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無言ではあったが気まずいわけではなく、二人はぺろりとホットサンドを平らげた。
アシアスには当然ファラトゥールの二倍の量を出したが、気持ちのいい食べっぷりに思わず微笑ましく見てしまっていた。
お茶を飲んで一息つくと、今現在の国内と王宮内の事情をアシアスから説明を受けた。
国内の貧困はほぼ聞いていた通りだったが、王宮内の腐敗が思っていた以上だった事に、アシアスが一人足掻いたところでどうにもならないなと納得してしまう。
国王の周りにはイエスマンしかいないのだが、それぞれが腹の中が真っ黒なようだ。
協力しているように見せて、互いどう出し抜くかで陰では足の引っ張り合いが日常茶飯事。
「王太子であるあなたに、娘とか押し付けてこないの?婚約者はいないのよね?」
「押し付けられますよ。薬を盛られたり、寝所で待ち伏せされたり。俺を国王にして陰で好き放題したいのが見え見えで、とてもじゃないけどそんな気にはなれない。彼等が国王にならなければ呪いも発動しないと思ってるみたいだから、賢いですよ」
しかも・・・・と苦笑いしながら「彼女等、俺より健康体なんですよ」と、彼女らの家は食べるものに困っていない事を匂わす。
「王家だって食べ物には困ってはいないでしょ?」
「まぁ、平民やそこら辺の貴族よりは、毛が生えた程度には・・・・」
「なのにあなたは何故そんなに痩せているの?」
「・・・・何が仕込まれているかわからないものは・・・・」
あぁ・・・だから、とファラトゥールは納得した。
彼女が見たアシアスのステータス。
状態異常の表示に遅行性毒症状、と表示されていたのだから。
取り敢えず、跡継ぎができるまでは生かしておこうという事なのだろう。
恐らく彼の妹が虚弱なのも毒の所為なのかもしれない。
ファラトゥールはアシアスの隣に腰かけると、彼の手を取った。
「あなた、毒を盛られているわね」
「っ!・・・・これでも気を付けていたのですが・・・何に仕込まれているのか、わからないのです・・・・」
その言葉でわかるように、彼は常にそう言う事に悩まされていたのだ。王族であれば、どこの国でも少なからずそう言う事は起きるが。
先程のお菓子やホットサンドを食べている時の表情を見て、貧しさだけから泣いていたわけではないのだと覚る。
想像でしかないが、何も考えず食事ができるという安堵感や、己の置かれている現実に泣いていたのかもしれない。本当の所は、アシアスにしかわからないが。
そしてハッとしたように「ルイナにもなのか・・・・だから・・・」と、悔しそうに唇を噛んだ。
「予想はしていたんだ・・・俺に盛られていたんだから。ルイナにだって盛られる可能性はあると。だから、本当に信頼のおける人間しか置かなかったのに・・・」
「妹さんの今現在の症状は?」
「四日前に熱を出して寝込んでいたのですが、今日は元気な様子でした」
「そう、取り敢えずあなたの治療が終わったら行ってみましょうか」
「え?治療?」
「得意なのは攻撃魔法なんだけど、治癒魔法も同じくらい得意なの」
そう言いながら、握ったままのアシアスの手に少しだけ力を込めた。
すると、一瞬だけ金色の光が身体を包み込む。
「え?」
アシアスは今目が覚めたような、そんな表情でファラトゥールを見た。
「どう?解毒ついでに免疫力を高めて健康体にしちゃったんだけど」
きっと免疫と言われても、この世界の人間にはわからないだろう。それでも、自分の身体に起きた変化は、自分自身がよくわかる。
アシアスはソファーから立ち上がると、確かめる様にウロウロと歩き始め、しまいには体操をし始めた。
そしてひとしきり動いた後、己の両手を見つめ佇む。
その様子を、お茶を飲みながら黙って見ていたファラトゥール。
アシアスは興奮したように頬を染め、目に涙を浮かべながら彼女の前に跪いた。
「ファーラ様、ありがとうございます!常にあった倦怠感や身体の痛みがまったくなくなり、反対にとても身体が軽いのです」
健康体にしても体は瘦せ細ったままだ。
だが、先程までのくたびれ感は全くない。男ぶりに磨きがかかり、その笑顔がキラキラするほどに眩しい。
「それはよかった。私の貴重な協力者だからね。いざという時に倒れられても困る。さて、妹さんの所にも行ってみようか」
立ち上がろうするファラトゥールに、アシアスはすかさずエスコートするように手を差し出した。
「ありがとう」とにっこり笑うファラトゥールに、アシアスは頬を染め見惚れるのだった。
