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六十八話目 ドラゴン襲来
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「行けっ、ウサギロケット!」
魔法を唱えようとしていたエリオにウサ吉軍団が飛びかかる。
「ちょっ、痛いじゃないっ」
勿論のことウサ吉軍団も、本気でアタックしていないので、エリオにはモフっとあたる。つまり、痛くも痒くもない。
「お前は魔法を唱え終わるまで敵が待ってくれるとでも思っているのか」
「そ、それは、そうだけど……。でも、ウサギさんを投げないでよ」
「投げていない、魔法で飛ばしているんだ」
「同じでしょ!」
一応、直接魔法攻撃を行うのはどうかと思ったので、ウサ吉軍団でも小さめサイズの奴らを集めて魔力放出で飛ばしていたのだ。ウサ吉軍団も遊びの延長と思っているのか割と楽しんでいる。
ちなみにこのウサギロケットは、ただ単に攻撃を与えることを目的としている訳ではなく、魔法発動の邪魔を目的としている。エリオの弱点は、無駄な動きが多いことと、魔法の発動が遅いことに尽きる。
「発動を早くする手段は伝えたはずだ。あとは、エリオの集中力とやる気のみ。心頭滅却すれば、ウサギもまた涼し」
「ちょっと、何言ってるかわからないわ」
とりあえず、慣れるまでは繰り返していくしかないだろう。エリオがこうなった要因の一つに勇者パーティの成熟度が低いことが言える。前線のフォローに、後方支援と働きまくりの勇者は器用貧乏になっているのだ。
「もっと傲慢になっていいんだ。お前のパーティなんだぞ。お前が決めなくて誰が決めるんだよ」
「わ、わかってるわよ!」
「逆なんだよ。お前がわちゃわちゃ動くな。お前がパーティを動かすんだ。成長させるんだ」
「や、やってやろうじゃない!」
「……ん? 待て、な、何か来るぞ!」
上空から強い魔力を持った何かがこちらに向かってきている。それは、自身の力を制御することも出来ずに森に突っ込もうとしていた。周囲で警備をしていたウサ吉軍団が次々に吹き飛ばされていく。
「な、何で、ドラゴンが……」
「おいおい、あれがリュカスかよ。エリオ、自分の身は自分で守れよ。よくわからねぇけど、信じられねぇパワーアップをしている。あ、あれ多分、いや、俺よりも全然強い」
どうする。レックスとアイミーを離したところを狙ってきたということか。そうなると、向こうも何かしら足止めされている可能性があるか。エリオのことは守らなければならない。今はまだ戦力になっていないが、曲りなりにもこいつは勇者だ。魔王との戦いではきっと必要戦力になるはず。守れるか……。
「ウサ吉、レックスに連絡はしたか! よし、ならシュナイダーを早く連れて来い。それから、残りのウサ吉軍団はエリオを守れ」
森に突っ込んでいった体勢を立て直すとリュカスであろうドラゴンは、俺を見ると大きく咆哮をあげた。これなら、呼びに行かなくてもシュナイダーが気づきそうだな。
「何だよ、ずいぶん嬉しそうに鳴くじゃねぇか。そんなに俺のことを殺したかったのか?」
「あ、あれが、魔王軍四天王のリュカス……」
「俺がやられたら、死ぬ気で逃げろよ。間違っても仇をとろうなど考えるな。お前は生き残ることだけを考えろ」
「そ、そんな、私だって戦える……」
「そんな震えた足で強がってるんじゃねぇよ。お前とレックスは魔王討伐に必要なんだ。イシスっていう神がそう言ってるんだろ。命を懸ける場所を間違えるな」
とりあえずは、シュナイダーが来るまでは守りに徹するか。いや、シュナイダーが来ても攻撃に転じられるかどうか……。レックス、なるべく早く戻ってきてくれよ。そんなに時間持たねぇからな。
目の前にいるドラゴンは獰猛視線を向けながら涎を垂らしている。あのリュカスからは想像もできない姿だ。眼は紅く染まっていて、眼球は左右に細かく動いており落ち着きがない。もはや会話などすることも叶わぬのではないだろうか。
「リュカス……お前の求めた力はこれで良かったのか?」
そんなことを言ったところで、もちろん何の反応もなく聞く耳は持たず、首をコキコキと鳴らしながらこちらを見据えている。戦闘準備は整ったということだろう。
重心を少し低くしたリュカスは、まるで目の前にエサでもあるかのように落ち着きがない。この場合、エサは俺とエリオか。我慢できずにその巨体が突進してくる!
