ゆめも

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殺人事件です。ヒロイン逃げてと思っていた時期もありました

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とある転生者の憂鬱。



田中頼子29歳独身OL。行き遅れである。バブルは弾ける直前で、結婚しないと女じゃないと両親からも毎日言われています。そんなバカなと思うのですが、毎日、上司からもお局だとか行き遅れだとか言われ・・・。

別に新人を虐めるなんて典型的なことはしていません。むしろ、新人は結構、私を頼ってくれて、色々ちゃんと教えてます。新人がミスしたら私がちゃんとフォローします。

最近のテレビのCMで「24時間はたらけますか?」とか言ってたけど、私、働けてます。

毎日毎日、ちゃんと働いてます。

そんなある日、新人たちが一斉にとても大きなミスをしました。新人たちにそんな大きな仕事を任せた部長の責任と思うのですが、部長は私が管理しなかったせいだと言って、私がミスをフォローすることになりました。

初めの頃は新人を10人程度世話する感じだったのに、昨年は28人の新人のフォローと自分の担当の仕事を両立させていました。でも、今年は56人の新人教育と開発係長の仕事を同時にやることになり・・・。



気付いたら、見知らぬ部屋に居ました。

全てのミスのフォローが終わったと同時に私は血反吐を吐いて死んだようです。

ちゃんと仕事を終わらせた、私は、凄いです。偉いです。誰か褒めてください・・・。



誰も、もう、居ないのですが・・・。



しょんぼりしているとそこには中年のハードボイルドな西洋風の男性が半裸で現れました。昔見たポセイドンの姿そのものです。私が思う神様の姿に思わず、南無阿弥陀仏と言ったのは、多分疲れていたと思います。

彼は、神様の手伝いをしている使徒と呼ばれる方でした。

彼の姿は、私が想像する神様の姿に見えるらしく、彼自身の感情は抜きらしいです。

「それは、また、大変ですね。」

と同情の意見を言うと

「ありがとうございます。」

と涙ながらに言い、その後何時間?もの長い愚痴が彼の口からいっぱい出てきました。

その度に、彼の言葉を聞き、彼に同意したり、慰めたりとしていました。

一通り愚痴を聞き終わったのですが、あたりの風景は変わりません。ちなみにここは、小さなプラハブ小屋みたいなところです。椅子と机と小さなベッド位の部屋です。窓があり、外は草原が広がっています。日の光は強くなく、恐らく、朝だと思えます。

体感的に5時間くらい愚痴を聞いた気がしたのですが、然程時間が経っていなかったようです。

すっかりすっきりした使徒様は、爽やかな顔になっています。でも、自分がやって事に気付いて

「あぁ、ごめんなさい。つい、こんなに長く愚痴を言ってしまいました。」

と謝ってきました。私は彼は大変だったのだと慰めました。だから、構わないと。すると、またまた、長い愚痴が・・・。

しかし、外の風景は変わりませんでした。

流石に以上に気付き、使徒様に聞いたら、この世界には時間が無いようなのです。ただ、この世界が止まっていても他の世界は進んでいるらしく、現実世界では既に15年ほど経っていました。

通常は、死んだら死者巡回路みたいなところに案内されるのに、ここで使徒様が留めてしまったため、巡回路の乗車券的なものの有効期限が過ぎてしまったようでした。

使徒様は私に謝ってくれました。私は謝罪を受け取りましたが、これからどうしようと言うことになりました。

そしたら、使徒様は上司に勇気を出して、言いに行くと言ってくださり、私はしばらくここで待つことになりました。その間、私が死んだ後の日本がどうなっているか見ることが出来ました。

私は過労死しましたが、会社は私の労災を出し渋ったようです。かつての新人たちは私の為に労働組合を立ち上げ、頑張ったようです。最終的に労災が認められ、遺族である両親に多少お金が出されたようです。教え子たちには感謝しかありません。当時にしては異例のことだったようで、私はちょっと感動しました。

正直、途中で死んだ私は、慰謝料なんかの考えさえ無かったので、少しでもお金を残せて幸せです。

時を過ごすごとにいろんな文明や技術が発展していきました。

一番面白かったのは、ゲーム。小さい頃ゲームをやるのはバカだけとか言われていたので、興味はあったのに、出来なかった遊び。しかし、私が死んで、ちょっとしたら、子供も大人もゲームするのが当然な感じに徐々になっていっていました。5年経った頃にはテレビゲームは一家に一台は当たり前だし、オタクと言われてはいたけど、大学生がゲームするのは当然な感じになりました。

使徒様が帰ってこず、更にじっと見ていたら、20年経った頃には30になったどう考えても大人さえもゲームで遊ぶのは当然な感じになっています。スマフォなるもので暇さえあれば、ゲームしてました。

もしも生きていれば、私は59歳。時代は変わったんだなぁとため息が出ます。

最近、よく見ているのは乙女ゲームです。一人の少女が複数の男性に言い寄られる感じのお話。正直、ふしだらだし、女性として男性にあんなに接触するのは猥らだと思うのですが、同時にちょっとあこがれてしまいます。自分には生まれ変わったとしても不可能ですし。

それに、相手のことを顧みず、自分の意見がさも当然のようにいって、相手を洗脳するようなあの言葉の数々、正直、素晴らしいと思います。真似・・・は無理ですね。やっぱり。だって、彼らの親兄弟も意味も無く、そう言ったことをしているわけではないと思うのです。それなりに訳はあると思うのです。愛が無くては生きられないと彼らは言うのですが、愛が無くても食べ物が無かったら生きていけません。一番は、食。次に住。そして、衣。最後に愛です。異性との恋愛に興じたせいで食がままらな無くなるなんて、本末転倒だと思うのです。その点については真っ向から否定します。

