ゆめも

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転生王子と土の巫女

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数日後、発見された土の巫女が城に来た。

ボロい麻の服を着て、頬がこけて、ガリガリだった。年齢は5歳位だろうか?

しかし、顔には見覚えがあった。

前世、おじいちゃん家の隣に遊びに来ていたミホちゃんにそっくりだったのだ。ミホちゃんは150cm85kgのふくよかさだったが、このミホちゃんは、逆だ。これは、太らせなあかん!とつい思ってしまったほどだ。



今回婚約の儀式の為に、初めて家族全員の顔を見ることになった。この3年間、多分、会ったことが無かった陛下とか他の兄弟姉妹たちである。皆、金持ち然とした顔をしていて、震える彼女のことをまるで見ていないと感じた。



彼女はすぐに着替えさせられ、洗われて、もう一度広間に現れた。

皆が皆、彼女に対して、軽蔑するような視線を送っている気がした。

第一王子は微笑みを絶やしていないが、きっと、脳内は算盤がカチカチと動いているだけだと見て分かった。



土の巫女は第一王子にご執心の様で、儀式の間ずっと、彼のことを見ていた。



でも、そんなことより、隣の第二王子を見て!すんごいから。怖いから。



ただでさえ、第二王子は平民での土の巫女を嫌っているのに、更に嫌っている第一王子に見惚れているんだ。わかりやすく見惚れているんだ。怖いぞ。めちゃくちゃ怖いぞ。



継承権がかなり低い私は、それを遠くから見て、恐々とした。

この国もこの世界も怖い。



ないがしろにしてはいけないところをないがしろにしそうで、怖い。



そう思いながら、儀式を見ることになった。



次の日。

起きると死体が3体転がっていた。



声にならない声で叫んだのは仕方が無いと思う。

死体は私を殺そうとした暗殺者だった。

今回は、護衛騎士やセバスが何とかしてくれたけど、今後は鍛える必要があるとセバスが息巻いていた。他の侍女たちも同様に鍛えることに賛成していた。



そして、使用人も含めて、訓練が男女関わりなく行われるようになってしまった・・・。

一体何がどうして・・・。



次の日、セバスの親戚が、3人護衛に加わった。

セバスは黒髪・黒目と日本人のような色合いで、顔は外国顔の超イケメンである。新たに加わった護衛達も同じ色合いで、彼に少し似ていた。

多少、離宮の人間が増え、御飯も必ず、毒見が味見してから、セバスが食べてから、私にアーンされるようになった。



もう、赤ちゃんではないので、そろそろ自分の手で食べたいんだけどと言っているのだが、3歳なので駄目らしい。

早く、4歳になりたいなぁ。



1年後、土の巫女を遠目で見た。

彼女はあんなにガリガリだったのが、少し改善されていた。それでも痩せているし、顔色も悪かった。

見るからに誰かに殴られた跡があり、非常に可哀そうな感じがした。

彼女は私よりも狭い屋敷に住んでいると聞いている。

婚約者である第二王子は、案の定、彼女のことを大事にしていないらしい。

最近知ったのだが、彼女は第二王子と同い歳らしい。

つまり、現在9歳。

なのに、6歳程度にしか見えないとは、ちょっと不味いんでないか?と思わざる得ない。

彼女の方は陛下の監視下に置かれており、処女であることが義務付けられている為、男性は一人も周りにいない。いろんな意味で、彼女は苦労していそうだった。

特に食事に関しては非常に不安だった。



セバスにお願いして、彼女にご飯をと言ったら、大却下された。

ただでさえ、私は命を狙われており、他を気にする余裕などないのだと言われたが、使用人の子達も御飯に困った時に支援していたのに、目の前でガリ痩せの女の子を見捨てられないと訴え、必死にお願いした。

