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転生元悪役令嬢と姪っ子
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目を覚ますと公爵家のご令嬢エリザベート・シュタインになっていた。
死因、云々は省略しよう。結構、ありふれている気がするから。
転生したことに気付き、この世界が前世での乙女ゲーの世界と気付き、しかも、王子の婚約者となって、どうやっても断罪されるエリザベート公爵令嬢に転生したことに気付き、絶望した。
しかし、現在、3歳。第一王子は5歳。
婚約は、8歳の時だった気がするので、まだ時間がある。
私は、家族には内緒で必死に、家事や掃除が出来るように努力した。
一応、お父様やお母さまの望む貴族としての振る舞いもちゃんと勉強した。
お父様もお母さまも人の話を聞かない。
だから、家事や掃除のことは秘密にしている。
そして、メイド長や料理長にこっそり『マスター』と認められ、執事にも『領地経営出来マスター』なんて言う、親父ギャクな称号貰って私は、油断していたのだ。
8歳の誕生日。
真夏の太陽がギンギンに地上を焼く季節。
いつもだったら、避暑地に行くのに王都にとどまっていた我が家の住人に疑問を覚えた時だった。
「エリザ、第一王子と婚約することになったよ。よかったね。」
「まぁ、本当、それは、素晴らしいことね!」
「わた」
「早速、ドレスを新調しましょう。」
「そうだな。明後日に初顔合わせになるから、先日、作成したドレスを今回は使おう。」
「おとぅさ」
「そうね。楽しみだわ。早速、準備しなくちゃ。エリザ、今日は、お風呂でマッサージをちゃんと受けるのよ。」
「そう言えば、最近流行りの香水があったな。エリザ、それをちゃんとつけて、会いに行くんだよ。」
「だから、わた」
「そうね、バラがいいかしら。エリザ、わたくし、貴方の為に一肌脱ぐわ!」
「・・・。」
「何黙っているの?まぁ、いいわ。ミリー、エリザを磨き上げなさい。」
「はい。奥様。」
メイドのミリーが可哀想にと目で言っているけど、逆らうことはできなかったようだ。
多分、その目のこともお父様とお母さまは気付いていないんだろうけど。
お父様とお母さまに退出の許可をもらい、早々に部屋に戻った。使用人たちの内の数人が慰めに来てくれた。
「第一王子は、正義感だけが立派で実のないことばかり言う男って噂ですが、お嬢様に無体をする方ではないかと思いますよ?」
庭師のトムが言う。
「そうですよ。俺様がっとしょっちゅう威張っているって聞きはしますけど、女性には優しいと聞いていますよ。」
私付きのメイドのハンナが言う。
「・・・嫌なら、何でもお手伝いいたします。お嬢様。」
と執事のセバスが珍しく怒っている。
「なんにせよ。まずは飯だ。ほい、お嬢様の好物だぜ。」
と料理長のガンドルフが言い、豆腐クッキーを渡してきた。
私はグスグスと泣きながら、クッキーをかじる。
「ありがとうございます。皆さま。わたくし、皆さまのおかげで、8歳でありながら、独り立ちできる程、能力アップできたと思います。」
と私が言うと皆が涙ながらに、頷いてくれる。
「料理長のおかげで、多少賃金も稼げるようになりましたし、セバスのおかげで、次の住まいも何とかなるようです。」
そう言うと、料理長が号泣し、セバスが、私の肩に軽く触れる。
「お嬢様は、貴族であってほしいと思うのですが、お嬢様が平民の暮らしをお望みなので、叶えますとも。」
セバスのその声は鼻声だった。
「ハンナのおかげで、どこにお嫁に行ってもいいくらい、家事も掃除もできるし。」
「そうです。お嬢様はナンバーワンでございます。」
ハンナも涙をこらえているけど、決壊してしまっている。
「ミリーのおかげで女子力も鍛えたと思うわ。」
「まだ、序の口でございますよ?」
ミリーだけは、同情の視線を向けているだけで、泣いてはいない。しかし、彼女の距離感はとても心地よかった。
「いままで、ありがとうございました。」
皆が一斉に泣く。
新しい家のドアカギを貰い、多少のお金と着替えを持って、あらかじめ書いていた手紙を机の上に置き、セバスの誘導の下、私は、家出した。