でも、見る分には面白く思えました。のんびりと使徒様を待つ間、いろんなゲームを覗いていました。

しばらくして、どのくらいたったのだかわからないくらいなった頃、使徒様が帰ってきました。神様にやっと許しを貰ったらしいのです。そして、お詫びとして、私の望む世界に転生させてくれるとのこと。多少力もくれるそうです。でも、一つお願いしたいことがあるらしいと言われました。転生可能な世界のいくつかで、ミスをやらかした新人使徒が無理くり送り込んだ者たちが居るらしいのです。それらの人たちが不幸をまき散らし、その世界の人間を壊す可能性があるんだとか。その中でも一番酷い世界はとある乙女ゲームに似た世界なんだそうで、魔法有りのファンタジーな世界だそう。

凄く遠回しに言われたけど、使徒様はこの世界に私を送りこみたい様子でした。一番やらかしまくった新人使徒は、神様から怒られるのが嫌で、その世界に逃げていったらしく、正直、救いようがありません。

神様の考えでは、その使徒はクビらしく、次の生は虫になるんだそうです。今世では罪を多少償ってもらいたいけど、使徒の力を不正に持って行ったらしく、神様からの直接の罰は与えられないんだそうで、私に助けを求めたと言うことらしい。

正直、詫びではない気がするのですが、かなり長く愚痴を聞いたかの使徒様にはなんだか愛着と言うか親近感と言うか覚えてしまっているし、多少手伝ってあげたいなぁと思ってしまってもいる。

だから、私は神様のお願いを聞くことにした。

前からもしも願いが叶うならと思っていた願いはとてもある意味普通な願い。

「死ぬまで健康でありたい。老化は構わない。でも、心も体も健康でありたい。そして、家族に囲まれて、眠る様に老衰したい。」

何でか、辺りがシンとなった。使徒様がとてもしょんぼりしている。

神様と名乗った声の主もなんだか、ショックを受けている感じがヒシヒシと伝わってくる。

「え?あ、ごめんなさい。悪いこと言っちゃったかしら。無理ならいいのよ。健康であり続けるなんて、ちょっと難しいものね。」

と私が言うと

「いや、違うんだ。僕たちがちょっと汚く感じちゃっただけだよ。」

「え?そんなことはありませんよ?あなたたちは、必死にお仕事なさっているじゃないですか。あなたの愚痴の中にもあなたの思いやりを感じましたもの。自分自身は無理を通しているのに他人には選択肢を与えようと必死になって仕事をしている。辛いでしょう?報われないことも多いのにそれでも続けて、頑張っている。あなたは素晴らしい人です。汚くありませんよ?」

何故だかそう言った途端にくぐもった声があちこちから複数聞こえてきました。

目の前の使徒様以外にも私の言葉を聞いていた方々がいらっしゃったようです。

「ちょ、ちょっと、恥ずかしいです。もう、忘れてください。」

と思わず照れて言ってしまい、半透明になった手で自分の顔をつい、隠してしまいました。



「今度の生で一気に加護を与えるのは逆にあなたに負担になる。でも、私たちは貴女からの言葉を忘れたくない。」

何処からか声が聞こえる。右の方な気がする。

「貴女の優しさに、それでも少しでも答えたい。」

今度は上の方な気がする。

「わ、私はやさしくなんて」

「貴女は私たちにとっての光。」

「ちょ、」

「今度の生では、優しい人が生まれてすぐはあまり周りにいないけど、それでも、貴方は幸せになって欲しい。」

「いけません。無理に捻じ曲げたものはあなた方の望むものにはなりません、多分。何をしようとしているかはわかりませんが、あなた方が、私の為に道理が引っ込むようなことはしてはいけないと思います。」

なんとなく、察してそう言った。

「あぁ、でも、出来る限り。」

「そう、出来る限り。お願い。」

あちこちから嘆願されるような声が聞こえた。

「もう、何が何だかわかりません。でも、言えないのなら、仕方がありません。」

「ごめん。言えないけど、言いたい。」

「それが仕事と言うものです。無理を通して、仕事をおろそかにしたら、後進の為にもなりませんよ?」

「うん。」

「そうだね。」

「ごめん。」

「なら、とてもとても少ないけど、小さな小さな僕たちの獣をプレゼントするくらいならいい?」

「まぁ、皆に迷惑にならないのなら。」

「わかった。」

「わかった。」

「よかった。」

「ありがとう。」

「ありがとう。」

「ありがとう。」

「頼子。ありがとう。」

それが、田中頼子としての最後の瞬間だった。



生まれ変わった先は中世ヨーロッパ風の世界。乙女ゲームと言っていた通り、確かにゲーム画面越しに見た世界によく似ていた。かなり時間を要したけど、元ゲームについては、なんとなく辺りを付けることが出来た。

ただ、同じ名前が複数あったので、3つの元ゲームが候補のままで確定していない。ただ、3つでは共通事項があった。私が8歳の時に起こる流行病。それで、国土の半分が敵国にわたること。それから属国扱いとなり、隣国と不利益な状態から人質の様に優秀な国民が隣国の学園に行くことから3つのストーリは始まる。攻略キャラは同じなのに、ヒロインの名前だけが違うこの3つの元ゲームと思われるもの。

まぁ、理由は主人公が選択できるせいである。選んだ主人公によりアプリ名が違うが、正直、製作会社も脚本家や攻略キャラとかは一緒だし、連携すれば、同じアルバムでスチルを管理できる。初期ステータスが違うし、選択肢や伸ばす能力の得手不得手が変わる。まぁ、主人公によっても獲得スチルが違うので、やりこんでいる人たちは全キャラを全主人公でやろうとするほどだった。正直、見ている私は面白かったけど、やっている人たちは根性だなぁと思ったものだ。

選択できる主人公は

『セシリア・エンド』公爵家の次女で、優秀な姉と比べられ、悩んでいる。しかし、父も母も自分に優しく、元から愛される才能がある。基礎値は低いし、成長率は普通。ただ、好感度が上がりやすい。

