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転生王子と土の巫女
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あぁ、堕ちちゃったかー。
頭を抱えている私は、現在、7歳である。あの後、なんと堕ちる筈がないと思われた第一王子がヒロインに堕とされたのだ。
ヒロインにメッロメロになった彼は、既に第二王子の妾と化しているヒロインを強奪。そのまま、国外に逃げたのだ。
しかし、ヒロインのお腹には確か既に、第二王子の子がいるんだそうなのに、どういうこと??
っていうか、まだ、未成年なのにDT捨てるとは何事だ?!変態だろ!!!
内心、怒りと混乱である。
加えて、土の巫女は、今まで差し入れしたご飯がすべて第一王子のものと思っていたらしく、ショックで倒れているらしい。
あぁ、初めから俺からだと言った方がよかったかもしれん。そこは、ごめんなさい。でもさ、既にかなり年月があれから経っているからわかると思うんだよ。俺の兄弟姉妹はそんな差し入れなんかしないってこと。
ほとんど外に出ない私が差し入れしていることがそんなにショックだったのか、かなりひどく悪し様に私のことを罵ったらしいと噂で聞いた。
そんなわけで、本当は止める気はないのだが、運び役の侍女が運ぶことをストライキ。
本当に困っている。
ただでさえ、この国で土の巫女の立場は危ういのに・・・。
今日も神様にお祈りで報告。
そして、最後に土の巫女を助けてやって欲しいとお願いして、今日も一日を終えた。
ついに来た。
来てしまった。
土の巫女、国外追放。
あれから、ショックだったんだろう彼女がふさぎ込み、王都とその周辺の作物が一斉に枯れると言う事態が起こった。
(うちの離宮の植物はなんでか無事だったけど。)
全て、土の巫女のせいにさせられ、国外追放と相成った。
加えて、私が彼女にご飯をあげていたことがばれ、しかも、離宮の植物が無事だったことも原因で、私も国外追放になった。
なんで?!
と言いたい。まぁ、言い分は気にならないが、諦めた。呪いとかそんなことするはずがないのに。やってもいないことを擦り付けられた。何も知らない国民は国王の言うことを素直に信じ、私に石を投げ、罵倒した。
元々、この国のありざまは性に合わないところがあった。教会を含めて、結構不愉快だったのだ。
他国のことはかなり情報制限されていたため、知らないが、50歩100歩の差位しかないように思えるので、信用できるもの・・・と言うか、離宮にいた全員を連れて、私は国を出ることにした。
元々、2年位前から既に離宮にくれるお金なんか無くなっていた。
ぜーんぶ、着服されていたのだ。
なので、セバスを通じて、とある商会らと知り合い、金を稼ぎ、離宮を賄っていたのだ。
もう、国外に出ても、ある程度お金は稼げるし、人も物もそろっている。
その過程でいくつかの豪農ともつながりが出来ていた。その人たちも一緒に来てくれると言うことだったので、全員そろって、行くことになった。一応、時期はずらしての出発。
セバスが空間魔法が使えるので、荷物は全てセバスの空間魔法の中に入れた。一応、誰も見なくなって久しい門外不出の本たちも持って行っている。
代わりに私が集めた普通の本を本棚に入れている。
・・・まぁ、7年間気付く気配が無かったのだ、国王たちはきっと気付かないだろう。一生。
侍女や護衛騎士の何人かは転移魔法が使えるので、私とセバスが住処を決め次第、引っ越してくると言っていた。その際に、商会の人や豪農たちの従業員や家族も連れてきてくれるんだそうだ。
国境にあたる砂漠に陛下直属の部下たちが3人ほどの監視をされながら、置いてきぼり状態にされた。
監視員の馬車が小さく見えるなぁと思っていたら、目の前に真っ黒い鎧の真っ黒い髪の毛の真っ黒い瞳の背が高い男性が現れた。
もう、いきなり、目の前にポンと現れた。
