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六十二話目 エリオとの話1
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翌日、北の砦から魔王領に深く入った森の中で、エリオと話をすることになった。
この場所にしばらく滞在することが決まったので、レムちゃんが魔法で一軒家の素敵な建物を作り上げてくれた。
「レックス、勇者が来たみたいだぞ。居間に通しておくからな」
僕たちのことは、世間的には秘密にしておきたかったので、エリオには一人で来るようにお願いした。そもそも魔王を討伐が終わるまでは会うつもりはなかったのだけど、僕がまたいろいろやってしまったようなので致し方ない。何も覚えていないんだけど……。そのあたりも聞きたいことがある。なんだか、あれ以降シュナちゃんの様子もおかしいんだよね。
戸をノックしようとしたところ、内側からレムちゃんが招き入れてくれたようだ。
「いいぞ、ほ、ほらっ、さっさと入れよ」
お客人に対するマナーとか、苦手なレムちゃんだけに、どうしても初対面の人には強気な感じになってしまう。
「お、おじゃまします。こんな所に本当に家があるなんて……」
ここは魔王領だし人の手の入っていない深い森の中。こんな所に家があると言われても信じられないのも無理はない。レムちゃんがいなければ、野宿しなければならないので本当に助かる。
「いらっしゃい、エリオ。その、久し振りだね」
僕は頭をかきながら、挨拶をする。エリオと話をするのは約一年ぶりになるので、少し照れくさい。近くでみるエリオは、身だしなみも整っていて、成長したのか背が伸びているような気がしないでもない。
「レックス!」
エリオは僕を見ると泣きそうな顔になって、そのまま抱きついてくる。近くで声を聞くと、なんだかホッとする懐かしい感じがする。僕は泣いているエリオの頭をゆっくり撫でながら落ち着くのを待った。
まあ、死んだかもしれない幼馴染と生きて再会できたのだから、やっぱり嬉しいのだろう。幼馴染といってもエリオとは家族のように一緒に暮らしていたわけで、その関係性はもっと深いと思っている。
「その、心配かけてゴメンね。村を出てから、いろいろあって、今はこの仲間と魔王を倒すために活動しているんだ」
「魔王を倒すため……。わ、私と一緒に戦うことは出来ないの?」
「それは無理だよ。僕はイシス教からお尋ね者になっている魔王なんだ。実際には本当の魔王が別にいるとしても、僕の職業が変わるわけではない」
「そ、そうよね……」
「魔王を倒して、世界に平和を取り戻したら、何か変わるといいなとは思ってるんだけど」
例え魔王を打ち倒したとして、僕がイシス教から許されるのかは別の話になるだろう。ひょっとしたら、捕まって実験台にされるかもしれないし、普通に殺されるかもしれない。
とりあえずは、プリサイファに上層部の乗っ取りを画策してもらっているので、期待しておこうと思う。
「レ、レックス殿、お、お客人にお茶を持って参った」
「あ、ありがとうシュナちゃん」
顔を紅くしながら、恥ずかしそうにお茶をもってきてくれたシュナちゃん。最近はいつもこんな調子だ。気絶した僕は一体シュナちゃんに何をしたのだろうか……。
「完全に乙女モードシュナちゃんにゃ」
「乙女モードって?」
「主様は気にしないでいいにゃ。きっと、女勇者から何があったのか聞けば話が早いと思うにゃ」
「そ、そうだ、僕は砦で気を失ってしまったみたいで、その、ほとんど記憶がないんだ。エリオの知っていることを教えてもらえないかな」
「わ、私の知っていること?」
エリオはシュナちゃんの方を見ながらアワアワしている。やはり、何かしてしまったのだろう。
「え、えっとね、レックスは誰かに乗っ取られているようだったの。そいつは、自分のことをイシス、神だと名乗っていたわ」
「神!?」
「そして、私がオークキングの部屋にたどり着いた時、レックスはそこのエルフの女性の胸を揉みながら、激しく接吻を何度も何度も……」
「っなぁ! や、やっぱり、あれは、夢ではなかったのだな」
「ちょっ、ストップ! 待って、ええっ! シュナちゃんにも覚えがあるの?」
「い、嫌がる私を、無理やり……い、いや、そんな嫌ではなかったのだが、そ、その、だな……ご、ごめんっ!」
何かを思い出したらしいシュナちゃんは、赤面の表情で外へ駆け出してしまった。
「お、追いかけないと」
「主様、行かない方がいいにゃ。しばらくしたら戻ってくるから気にしないで、今はそっとしておくに限るにゃ」
「う、うん」
「アイミー、また敵が増えそうだな」
「シュナちゃんは大丈夫だと思ってたにゃ」
「あ、あのー、すみません。みなさんは、レックスと、どういう関係なんですか?」
ここで、エリオが気になっていたであろう質問をぶっこんできた。しかし、想定済なのか強気なレムちゃんがすぐに切り返す。
「ひ、人に質問するなら、先に自分のことから話をしたらどうだ? 女勇者、お、お前はレックスの何だ?」
「わ、私はレックスの幼馴染みで、家族で、あ、あと恋人よ!」
「えぇぇ!! こ、恋人だったの!?」
確かに一度キスをされたから、そういう気持ちが無いわけではないとは思っていた。
「お、おい、女勇者、レックスが驚いてるじゃねぇかよ。う、嘘はつくな」
「こ、恋人は、その、希望だけど。将来、お店を出して一緒に暮らすことを約束した仲だもの」
違う、それはエリオが武器防具屋を一緒にやろうと勝手に話してたやつだ。お金を稼ぐまでは住み込みなんだからね! とか言ってた気はする。
「なるほど、片思いかにゃ」
「ち、違います!」
「レックス、そ、そうなのか?」
いや、やめて。みんなして、ここで僕を見ないで!
