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六十七話目 リュカスの罠
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その後も、サイクロプスをドレインしながら山脈方面にいるであろうリュカスに気をつけながら狩りを進めていたのだが、周辺にはリュカスの気配は全くといってなかった。ひょっとして逃げたのかとも思ったが、ドラゴン形態のリュカスがそんな行動をとるとも考えられず……。
「主様、もう山脈が見えているのにリュカスの気配が全く感じられないのはさすがにおかしいにゃ」
「そうだね……!?」
その時、僕のドレインの糸を通じてウサ吉から緊急の連絡が入ってきた。
「主様、どうしたにゃ」
「ウサ吉から緊急連絡が入った。リュカスがエリオとレムちゃんと戦っている」
ちかみに、すでに何羽かのウサ吉軍団は戦闘不能に陥っているとの報告だ。
「主様がいない隙を突いたということかにゃ……」
「サイクロプスが囮なのか? シュナちゃんがもう少しで駆けつけられるようだけど、リュカスの戦闘力が異常らしいんだ」
「すぐに駆けつけたいところだけど、あいつらを戦闘不能にしてからじゃないと、こちらも動けないか……」
ここぞとばかりに、サイクロプスの群れが僕とアイミーを囲うようにして現れていた。山脈沿いの草原に横たわるようにして身を隠していたようだ。全部で百体ぐらいはいるか……。この数を放置しておくわけにはいかない。一体でも砦に来たら大惨事になるだろう。
「ここはアイミーに任せて、主様は、みんなの元へ急ぐにゃ」
「いや、この数はいくらアイミーでも無理だよ」
「で、でもっ」
「アイミー、僕が気を失ったら叩き起してくれ」
アイミーは魔力が少ないから、過剰な魔力を吸収するのは無理だろう。オーク三百体は命令を出した途端に気を失うことになってしまった。サイクロプスの場合なら、何体までいける? レムちゃんとシュナちゃんがいるとはいえ、リュカスのことも気になる。迷っている場合ではないな。
「アイミー、全力で倒しにいく。それから、身体強化魔法全開で戻る」
「わ、わかったにゃ!」
「ドレイン!」
糸状のドレインを地面を這うように全方向へと放出していく。このドレインに僕の魔力の半分を使う。
「もう一度! ドレイン!」
これは、先ほど使っていたサイクロプスを消滅させるドレイン。少しでも敵の数を減らしていく。アイミーもスピードで翻弄しながらドレインの影響を避けるように戦闘場所を変えていっている。
どうやら半分の魔力エネルギーで操れたのは、二十体ほど。サイクロプスはオークの時のように意識を失っているわけではないので、このあたりが限界のようだ。
「命令する! 周りのサイクロプスをせん滅せよ!」
命令と共に、サイクロプスを強化する。ごっそりと持っていかれる魔力……。しかし、前回持っていかれた魔力ほどではない。おそらく、残りの魔力は十パーセント程度だろう。それでも、ちゃんと残っている。あとは、強化サイクロプスが倒しきれる数まで減らすだけだ。
急げ!
アイミーが囲まれながらも、スピードで翻弄しつつ足を潰す戦略をとっている。既に二体のサイクロプスの足を潰している。僕のドレインは一番近くのサイクロプスの上半身を吹き飛ばすと、次のサイクロプスに狙いを定めていく。これで、三体。
「主様、あ、あと何体にゃ?」
「四十体は減らしたい。アイミーはそのまま、機動力を奪う方向で!」
「了解にゃ!」
密集したエリアでの戦闘は、スピードに優れていても神経を削らされる。しかも、大型のサイクロプスを倒す度に、その大量の血が草原の土を緩くしていく。
「し、しまったにゃ!?」
目の前で足を滑らせたアイミーに、サイクロプスの持つとんでもないサイズの棍棒が迫っていた。
「させるかっ!」
握りしめたレーヴァテインを強引に滑り込ませて、何とか衝突位置をずらすと、アイミーを抱えたまま離脱に成功する。それでも、まだまだ数の多いサイクロプス。離脱した場所に、すぐさま腕を振り上げている個体がいる。
「獣王激烈掌!!」
「ナ、ナイス、アイミー!」
「主様、ここからは場所を移動しながら、一緒に戦う方がいいにゃ」
アイミーの言う通り、ここまでの乱戦になるとどこから攻撃が飛んでくるかわからない。急ぎながらも、でも確実に仕留めていったほうがいい。
「うん、そうしよう!」
アイミーと背中合わせになりながら、前方のサイクロプスの動きに注意しながら、変換したドレインを放っていく。とんでもないサイズで襲ってくるサイクロプスの持つメイスの軌道をレーヴァテインでずらしていっては、足に突き刺す。
これで、ようやく六体。