セバスが速攻切りかかった。
黒衣の騎士は、簡単にセバスをいなした。
それでも食って掛かろうとするセバスを止める。
「大丈夫、殺意はないよ。なんで、切りかかったの?セバス。」
「・・・。」
セバスは無言を貫いた。黒衣の騎士も無言。
「黒衣の騎士殿?何か御用でしょうか?わたくしは、今は何にも持たない、いち平民でございます。あまり、お役には立てないかと思いますが?」
と言っても、黒衣の騎士もセバスも無言。
一応、待ってみる。セバスは目線をそらすので、黒衣の騎士の方をジッと見つめる。
しばらくして
「陛下の言うことはおかしい。」
とポツリと言った。
それから、何をするでもなくただ、ジッと見つめ返してくる。
「私と一緒に来るかい?」
と聞くと騎士はこくんと頷いた。見た目の年齢は30代前半位なのに、その言動や仕草はまるで10代の頃の前世の私みたいだ。
女の子の前で言葉少なくなる感じが・・・いや、私は男だけどね。
セバスが不気味なくらい無言で黒衣の騎士と一緒に歩く。
「貴方のお名前をお聞きしても?」
と私が聞くと
「カラグレスト・アム・エルストファング辺境伯爵。」
と端的に答え、少しして
「いや、カラグレストだ。」
と答えなおした。
「じゃあ、カラスと呼んでいいかい?」
と聞いた。
「うん。」
と小さく答えた。おかしな感じがしたので振り返ると黒衣の騎士は真っ赤になっていた。
なんだろうか?この童貞感。
雰囲気的にカラスは、セバスの父親だ。つまり、童貞じゃないはずだ。なんでこうなってるんだ?
よくわからないが、取り合えず、先に歩いた。
混乱はしている。
困っている。
非常に。
ちなみにさっき、名前が分かったカラスは祖国の将軍である。
記憶に違いが無ければ、準男爵出であるが、実力が非常に高く、一代限りの準男爵である父親が男爵になり、その子であるカラスが爵位を継ぐときに起こった戦争で手柄をいくつもたて、辺境伯になったのは、彼が20代になる直前だった。カラスの父である人は爵位を渡してすぐに国外に出たと聞いた。その後、祖国の将軍になり、やっかみを受けながらも実力で黙らせている人と聞いたことがある。
さて、そんな人が何でここにいて、あんな陛下のことを否定することを言って、ついて来ているんだろうか?
予想はできるが、あんまり、今後のことを考えると口にしたくない。
ちなみに思い浮かぶ予想できる言葉は
「(陛下に第三王子を殺せと言われてきたが、陛下の言うような人を呪いで害するような人物には見えない。)陛下の言うことはおかしい(から、殺したくない)。」
と言った感じである。
砂漠はずっと砂漠である。
かなり、ずっと砂漠である。
暑いし、考えがまとまらない。
もうしばらく歩くと赤いマントが風になびいて、土に埋もれていた。
赤いマントには見覚えがあった。
土の巫女が着ていた気がした。掘っていたら、セバスが手伝い始めて、カラスも手伝い始めた。
土の巫女は生きていた。埋もれていたが、なんでか息はできていたらしく、体温も正常だった。
意識は無いようだったので、おんぶしようとしたら、セバスが却下して、なんでかカラスが背負うことになった。
・・・手際よく、私から彼女を離そうとするさまは、本当に親子にしか見えなかった。
「そんなに彼女と私を離したいのかい?」
と苦笑交じりに言うと二人して頷かれた。
あーもう、困ったなぁ。
と言うわけで、目的していた人物の回収は済んだ。
「セバス、ここ暑いね。」
と言うと無言で私を抱き寄せて、転移魔法を使った。
行先は知らないが、祖国ではないことは確かだった。
なぜなら、目の前に広がるのは壮大な森林と豊かな草原だったからだ。
一応、後ろに砂漠もあるが、少し湿っている。
祖国の地図上でこんな大きな森林は無いので、他国であるとは思うが・・・もしかしたら、人、いない感じがするので、国自体ないかもしれない。
「本当にここでいいの?」
と聞くとセバスが