『アリア・ミルフィス』元は平民であるが、平民にしては魔力が高く、頭が良いので、ミルフィス男爵に拾われた少女。基礎値が高く、成長率は普通。

『カトレア・エルネス』子爵家の庶子で、非常に容姿に優れている。初期は男爵家の子女として育てられており、天真爛漫を貫ける少女。基礎値が非常に乏しいが、成長率はぴか一。好感度は上がりにくいが、上がったら、落ちにくい。



まぁ、バージョンアップやら続編やらが出るたびに主人公や攻略キャラは追加されていたので、私が知っているのはここまでと言ったところ。大筋はよくあるライバルが悪戯する。復讐みたいに断罪する。エンディングを迎えると言った感じ。

上から見ていて、アプリに課金しようか迷う女性たちの震える指先は見ていて何でかハラハラした覚えがある。



選択キャラによって、多少物語は変わるものの大筋は変わらない。

大抵、第二王子のレオナルド殿下の婚約者レティシア・エンド公爵令嬢が断罪され、国外追放されるのだ。3人もいるヒロインたちにまんべんなく嫌がらせする彼女はとても働き者だと思う。

さて、予想されている方もいると思う。



私は、レティシアに生まれ変わってしまった。



金髪碧眼。なんでか丸まるこのキャ〇ディーキャ〇ディーのイ〇イザみたいなクリンクリンの髪。やや吊り目だが、知的に見える感じではある。まだ子供なのに。

鏡を見て、誰にもわからない様に周りを確認し、にっこり笑ってみたら、3歳であるにもかかわらず、縦巻きロールの幼児が笑うのです。とてもとても可愛い。

ナルシストではない筈なのに、嬉しくてゴロンゴロンしたくなります。

でも、既に成人を過ぎた女性の記憶があるのです、そんなことをするハズが…

家で飼っているゴールデンレトリバーのチャッピーが突っ込んできました。毛が長いタイプのにゃんこのタマも倒れた私に乗ってきます。自然とゴロンゴロンしてしまいます。

「きゃー♪やめてー♪」

そう笑いながら、チャッピーとタマを撫でまくります。二匹は我先にと頭やら体やら押し付けてきます。おかげで毛だらけです。でも、超幸せです。

でも、楽しい時間はすぐに終わります。使用人の筈なのに私を叩いたり、蹴ったりするメイドです。たまに部屋の宝飾品を盗んでいる人です。正直、捕まればいいのにと思うのだけど、両親や兄に言っても全く聞いてくれません。両親はプラチナブロンドの双子の妹エリシアには優しいのですが、私には一度もニコリともしたことがありません。転生したため、赤ちゃんの頃から記憶があり、だからこそ、両親は私を疎ましく思っているのを理解していました。

正直、全く理解できません。私は、二卵性双生児だから、双子であるけど妹とは似ていません。私の顔は先代のひいおばあ様に似ているんだそうですが、当のひいおばあ様はとても優秀で厳しい人で、先々代の陛下に女公爵兼宰相として仕えていたんだそうだ。

70年前の人なので、残念ながら既にお亡くなりになっている。

お仕事に熱中していたこともあり、晩婚で、生まれた子供は40過ぎての子供だったらしく、猫かわいがり。結果、クズい領主になっちゃったらしい。息子が領主になるのが不安だったらしく90過ぎ迄彼女自身が領主をし、息子が領主になった期間はたったの2年だったと言う。でも、たった2年で公爵家をかなり貶めたと聞く。

まぁ、いい。

今、うちは筆頭公爵に返り咲いているのだから。

でも、あんまりまともに仕事しているようには見えないんだよね・・・。乙女ゲームではライバルキャラのことを深く記述していたかは知らないしなぁ・・・。自分でゲームをやっていたわけじゃなくて、やっている人を見ていただけだしなぁ・・・。

でも、そこはかとなく香る不正の臭い。

前世で下手に係長に成り上がった訳じゃない。

・・・死んだんだから、下手か?まぁいいか。深く考えない。

ちょっと、手足がまともに動くようになったら、調べまくろう。

どうせ、使用人たちは私の部屋を掃除しないし、服を着せにも来ないんだ。全部、現在、自分でやっている。水を井戸から持ってくるなんてことは出来ないので、服を着ることと簡単なベッドメイクだけではあるが、散らかさないので、使用人が盗みを働いて散らかった時以外は基本的に手間じゃない。

・・・一週間に一回は散らかるんだけどね。



御飯・・・私が執着するかなり大きな位置を占める欲求である。

この屋敷で離乳食が始まった際、世話をしてくれていたまともな乳母は辞めさせられた。

その後、おまけみたいな感じで残飯みたいなパンを牛乳に付けた冷たい何かを出された。

ちなみに妹は、温かいスープやらフカフカのパンとか柔らかい鶏肉とかだ。

しかも、一緒の食卓に着くことは許されなかった。私の顔を見たくないんだそうだ。

正直、自分が腹を痛めて産んだ子なのに、よくそんなことが出来るなぁと逆に感心してしまう。

先も言ったけど、使用人はいらいらした時に気まぐれに私を殴る。蹴る。

おかげでかなり丈夫。あちこちに痣あるけどね。前世の記憶があったから、なんとか正気を保っているけど、もしも私じゃなかったら、化け物みたいにヒステリックな女の子になったと思う。それこそ、乙女ゲームの悪役令嬢の様に。



4歳になった。

ギリギリで生き延びていると言ったところである。最近は庭師のトムがちょいちょい助けてくれるし、御飯も分けてくれる。飼料と言われている米を食べていたトムじいさん。米調理の記憶のおかげで出会うことが出来た。今ではトムじいさんも一緒におにぎりを食べている。海苔は無いけどそこは妥協。