***
エリザベートの家出の手紙
親愛なる、お父様、お母さま。
先立つ不孝をどうかお許しください。
先日、お父様もお母さまも私の意見をまるで聞かず、意に添わぬ婚約を強制されてしまいました。
何度も口を挟もうとしましたが、最後まで、お話を聞いていただけず、私は絶望いたしました。
小さい頃から、一生懸命あなた方の為に努力してきたつもりです。
しかし、貴方たちにとって、わたくしは、駒でしか無いようですね。
もう、貴方たちに臨むことはございません。
遥か遠い空からお父様とお母さまを見守り致します。
エリザベート・シュタイン
***
あれから、20年。
私が家出した後、公爵家は多少、ゴタゴタがあったものの、すぐに持ち直した。しかし、お父様とお母さまの間にはあの後子供が生まれなかったらしい。だから、お父様の弟の子を養女に迎えることになったと最近、噂で聞いた。
ちなみに、私と婚約予定だった第一王子は、マルクス侯爵家のご令嬢と婚約をなされたのだけれど、学園に入学した際に一目ぼれした男爵令嬢と恋仲になり、婚約破棄を叩きつけ、しかも、あることないことマルクス令嬢のせいに、公衆の面前でしたらしい。
結果、王太子予定だったのに、廃嫡。
だいぶ、年の離れた第二王子が、現在王太子となっている。
現在、王太子殿下は10歳になられる。
当の私は、王都で有名なパン屋をしている。菓子パン職人の夫と3人の子供に囲まれ、とっても幸せを満喫していた。
そんなある日、だいぶ年を取ったセバスと共に金髪碧眼の少女が現れたのだ。
聞けば、元うちに養女に入った姪っ子ちゃん兼義理の妹だった。
泣きじゃくる姪っ子のランローズちゃんを宥めながら、セバスから事情を聴いた。
どうやら、またしても、両親は人の話を聞かず、姪っ子ちゃんが嫌がっているのに、王太子殿下と婚約させたらしい。
二人を匿い、まずは自分の家族を紹介した。
姪っ子ちゃんは自分が10歳であるのに既に叔母さんになると知って、驚いていた。それはそうだと思う。だって、上の子は既に18歳。姪っ子ちゃんより年上なのだから。姪っ子ちゃんの実の父である叔父は、お父様よりも10歳ほど年下であるので、こうなるのはまぁ、ある程度予想の範囲ではあるのだが・・・。
死因、云々は省略しよう。結構、ありふれている気がするから。
転生したことに気付き、この世界が前世での乙女ゲーの世界と気付き、しかも、王子の婚約者となって、どうやっても断罪されるエリザベート公爵令嬢に転生したことに気付き、絶望した。
しかし、現在、3歳。第一王子は5歳。
婚約は、8歳の時だった気がするので、まだ時間がある。
私は、家族には内緒で必死に、家事や掃除が出来るように努力した。
一応、お父様やお母さまの望む貴族としての振る舞いもちゃんと勉強した。
お父様もお母さまも人の話を聞かない。
だから、家事や掃除のことは秘密にしている。
そして、メイド長や料理長にこっそり『マスター』と認められ、執事にも『領地経営出来マスター』なんて言う、親父ギャクな称号貰って私は、油断していたのだ。
8歳の誕生日。
真夏の太陽がギンギンに地上を焼く季節。
いつもだったら、避暑地に行くのに王都にとどまっていた我が家の住人に疑問を覚えた時だった。
「エリザ、第一王子と婚約することになったよ。よかったね。」
「まぁ、本当、それは、素晴らしいことね!」
「わた」
「早速、ドレスを新調しましょう。」
「そうだな。明後日に初顔合わせになるから、先日、作成したドレスを今回は使おう。」
「おとぅさ」
「そうね。楽しみだわ。早速、準備しなくちゃ。エリザ、今日は、お風呂でマッサージをちゃんと受けるのよ。」
「そう言えば、最近流行りの香水があったな。エリザ、それをちゃんとつけて、会いに行くんだよ。」
「だから、わた」
「そうね、バラがいいかしら。エリザ、わたくし、貴方の為に一肌脱ぐわ!」
「・・・。」
「何黙っているの?まぁ、いいわ。ミリー、エリザを磨き上げなさい。」
「はい。奥様。」
メイドのミリーが可哀想にと目で言っているけど、逆らうことはできなかったようだ。
多分、その目のこともお父様とお母さまは気付いていないんだろうけど。
お父様とお母さまに退出の許可をもらい、早々に部屋に戻った。使用人たちの内の数人が慰めに来てくれた。