「随分前に偶然見つけたのです。砂漠の土を畑にするのは赤いもを使えば何とかなるとレオン様が言っておりましたので、実験場にと思っていたのです。」
ちなみに今頃であるが、私の名前はレオニード・ハル・グラニカル。今は、レオニードだけでいいか。王族ではなくなったし。セバスは小さい頃からレオン様と私を呼んでいたが、人前では呼ばなかったのになんでだろうとか思っていたら
「私もレオン様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
とカラスが言ってきた。
あぁ、なるほど。
別に構わないんだけど、なんだろうね、これ。
「構わない。好きに呼んでくれ。」
二人して、私のことを取り合うような感じのさま・・・全くうれしくないがモテている感じだ。
男にだが・・・。
まぁ、でも、元王族なのだ。人を惹きつけるのは性分のようなもの。気にしたら負けだ。
そう何度か暗示の様に繰り返して、気にしないでことにした。
土の巫女を草むらに寝かせて、私たちは宿泊の準備を始める。空間魔法から、屋敷を取り出すセバス。
空間魔法から武器庫を出すカラス。
その後もカラスの方も屋敷を空間魔法から取り出したり、馬小屋を取り出したり・・・。
正直、規格外過ぎて面白い。
要するに、一瞬で辺境の屋敷が2棟完成である。
噴水もある。なんでか、水を吹き出し続けている。
私にチートスキルは無かったが、セバスとカラスはチートスキルだらけらしい。
しばらくすると、セバスが鳥のカラスを懐から取り出し、手紙を付けて放った。
空に飛び立つ1匹のカラス。1匹だけだった筈なのに幾羽にもなって、飛び立っていった。
ほんの数分で、今度はたくさんの護衛騎士や侍従やメイドたち、商人、豪農の家族と従業員家族が現れた。
その数、500人ほどはいるだろう。
ちょっと、住む場所どうしようとか考えていたら、護衛騎士や侍従、メイドたちが空間魔法を使い始めた。
何だろうか?とか思っていたら、畑が現れた。辺り一面畑。牧場が現れた。辺り一面草原が広がる。そして、それに合わせて、いくつもの家も現れた。次に商会の屋敷も現れた。どーんどーんって。商会の地下は倉庫になっていて、商品も置いているらしい。鍛冶屋、生産系の施設もこちらに入っているらしい。
砂漠は一面の牧場と畑と王都の有名どころの商会が一気に生えた感じである。
違和感がある。
どうやら、護衛騎士や侍従やメイドたちもチートらしい。
正直、祖国にいるときこんな実力を持っているって知らなかったぞ?それに本当かどうか今は本当に怪しく感じているが、空間魔法を使える人間は少ないとか聞いていたし、転移魔法とか架空の物語の存在とか聞いていたんだぞ?なんで、みんな当たり前に使っているの?!
そこに見覚えのない少年。私と同い年だろうか?7歳位で、見たことが無い水色の髪の少年だった。
「お礼だよ。」
少年はそう言って、空気に溶けるようにして消えた。
思わず、地面にへたり込む。
やっぱりいた。
神様いた。
神様は私ではなく、私の信奉者に能力を授けたらしい。
・・・有難いが、ある意味やはり恐ろしい。
私自身でやることは無くなったので、土の巫女の介抱がてら、木の枝で神様を彫る。
先ほど見たから、覚えているうちに彫ろう。
一心不乱に彫っていたら、日が暮れていた。
気付けば、居場所も草原の草の上ではなく屋敷の一室にいる。後ろで寝ていたはずの土の巫女もいない。
「あれ?土の巫女は?」
と聞くと
「彼女は使用人棟の方で寝かせてます。」
とプンスンと怒っているセバス。
「そっか、でも、出来ればもっといい部屋に」
「駄目です!」
被せるように断言されたのでひくしかない。
「あ、御飯どうしよう?」
と聞くと既に準備されていた。
「土の巫女」
「大丈夫です。既に目が覚めて、ご飯を食べておいでです。」
「そっか。」
基本的に土の巫女と関わって欲しくないらしい。これはセバスも他の使用人たちも共通した考えらしい。なんでだろう?