「エリオ、逃げろっ!」
左右に分かれるようにして何とかその突進を避けるが、続けざまに振り下ろされた爪にエリオが飛ばされてしまう。
「く、はっ!」
「お、おいっ、大丈夫か」
「だ、大丈夫……」
ドラゴンがエリオと少し距離がとれたのはいいが、ここで少しでも押し返したい。急速に魔力を高めると、すぐに強力な魔法に変えて撃ち出す。
「メガフレアっ!」
魔法は、リュカスの背後から見事に的中をした。背中の翼に少しでも傷を負わせられれば機動力を落とせるのだろうが……。
「は、早い。発動から撃ち出しまでのスピードは、ここまで早められるのね」
「やっぱり効いてないか……」
防御は間に合っていなかったはず。それでも基礎防御だけで俺の魔法を跳ね返しやがった。結構本気で撃ったのに、これはさすがにヤバいかもしれねぇ。
魔法を唱えようとしていたエリオにウサ吉軍団が飛びかかる。
「ちょっ、痛いじゃないっ」
勿論のことウサ吉軍団も、本気でアタックしていないので、エリオにはモフっとあたる。つまり、痛くも痒くもない。
「お前は魔法を唱え終わるまで敵が待ってくれるとでも思っているのか」
「そ、それは、そうだけど……。でも、ウサギさんを投げないでよ」
「投げていない、魔法で飛ばしているんだ」
「同じでしょ!」
一応、直接魔法攻撃を行うのはどうかと思ったので、ウサ吉軍団でも小さめサイズの奴らを集めて魔力放出で飛ばしていたのだ。ウサ吉軍団も遊びの延長と思っているのか割と楽しんでいる。
ちなみにこのウサギロケットは、ただ単に攻撃を与えることを目的としている訳ではなく、魔法発動の邪魔を目的としている。エリオの弱点は、無駄な動きが多いことと、魔法の発動が遅いことに尽きる。
「発動を早くする手段は伝えたはずだ。あとは、エリオの集中力とやる気のみ。心頭滅却すれば、ウサギもまた涼し」
「ちょっと、何言ってるかわからないわ」
とりあえず、慣れるまでは繰り返していくしかないだろう。エリオがこうなった要因の一つに勇者パーティの成熟度が低いことが言える。前線のフォローに、後方支援と働きまくりの勇者は器用貧乏になっているのだ。
「もっと傲慢になっていいんだ。お前のパーティなんだぞ。お前が決めなくて誰が決めるんだよ」
「わ、わかってるわよ!」
「逆なんだよ。お前がわちゃわちゃ動くな。お前がパーティを動かすんだ。成長させるんだ」
「や、やってやろうじゃない!」
「……ん? 待て、な、何か来るぞ!」
上空から強い魔力を持った何かがこちらに向かってきている。それは、自身の力を制御することも出来ずに森に突っ込もうとしていた。周囲で警備をしていたウサ吉軍団が次々に吹き飛ばされていく。
「な、何で、ドラゴンが……」
「おいおい、あれがリュカスかよ。エリオ、自分の身は自分で守れよ。よくわからねぇけど、信じられねぇパワーアップをしている。あ、あれ多分、いや、俺よりも全然強い」
どうする。レックスとアイミーを離したところを狙ってきたということか。そうなると、向こうも何かしら足止めされている可能性があるか。エリオのことは守らなければならない。今はまだ戦力になっていないが、曲りなりにもこいつは勇者だ。魔王との戦いではきっと必要戦力になるはず。守れるか……。
「ウサ吉、レックスに連絡はしたか! よし、ならシュナイダーを早く連れて来い。それから、残りのウサ吉軍団はエリオを守れ」
森に突っ込んでいった体勢を立て直すとリュカスであろうドラゴンは、俺を見ると大きく咆哮をあげた。これなら、呼びに行かなくてもシュナイダーが気づきそうだな。
「何だよ、ずいぶん嬉しそうに鳴くじゃねぇか。そんなに俺のことを殺したかったのか?」
「あ、あれが、魔王軍四天王のリュカス……」
「俺がやられたら、死ぬ気で逃げろよ。間違っても仇をとろうなど考えるな。お前は生き残ることだけを考えろ」
「そ、そんな、私だって戦える……」
「そんな震えた足で強がってるんじゃねぇよ。お前とレックスは魔王討伐に必要なんだ。イシスっていう神がそう言ってるんだろ。命を懸ける場所を間違えるな」
とりあえずは、シュナイダーが来るまでは守りに徹するか。いや、シュナイダーが来ても攻撃に転じられるかどうか……。レックス、なるべく早く戻ってきてくれよ。そんなに時間持たねぇからな。
目の前にいるドラゴンは獰猛視線を向けながら涎を垂らしている。あのリュカスからは想像もできない姿だ。眼は紅く染まっていて、眼球は左右に細かく動いており落ち着きがない。もはや会話などすることも叶わぬのではないだろうか。
「リュカス……お前の求めた力はこれで良かったのか?」
そんなことを言ったところで、もちろん何の反応もなく聞く耳は持たず、首をコキコキと鳴らしながらこちらを見据えている。戦闘準備は整ったということだろう。
重心を少し低くしたリュカスは、まるで目の前にエサでもあるかのように落ち着きがない。この場合、エサは俺とエリオか。我慢できずにその巨体が突進してくる!
「エリオ、逃げろっ!」
左右に分かれるようにして何とかその突進を避けるが、続けざまに振り下ろされた爪にエリオが飛ばされてしまう。
「く、はっ!」
「お、おいっ、大丈夫か」
「だ、大丈夫……」
ドラゴンがエリオと少し距離がとれたのはいいが、ここで少しでも押し返したい。急速に魔力を高めると、すぐに強力な魔法に変えて撃ち出す。
「メガフレアっ!」
魔法は、リュカスの背後から見事に的中をした。背中の翼に少しでも傷を負わせられれば機動力を落とせるのだろうが……。
「は、早い。発動から撃ち出しまでのスピードは、ここまで早められるのね」
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