「第一王子は、正義感だけが立派で実のないことばかり言う男って噂ですが、お嬢様に無体をする方ではないかと思いますよ?」
庭師のトムが言う。
「そうですよ。俺様がっとしょっちゅう威張っているって聞きはしますけど、女性には優しいと聞いていますよ。」
私付きのメイドのハンナが言う。
「・・・嫌なら、何でもお手伝いいたします。お嬢様。」
と執事のセバスが珍しく怒っている。
「なんにせよ。まずは飯だ。ほい、お嬢様の好物だぜ。」
と料理長のガンドルフが言い、豆腐クッキーを渡してきた。
私はグスグスと泣きながら、クッキーをかじる。
「ありがとうございます。皆さま。わたくし、皆さまのおかげで、8歳でありながら、独り立ちできる程、能力アップできたと思います。」
と私が言うと皆が涙ながらに、頷いてくれる。
「料理長のおかげで、多少賃金も稼げるようになりましたし、セバスのおかげで、次の住まいも何とかなるようです。」
そう言うと、料理長が号泣し、セバスが、私の肩に軽く触れる。
「お嬢様は、貴族であってほしいと思うのですが、お嬢様が平民の暮らしをお望みなので、叶えますとも。」
セバスのその声は鼻声だった。
「ハンナのおかげで、どこにお嫁に行ってもいいくらい、家事も掃除もできるし。」
「そうです。お嬢様はナンバーワンでございます。」
ハンナも涙をこらえているけど、決壊してしまっている。
「ミリーのおかげで女子力も鍛えたと思うわ。」
「まだ、序の口でございますよ?」
ミリーだけは、同情の視線を向けているだけで、泣いてはいない。しかし、彼女の距離感はとても心地よかった。
「いままで、ありがとうございました。」
皆が一斉に泣く。
新しい家のドアカギを貰い、多少のお金と着替えを持って、あらかじめ書いていた手紙を机の上に置き、セバスの誘導の下、私は、家出した。
***
エリザベートの家出の手紙
親愛なる、お父様、お母さま。
先立つ不孝をどうかお許しください。
先日、お父様もお母さまも私の意見をまるで聞かず、意に添わぬ婚約を強制されてしまいました。
何度も口を挟もうとしましたが、最後まで、お話を聞いていただけず、私は絶望いたしました。
小さい頃から、一生懸命あなた方の為に努力してきたつもりです。
しかし、貴方たちにとって、わたくしは、駒でしか無いようですね。
もう、貴方たちに臨むことはございません。
遥か遠い空からお父様とお母さまを見守り致します。
エリザベート・シュタイン
***
あれから、20年。
私が家出した後、公爵家は多少、ゴタゴタがあったものの、すぐに持ち直した。しかし、お父様とお母さまの間にはあの後子供が生まれなかったらしい。だから、お父様の弟の子を養女に迎えることになったと最近、噂で聞いた。
ちなみに、私と婚約予定だった第一王子は、マルクス侯爵家のご令嬢と婚約をなされたのだけれど、学園に入学した際に一目ぼれした男爵令嬢と恋仲になり、婚約破棄を叩きつけ、しかも、あることないことマルクス令嬢のせいに、公衆の面前でしたらしい。
結果、王太子予定だったのに、廃嫡。
だいぶ、年の離れた第二王子が、現在王太子となっている。
現在、王太子殿下は10歳になられる。
当の私は、王都で有名なパン屋をしている。菓子パン職人の夫と3人の子供に囲まれ、とっても幸せを満喫していた。
そんなある日、だいぶ年を取ったセバスと共に金髪碧眼の少女が現れたのだ。
聞けば、元うちに養女に入った姪っ子ちゃん兼義理の妹だった。
泣きじゃくる姪っ子のランローズちゃんを宥めながら、セバスから事情を聴いた。
どうやら、またしても、両親は人の話を聞かず、姪っ子ちゃんが嫌がっているのに、王太子殿下と婚約させたらしい。
二人を匿い、まずは自分の家族を紹介した。
姪っ子ちゃんは自分が10歳であるのに既に叔母さんになると知って、驚いていた。それはそうだと思う。だって、上の子は既に18歳。姪っ子ちゃんより年上なのだから。姪っ子ちゃんの実の父である叔父は、お父様よりも10歳ほど年下であるので、こうなるのはまぁ、ある程度予想の範囲ではあるのだが・・・。
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