「もう、セバスと一緒にご飯もお風呂も入らない!」

と言ったら、渋々、こっそり侍女をたまに派遣することを了承してくれた。

一応、既に隙を見つけて、土の巫女の侍女とは渡りをつけていたので、週に一度はお腹いっぱいご飯が食べれるように手配した。

本当は毎日そうしてあげたいのだが、監視の目が厳しいので仕方が無い。



ちなみに、なんで週に一度かと言うと陛下がたまにお忍びで行く城下の娼館にいる女性が週一出勤だからだ。

その日は警備が陛下に大勢回されるので、警備に穴が開く。その為、御飯をあげられるのだ。



あまりに情けない理由だが、まぁ、有難い。



土の巫女には、私がやっていると伝えないように言っているが・・・多分、わかるだろうなぁと思う。だって、この城にそう言ったことをする貴族は私以外いないからだ。



そう思ったのが、間違いだったらしい・・・。





それから、更に1年後。

私は5歳になった。

ある程度自由に体が動くようになり、使用人全員が行う訓練にもちょっと参加できるようになった。

訓練はかなり厳しい。

皆は50㎏位ありそうな砂袋を抱えて、離宮の近くにある丘を登ったり下りたりした訓練をしたり、剣や槍の訓練でテレビでしか見たことのないような動きをしてたりしていた。

ワイヤーついていないのに、跳んで回し蹴りとか木を真っ二つとか。

魔法訓練は別の場所でやっているらしいので、見たこと無いが、きっとすごそうな気がする。



私の訓練はその中でもかなり簡単なもの。

荷物を抱えてスクワットと棒を100回正確に振り下ろす訓練。

荷物は20㎏しかないし、棒も料理用の麺棒だし、他の使用人達に比べると月とスッポンの簡易さの訓練だが、結構、真面目に取り組んでいる。

良くは知らないが、毎日の暗殺者もじわじわレベルも人数も増えているんだそうだ。

困るなぁ・・・。



もちろん、父である陛下も知っていると思うのだが、何も対処はされていない・・・と言うか、もしかしたら、陛下さえも暗殺者を送り込んできそうだと思えるのは私だけだろうか・・・。口にしたら、本当になりそうなので、口にしないでおく。



一時期、農地で反乱が起こったらしいが、今は沈静化しているとうわさ話で聞いた。

土の巫女がいるのに、おかしいと今、城では多少の混乱があるので、引きこもっているようにとセバスが口を酸っぱくするくらい言っている。

実は、この混乱が起こる少し前に、使用人たちと一緒に丘に訓練と言う名のピクニックに行ったのが不味かったらしい。

セバスがお城に呼ばれている間だったのも、いけなかったのかもしれない。



一応、大人しく離宮に引きこもっている。でも、5歳なのだ。活発なのだ。引きこもりは非常につらい。確かにこの離宮。狭くて古いと言っても、前世で言うところの5階建ての地下駐車場付きマンション程度の広さと高さがあるのだ。庭にはバラも薬草も一杯植わっているし、少ない予算からたくさん書物も購入して知識もあるのだ。

知識チートや料理無双やりたくなるよね?



一応、この世界には瓶がある。高級ではあるが、白っぽい不透明なガラスの中に漬物を入れる程度の感じだが、一応ある。調味料は砂糖塩コショウはある。味噌や醤油は無いが、麦酒はあるし、ビネガーはある。砂糖は高級品で、出回らないが、サツマイモは普通にある。名前は赤いもと言われているらしいが。

この赤いもは、サツマイモと違って、実は砂糖になる。今は誰も知られていないし、現状では言う気もない。実験していたら、テンサイと同じ方法で砂糖が取れた。

色は真っ黒だが、味さえよければ無問題。

赤いもは荒れ地でも良く育ち、砂漠の蛇と呼ばれる程、大量に茎根を伸ばす。こんなに美味しくて素晴らしい食材と思うのに、畜産用の餌もしくは、ごみとして廃棄されているんだそうだ。あり得ない。

ニワトリさんもこの世界にいる。繁殖力が高く、2日に一度卵を産むので、どこの家庭でも育ているんだそうだ。

牛さんは田舎にしかいないらしい。大きいし、仕方が無い。しかし、ヤギさんはいる。先ほど、ヤギのメイさんから貰ったヤギ乳はある。



と言うことで、現在、私は私用厨房にいます。以前は離宮用の厨房でやっていたが、邪魔になるので、離宮の隣に民家くらいの大きさの家を造ってもらい、そこが私用厨房になった。警備の護衛騎士の休憩所にもなっているし、周りは訓練場でもあるので、安心安心。