アシアスには当然ファラトゥールの二倍の量を出したが、気持ちのいい食べっぷりに思わず微笑ましく見てしまっていた。
お茶を飲んで一息つくと、今現在の国内と王宮内の事情をアシアスから説明を受けた。
国内の貧困はほぼ聞いていた通りだったが、王宮内の腐敗が思っていた以上だった事に、アシアスが一人足掻いたところでどうにもならないなと納得してしまう。
国王の周りにはイエスマンしかいないのだが、それぞれが腹の中が真っ黒なようだ。
協力しているように見せて、互いどう出し抜くかで陰では足の引っ張り合いが日常茶飯事。
「王太子であるあなたに、娘とか押し付けてこないの?婚約者はいないのよね?」
「押し付けられますよ。薬を盛られたり、寝所で待ち伏せされたり。俺を国王にして陰で好き放題したいのが見え見えで、とてもじゃないけどそんな気にはなれない。彼等が国王にならなければ呪いも発動しないと思ってるみたいだから、賢いですよ」
しかも・・・・と苦笑いしながら「彼女等、俺より健康体なんですよ」と、彼女らの家は食べるものに困っていない事を匂わす。
「王家だって食べ物には困ってはいないでしょ?」
「まぁ、平民やそこら辺の貴族よりは、毛が生えた程度には・・・・」
「なのにあなたは何故そんなに痩せているの?」
「・・・・何が仕込まれているかわからないものは・・・・」
あぁ・・・だから、とファラトゥールは納得した。
彼女が見たアシアスのステータス。
状態異常の表示に遅行性毒症状、と表示されていたのだから。
取り敢えず、跡継ぎができるまでは生かしておこうという事なのだろう。
恐らく彼の妹が虚弱なのも毒の所為なのかもしれない。
ファラトゥールはアシアスの隣に腰かけると、彼の手を取った。
「あなた、毒を盛られているわね」
「っ!・・・・これでも気を付けていたのですが・・・何に仕込まれているのか、わからないのです・・・・」
その言葉でわかるように、彼は常にそう言う事に悩まされていたのだ。王族であれば、どこの国でも少なからずそう言う事は起きるが。
先程のお菓子やホットサンドを食べている時の表情を見て、貧しさだけから泣いていたわけではないのだと覚る。
想像でしかないが、何も考えず食事ができるという安堵感や、己の置かれている現実に泣いていたのかもしれない。本当の所は、アシアスにしかわからないが。
そしてハッとしたように「ルイナにもなのか・・・・だから・・・」と、悔しそうに唇を噛んだ。
「予想はしていたんだ・・・俺に盛られていたんだから。ルイナにだって盛られる可能性はあると。だから、本当に信頼のおける人間しか置かなかったのに・・・」
「妹さんの今現在の症状は?」
「四日前に熱を出して寝込んでいたのですが、今日は元気な様子でした」
「そう、取り敢えずあなたの治療が終わったら行ってみましょうか」
「え?治療?」
「得意なのは攻撃魔法なんだけど、治癒魔法も同じくらい得意なの」
そう言いながら、握ったままのアシアスの手に少しだけ力を込めた。
すると、一瞬だけ金色の光が身体を包み込む。
「え?」
アシアスは今目が覚めたような、そんな表情でファラトゥールを見た。
「どう?解毒ついでに免疫力を高めて健康体にしちゃったんだけど」
きっと免疫と言われても、この世界の人間にはわからないだろう。それでも、自分の身体に起きた変化は、自分自身がよくわかる。
アシアスはソファーから立ち上がると、確かめる様にウロウロと歩き始め、しまいには体操をし始めた。
そしてひとしきり動いた後、己の両手を見つめ佇む。
その様子を、お茶を飲みながら黙って見ていたファラトゥール。
アシアスは興奮したように頬を染め、目に涙を浮かべながら彼女の前に跪いた。
「ファーラ様、ありがとうございます!常にあった倦怠感や身体の痛みがまったくなくなり、反対にとても身体が軽いのです」
健康体にしても体は瘦せ細ったままだ。
だが、先程までのくたびれ感は全くない。男ぶりに磨きがかかり、その笑顔がキラキラするほどに眩しい。
「それはよかった。私の貴重な協力者だからね。いざという時に倒れられても困る。さて、妹さんの所にも行ってみようか」
立ち上がろうするファラトゥールに、アシアスはすかさずエスコートするように手を差し出した。
「ありがとう」とにっこり笑うファラトゥールに、アシアスは頬を染め見惚れるのだった。
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