色々、ここに国を作るにあたって書類を作ることになった。
一応、ここの森を含んだ一帯の土地を調査し、やはりここには人がいないことが判明。セバスの言うには祖国からもかなり離れているので、見つかることは無いそうだし、やることは住人の安らかな生活のための書類整理位だろう。既に作付けを行った広い農園には小さい緑がそこら中にあった。何かしら芽が出ているらしい。
早過ぎじゃないか?と思わないでもないが、まぁ、しょうがない。ここには魔法があるのだし、神様もいるのだから。
色々やって、一日一日が過ぎていく。
セバスは助けてくれるけど、やっぱりトップは私なので、頑張る。
ある程度落ち着いて来て、街に出れるくらいになった。
祝!初外出である。
しかも、公的に出て良いのだ。
丘に登るだけで滅茶苦茶怒られたので、街に出たことは無い。商家や豪農達とは屋敷内で会っていたので、本当に初外出!
嬉しくて浮かれていたので、気付かなかった。
周りも浮かれていることに。
屋敷を出る前から玄関に垂れ幕。
『祝!初外出!レオン陛下万歳!』の文字。
なにそれ、恥ずかしい。
別に出たくなくて、出なかったわけじゃない。暗殺者が多かったから外出できなかっただけである。
後々聞いたところ、やはり案の定、国王をはじめ、兄王子たち姉王女達も私に暗殺者送ってたらしい。なんとなく、そんな気はしていたけど、そっかーやっぱかー。
毎日最低10人は暗殺者来るから、掃除が大変だったと聞いて、ため息をついた。
祖国から離れたし、敵はいないので、自由にではないが外出可能になったのだ。そりゃ、幸せだし、嬉しいけど、照れるよこの垂れ幕は。
一応、オープンカーならず、屋根のない馬車に乗り込み、街に出ることになった。
・・・馬、いないから、水色の馬の形をした精霊がひいた馬車である。
護衛騎士の従魔らしい・・・。
街もお祝い一色。
祝!初外出!の垂れ幕と祝!創国記念の垂れ幕もある。
皆に手を振り、農園につくと豪農たちと久しぶりに会ったことを謝罪。そして、ついて来てくれたことにお礼を言う。皆は笑顔で私に尽くしたいから勝手にしたことだと言って、気にしないでくれと言った。これからあなたの為に頑張ると言ってくれたので、頼むとお願いした。
牧場にも行き、同じようなやり取りをした。
商家の人たちには別途、後でパーティーを行う予定である。
今日は街内での祭りだ。
飲めや歌えやで楽しく騒いだ。
夕方になり、私は屋敷に戻ることになった。一応、国王陛下になったけど、まだ7歳。早寝早起きが基本らしい。学校も祖国では10歳からだし・・・。まだ、私は子供だ。
まぁ、そんなわけで、ご飯を食べて、食後の軽い運動をして、お風呂に入って就寝。
今日も忙しかった。
神様に短く感謝の念をして、眠る。
頭を抱えている私は、現在、7歳である。あの後、なんと堕ちる筈がないと思われた第一王子がヒロインに堕とされたのだ。
ヒロインにメッロメロになった彼は、既に第二王子の妾と化しているヒロインを強奪。そのまま、国外に逃げたのだ。
しかし、ヒロインのお腹には確か既に、第二王子の子がいるんだそうなのに、どういうこと??
っていうか、まだ、未成年なのにDT捨てるとは何事だ?!変態だろ!!!