庭の隅にこっそり作った野菜畑。夏場は必ずトマトとピーマンが毎日食べれる。お腹いっぱい。おにぎりと塩と野菜で私はだいぶ動けるようになった。豆系の野菜も食べてるから前より馬力もある。結果、動けるようになった。

動けるようになって気付いたことは、前世よりこの体は能力が高く、運動神経はもちろん、学力的な意味合いでの記憶力もかなり良い。

使用人が居たら入れない図書室に入るためには、泥棒の様に壁を昇る必要がある。

自分の家なのにね。

勉強道具は与えられていないので、読んだ本を速読でまず読む。

図書室から脱出後、地面に読んだことを書いて、練習を繰り返した。礼儀作法については、トムじいさんの幼馴染の元メイド長メイリアさんに習っている。メイリアさんは既にこの家のメイドではない。現在はトムじいさんの幼馴染なだけ。メイリアさんはいつもは冒険者ギルドで下働きをしているそうな。

じゃあ、何で屋敷にたまにいるかって言うとトムじいさんの言うにはお節介をしに見に来ているだけなんだそうだ。ちなみにトムじいさんのご飯は7日に2回ぐらいメイリアさんのお弁当だ。

結婚すればいいのにね。



動けて、母国語も読めるようになるのに1か月で済んだ。本当に優秀な体である。

そして、ついに父の夜中に書斎に忍び込んだ。

パッと見て、裏帳簿があるのが分かった。計算ミスが故意なのか天然なのかはわからないけど、4割計算ミスなので、わざとじゃない可能性もある。他の国の言語で書かれている書類多数発見。流石に読めなかったので、今度は図書室で他の言語を勉強してから来ることにした。



2か月後、他国の言語も覚えた。3個。パターンを覚えたら速かった。

近隣諸国以外の言葉も現在学習中である。

さておき、夜中また忍び込んだ。

明らかにおかしい書類が見つかった。母国語に翻訳したものを書き写す必要があるなと実感。速読して覚えたものをメイリアさん経由で手に入れた紙に移す。

毎日移して移して、いつも泥棒するメイドは後、3日後に来るのでそれまでに書き終えなくてはいけない。徹夜して頑張って、メイリアさんに書類を渡した。



5歳になった。

私にはメイリアさんが裏で工作した専属執事カイがつくことになった。父である公爵は気付いていないが、12歳に見える少年執事は現在15歳。彼は先代国王陛下の執事のお孫さんである。しっかりと隠密としての行動を叩きこまれている。まぁ、そう見えない様にあどけない少年をいつもは演じている。

・・・母が夢中だ。性的な意味で。変態め。捕まればいいのに。

この屋敷に居て思うことは犯罪者がこの屋敷には多い。妹も周りにまともなものが居ないので、クズになりそうだ。可哀想に。

父は横領の常習犯。

母はショタコン。

メイドは泥棒。私を虐待する犯人。

料理長も私が・・・むしろスラムの人でも食べたくないような虫料理とか出したり、腐ったものを出す。虐待犯である。

まともなのはトムじいさんとごく一部の若いメイド位だ。

侍従や筆頭執事なんかは不正に手を染めて久しい。もう、犯罪者として慣れてしまっている。

妹は、犯罪にはまだ手を出していないと・・・思いたい。



6歳になった。お披露目パーティーが開催された。

久しぶりにドレスを着る。

風呂にも久しぶりに入らされて、目いっぱい現れた。妹とおそろいのドレスにアクセサリー人形のように左右対称になる様に設置(・・)された。

妹は嬉しそうにしている。私も笑顔を作り、妹に似せて笑う。上手に笑えているだろうか?



お披露目の次の日。

私だけ、お父様に呼び出された。

何も言われず、いきなり馬車に詰め込むように入れられた。荷物と同じ場所に無理矢理積まれたので、死にそうになり、御者をしてくれているライリーさんにこっそり救われ、御者台に座った。目的地に到着する直前に元の場所に戻されて、さも、今ここから出ましたよ?という感じで荷物入れから出される。

まるで、玩具のように私の左腕を掴んで、ブランブランしながら、私を運ぶ父。

そして、目的の場所、王城の恐らく、陛下の自室に私は連れて行かれた。部屋には陛下と王妃がいらっしゃった。

私の様子を見た陛下と王妃は無言で驚き、目を丸くしているのが分かった。父はそれに気づいていない。

「下がれ。」

と言われて、初めて怒気に気付いた父は言われたとおりにしたのに何で?見たいな顔をして、私を置いて去っていった。



・・・はい。当然、私の左肩左手首左肘は全部脱臼していましたよ。



メイリア→専属執事のカイ→前国王陛下→王妃→陛下の順でやっと連絡が行き、私はここに来ることが出来た。明らかな不正をしている父の物的証拠。虐待を続けている使用人たちの報告書。

多少カイのおかげで、盗みと暴力が酷い人は既にお墓マップに移動していると聞いた。

まぁ、カイがお母さまに「あのメイドに裸を強制された。」と言ったら、一発で消えちゃったらしい。

・・・正直、複雑な気分ではある。

父は他にも余罪があるので、泳がすらしいのだが、私をこれ以上あの屋敷に置いておくと死亡する危険があるとカイが報告して、現在に至る。

否定はできない。

私が報告するように言ったわけではない。ちょっと先日、母のメイドによって気まぐれに池に落とされて、母がのんびりとお茶をして、私が溺れるまで見学されたのを見たカイが今回のことに踏み切ったらしい。

・・・まぁ、多分、後数分で死んでいたと思う。

実は陛下は今回のことに乗り気ではない。

可哀想だとは思っているけど、王族がでしゃばるほどではないと思っているんだそうだ。

このことに王妃は激怒しているとカイが後でこっそり教えてくれた。王妃は帝国の第三皇女だった人。王国に染まっていないし、能力が高いものが上にいるのは当然。爵位ではなく実力がすべてと思っているような方。ただ、実行するだけの権力はまだ持っていないそうだ。



