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六十五話目 女子会
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というわけで、十日に一度エリオが泊まりに来るようになった。早朝から元気よくやって来て、朝が強くないレムちゃんの機嫌はとても悪いし、今朝もベッドに潜り込んでいたアイミーがエリオに発見されてしまい、何故か僕もアイミーと一緒に正座させられている。
「レックスはあれかな? そんなに学習出来ない子だったかな。そ、それとも、可愛い女の子に舐められて喜んじゃうような変態さんだったのかな?」
「す、すみません」
「アイミーさんも、朝から女の子がベッドに忍び込むって、ちょっとどうかと思うの。シュナイダーさん、今後このようなことの無いようにしっかり見張ってください」
「う、うむ、わかった」
朝が苦手なレムちゃんに頼まないあたり、こちらの情勢を把握しつつあるのが怖い。
「シュナちゃんが裏切ったにゃ!? 勇者、こ、これは獣人族に伝わる挨拶のような……」
「アイミーさん、レックスは獣人じゃないの。獣人の挨拶がしたいなら、ウサ吉かぴょん子にしてもらえるかしら?」
「わ、わかったにゃ……」
ぐうの音も出ないアイミーも珍しい。理詰めには弱いようだ。アイミーのことだから十日に一度我慢すればいいぐらいにしか思ってないのだろうけど。
「それで、早速だけど午前中はどんな特訓をするのレックス?」
「午前中はアイミーにお願いしようと思って……」
「いや、レックス、お、俺が魔法を見てやる」
「レックスじゃなくて、あなたが特訓してくれるの?」
「お前の魔法は近くで見させてもらったから、考えられそうな悩みは理解しているつもりだ」
レムちゃんは、砦攻略の際、念のためエリオの側でフォローをお願いしていた。つまり、魔法を使った瞬間を見ていたのだろう。
「近くで見ていた?」
「お前が砦で放った聖光魔法だよ。あの時、俺とウサ吉軍団は冒険者に紛れてその魔法の発動から放出の瞬間まで見ていた」
「そんな所にまで紛れていたのね……」
「レベル的にも、あれが今使える最大出力の魔法なのだろう。だけど、あれは実践向きではない」
エリオの表情が少し引き締まった気がする。
「どういうことかしら? 理由を聞くわ」
「威力的にはそれなりに申し分ないが、使用するまでのタメに時間が掛かりすぎている。お前のパーティメンバーが、時間を稼いでくれるほど優秀なら問題ないが、現状それも期待出来なさそうだ」
手厳しい。しかしながら的を得た内容らしく、エリオは下を向いてしまっている。早朝から叩き起されて、気分を害したレムちゃんの辛辣な言葉のパンチがさく裂したようだ。
「そ、それで、レムリアさんだっけ。あなたなら、改善できるというの?」
「ああ、出来る。少なくとも俺なら魔力のタメにそんな時間は掛からない。勇者、お前はもっと魔法の扱い方を学んだ方がいい」
「エリオよ。私のことはエリオと呼んで」
どうやら、魔法の特訓からスタートすることが決まったようだ。レムちゃんなら、しっかりエリオを導いてくれるだろう。
「じゃあ、僕たちはサイクロプス狩りに向かおうか」
「了解にゃ」
「ちょっ、待って、サイクロプス!? 三人で大丈夫なの?」
「いや、行くのはレックス殿とアイミーの二人だ。今日の私は留守番、兼調理担当だからな」
「なんだと!? 今日はシュナイダーが調理するのかよ……」
「な、なんなのだ。また文句を言うのか」
「頼むから、ちゃんと濃い味付けにしてくれよな。薄すぎると食った気がしないんだ」
「だ、大丈夫だ。レックスの好きな味付けはちゃんと覚えた……い、いや、何でもない」
「相変わらずの乙女モードにゃ」
「なら、大丈夫か」
「何が大丈夫なのよ! 特訓が終わったら、時間を作ってもらうわよ。今日は泊まるから夜はじっくり今後についての話をしましょう」
三人とも嫌そうな顔をしているが、女の子同士の話し合いに僕が首を突っ込むのも変なので、静かに寝ていようと思う。アイミーも来ないだろうし顔がベトベトになることもない。久し振りにゆっくりと寝れそうだ。