内心、怒りと混乱である。
加えて、土の巫女は、今まで差し入れしたご飯がすべて第一王子のものと思っていたらしく、ショックで倒れているらしい。
あぁ、初めから俺からだと言った方がよかったかもしれん。そこは、ごめんなさい。でもさ、既にかなり年月があれから経っているからわかると思うんだよ。俺の兄弟姉妹はそんな差し入れなんかしないってこと。
ほとんど外に出ない私が差し入れしていることがそんなにショックだったのか、かなりひどく悪し様に私のことを罵ったらしいと噂で聞いた。
そんなわけで、本当は止める気はないのだが、運び役の侍女が運ぶことをストライキ。
本当に困っている。
ただでさえ、この国で土の巫女の立場は危ういのに・・・。
今日も神様にお祈りで報告。
そして、最後に土の巫女を助けてやって欲しいとお願いして、今日も一日を終えた。
ついに来た。
来てしまった。
土の巫女、国外追放。
あれから、ショックだったんだろう彼女がふさぎ込み、王都とその周辺の作物が一斉に枯れると言う事態が起こった。
(うちの離宮の植物はなんでか無事だったけど。)
全て、土の巫女のせいにさせられ、国外追放と相成った。
加えて、私が彼女にご飯をあげていたことがばれ、しかも、離宮の植物が無事だったことも原因で、私も国外追放になった。
なんで?!
と言いたい。まぁ、言い分は気にならないが、諦めた。呪いとかそんなことするはずがないのに。やってもいないことを擦り付けられた。何も知らない国民は国王の言うことを素直に信じ、私に石を投げ、罵倒した。
元々、この国のありざまは性に合わないところがあった。教会を含めて、結構不愉快だったのだ。
他国のことはかなり情報制限されていたため、知らないが、50歩100歩の差位しかないように思えるので、信用できるもの・・・と言うか、離宮にいた全員を連れて、私は国を出ることにした。
元々、2年位前から既に離宮にくれるお金なんか無くなっていた。
ぜーんぶ、着服されていたのだ。
なので、セバスを通じて、とある商会らと知り合い、金を稼ぎ、離宮を賄っていたのだ。
もう、国外に出ても、ある程度お金は稼げるし、人も物もそろっている。
その過程でいくつかの豪農ともつながりが出来ていた。その人たちも一緒に来てくれると言うことだったので、全員そろって、行くことになった。一応、時期はずらしての出発。
セバスが空間魔法が使えるので、荷物は全てセバスの空間魔法の中に入れた。一応、誰も見なくなって久しい門外不出の本たちも持って行っている。
代わりに私が集めた普通の本を本棚に入れている。
・・・まぁ、7年間気付く気配が無かったのだ、国王たちはきっと気付かないだろう。一生。
侍女や護衛騎士の何人かは転移魔法が使えるので、私とセバスが住処を決め次第、引っ越してくると言っていた。その際に、商会の人や豪農たちの従業員や家族も連れてきてくれるんだそうだ。
国境にあたる砂漠に陛下直属の部下たちが3人ほどの監視をされながら、置いてきぼり状態にされた。
監視員の馬車が小さく見えるなぁと思っていたら、目の前に真っ黒い鎧の真っ黒い髪の毛の真っ黒い瞳の背が高い男性が現れた。
もう、いきなり、目の前にポンと現れた。
セバスが速攻切りかかった。
黒衣の騎士は、簡単にセバスをいなした。
それでも食って掛かろうとするセバスを止める。
「大丈夫、殺意はないよ。なんで、切りかかったの?セバス。」
「・・・。」
セバスは無言を貫いた。黒衣の騎士も無言。
「黒衣の騎士殿?何か御用でしょうか?わたくしは、今は何にも持たない、いち平民でございます。あまり、お役には立てないかと思いますが?」
と言っても、黒衣の騎士もセバスも無言。
一応、待ってみる。セバスは目線をそらすので、黒衣の騎士の方をジッと見つめる。
しばらくして
「陛下の言うことはおかしい。」
とポツリと言った。
それから、何をするでもなくただ、ジッと見つめ返してくる。
「私と一緒に来るかい?」
と聞くと騎士はこくんと頷いた。見た目の年齢は30代前半位なのに、その言動や仕草はまるで10代の頃の前世の私みたいだ。
女の子の前で言葉少なくなる感じが・・・いや、私は男だけどね。
セバスが不気味なくらい無言で黒衣の騎士と一緒に歩く。
「貴方のお名前をお聞きしても?」
と私が聞くと
「カラグレスト・アム・エルストファング辺境伯爵。」
と端的に答え、少しして
「いや、カラグレストだ。」
と答えなおした。
「じゃあ、カラスと呼んでいいかい?」
と聞いた。
「うん。」
と小さく答えた。おかしな感じがしたので振り返ると黒衣の騎士は真っ赤になっていた。
なんだろうか?この童貞感。
雰囲気的にカラスは、セバスの父親だ。つまり、童貞じゃないはずだ。なんでこうなってるんだ?