まぁ、王妃が頑張ってくれて、私は第二王子のレオナルド殿下の婚約者になった。そして、将来の王族の教育の為と銘打って、私は王城に住むことになった。

正直初めは慣れなかった。

怪我の処置はたくさんの医者が来てしてくれるし、お風呂にも毎日は入れるし、何より誰にも殴られない。気まぐれに死にかけることが無い。最近では前世の記憶があるせいで、我慢できている自分が嫌になってきていた位なのに、こんなに大事みたいにされると戻されたときが本当に壊れてしまう気がして、怖くて・・・ならない。

正直今でも、いつも殴っていた黒髪のあの緑の女性が未だに怖くて、似た色を持つ女性が近づくと未だに体が固まる。

それに気付いたカイのおかげで、今は平穏無事に看病されライフを送っている。

父が王城に私を連れてきた時、左腕の脱臼とかの他にも実は、いろんな怪我を私はしていたらしい。ドレスから見えないところには非常に痛々しいほどに傷が多数あり、いつ死んでもおかしくない程だと城付きの医者は言っていた。

大げさなと思う。

まぁ、右足の甲が骨折していたのを知らなかったり、あばらが折れたまま放置されていたとかは、まぁあったけど、死ぬほどじゃ多分無いと思う。多分。

魔法があって助かったと心底思う。

3ヶ月、かなりの長い期間を使い、私は療養生活を強制されることになったのだった。



・・・王妃は、私の症状を全く何とも思わなかった陛下に対して、ストライキを起こして、自分でやってみろってこの3ヶ月放置したらしい。その間、しょっちゅう私のところに来て、お見舞いと称して、いろんなお話をしてくれたり、王太子殿下のヨハン様を紹介してくれたりした。

なんでか、婚約者の第二王子レオナルド殿下のことは紹介してくれなかったけど。

聞けば、第二王子は国王陛下の肝いりのメイドが育てているので手を出せないし、バカで我儘で、どうしようもない屑になっているので、紹介する気は無いんだそうだ。いずれ、王妃様はレオナルド殿下を廃嫡するつもりだと教えてくれた。

「でも、まだ、6歳です。大目に見ては?」

と言ったら、私をとても良く撫でて

「改心したら考えるわ。」

と言った。そして、とっても小さな声で

「陛下が死ねば、それよりも前に考えるかもね。」

と言った。

ゾッとするものを感じた。



・・・3ヶ月で王国が傾きかけたので、渋々王妃様は執務に戻ったけどね。

陛下は反省していないと思う。多分。陛下の肝いりって王妃様が言ってたメイドさんと庭でイチャイチャいていたしね。



健康になって、王城に庭にヨハン様が連れて行ってくれた。

次の瞬間、強烈なめまいに襲われた。

後頭部をレオナルド殿下に殴られたためだ。

気を失った私はまた、ベッドに逆戻りとなった。そして、その間に夢を見た。

使徒様たちが全員で私に詫びていた。

実はペットのチャッピーとタマは嫌がらせの際に殺された。本来、使徒様が遣わしてくれた聖獣だったので、こうなった際、殺した屋敷の血族をレティシア以外は使用人を含めて全員殺そうと動きそうになったんだそうだ。でも、いろんな理由から使徒様は我慢せざる得なかったんだそうだ。加えて、『健康でありたい』と言う願いを叶えられず、申し訳ないと謝ってきた。殴った傷が次の日には治っていたら、逆にさらにひどいことをされると思い、治さなかったんだそうだ。それは、その通りだと思う。

他にも、後4年は私を助けられないんだそうで、それについて非常に申し訳ないとごめんなさいと謝られた。

前世死んですぐの私なら、普通に受け入れた謝罪だが、今はそうは言えない。今の私は優しくなれない。

それを伝えたら、使徒様たちはこちらこそごめんと言った。



気付いたら使徒様たちの空間ではなく、城に与えられて自室にいた。ヨハン様が謝罪された。

「貴方のせいではありません。謝る必要はないです。」

と言ったら、更にしょんぼりされてしまった。ちなみに犯人のレオナルド殿下は私が死にかけている様子を見て、初めて自分のやったことが悪いことと気付いたらしいのだが、それでもすぐに起きるから謝れば許してもらえると思っていたのに、全く目を覚まさず、呼吸も浅く、顔色も悪い私を見て、恐怖にかられて、今は自室で怯えているんだそうだけど、正直意味が分からない。

そりゃ、金属の棒で6歳の少女を殴って、大丈夫と思う方がおかしい。少し考えればわかることなのに、なんで、6歳にもなって、それを知らないのかがわからない。謝っても死んでしまえば、許す余地は全く無い。殴られて、気絶して起きたのは1週間も経ってから。このまま眠っていたら、例え魔法があっても餓死で死んでいたと思う。

仕事で遠征していたのに、部下の報告で事件を知った王妃様は激怒。

速攻でレオナルドを廃嫡すると言ったらしい。そこでようやく、肝入りメイドがレオナルドに指示をして殴らせたことが判明。肝いりメイドは子爵家の4女。お腹には陛下の子供が居たが、側室に上がったわけではなかった。そんな彼女が公爵令嬢を害したのだ。レオナルドの前で火破りになったと随分後にカイから聞いた。

肝いりメイドが死んだ代わりに、廃嫡は延期された。

陛下にはもうちょっと王としての自覚を持てと王妃様が説教されていたとカイから聞いた。



しばらくして、歩けるようになり、ようやくレオナルドと対面。レオナルドは子供みたいな口調でただ

「ごめん。」

と一言言って、逃げた。私は

「許すわけがない。」

と聞こえていないであろうレオナルド殿下に小声で言った。



その後、俺が謝ったんだから許しているだろうと言って、偉そうに突っかかってくるレオナルド殿下。五月蠅いし、何より目を離したすきにまた殺されかけては敵わないので、出会う度に気絶することにした。