この場所にしばらく滞在することが決まったので、レムちゃんが魔法で一軒家の素敵な建物を作り上げてくれた。
「レックス、勇者が来たみたいだぞ。居間に通しておくからな」
僕たちのことは、世間的には秘密にしておきたかったので、エリオには一人で来るようにお願いした。そもそも魔王を討伐が終わるまでは会うつもりはなかったのだけど、僕がまたいろいろやってしまったようなので致し方ない。何も覚えていないんだけど……。そのあたりも聞きたいことがある。なんだか、あれ以降シュナちゃんの様子もおかしいんだよね。
戸をノックしようとしたところ、内側からレムちゃんが招き入れてくれたようだ。
「いいぞ、ほ、ほらっ、さっさと入れよ」
お客人に対するマナーとか、苦手なレムちゃんだけに、どうしても初対面の人には強気な感じになってしまう。
「お、おじゃまします。こんな所に本当に家があるなんて……」
ここは魔王領だし人の手の入っていない深い森の中。こんな所に家があると言われても信じられないのも無理はない。レムちゃんがいなければ、野宿しなければならないので本当に助かる。
「いらっしゃい、エリオ。その、久し振りだね」
僕は頭をかきながら、挨拶をする。エリオと話をするのは約一年ぶりになるので、少し照れくさい。近くでみるエリオは、身だしなみも整っていて、成長したのか背が伸びているような気がしないでもない。
「レックス!」
エリオは僕を見ると泣きそうな顔になって、そのまま抱きついてくる。近くで声を聞くと、なんだかホッとする懐かしい感じがする。僕は泣いているエリオの頭をゆっくり撫でながら落ち着くのを待った。
まあ、死んだかもしれない幼馴染と生きて再会できたのだから、やっぱり嬉しいのだろう。幼馴染といってもエリオとは家族のように一緒に暮らしていたわけで、その関係性はもっと深いと思っている。
「その、心配かけてゴメンね。村を出てから、いろいろあって、今はこの仲間と魔王を倒すために活動しているんだ」
「魔王を倒すため……。わ、私と一緒に戦うことは出来ないの?」
「それは無理だよ。僕はイシス教からお尋ね者になっている魔王なんだ。実際には本当の魔王が別にいるとしても、僕の職業が変わるわけではない」
「そ、そうよね……」
「魔王を倒して、世界に平和を取り戻したら、何か変わるといいなとは思ってるんだけど」
例え魔王を打ち倒したとして、僕がイシス教から許されるのかは別の話になるだろう。ひょっとしたら、捕まって実験台にされるかもしれないし、普通に殺されるかもしれない。
とりあえずは、プリサイファに上層部の乗っ取りを画策してもらっているので、期待しておこうと思う。
「レ、レックス殿、お、お客人にお茶を持って参った」
「あ、ありがとうシュナちゃん」
顔を紅くしながら、恥ずかしそうにお茶をもってきてくれたシュナちゃん。最近はいつもこんな調子だ。気絶した僕は一体シュナちゃんに何をしたのだろうか……。
「完全に乙女モードシュナちゃんにゃ」
「乙女モードって?」
「主様は気にしないでいいにゃ。きっと、女勇者から何があったのか聞けば話が早いと思うにゃ」
「そ、そうだ、僕は砦で気を失ってしまったみたいで、その、ほとんど記憶がないんだ。エリオの知っていることを教えてもらえないかな」
「わ、私の知っていること?」
エリオはシュナちゃんの方を見ながらアワアワしている。やはり、何かしてしまったのだろう。
「え、えっとね、レックスは誰かに乗っ取られているようだったの。そいつは、自分のことをイシス、神だと名乗っていたわ」
「神!?」
「そして、私がオークキングの部屋にたどり着いた時、レックスはそこのエルフの女性の胸を揉みながら、激しく接吻を何度も何度も……」
「っなぁ! や、やっぱり、あれは、夢ではなかったのだな」
「ちょっ、ストップ! 待って、ええっ! シュナちゃんにも覚えがあるの?」
「い、嫌がる私を、無理やり……い、いや、そんな嫌ではなかったのだが、そ、その、だな……ご、ごめんっ!」
何かを思い出したらしいシュナちゃんは、赤面の表情で外へ駆け出してしまった。
「お、追いかけないと」
「主様、行かない方がいいにゃ。しばらくしたら戻ってくるから気にしないで、今はそっとしておくに限るにゃ」
「う、うん」
「アイミー、また敵が増えそうだな」
「シュナちゃんは大丈夫だと思ってたにゃ」
「あ、あのー、すみません。みなさんは、レックスと、どういう関係なんですか?」
ここで、エリオが気になっていたであろう質問をぶっこんできた。しかし、想定済なのか強気なレムちゃんがすぐに切り返す。
「ひ、人に質問するなら、先に自分のことから話をしたらどうだ? 女勇者、お、お前はレックスの何だ?」
「わ、私はレックスの幼馴染みで、家族で、あ、あと恋人よ!」
「えぇぇ!! こ、恋人だったの!?」
確かに一度キスをされたから、そういう気持ちが無いわけではないとは思っていた。
「お、おい、女勇者、レックスが驚いてるじゃねぇかよ。う、嘘はつくな」
「こ、恋人は、その、希望だけど。将来、お店を出して一緒に暮らすことを約束した仲だもの」
違う、それはエリオが武器防具屋を一緒にやろうと勝手に話してたやつだ。お金を稼ぐまでは住み込みなんだからね! とか言ってた気はする。
「なるほど、片思いかにゃ」
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「レックス、そ、そうなのか?」
いや、やめて。みんなして、ここで僕を見ないで!
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