よくわからないが、取り合えず、先に歩いた。
混乱はしている。
困っている。
非常に。
ちなみにさっき、名前が分かったカラスは祖国の将軍である。
記憶に違いが無ければ、準男爵出であるが、実力が非常に高く、一代限りの準男爵である父親が男爵になり、その子であるカラスが爵位を継ぐときに起こった戦争で手柄をいくつもたて、辺境伯になったのは、彼が20代になる直前だった。カラスの父である人は爵位を渡してすぐに国外に出たと聞いた。その後、祖国の将軍になり、やっかみを受けながらも実力で黙らせている人と聞いたことがある。
さて、そんな人が何でここにいて、あんな陛下のことを否定することを言って、ついて来ているんだろうか?
予想はできるが、あんまり、今後のことを考えると口にしたくない。
ちなみに思い浮かぶ予想できる言葉は
「(陛下に第三王子を殺せと言われてきたが、陛下の言うような人を呪いで害するような人物には見えない。)陛下の言うことはおかしい(から、殺したくない)。」
と言った感じである。
砂漠はずっと砂漠である。
かなり、ずっと砂漠である。
暑いし、考えがまとまらない。
もうしばらく歩くと赤いマントが風になびいて、土に埋もれていた。
赤いマントには見覚えがあった。
土の巫女が着ていた気がした。掘っていたら、セバスが手伝い始めて、カラスも手伝い始めた。
土の巫女は生きていた。埋もれていたが、なんでか息はできていたらしく、体温も正常だった。
意識は無いようだったので、おんぶしようとしたら、セバスが却下して、なんでかカラスが背負うことになった。
・・・手際よく、私から彼女を離そうとするさまは、本当に親子にしか見えなかった。
「そんなに彼女と私を離したいのかい?」
と苦笑交じりに言うと二人して頷かれた。
あーもう、困ったなぁ。
と言うわけで、目的していた人物の回収は済んだ。
「セバス、ここ暑いね。」
と言うと無言で私を抱き寄せて、転移魔法を使った。
行先は知らないが、祖国ではないことは確かだった。
なぜなら、目の前に広がるのは壮大な森林と豊かな草原だったからだ。
一応、後ろに砂漠もあるが、少し湿っている。
祖国の地図上でこんな大きな森林は無いので、他国であるとは思うが・・・もしかしたら、人、いない感じがするので、国自体ないかもしれない。
「本当にここでいいの?」
と聞くとセバスが
「随分前に偶然見つけたのです。砂漠の土を畑にするのは赤いもを使えば何とかなるとレオン様が言っておりましたので、実験場にと思っていたのです。」
ちなみに今頃であるが、私の名前はレオニード・ハル・グラニカル。今は、レオニードだけでいいか。王族ではなくなったし。セバスは小さい頃からレオン様と私を呼んでいたが、人前では呼ばなかったのになんでだろうとか思っていたら
「私もレオン様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」
とカラスが言ってきた。
あぁ、なるほど。
別に構わないんだけど、なんだろうね、これ。
「構わない。好きに呼んでくれ。」
二人して、私のことを取り合うような感じのさま・・・全くうれしくないがモテている感じだ。
男にだが・・・。
まぁ、でも、元王族なのだ。人を惹きつけるのは性分のようなもの。気にしたら負けだ。
そう何度か暗示の様に繰り返して、気にしないでことにした。
土の巫女を草むらに寝かせて、私たちは宿泊の準備を始める。空間魔法から、屋敷を取り出すセバス。
空間魔法から武器庫を出すカラス。
その後もカラスの方も屋敷を空間魔法から取り出したり、馬小屋を取り出したり・・・。