結果、私は基本的にはレオナルド殿下と公的な場以外で接近が禁止せれることとなった。



一応、乙女ゲーム通りなら、私は実家の公爵家で妹を差別したり、嫌味なことを言ったりしている時期である。正直、どうやってそんなことをしていたのか疑問である。だって、もしも、原作通りに家に居たのなら、私はきっと死にかけている筈だ。妹のことを気にかける程余裕は多分無いと思う。恐らくだが、使用人メイドが捏造した虐めを私のせいにしていたんだと思う。

と言うことは、今、妹虐められていたりするんだろうか?いや、そんな訳は無いと思う。だって、言い訳材料が今家にいない筈だから。



7歳の時、私は王妃様の専属メイドだったカノンに王妃教育を受けている。陛下には内緒。一応、王太子殿下には婚約者がいる。ただ、わがまま放題のうちじゃない公爵家の娘なんだそうだ。頭も期待できないので、庇護下に置く気も教育する気も王妃様には無いんだそうだ。

ちなみにその家の夫人と陛下は出来ているんだそうだ。・・・もしかしたら、王太子と腹違いの兄妹の可能性あり。



そして、ついにやってきた。8歳です。私は自分のことが忙しすぎて、すっかり忘れていた特大のイベント。厄災である。

麦にしかかからない病気が発生。麦がほとんど枯れて大飢饉が発生。加えて、驚異的なスピードで流行る疫病が王都を中心に発生。王都で原因不明の死者が出てきたと冒険者ギルド経由で報告を聞いて、初めて私は思い出した。

またもって遠征していた王妃様に至急連絡を取り対策を協議。フットワークが軽い王妃様は城に帰還。陛下を辺境に移動させ、自分は陣頭で指揮を執った。正直、陛下の価値がミジンコ以下。まぁ、居ても邪魔しかしなかっただろう。



・・・レオナルド殿下?もちろん、辺境行き。



ヨハン殿下と協力し、書類仕事なんかは手伝った。

それでも色々足りなかったので、以前から多少かかわりがあった冒険者ギルドと連携を取り、疫病対策。医師のマスクつけの義務と川での体丸洗いを少なくとも3日に1度行うことを徹底させた。

そして、アドヴァイス伯爵の領からジャガイモの大量輸入し、飢饉はある程度終息が見えた。そして、米はアジェル伯爵領にあったので、それも役に立った。



結果、乙女ゲームにあったみたいに国土を減らすほどの消耗にはならなかった。原作には、王妃様が居ない。つまり、そう言うことなんだろう。川で丸洗いなんて、危険なことだと思ったし、逆に患者が増えると思ったのに、逆の結果になったのは、ちょっとびっくりした。王妃様は転生者なんだろうか?そんな雰囲気は無いんだけれど。

余談だが、陛下が辺境で女の尻を追いかけまくって、何人か子作りした結果、なんの罪のない少年少女が死ぬような目になったとかなり後になって、カイから聞いた。

正直、陛下には王都に戻って欲しくない。どうせ仕事もしないんだしと思っていたんだけど、辺境伯にとっても陛下は邪魔以外の何者でもなく、加えて領に害悪をもたらせまくっていたらしいので、帰ってきてしまった。

本人もあっちの暮らしを楽しんでいたようなので、「正直、ちょん切ってしまいたいっ」て何度も王妃様が悔しそうに何度も言っていたよ。派閥の力がまだ、王妃様には足りないんだそう。

「陛下の皮を剥いで、第三者に被せて、生きている風を装うってのはどうだろう?」

そんな時に現れたのがベイトリス様だった。ベイトリス様は教会の人である。そう、使徒様が待っていたのは、ここからなのだ。原作には全く出ていないので、私は知らないんだけど、ヒロインが王子とくっ付くのを協力するのは教会なのだ。そして、教会はなんで、そんなくだらないことをしようとしているかと言うと魔王の封印の為なのだ。

魔王を封印するのには、聖女の血が必要になってくる。聖女を作るには、この国の王と教会が判定石で調べた結果の女性を掛け合わせることで成り立つんだそう。普通に聖女を封印に使用された場合、聖女は死ぬ。つまり、聖女の畜産計画が現在、教会と使徒たちが計画している事柄なのだ。

既にヒロイン候補はあまり性格の良くない転生者。しかも、主人公3人の他にもこの乙女ゲームとよく似た世界に無理くり転生をして、バカなことをしまくっている人たちもいるんだそうだ。そして、そんな状況を作ったドジっ子元使徒兼現逃亡使徒もこの中にいるんだそうだ。見つかり次第、回収し、虫転生が決まっているらしい。

既に王族の血を持つ者たちはとある鉱山に行っているらしく、後は聖女が発生するばかりなんだそう。

・・・つまり、『エリシア・エンド』『アリア・ミルフィス』『カトレア・エルネス』のうちの誰かもしくは全員である。



そこから行われたことについては、カイからも聞かないことになった。

私は自分が守りたいものがあると思えば、それに手を伸ばせと言われた。

今、守りたいものはカイや王妃様たち。そして、実家の公爵家であまり良い待遇されていなかった使用人たちのごく一部。トムおじさんを筆頭とする私を助けてくれた者たち。

それ以外は居ないと思っていた。



忙しく時間は過ぎていった。10歳になったある日、陛下が私に性的な意味て近づき始めた。王妃様がいち早く気付き、ヨハン様も手伝ってくれた為、私は教会に移住することとなった。

多少、食事は質素になったし、服もシンプルなワンピースのようなものになったけど、こっちの方が性に合っていたので、助かった。教会側も私が教会側の仕事を以前から助けていたことを理解していたようで、とても助かっている。

