撃目も深く入っていく。これならいけるっ!
「まだ全体が見えていない。そんなことはオズワルドピグマン氏も注意するんじゃねぇか? 攻撃の来る場所がわかっていれば、多少のスピード差も対処出来ちまうぜ」
連撃をわざとまともに受け、油断して大振りになった三撃目を躱されてしまった。無防備な体勢の私はあっさり剣を弾かれ、オークキングに足を取られてしまう。
「きゃぁぁぁ! は、離せ、離してよ!」
「ぶひひひひっ! 結構痛かったんだぜぇ。すこーし、静かにしてもらおうか。それにしても……んはあー、いい匂いだ」
オークキングは、捕まえた足を押さえるようにして自分の舌を這わせてくる。舐められると背筋がゾワゾワとして、何とも言えない気持ち悪さが全身を走る。
「や、やめろ……。はぐっはぁぁぁ!」
そこへ、容赦なくオークキングのパンチが私のお腹にめり込んでくる。足が固定されているため、逃げ出すこともできない。
続けざまに何度も何度も殴られていく。
だんだん力が入らなくなっていく。このままでは……。
「このままでは、まずいか?」
まるで、他人事のように私を見るレックスの視線はとてと冷たく、優しさが全然感じられない。あれは、私の知っているレックスの目ではない。
くやしい、くやしい! こんなところで、つまづいている場合じゃない。私は最速で魔王を倒し、村でレックスと武器屋をやるって決めているんだ。こんなところで負けられない。
誰かに助けを求めるようなこともしない。私が最後の砦、勇者なのだから! 私の後ろには誰も守ってくれる人はいない。私がやらなければ多くの人たちが苦しむことになる。
「ほう、覚悟は勇者の方があるのか……」
「な、何が起こっているんだ!?」
エリオの身体は黄金色に輝き始めると、負傷していた怪我も傷も全てが消えていく。いや、超スピードで回復しているのだ。エリオの眼は金色に輝きを放ち、あっという間に体力が回復すると次は力が溢れてくる。
「離せ」
体を起こすようにして自由な手を使い、掴まれていた足を腕ごと殴りあげる。
「う、腕がぁ、お、俺の腕が……」
オークキングの腕は反対方向に曲がっていて、ぶらんぶらんと力を失っている。骨が完全に折れていた。
「スキル習得の条件を満たしたようだな」
スキル、超回復、それからスキル、力の覚醒レベル二といったところか。
さて、ここからは本当に見学になるな。
レックスがちゃんと生きていた。少しだけ大人の姿になったレックス。でも、その中身は違う人っぽくて……でもゴブリンキングを倒したのはレックスなのだという。
私の前に姿を現さない理由は、何かあるのだろうか。
で、でも、今はレックスが生きていて、目の前にいることの嬉しさが勝っている。隣のエルフとか物凄く気になるけど、でもあれは、レックスであって中身は違うわけで。うーん……。
い、いや、今は目の前のオークキングに集中しなくちゃ。何故か動きが硬いけど、あれでも魔王軍四天王の一角。油断してはいけない。相手の動きをよく見て先の先を読んでいく。ドゥマーニ様に言われた言葉を思い出す。
どうやら、オークキングは剣と盾で受けに回ろうとしている。私の剣をいなしてから剣で攻撃を加えようとしているのだろう。それならば……。
「光の波よ、伸びよ! ホーリークロス!」
剣の攻撃に身構えているオークキングに対して、先に魔法攻撃を与える。ホーリークロスは前後左右に波となって何度も攻撃を加える聖光魔法。盾で防げるのは前方からの攻撃のみ。左右、後ろからの攻撃には対処できない。
「ふんっ、この程度の攻撃なら何発くらってもダメージにもならんわ! ぶひっ」
命中した魔法攻撃もオークキングの皮膚を少し切り裂いた程度。想像以上に、オークキングの防御力が高い。あの全身筋肉のような体にダメージを通すにはどうすればいいのか。
「ええいっ! シャインソード、連撃」
「やはり情報通り、勇者の力はそこまで成長していないらしいな。ぶひっ!」