正直、規格外過ぎて面白い。
要するに、一瞬で辺境の屋敷が2棟完成である。
噴水もある。なんでか、水を吹き出し続けている。
私にチートスキルは無かったが、セバスとカラスはチートスキルだらけらしい。
しばらくすると、セバスが鳥のカラスを懐から取り出し、手紙を付けて放った。
空に飛び立つ1匹のカラス。1匹だけだった筈なのに幾羽にもなって、飛び立っていった。
ほんの数分で、今度はたくさんの護衛騎士や侍従やメイドたち、商人、豪農の家族と従業員家族が現れた。
その数、500人ほどはいるだろう。
ちょっと、住む場所どうしようとか考えていたら、護衛騎士や侍従、メイドたちが空間魔法を使い始めた。
何だろうか?とか思っていたら、畑が現れた。辺り一面畑。牧場が現れた。辺り一面草原が広がる。そして、それに合わせて、いくつもの家も現れた。次に商会の屋敷も現れた。どーんどーんって。商会の地下は倉庫になっていて、商品も置いているらしい。鍛冶屋、生産系の施設もこちらに入っているらしい。
砂漠は一面の牧場と畑と王都の有名どころの商会が一気に生えた感じである。
違和感がある。
どうやら、護衛騎士や侍従やメイドたちもチートらしい。
正直、祖国にいるときこんな実力を持っているって知らなかったぞ?それに本当かどうか今は本当に怪しく感じているが、空間魔法を使える人間は少ないとか聞いていたし、転移魔法とか架空の物語の存在とか聞いていたんだぞ?なんで、みんな当たり前に使っているの?!
そこに見覚えのない少年。私と同い年だろうか?7歳位で、見たことが無い水色の髪の少年だった。
「お礼だよ。」
少年はそう言って、空気に溶けるようにして消えた。
思わず、地面にへたり込む。
やっぱりいた。
神様いた。
神様は私ではなく、私の信奉者に能力を授けたらしい。
・・・有難いが、ある意味やはり恐ろしい。
私自身でやることは無くなったので、土の巫女の介抱がてら、木の枝で神様を彫る。
先ほど見たから、覚えているうちに彫ろう。
一心不乱に彫っていたら、日が暮れていた。
気付けば、居場所も草原の草の上ではなく屋敷の一室にいる。後ろで寝ていたはずの土の巫女もいない。
「あれ?土の巫女は?」
と聞くと
「彼女は使用人棟の方で寝かせてます。」
とプンスンと怒っているセバス。
「そっか、でも、出来ればもっといい部屋に」
「駄目です!」
被せるように断言されたのでひくしかない。
「あ、御飯どうしよう?」
と聞くと既に準備されていた。
「土の巫女」
「大丈夫です。既に目が覚めて、ご飯を食べておいでです。」
「そっか。」
基本的に土の巫女と関わって欲しくないらしい。これはセバスも他の使用人たちも共通した考えらしい。なんでだろう?
色々、ここに国を作るにあたって書類を作ることになった。
一応、ここの森を含んだ一帯の土地を調査し、やはりここには人がいないことが判明。セバスの言うには祖国からもかなり離れているので、見つかることは無いそうだし、やることは住人の安らかな生活のための書類整理位だろう。既に作付けを行った広い農園には小さい緑がそこら中にあった。何かしら芽が出ているらしい。
早過ぎじゃないか?と思わないでもないが、まぁ、しょうがない。ここには魔法があるのだし、神様もいるのだから。
色々やって、一日一日が過ぎていく。
セバスは助けてくれるけど、やっぱりトップは私なので、頑張る。
ある程度落ち着いて来て、街に出れるくらいになった。
祝!初外出である。
しかも、公的に出て良いのだ。
丘に登るだけで滅茶苦茶怒られたので、街に出たことは無い。商家や豪農達とは屋敷内で会っていたので、本当に初外出!