教会で客人として、でも、多少仕事を手伝いながら過ごしていた。そんなある日である。メガーヌ・アドヴァイス伯爵令嬢と会ったのは。



正確に言うと会ったわけではない。私が一方的に彼女を知ったと言うのが正しい。

彼女は一目見て転生者と思った。別に転生者らしい奇異な行動はしていなかったけど、直感的にそう感じたのだ。

他の転生者は変な挙動が多いし、頑張るよりもどうにかして近道して、男を捕まえようとしたり、稼ごうとしていたり、残酷なレベル上げをしていたりしていた。

しかし、そんな転生者が一杯いる中で、彼女の挙動とか頑張り方とかはかなり古いタイプのヒロインタイプ。目立たない容姿でも、頑張り屋さん。男の人に積極的にかかわって攻略するぞって意気込む感じじゃなくて、頑張っていたら、いつの間にかモテモテ。でも、男よりも仕事優先。・・・でも、一人に決めたら、多分、男の人に負けちゃうんだろうな・・・って感じの超純粋培養のヒロインタイプ。

それに、あの疫病で死んでしまった自分の家の使用人たちと思われる人たちの墓に月に一度お参りに彼女は来るのだ。王都にはそれこそ、沢山の感染者が居た。そして、たくさん死んだ。なのに、ちゃんとお参りに来るのは両手両足の指で数えられる程度の人数だ。貴族ともなれば、片手で事足りる。

そう、私は彼女を応援したいと思ってしまったのだ。でも、私はあまり積極的に人と喋れる人間じゃなくなってしまった。転生し、あまり良いとは言えない暮らしをしていた時間が長すぎて、会話が苦手なのだ。仕事となると喋れるのに、私事になった途端、頭がパーンってなる。

思い余って、カイに相談した。

なんか生暖かい目で見られてしまった。



カイから直接本人に話しかけるのは、勇気がいるでしょうからと孤児院の世話を任された。

0歳から15歳までの少年少女たち。ほとんど者もが前回の病気で両親を亡くしたもの達。他にも娼婦の人たちが育てられないし、降ろすことが出来なかった子供たちなんだそうだ。他にも理由がある子供たちはいるんだろうけど、詳しく聞く気は無かった。

現実問題として、彼らには親が居ない。

文字の読み書きも出来ず、掃除以外の仕事はほとんど出来ないそんな少年少女たちだった。

教会の人に許可を貰い、私は彼らに文字を教えた。母国語はもちろん、言葉が好きな子には外国語も教えた。算数も教えた。簡単な足し引きは全員出来るようにした。それ以上のことが出来そうな子は掛け算を教えたし、会計ができる程度の知識も教えた。

と言っても、公爵家の帳簿を見れる程度の簡単なものだけどね

食べることが好きな子もいた。その子には知り合いの冒険者に頼んで、解体の仕方を学ばせた。料理の仕方も教えた。

歌うことが好きな子には、歌える場を用意できるように教会にお願いしたり、アカペラでもはえる位に練習を手伝った。少年少女たちは、普通の大人よりも技術だけなら高くなった。しかし、要領は良くない。そこらへんは、知り合いの冒険者やカイに教えを請うた。

ちょいちょいそんな教育をしている間に、月一度来るメガーヌ・アドヴァイスには結局話しかけることが出来ずにいた。



12歳になった。学園に入学だ。

元の乙女ゲームと違って、学園は自国に建てた。名前はクリスタル学園。乙女ゲームみたいなことが起きたら、逆に困るからだ。たくさんの高位貴族の子息は結構優秀なものが多い。だからこそ、守るためにも学園を結構無理して作ったのだ。

あぁ、でも、乙女ゲームの強制力だろうか・・・。ヒロインたちは災厄をいつも運んでくるのだ。



恐らく、ヒロインと思われる生徒は3名。既にエリシア・エンド公爵令嬢は、設定と異なる幼少時代を過ごしている。誰にも虐められることは無かったし、ストレスフリーでのびのび育った天然っこ。そこそこ勉強はさせたみたいだけど、わがまま放題で生きてきたから、我慢がきかない幼児と同じ感じの子。でも、転生者と聞いたのに、以前あった時よりもこっちの世界よりの人間になっているように思えた。そう、乙女ゲームでの設定キャラ通りの女の子。でも、更に性格が悪くはしていますって感じの補正付き。久しぶりに会ったからだけれど、しばらく話しても、私のことに気付かないと言うありさまの子になっていた。

でも、この子は貴族としての令嬢になっている。然程問題は無かった。



問題のあるのは、一人目は知らない子『平民出身のマリア』彼女のことは私は全く知らない。

魔力が膨大で、一般貴族をはるかに凌駕する魔力の娘。暴走が懸念されているために学園入学が強制せれた平民だ。以前聞いた残酷な方法で力をあげおうとしている少女の噂を聞いた。魔族も魔物も容赦なく、殺しつくしたと言われる少女。冒険者ギルドでも目をつけられている。生態系を狂わせた過去がある少女である。そう、彼女がきっかけで例の疫病がかなり流行したのではないかとギルド長は考えている。

あまり、深く考えたくは無いが、病気を運んできたのは彼女が狩らなかったウサギの魔獣。ウサギの魔獣は麦も盗んで食べた。いろんな意味で狩りと言うのは奥深いと思う。恐らく転生者。



私が知る中では彼女は乙女ゲームには出ていない。まぁ、アップデート後に追加予定の子だったのかもしれないけど。



問題のある二人目。アリア・エルネス。彼女は元々主人公予定の子なんだけど、既に宰相子息を垂らしこんだ。まだ、入学式から1時間もたっていないのにどうやったんだか。明らかに転生者。



問題のある3人目。カトレア・エルネス男爵令嬢。魅了防止のアミュレットが一つはじけ飛んだ。そんなレベルの強力な魅了を全生徒と父兄たち先生たちにばらまいた超問題児。転生者であるのは確実だし、やり方がいきなりエグイ。

あっと言う間に第二王子のレオナルド攻略完了。騎士団長子息もノックアウトされているように思えた。

そして、私の大事なメガーヌ・アドヴァイスに問答無用で抱き着き、失神させた最悪な人間である。

まあ、良かったことが無かったわけでもない。

ベイス・アジェル伯爵子息。

真っ先にメガーヌ・アドヴァイス伯爵令嬢を助けようとした男の子。12歳なのにもかかわらず、メガーヌ・アドヴァイス伯爵令嬢をお姫様抱っこできる逸材。私は決めた。メガーヌ・アドヴァイス伯爵令嬢を幸せにすると。

そして、彼女とベイス・アジェル伯爵子息の仲を取り持とうと!