聖剣での攻撃はオークキングの盾で防がれ、二撃目は持っている剣で簡単に弾き返されてしまう。体重差があるせいか、攻撃の一つ一つが重い。
「ぐっ、やはり、かたいか……」
しかし、私の攻撃の方が先に届いている。つまり、スピードでは私の方が勝っているということだ。
「どうした、勇者エリオ。大変そうなら少しぐらい手伝ってやろうか?」
「わ、私が倒します。あなたはそこで見ていてください!」
今の私でオークキングに通る攻撃手段は、砦を破壊したディバインストライクしかない。魔力の残量的にも最後の一回になるだろう。絶対に外せない以上、ここぞという瞬間を狙い、いかに無防備な状態を作って発動するかにかかっている。
私に出来ること、とにかくスピードで翻弄する。一撃で倒せないのなら、何度でも攻撃を重ねるのみ。
残り僅かとなった魔力ポーションを飲み干すと覚えたばかりの支援魔法を発動させる。
「光の輝きよ、我、能力を上昇させよ。オーバーオール!」
この魔法はあらゆる能力を上昇させる魔法であるが、まだ初級段階のため身体能力を僅かに向上させる程度でしかない。それでも、スピードで優位に立っていた私の身体能力が更にアップすれば、より攻撃が通りやすくなるはずだ。
「シャインソード、三連撃!」
足を狙う、とにかく機動力を奪っていく。支援魔法が消滅しても有利に戦いを進められるようにするために。
一撃目はあっさりと入り、同じ場所を狙うように二撃目も深く入っていく。これならいけるっ!
「まだ全体が見えていない。そんなことはオズワルドピグマン氏も注意するんじゃねぇか? 攻撃の来る場所がわかっていれば、多少のスピード差も対処出来ちまうぜ」
連撃をわざとまともに受け、油断して大振りになった三撃目を躱されてしまった。無防備な体勢の私はあっさり剣を弾かれ、オークキングに足を取られてしまう。
「きゃぁぁぁ! は、離せ、離してよ!」
「ぶひひひひっ! 結構痛かったんだぜぇ。すこーし、静かにしてもらおうか。それにしても……んはあー、いい匂いだ」
オークキングは、捕まえた足を押さえるようにして自分の舌を這わせてくる。舐められると背筋がゾワゾワとして、何とも言えない気持ち悪さが全身を走る。
「や、やめろ……。はぐっはぁぁぁ!」
そこへ、容赦なくオークキングのパンチが私のお腹にめり込んでくる。足が固定されているため、逃げ出すこともできない。
続けざまに何度も何度も殴られていく。
だんだん力が入らなくなっていく。このままでは……。
「このままでは、まずいか?」
まるで、他人事のように私を見るレックスの視線はとてと冷たく、優しさが全然感じられない。あれは、私の知っているレックスの目ではない。
くやしい、くやしい! こんなところで、つまづいている場合じゃない。私は最速で魔王を倒し、村でレックスと武器屋をやるって決めているんだ。こんなところで負けられない。
誰かに助けを求めるようなこともしない。私が最後の砦、勇者なのだから! 私の後ろには誰も守ってくれる人はいない。私がやらなければ多くの人たちが苦しむことになる。
「ほう、覚悟は勇者の方があるのか……」
「な、何が起こっているんだ!?」
エリオの身体は黄金色に輝き始めると、負傷していた怪我も傷も全てが消えていく。いや、超スピードで回復しているのだ。エリオの眼は金色に輝きを放ち、あっという間に体力が回復すると次は力が溢れてくる。
「離せ」
体を起こすようにして自由な手を使い、掴まれていた足を腕ごと殴りあげる。
「う、腕がぁ、お、俺の腕が……」
オークキングの腕は反対方向に曲がっていて、ぶらんぶらんと力を失っている。骨が完全に折れていた。
「スキル習得の条件を満たしたようだな」
スキル、超回復、それからスキル、力の覚醒レベル二といったところか。
さて、ここからは本当に見学になるな。
0
あなたにおすすめの小説
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる