王子に嫌われたい!

ひとみん

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この世界には魔法と言うものが存在する。
正直、初めは信じられなかった。だって、それはおとぎ話やアニメの世界での話であって、これまで生きてきた世界では存在しなかったから。
実際に見せてもらった時には、びっくりたまげたことは言うまでもない。

魔法はこの世に宿る精霊たちから力を借りて、その力を発揮するのだという。
大地のグラン、水のアーナトリヤ、火のイフリート、風のエンリル、木のドリュー。空のトール。
まぁ所謂、五大要素に似ているが、この世界では六大要素だ。
他にも闇や光もあるが、これは万物に等しく降り注ぐという観念上、人ひとりに力を与えるという事は無いようだ。

でも、全ての人間が魔法を使えるわけではなく、そういう力のない人の方が八割を占めている。
残り二割の魔法使いはとても貴重な存在なのだ。
だから、魔力があれば平民貴族関係なく、高等な教育を受けることが出来、国の為に働くことができる。
まぁ、所謂、国家公務員みたいな感じだ。給料もいいから、大抵の人は国の為に働くけど、一応選択の自由があるので中には普通に暮らしている人たちもいる。

そんな魔法を簡単に使えてしまうのが、王族だ。
王族は精霊の加護を代々受けているからだ。
「王族は皆、魔力が強いのです」
特にアリオスに関しては、これまでの歴代の王族の中でも群を抜いているのだとリズは言う。
大概は、多くても三大要素を使いこなせればエリート扱いだが、アリオスは六大要素全てを使いこなせるらしいのだ。
魔法を信じていなかった私にアリオスは、火の精霊イフリート水の精霊アーナトリヤを呼び出し見せてくれた。
あれにはびっくり!アニメとか漫画みたいに、ちっこくて可愛らしい生き物が目の前に突然出てきたのだから。
でも、見た目は可愛いけど使用容量を守らないと痛い目に合うらしい。なんか、薬みたいだ・・・と、苦笑したことを覚えている。

「魔法が使えるといっても、その能力の強さには個人差があります」
「リズも、使えるの?」
そう言えば、改めて聞いたことが無かったな・・と、今までどれだけ余裕がなかったのかと、自分自身に呆れてしまった。
「使えますよ。ただ、それほど強くはありませんが」
そう言いながら、魔力の強さを説明してくれた。

わかりやすく、魔力を入れ物の大きさで例えてくれた。
平均的な入れ物の大きさが桶とすれば、魔力の少ない者は花瓶だったりコップだったりする。
反対に大きくなれば樽だったり風呂桶だったり、時にはそれに嵌り切らず小さな湖だったりもする。
アリオスの入れ物は、正に湖の如く大きいものなのだそうだ。
「入れ物が大きければ、それだけ強力な魔法が使えますし、発動できる数も多くなります」
「へぇ、アリオスって凄いんだね」
ただのチャラ男かと思っていたけど・・・・でも、それのどこが私と関係があるのだろうか?
そんな疑問が顔に出ていたのか、リズは「関係大ありですよ」と、またも心を読んだかのように返した。
「魔力を使えば当然、減っていきます。それはアリオスだって同じ。湖の水を際限なく使えば枯渇してしまいます。そしてそれは、器が大きければ大きいほど、力が満たされるまでに時間がかかってしまうのです」
「成程・・・」
確かに、お風呂に水を溜めるのとバケツに溜めるのでは、かかる時間が違うものね。
「ですが王家にはある伝承があるのです。魔力を一瞬で回復させる力を持つ者が現れる、と」
「一瞬で?」
「そうです。しかもその力は誰にでも・・・ではなく、特定の一人のみ有効。正に貴女の嫌いな『運命』の糸によって繋がれた者のみに発揮されるのです」

ま、さか・・・ねぇ。あり得ない、よね・・・

「アリオスの力を一瞬で回復させる事ができたのは、貴女です」
これといって感情のこもらない声色で、リズが私を突き落とす。

頭を掠めていた嫌な予感が的中し、私の頭の中は真っ白になってしまった。
「・・・いや、ちょっと、待って?私、いつ、どこでそんな事」
「貴女は戦の真っただ中に落ちてきました。あの時のアリオスは何日も無理をした為に、ほぼ力を出し切って枯渇状態に近かったのです。ですが、貴女に触れた瞬間、一瞬で力が溢れるほどに満たされたそうです」
そう言えばあの時・・・・私にマントを被せ抱き上げた瞬間、アリオスはもの凄く驚いて、そして嬉しそうに笑っていたのを覚えている。
戦のさなかに見せる様な笑顔ではなかったので、妙に印象が強かったから記憶に残っていた。
「力が戻ったアリオスは、貴女を抱きかかえたまま、敵を壊滅させました。貴女に触れてさえいれば力が枯渇する事はないのですから」
私の身体が、ゾクッと震えた。

・・・・怖い・・・

正直な感想が、これだ。
あの時、あっさり気を失ったからあの後の事は全く覚えてはいない。
リズの言葉に、その情景・・・この世界に落ちて初めて見た血なまぐさい光景が甦る。
「・・・リズ・・・彼が言う、運命って・・・」
「貴女が馬鹿な男に言われた嘘くさい『運命』とは、意味が違います」

あぁ・・・怖い・・・

その言葉しか思い浮かばない。
「リズ・・・私、怖いよ・・・・無理だ・・・」
「・・・・貴女は恐らく、アリオスが魔法兵器で、自分はそのエネルギー源とか、怖い事を考えているのでしょう?」
「え!何でわかったの!?」
「だから、貴女の考えていることなど誰でもわかりますよ」
「もしかして・・・リズの魔法?」
「心を読める魔法はありません」
「なんだ・・・残念」
「はぁ~・・・貴女の存在は怖いものではないのです。どちらかと言えば、戦争への抑止力になります」
「抑止力?なんで?」
「我が国に仕掛ければ、アリオスが無限の魔力で国を殲滅すると、警告になるからです。今回の戦争でそれが証明されました」
こ度の戦争は、相手から仕掛けてきたものだったという。
「アルム王国は周りの国に比べ、資源豊富な豊かな国なのです。それ故、これまでの歴史の中で幾度となく他国から攻められてきた事はありましたが、ことごとく跳ね返し侵入を許すことはありませんでした。我が軍は鉄の防壁と呼ばれる程名高いものなのです」
王族が先頭に立ち、その強力な魔法で護ってきたのだという。
「過去にもサーラ様のような能力を持つ者が国王と結婚をし、その存在意義を諸国に知らしめました。その結果平和がもたらされたのです」

いや、ちょっと、待って・・・・

私は、先ほどとは違う意味での怖さを感じて、震えた。
私とアリオスが結婚すれば、この国が平和になるって?
「いやいやいや・・・無理!別に結婚しなくてもいいじゃない。今回の戦争で諸外国に見せつけたんでしょ?ならそれで、いいじゃない」
「いいえ、婚姻を結んでもらわなくては困るのです。何故なら、貴女が他国へ誘拐されたり暗殺されたら、困るでしょ?」
「あ・・・んさつ??誰が?」
「サーラ様が」
「誰、に?」
「この国を狙う野蛮な国に、です。今の所、貴女が目の上のタンコブなのですから。平民のままでよりは、婚姻を結び王族の一員になればそうそう貴女に手を出すことはできませんし。この間の戦争も実はあの時点では旗色が劣勢だったのですが、貴女のおかげで勝利を勝ち取ることができたのです」
戦相手であった国はもとより、静観していた他国でも慌ただしい動きになっているのだという。


・・・・・・あぁ・・・帰りたい・・・・


今まで以上に、心の奥底から切実に願った。
「何のためのローブだと思っていたのですか?その真っ平らな顔を隠すためだけではないのですよ」

なんと辛辣で的を得たお言葉・・・・アリガトウゴザイマス・・・・
だけど、もう絶対、無理だから・・・お願いだから、帰して・・・
キャパオーバーだからっ!

私は魂が抜けたかのように、またもベンチに倒れ込んだことは言うまでもない・・・・


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