焦るな、今は仲間を信じるんだ。心配だけど、レムちゃんもシュナちゃんも相当に強い。エリオだってスキルがレベルアップしたと言っていたし、さらに強くなっている。僕たちも今は最善を尽くしながら進むのみ。
あと、残り二十体も倒せば、ここを離れても大丈夫だろう。
「主様、もう山脈が見えているのにリュカスの気配が全く感じられないのはさすがにおかしいにゃ」
「そうだね……!?」
その時、僕のドレインの糸を通じてウサ吉から緊急の連絡が入ってきた。
「主様、どうしたにゃ」
「ウサ吉から緊急連絡が入った。リュカスがエリオとレムちゃんと戦っている」
ちかみに、すでに何羽かのウサ吉軍団は戦闘不能に陥っているとの報告だ。
「主様がいない隙を突いたということかにゃ……」
「サイクロプスが囮なのか? シュナちゃんがもう少しで駆けつけられるようだけど、リュカスの戦闘力が異常らしいんだ」
「すぐに駆けつけたいところだけど、あいつらを戦闘不能にしてからじゃないと、こちらも動けないか……」
ここぞとばかりに、サイクロプスの群れが僕とアイミーを囲うようにして現れていた。山脈沿いの草原に横たわるようにして身を隠していたようだ。全部で百体ぐらいはいるか……。この数を放置しておくわけにはいかない。一体でも砦に来たら大惨事になるだろう。
「ここはアイミーに任せて、主様は、みんなの元へ急ぐにゃ」
「いや、この数はいくらアイミーでも無理だよ」
「で、でもっ」
「アイミー、僕が気を失ったら叩き起してくれ」
アイミーは魔力が少ないから、過剰な魔力を吸収するのは無理だろう。オーク三百体は命令を出した途端に気を失うことになってしまった。サイクロプスの場合なら、何体までいける? レムちゃんとシュナちゃんがいるとはいえ、リュカスのことも気になる。迷っている場合ではないな。
「アイミー、全力で倒しにいく。それから、身体強化魔法全開で戻る」
「わ、わかったにゃ!」
「ドレイン!」
糸状のドレインを地面を這うように全方向へと放出していく。このドレインに僕の魔力の半分を使う。
「もう一度! ドレイン!」
これは、先ほど使っていたサイクロプスを消滅させるドレイン。少しでも敵の数を減らしていく。アイミーもスピードで翻弄しながらドレインの影響を避けるように戦闘場所を変えていっている。
どうやら半分の魔力エネルギーで操れたのは、二十体ほど。サイクロプスはオークの時のように意識を失っているわけではないので、このあたりが限界のようだ。
「命令する! 周りのサイクロプスをせん滅せよ!」
命令と共に、サイクロプスを強化する。ごっそりと持っていかれる魔力……。しかし、前回持っていかれた魔力ほどではない。おそらく、残りの魔力は十パーセント程度だろう。それでも、ちゃんと残っている。あとは、強化サイクロプスが倒しきれる数まで減らすだけだ。
急げ!
アイミーが囲まれながらも、スピードで翻弄しつつ足を潰す戦略をとっている。既に二体のサイクロプスの足を潰している。僕のドレインは一番近くのサイクロプスの上半身を吹き飛ばすと、次のサイクロプスに狙いを定めていく。これで、三体。
「主様、あ、あと何体にゃ?」
「四十体は減らしたい。アイミーはそのまま、機動力を奪う方向で!」
「了解にゃ!」
密集したエリアでの戦闘は、スピードに優れていても神経を削らされる。しかも、大型のサイクロプスを倒す度に、その大量の血が草原の土を緩くしていく。
「し、しまったにゃ!?」
目の前で足を滑らせたアイミーに、サイクロプスの持つとんでもないサイズの棍棒が迫っていた。
「させるかっ!」
握りしめたレーヴァテインを強引に滑り込ませて、何とか衝突位置をずらすと、アイミーを抱えたまま離脱に成功する。それでも、まだまだ数の多いサイクロプス。離脱した場所に、すぐさま腕を振り上げている個体がいる。
「獣王激烈掌!!」
「ナ、ナイス、アイミー!」
「主様、ここからは場所を移動しながら、一緒に戦う方がいいにゃ」
アイミーの言う通り、ここまでの乱戦になるとどこから攻撃が飛んでくるかわからない。急ぎながらも、でも確実に仕留めていったほうがいい。
「うん、そうしよう!」
アイミーと背中合わせになりながら、前方のサイクロプスの動きに注意しながら、変換したドレインを放っていく。とんでもないサイズで襲ってくるサイクロプスの持つメイスの軌道をレーヴァテインでずらしていっては、足に突き刺す。
これで、ようやく六体。
焦るな、今は仲間を信じるんだ。心配だけど、レムちゃんもシュナちゃんも相当に強い。エリオだってスキルがレベルアップしたと言っていたし、さらに強くなっている。僕たちも今は最善を尽くしながら進むのみ。
あと、残り二十体も倒せば、ここを離れても大丈夫だろう。
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