さて、僕もエリオじゃないけどもっと強くなるために動かなければならない。大量に魔力を使うことで僕の身体はオーバーヒートしてしまう。これは、ドレインの影響が大いにあるわけなんだけど、魔力が減らなくて助かるのはいいんだけど、迂闊に身体に魔力を取り込んでしまうとその膨大な量で魔力中毒を起こすのだろうとレムちゃんに言われた。また、神様が現れても何をされるかわかったものではないので、ちゃんと自分の力を把握しておきたい。
最初に暴走した時は、身体の魔力を強引に口移しでレムちゃんに流し込んできたと言っていた。おそらく、今回シュナちゃんにしていた行為も過剰な魔力を外に出すための行為なのではないかと思われる。胸を揉みしだいていたというのは……よくわからないが神様の趣味だろう。かなり変態な神様と見て間違いない。そもそも、過剰な魔力を外に出すだけなら他にも手段はあるはずだ。
北に向かう途中にスリーザーからの報告があった。サイクロプスの様子を見に行ってもらっていたのだ。場所を聞いて効率よく狩りをしていきたい。
「レックス様、ご報告がございます」
「スリーザー、何か動きがあったの?」
少し神妙な顔つきをしてる。何やら急ぎの報告があるようだ。
「はい、サイクロプスですが、けしかけているのがどうやらリュカスのようです。その影響でトロールも砦方面に移動させられている模様」
「砦を巨人族で襲おうというわけか。トロールはまだしも、サイクロプスは行かせるわけにはいかないね。戦線が一気に後退してしまう」
「それから、リュカスの様子がおかしいのです」
「おかしいって?」
「ヒトの姿をしていないのです。ドラゴンの姿でまるでモンスターのように暴れております。かなり気が立っているようで、様子を窺おうと偵察に向かわせていた仲間の数名も遠方からのブレスでやられてしまいました。あっ、命に別状はございませんのでご安心ください」
「それはおかしいにゃ。リュカスは私たちにすらドラゴンの姿を見せたことはなかったにゃ。何かあったと考える方がいいと思うにゃ」
竜人がドラゴンの姿をみせる時は、必殺の時なのだという。自らの命を投げうってでも何かを仕留める時、竜人族における戦闘の最終形態といってもいいのだそうだ。そして、ドラゴンの姿になった時には理性は失われ、標的とする者を殺すまでは元に戻らないらしい。
「おそらくですが、いや、間違いなく標的はレックス様かと……」
だよね……。僕もそうじゃないかなとは思っているよ。
「レックスはあれかな? そんなに学習出来ない子だったかな。そ、それとも、可愛い女の子に舐められて喜んじゃうような変態さんだったのかな?」
「す、すみません」
「アイミーさんも、朝から女の子がベッドに忍び込むって、ちょっとどうかと思うの。シュナイダーさん、今後このようなことの無いようにしっかり見張ってください」
「う、うむ、わかった」
朝が苦手なレムちゃんに頼まないあたり、こちらの情勢を把握しつつあるのが怖い。
「シュナちゃんが裏切ったにゃ!? 勇者、こ、これは獣人族に伝わる挨拶のような……」
「アイミーさん、レックスは獣人じゃないの。獣人の挨拶がしたいなら、ウサ吉かぴょん子にしてもらえるかしら?」
「わ、わかったにゃ……」
ぐうの音も出ないアイミーも珍しい。理詰めには弱いようだ。アイミーのことだから十日に一度我慢すればいいぐらいにしか思ってないのだろうけど。
「それで、早速だけど午前中はどんな特訓をするのレックス?」
「午前中はアイミーにお願いしようと思って……」
「いや、レックス、お、俺が魔法を見てやる」
「レックスじゃなくて、あなたが特訓してくれるの?」
「お前の魔法は近くで見させてもらったから、考えられそうな悩みは理解しているつもりだ」
レムちゃんは、砦攻略の際、念のためエリオの側でフォローをお願いしていた。つまり、魔法を使った瞬間を見ていたのだろう。
「近くで見ていた?」
「お前が砦で放った聖光魔法だよ。あの時、俺とウサ吉軍団は冒険者に紛れてその魔法の発動から放出の瞬間まで見ていた」
「そんな所にまで紛れていたのね……」
「レベル的にも、あれが今使える最大出力の魔法なのだろう。だけど、あれは実践向きではない」
エリオの表情が少し引き締まった気がする。
「どういうことかしら? 理由を聞くわ」
「威力的にはそれなりに申し分ないが、使用するまでのタメに時間が掛かりすぎている。お前のパーティメンバーが、時間を稼いでくれるほど優秀なら問題ないが、現状それも期待出来なさそうだ」
手厳しい。しかしながら的を得た内容らしく、エリオは下を向いてしまっている。早朝から叩き起されて、気分を害したレムちゃんの辛辣な言葉のパンチがさく裂したようだ。
「そ、それで、レムリアさんだっけ。あなたなら、改善できるというの?」
「ああ、出来る。少なくとも俺なら魔力のタメにそんな時間は掛からない。勇者、お前はもっと魔法の扱い方を学んだ方がいい」
「エリオよ。私のことはエリオと呼んで」
どうやら、魔法の特訓からスタートすることが決まったようだ。レムちゃんなら、しっかりエリオを導いてくれるだろう。
「じゃあ、僕たちはサイクロプス狩りに向かおうか」
「了解にゃ」
「ちょっ、待って、サイクロプス!? 三人で大丈夫なの?」
「いや、行くのはレックス殿とアイミーの二人だ。今日の私は留守番、兼調理担当だからな」
「なんだと!? 今日はシュナイダーが調理するのかよ……」
「な、なんなのだ。また文句を言うのか」
「頼むから、ちゃんと濃い味付けにしてくれよな。薄すぎると食った気がしないんだ」
「だ、大丈夫だ。レックスの好きな味付けはちゃんと覚えた……い、いや、何でもない」
「相変わらずの乙女モードにゃ」
「なら、大丈夫か」
「何が大丈夫なのよ! 特訓が終わったら、時間を作ってもらうわよ。今日は泊まるから夜はじっくり今後についての話をしましょう」
三人とも嫌そうな顔をしているが、女の子同士の話し合いに僕が首を突っ込むのも変なので、静かに寝ていようと思う。アイミーも来ないだろうし顔がベトベトになることもない。久し振りにゆっくりと寝れそうだ。
さて、僕もエリオじゃないけどもっと強くなるために動かなければならない。大量に魔力を使うことで僕の身体はオーバーヒートしてしまう。これは、ドレインの影響が大いにあるわけなんだけど、魔力が減らなくて助かるのはいいんだけど、迂闊に身体に魔力を取り込んでしまうとその膨大な量で魔力中毒を起こすのだろうとレムちゃんに言われた。また、神様が現れても何をされるかわかったものではないので、ちゃんと自分の力を把握しておきたい。
最初に暴走した時は、身体の魔力を強引に口移しでレムちゃんに流し込んできたと言っていた。おそらく、今回シュナちゃんにしていた行為も過剰な魔力を外に出すための行為なのではないかと思われる。胸を揉みしだいていたというのは……よくわからないが神様の趣味だろう。かなり変態な神様と見て間違いない。そもそも、過剰な魔力を外に出すだけなら他にも手段はあるはずだ。
北に向かう途中にスリーザーからの報告があった。サイクロプスの様子を見に行ってもらっていたのだ。場所を聞いて効率よく狩りをしていきたい。
「レックス様、ご報告がございます」
「スリーザー、何か動きがあったの?」
少し神妙な顔つきをしてる。何やら急ぎの報告があるようだ。
「はい、サイクロプスですが、けしかけているのがどうやらリュカスのようです。その影響でトロールも砦方面に移動させられている模様」
「砦を巨人族で襲おうというわけか。トロールはまだしも、サイクロプスは行かせるわけにはいかないね。戦線が一気に後退してしまう」
「それから、リュカスの様子がおかしいのです」
「おかしいって?」
「ヒトの姿をしていないのです。ドラゴンの姿でまるでモンスターのように暴れております。かなり気が立っているようで、様子を窺おうと偵察に向かわせていた仲間の数名も遠方からのブレスでやられてしまいました。あっ、命に別状はございませんのでご安心ください」
「それはおかしいにゃ。リュカスは私たちにすらドラゴンの姿を見せたことはなかったにゃ。何かあったと考える方がいいと思うにゃ」
竜人がドラゴンの姿をみせる時は、必殺の時なのだという。自らの命を投げうってでも何かを仕留める時、竜人族における戦闘の最終形態といってもいいのだそうだ。そして、ドラゴンの姿になった時には理性は失われ、標的とする者を殺すまでは元に戻らないらしい。
「おそらくですが、いや、間違いなく標的はレックス様かと……」
だよね……。僕もそうじゃないかなとは思っているよ。
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