転生魔女は国盗りを望む

ひとみん

文字の大きさ
15 / 60

15

しおりを挟む
懐かしい写真はあった場所へと戻し、先程までの感情を覆い隠すように微笑みを浮かべ、「さて、話をしようか」とアシアスをソファーへ座るよう促した。

「この土地は元々私のものだ。五百と数十年前にここ一帯を当時支配していた皇帝から譲り受けた。契約書もありそれは魔法での縛りもある為、永久的なものである」
その事までは知らなかったアシアスは、驚いたように目を見開いた。
「私は一度死んでるからね、その間の事は歴史書などでしかわからないのだが。この国の初代国王が私の研究成果を盗もうとし、結界を解こうとしたが、結局は無駄な道を三本も作ってしまった事。これは間違いないか?」
人当たりの良い笑顔を浮かべ吐く言葉は、棘がいっぱいだ。
「王家所有の初代国王の手記にも書かれているので、間違いありません」
国王の手記とは言っても、単に日記である。初代国王はかなり自尊心が高く、魔法がなくとも便利な世の中になっていく事を嫌悪し、その所為で力をなくしていく魔法使いたちを見下していた。
彼の人生の目標は、大魔法使いファーラを超える事だったから、なおさら周りの魔法使いたちを情けなく思っていたのだろう。
だが結局は、彼もファーラを超える事は出来ず、無駄に三本の道を作る事で力を使いすぎ、魔力を失くしてしまった。
そして一縷の望みでもあった、ファーラの工房。
彼女が住んでいたであろう屋敷も何もそこには無く、荒れ地に不似合いな花々が咲き乱れていたのだという。

アシアスの話を聞き、当然だ・・・と、ファラトゥールは頷く。
自分が死んだ後の事もちゃんと考えて、そこら辺は抜かりなく魔法を展開していたのだから。
「私が死んだ後は、ココ以外は全て無になるよう魔法をかけていたからね。私が生み出した魔法を、何の努力もせず自分のものにしようという輩が出る事くらい、安易に想像できる。生きている時ですらそうだったのだから」
魔法使いだって、ずるい人間は沢山いる。もしかしたら魔力のない人間より多いかもしれない。
なんせ、権力欲の塊のような人間が多いから。
「それに初代バカ国王は、ここは私の土地だと認識していたはずだ。当時は、魔法契約が主流だったのだから」
その魔法使いも何を考えたのか、ファーラの土地であることを知っていながら、自分のものにした。所謂、略奪である。
確かに持ち主は死んでいないが、契約は契約だ。ましてや魔法による契約が成されている。
それに違反するような行為をすれば、とんだしっぺ返しが来ることもあり得るのだ。

「初代国王は、対外的には病死となっていますが、実際は発狂して死にました」
自分の思い描いた未来が全て敵わないとわかったとたん、彼はこの土地に居座る事を決めた。
そして、故郷を持たない人達を集め、国をつくってしまったのだ。
「あぁ、それは契約に違反したからペナルティが発動したのよ」
正当な契約の持ち主のものを不当に略奪した場合、契約内容にもよるが略奪した人間に対しペナルティが課せられる。
「私も調べてみたんだけど、この国の王は、短命よね」
「はい、長生きしても五十歳くらいまでです。そして皆、精神の病にかかり初代同様発狂死します」
ガルーラ王家では、呪いではないかと言われている。
「この土地を奪ったのは初代だけど、その血は受け継がれているし、この土地に生きてる。それが全て契約違反対象となるのよ」
「そう、なのですね。現国王は呪いなどあるはずがないと高を括っています。ですが恐らく一番怯えているのは国王でしょう」
今年で四十六歳になる、ガルーラ国王。呪いなど無いとは言うが、かなり焦っているらしい。

「手記を読んで思ったのは、初代はファーラ様にかなり執着しているなと感じました。だから、この土地に固執したのかもしれません」
「この土地自体には魔法はかけてないけど、元々ここは人が住めるような土地じゃなかったのよ。だから時の皇帝はタダでくれたんだから」
王都なのに廃れた感じがぬぐえないのは、元々がそう言う土地だったという事で、国自体が困窮している証拠だろう。

「このままじゃ、将来あなたが国王になった時、契約のペナルティが移るわよ」
そう言いながら、パチンと指を鳴らせば、目の前に温かいお茶とお菓子が現れる。
「今更だけど、お茶をどうぞ。あなたの人柄を確かめたくて、無礼な物言いをしてしまったわ。改めて謝罪するわ」
「いえ!謝罪は結構です!もとはと言えば、不法侵入した俺が悪いのですから」
魔方陣に興奮していた人物と思えないほど恐縮しきりのアシアスだが、視線はお菓子に注がれている。
そんな彼にクスリと笑い「遠慮なく食べていいわよ」と言えば、恐る恐るクッキーを口に運ぶ。

サクリ・・・サクリ・・・

ゆっくりと味わうように咀嚼するアシアス。
本人も気づいていないのか、静かに涙を流しながら、彼はお菓子を食べた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

勝手にしろと言ったのに、流刑地で愛人と子供たちと幸せスローライフを送ることに、なにか問題が?

赤羽夕夜
恋愛
アエノール・リンダークネッシュは新婚一日目にして、夫のエリオット・リンダークネッシュにより、リンダークネッシュ家の領地であり、滞在人の流刑地である孤島に送られることになる。 その理由が、平民の愛人であるエディットと真実の愛に満ちた生活を送る為。アエノールは二人の体裁を守る為に嫁に迎えられた駒に過ぎなかった。 ――それから10年後。アエノールのことも忘れ、愛人との幸せな日々を過ごしていたエリオットの元に、アエノールによる離婚状と慰謝料の請求の紙が送られてくる。 王室と裁判所が正式に受理したことを示す紋章。事態を把握するために、アエノールが暮らしている流刑地に向かうと。 絶海孤島だった流刑地は、ひとつの島として栄えていた。10年以上前は、たしかになにもない島だったはずなのに、いつの間にか一つの町を形成していて領主屋敷と呼ばれる建物も建てられていた。 エリオットが尋ねると、その庭園部分では、十年前、追い出したはずのアエノールと、愛する人と一緒になる為に婚約者を晒し者にして国王の怒りを買って流刑地に送られた悪役王子――エドが幼い子を抱いて幸せに笑い合う姿が――。 ※気が向いたら物語の補填となるような短めなお話を追加していこうかなと思うので、気長にお待ちいただければ幸いです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。

処理中です...