嬉しくて浮かれていたので、気付かなかった。
周りも浮かれていることに。
屋敷を出る前から玄関に垂れ幕。
『祝!初外出!レオン陛下万歳!』の文字。
なにそれ、恥ずかしい。
別に出たくなくて、出なかったわけじゃない。暗殺者が多かったから外出できなかっただけである。
後々聞いたところ、やはり案の定、国王をはじめ、兄王子たち姉王女達も私に暗殺者送ってたらしい。なんとなく、そんな気はしていたけど、そっかーやっぱかー。
毎日最低10人は暗殺者来るから、掃除が大変だったと聞いて、ため息をついた。
祖国から離れたし、敵はいないので、自由にではないが外出可能になったのだ。そりゃ、幸せだし、嬉しいけど、照れるよこの垂れ幕は。
一応、オープンカーならず、屋根のない馬車に乗り込み、街に出ることになった。
・・・馬、いないから、水色の馬の形をした精霊がひいた馬車である。
護衛騎士の従魔らしい・・・。
街もお祝い一色。
祝!初外出!の垂れ幕と祝!創国記念の垂れ幕もある。
皆に手を振り、農園につくと豪農たちと久しぶりに会ったことを謝罪。そして、ついて来てくれたことにお礼を言う。皆は笑顔で私に尽くしたいから勝手にしたことだと言って、気にしないでくれと言った。これからあなたの為に頑張ると言ってくれたので、頼むとお願いした。
牧場にも行き、同じようなやり取りをした。
商家の人たちには別途、後でパーティーを行う予定である。
今日は街内での祭りだ。
飲めや歌えやで楽しく騒いだ。
夕方になり、私は屋敷に戻ることになった。一応、国王陛下になったけど、まだ7歳。早寝早起きが基本らしい。学校も祖国では10歳からだし・・・。まだ、私は子供だ。
まぁ、そんなわけで、ご飯を食べて、食後の軽い運動をして、お風呂に入って就寝。
今日も忙しかった。
神様に短く感謝の念をして、眠る。
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珈琲きの子
BL
数百年に一回生まれる魔王の討伐のため、召喚される勇者。
その勇者様のハーレムをはじめから準備しておくなんてシステムのせいで、落ちこぼれのベルネが選ばれてしまう。けれど、それは雑用係としてだった。
最初は報奨金のために頑張っていたが……――。
※NL表現あり。
※モブとの絡みあり。
※MN、エブリスタでも投稿
悲恋の騎士と姫が転生したら男子高校生だったんだが、姫は俺を落とす気満々だ
つぐみもり
BL
《第一部 翠河の国の姫は押しが強い》
かつて俺は、滅びゆく王国で姫君に忠誠を誓い、命を落とした――
……はずだったのに。
転生したら、なんで俺が男子高校生やってんだ!?
しかも、クラスの陽キャトップ・周藤智哉(すどうともや)は、どう見ても前世の姫君その人。
顔も声も、距離感バグってる性格もそのまま。
今度は身分差も掟もないからって、攻略する気満々で迫ってくるのやめてくれ!
平穏な現代ライフを送りたい陰キャ男子(元騎士)と、全力で落としにかかる陽キャ男子(元姫)の、逆異世界転生BLギャグコメディ!
「見つけたぞ、私の騎士。今度こそ、お前を手に入れる」
「イイエナンノコトカワカリマセン」
忠義も身分も性別も全部飛び越えて、今日も逃げる俺と追いかける姫(男子高校生)
《第二部 熱砂の国からの闖入者》
郁朗と智哉は、前世の想いを飛び越え、ついに結ばれた。
そして迎える高校二年生、健全な男子高校生同士として、健全な交際を続けるはずだったが——
「見つけたぞ姫! 今度こそお前を手に入れる!」
「もしかして、あいつは!?」
「……誰だっけ?」
熱砂の風と共に転校してきた、前世関係者。
千隼と翠瑶姫の過去の因縁が、また一つ紐解かれる。
※残酷描写あり
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