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戻った公爵子息
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私は、その日感じたことを忘れ、日々姉がまともになるように努力した。
その間に、私自身も成長した。
学力面でも体力面でもだ。
そして、年月は過ぎる。
私が8歳。姉が9歳。妹が3歳になった。
妹は、最近人真似ばかりする。
父が肩コリで肩に手を当ててから首を揺らす仕草をまねたり、義母が扇で口元を隠しながら笑う真似をしたり、剣術練習をしている私の真似をしたり、姉が一人ダンスで練習しているのも見ていたらしく、その真似とかもしていた。
姉が照れて、「いつ見たのよ」と耳まで赤くなって蹲るのを見て、ちょっと可愛いと思ってしまった。
姉がおかしくなるのは来年。
だが、今の姉ならそんなことにはならないと思った。
最近、義母の様子がおかしい。ちょっと父上に対しての態度が余所余所しい気がするのだ。確か、前世でもそうだった気がする。きっかけはわからなかった。今も前世でも。
そこで、ふと思い出す。
妹が死んですぐ、義母も死んだのだ。
妹が死んでショックを受けて、服毒して。
いや、でも、大丈夫だ。妹は今度は死なない。だから、大丈夫。
そして、そんなことを考えながら、姉の部屋で妹の真似っこを見ながら、笑いあっていた瞬間、背筋に冷たいものが走った。
ゾクリと。
『ちゃんと思い出せ。』
そう言われている気がした。
誰に?わからないが、聞いたことのない男の声でそう言われて気がした。
だから、前世のことをもう一度、思い出そうとした。
妹と姉が不思議そうにする。
だから、一度二人に「めまいがする」と言ってから、二人から離れて、ベランダに向かった。
妹が死ぬ前にも妹は真似っこしていた。
その数か月前からやる仕草が、なんか同じようで同じでない誰の真似っこかわからない仕草をした。
思い出して、自分も同じジェスチャーをしてみる。
何かを持って、そこから何か出す。
ニヤリと笑う。
指をさす。
何かを手に取る。
頷く。
何かを広げる。
何かを捨てる。
それからいつも妹は赤い花を指さした。
そして、赤い花を潰そうとして、私と姉がそれを止めた。
「え?」
うすら寒いものを感じる。
感じた想像を打ち消したくて仕方が無い。
3年前も何かを打ち消した気がする。
このベランダで。
心が否定したいと思っている。
心が考えたくないと思っている。
『ちゃんと思い出せ。』
もう一度、今度ははっきり直接脳内に言われたと思った。
だから、息をのんで、嫌な汗が出ているが、それでもちゃんと考えた。
袋から金貨を出し、嫌な笑いを浮かべ、一枚の紙が机にあり、それを指さす誰か。
それを手に取るもう一人の誰か。
そして、頷きあって、その紙を広げて、その紙を燃やした。
そして、赤い花を潰した。・・・血が広がった様子だろう。
お金のやり取り。命令書のやり取り。命のやり取り。
そして、それらをこの屋敷の人間がやっている。
一番考えたくないが、妹は家族の真似しか当時しなかった。使用人の真似は危ないからだ。使用人は窓を拭く為にはしごに登ったりする。妹には危ない。
だから、妹にはみんなで教育したのだ。
使用人の真似はしてはいけないと。
それは今世でもちゃんと・・・あれ?そうだ。妹はお立ち台に一人で昇るはずがない。
だって、そう教育して、妹はそれを破るような子じゃなかった。
あれ?あれ?あれ???
『逃げるな!!!』
また、直接脳内に言われた。
理解、しようと、頭が痛くなるのを必死に、必死に我慢・・・我慢した。
父が妹を殺したと言う。
嫌な事実をちゃんと理解するために、私の脳みそは、ちゃんと動き始めた。
義母が死ぬ前、私と姉とピクニックに行く約束をしたのに自殺した。
だから、その考えも、理解した。
義母は殺されたのだと、父に。
理解したくない事実を理解するために頭が回転する。
否定したい。
否定したくて仕方が無い。
妹は見てはいけないものを見たのだろう。
父はそれに気づいて、妹を殺したのだ。
妹を殺した罪を姉に擦り付ける為に、お立ち台を自分で動かし、姉のせいにした。
しかし、矛盾に気付いた義母が父を追求したのか、それとも、義母が気付いたことに父が単純に気付いたからか、義母は毒殺されたのだ。口封じの為に。
そう考えれば、すべて納得がいく。
姉が必死に否定した理由も理解できる。
なぜなら、姉は本当にやっていなかったのだから。
なのに、誰も姉を信じなかった。
大事な大切な妹を殺したとみんなになじられた。
そんな中、唯一信じてくれた義母が自殺したとされた。
自分のせいでときっと姉なら思っただろう。
姉は悪くなかったのだ。
正解にたどり着いたからだろう。頭痛は収まった。代わりに涙が止まらない。
父が妹と義母をこれから殺すだろう未来に。
否定したかった。
そんな筈がないと思った。
でも、思い返せば、いろんな出来事がそれらを肯定する。
お金に困っていた父が急に金遣いが荒くなった前世。
新たな義母どころか妾の女が3人もできた当時の父。
離れの屋敷を3棟も作ったり、牧場を作ったのもその時期だった気がする。
そして、第二王子との婚約が決まったのもそのすぐ後だった。
当時は姉の婚約の支度金を貰ってと言っていた気がする。