と言っても、まずは害悪が身近にいては元も子もない。

本当はヒロインたちを片付けたいが、それは使徒様が言っていたけど、難しいと思う。なら、メガーヌ・アドヴァイス伯爵令嬢とベイス伯爵子息には、私とコネがあるそして、本来の乙女ゲームの舞台の筈の『フランワーズ学園』に避難してもらおうと思った。

色んな手続きをして、二人には普通に編入試験を受けてもらった。友人の学園長と二人の成績について聞いたら、

「小細工無しにAクラス相当の優秀な生徒です。ありがとうございます。」

とお礼を言われてしまった。

ギリギリまでクリスタル学園には情報を隠し、二人を隣国の学園に編入させた。私はお守があるので一緒に行けないけど、彼女と面と向かって喋れたので、既に満足である。



後は、使徒様が望むように聖女候補たちに判定石を触ってもらい、対象者は教会にと思っていたんだけど・・・。

バカ(レオナルド殿下)が無理を通した。

普通に忙しいのに、バカがバカを通して仕事が増えた。

ただでさえ、まともに仕事しないし、したらしたで、仕事を増やすバカ陛下のせいでてんてこ舞いなのに、息子のバカも邪魔ばかりする。いくら王族だからと言って、やっていいことと悪いことの判断も出来ず、庶民でさえしないような高慢無知な真似を連発する。

すでに、王妃様はキレているし、「卒業まだかなー。」と明らかに殺気をまとった声でバカ達を見ているし、正直、お手上げしたいなぁ。

バカとヒロインたちは無理をした。

隣国の学園の副学園長に多額のわいろを渡し、そして、それらの金は家からこっそり抜いた金。要は、国の金を横領し、他国に流して、自分の欲望のために使用したのだ。

この時点で、全員終わっている。加えて、現国王の弟でも、陛下よりまともだったはずのケルン先生は、カトレア・エルネス男爵令嬢の魅了魔法にやられた。

まともな思考はもうできず、麻薬患者の様に彼女を求める哀れな男取り巻きになってしまった。

色んな意味でキャパオーバーである。

王妃様とカイに相談した。

結果、カイ側の人間に任せると言う結論に至った。カイ側の人間は教会の人間にも繋ぎを作ったらしく、これから起きる事件は、悪魔によるものとされることになったし、最終的に教会が落としどころをつけると言うことにもなった。



あぁ、それから起こったこと、私が助けられなかった者たちには、本当に申し訳ないと思う。



色々ごたごたはあったが、ヒロイン候補たちには聖女の判定石を全員に触ってもらえた。結果は、全員聖女だった。教会と王妃様の間に契約はなされた。結果、長い時間をかけて陛下は死ぬこととなった。



・・・妹は苦しまずに死んだ。魔王封じのための素材になったんだそうだ。

カトレア以外のヒロインたちは、予備になったと聞いた。まぁ、不敬罪で死ぬ予定の女もいたけど、素材を無為に使われたくなかったらしく教会の人間が積極的に頑張ったらしい。

そう、カトレアは最終的な母牛である。それに、教会が尋問した結果、彼女はドジっ子の元使徒だと判明した。使徒たちが探していた元使徒だったし、『謝ればみんな許してくれる』と本気で言っており、いろんな意味で使徒たちがため息を禁じ得なかったようだ。

一応、当初の予定では彼女は回収し、すぐ転生の流れだったのだが、生き物の何たるかも理解せず、自分以外の命どころか魂さえも価値を見出せない元使徒に対し、現在の使徒たちは、元使徒を素材として教会に提供することを契約したのだ。



捕まって、鉱山に送られても全く理解していないカトレア。使徒たちは計画を実行させるように指示。結果、カトレアとレオナルド殿下は種袋と種馬になった。この鉱山に来ている子達は恐ろしいことに全員陛下の子供たちやその子孫だった。つまり、クスリをつくる素材の対象者である。彼らの子は聖女になる可能性が非常に高い。

だから、彼らには今回の顛末や彼らのしたことを事細かに説明した。結果、カトレアの処遇は当然なものとなった。レオナルド殿下もかつて、ここにいる鉱山奴隷たちを救った冒険者を権力で傷つけたことが発覚。男女ともにレオナルド殿下で遊ぶことが許可されることとなった。

そんな中、鉱山奴隷たちに適切な休みを支持する一人の青年が居た。

彼には名前が無かった。鉱山奴隷たちの間で生まれた子で、名前を付ける必要が無かったと言うが、一応番号だけは与えられていたらしく、a-129-mと言う名前だと名乗った。気になって、色々試験さえせたところとても優秀だし、魔力値も高かった。今回のことで有能な部下になる予定だった者たちが大量にいなくなることになってしまった。だから、彼のような人材が欲しい。全く、こうなったのも何もかもヒロインのせいだ。思わず、悪態をつきたくなる。

彼に、三か月後に迎えに来る。後継者をその間に育てて欲しいと言うと複雑そうな顔をして、だが、快く了承してくれた。



結果、a-129-mは、レオナルド殿下になった。

初めは鉱山の収支報告を行う係として。そして、10年後の今は、彼はギルド職員となるのだった。
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