私はその中で、コトコトと大鍋5つで赤いもを茹でながら、上澄みを別鍋に移す作業を行っている。

その間に、もう一つの鍋でニワトリの骨をぐつぐつ煮ている。

それでも手が空いているので、大量の玉ねぎを剥きまくり、みじん切りにして、他の鍋に投入。まだ、火は通していないが、100個くらいみじん切りが終わったら炒める予定。

冬だと言うのに大量の熱源に汗だくである。

交代の護衛騎士が入ったとたんに「おっふ。熱い。」と言う程度には部屋が熱い。暑いを通り越して熱いので、部屋の端では、侍女たちが氷魔法の特訓と称して、氷を作りまくっている。



その為か、私の離宮の侍女たちは氷魔法が得意だ。聞けば、この国のほとんどの人は氷魔法使えないんだそうだ。魔法を勉強できるのは10歳かららしいので、私はまだ使えない。残念だ。



そんなこんなで、砂糖を作りながら、鶏がらスープを作り、オニオンスープを作りまくってそれを粉にする作業をこの部屋でやるのが現在の習慣である。

それらの材料で、アイスクリームやシチューをつくり、この離宮で日常的に食べている。レシピも材料も門外不出なので、街には無い。その為、護衛兵も侍女もここでよく休憩がてらご飯を食べる。デザートは唯一、セバスにアーンさせられない食べ物だ。ここでは、私も自分で食べられる。

現在、セバスは屋敷で掃除しているんだそうで、その間、私は料理しながら、護衛兵と侍女たちと一緒に摘まみ食いと言う名のおやつタイム。

今日は初めて挑戦する豚の酢煮。

正確にはオーク肉だが、まぁ、気分の問題。味は豚よりも雑味が多いので、ギザギザの葉・・・ローズマリーによく似た薬草を塩と一緒によく擦りこんでから、洗い、ローリエに似た葉と一緒にビネガーと砂糖と酒で煮た。

最後に塩コショウで味を整え、完成。



結構、美味しくできた。本当は醤油で煮たかったが、無いのでしょうがない。



おやつと言うには重い味だが、みんなでホフホフ言いながら食べた。

しばらくするとセバスが帰ってきて、私は回収され、自室に戻った。料理途中の鍋は侍女たちが片付け、砂糖になるやつは瓶詰めしてくれるそうだ。ありがたい。



部屋に帰ってきて、セバスに抱っこされながら、報告を受ける。

第一王子は王族としてきちんと義務を果たして仕事しているんだそうだが、最近通い出した学校で、変な女に纏わりつかれているんだとか。第二王子はその女に首ったけなんだそうだ。土の巫女も学校に通っているので、ちょっと不安だと思ったら、案の定、虐げられているんだそうだ。

現在、土の巫女は10歳。結婚は、14歳の時にあると言うが・・・大丈夫だろうか?

前世でよく見たざまぁ系では、ヒロインに無実の罪を着せられ国外追放される・・・今回小説ではないので、ざまぁされないで、野垂れ死にしてしまう可能性大。



・・・それは、まずい。

土の巫女。これは、あの本から考えるに、この国ではなく、この世界にとっての神様の使いだ。虐げていることも怖いのに、野垂れ死にさせたらなんか恐ろしいことになるのは確実な気がする。

この国、神様に対して、適当過ぎるきらいがある。恩恵に縋らなきゃ生きていけないのに、感謝していない。

あまりに恐ろしすぎるので、自室に小さな箱を用意し、そこに手作りの神様人形をつくり、私は毎日お祈りしている。



今日もお祈りで、現状を報告している。本当、心の安寧の為に必要。

セバスはちょっと不満そうに私がお祈りしている姿を見るが、それでもやめられない。だって、本当に怖いんだもの。

今日は土の巫女を助けて欲しいと祈った。

そして、その願いは、遠からずに叶えられることになった。

とても、残念な形で。
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