当時はお金に対して、そこまで知識が無かったから、深く考えなかったが、よく考えれば、すぐにわかる。
婚約の支度金ごときで、屋敷3棟と牧場がつくれるはずがない。
新たな妻と3人の妾を迎えられるはずがない。
いや、まだ、大丈夫だ。
だって、まだ誰も死んでいない。
父を止めることが出来る筈だ。
その間に、私自身も成長した。
学力面でも体力面でもだ。
そして、年月は過ぎる。
私が8歳。姉が9歳。妹が3歳になった。
妹は、最近人真似ばかりする。
父が肩コリで肩に手を当ててから首を揺らす仕草をまねたり、義母が扇で口元を隠しながら笑う真似をしたり、剣術練習をしている私の真似をしたり、姉が一人ダンスで練習しているのも見ていたらしく、その真似とかもしていた。
姉が照れて、「いつ見たのよ」と耳まで赤くなって蹲るのを見て、ちょっと可愛いと思ってしまった。
姉がおかしくなるのは来年。
だが、今の姉ならそんなことにはならないと思った。
最近、義母の様子がおかしい。ちょっと父上に対しての態度が余所余所しい気がするのだ。確か、前世でもそうだった気がする。きっかけはわからなかった。今も前世でも。
そこで、ふと思い出す。
妹が死んですぐ、義母も死んだのだ。
妹が死んでショックを受けて、服毒して。
いや、でも、大丈夫だ。妹は今度は死なない。だから、大丈夫。
そして、そんなことを考えながら、姉の部屋で妹の真似っこを見ながら、笑いあっていた瞬間、背筋に冷たいものが走った。
ゾクリと。
『ちゃんと思い出せ。』
そう言われている気がした。
誰に?わからないが、聞いたことのない男の声でそう言われて気がした。
だから、前世のことをもう一度、思い出そうとした。
妹と姉が不思議そうにする。
だから、一度二人に「めまいがする」と言ってから、二人から離れて、ベランダに向かった。
妹が死ぬ前にも妹は真似っこしていた。
その数か月前からやる仕草が、なんか同じようで同じでない誰の真似っこかわからない仕草をした。
思い出して、自分も同じジェスチャーをしてみる。
何かを持って、そこから何か出す。
ニヤリと笑う。
指をさす。
何かを手に取る。
頷く。
何かを広げる。
何かを捨てる。
それからいつも妹は赤い花を指さした。
そして、赤い花を潰そうとして、私と姉がそれを止めた。
「え?」
うすら寒いものを感じる。
感じた想像を打ち消したくて仕方が無い。
3年前も何かを打ち消した気がする。
このベランダで。
心が否定したいと思っている。
心が考えたくないと思っている。
『ちゃんと思い出せ。』
もう一度、今度ははっきり直接脳内に言われたと思った。
だから、息をのんで、嫌な汗が出ているが、それでもちゃんと考えた。
袋から金貨を出し、嫌な笑いを浮かべ、一枚の紙が机にあり、それを指さす誰か。
それを手に取るもう一人の誰か。
そして、頷きあって、その紙を広げて、その紙を燃やした。
そして、赤い花を潰した。・・・血が広がった様子だろう。
お金のやり取り。命令書のやり取り。命のやり取り。
そして、それらをこの屋敷の人間がやっている。
一番考えたくないが、妹は家族の真似しか当時しなかった。使用人の真似は危ないからだ。使用人は窓を拭く為にはしごに登ったりする。妹には危ない。
だから、妹にはみんなで教育したのだ。
使用人の真似はしてはいけないと。
それは今世でもちゃんと・・・あれ?そうだ。妹はお立ち台に一人で昇るはずがない。
だって、そう教育して、妹はそれを破るような子じゃなかった。
あれ?あれ?あれ???
『逃げるな!!!』
また、直接脳内に言われた。
理解、しようと、頭が痛くなるのを必死に、必死に我慢・・・我慢した。
父が妹を殺したと言う。
嫌な事実をちゃんと理解するために、私の脳みそは、ちゃんと動き始めた。
義母が死ぬ前、私と姉とピクニックに行く約束をしたのに自殺した。
だから、その考えも、理解した。
義母は殺されたのだと、父に。
理解したくない事実を理解するために頭が回転する。
否定したい。
否定したくて仕方が無い。
妹は見てはいけないものを見たのだろう。
父はそれに気づいて、妹を殺したのだ。
妹を殺した罪を姉に擦り付ける為に、お立ち台を自分で動かし、姉のせいにした。
しかし、矛盾に気付いた義母が父を追求したのか、それとも、義母が気付いたことに父が単純に気付いたからか、義母は毒殺されたのだ。口封じの為に。
そう考えれば、すべて納得がいく。
姉が必死に否定した理由も理解できる。
なぜなら、姉は本当にやっていなかったのだから。
なのに、誰も姉を信じなかった。
大事な大切な妹を殺したとみんなになじられた。
そんな中、唯一信じてくれた義母が自殺したとされた。
自分のせいでときっと姉なら思っただろう。
姉は悪くなかったのだ。
正解にたどり着いたからだろう。頭痛は収まった。代わりに涙が止まらない。
父が妹と義母をこれから殺すだろう未来に。
否定したかった。
そんな筈がないと思った。
でも、思い返せば、いろんな出来事がそれらを肯定する。
お金に困っていた父が急に金遣いが荒くなった前世。
新たな義母どころか妾の女が3人もできた当時の父。
離れの屋敷を3棟も作ったり、牧場を作ったのもその時期だった気がする。
そして、第二王子との婚約が決まったのもそのすぐ後だった。
当時は姉の婚約の支度金を貰ってと言っていた気がする。
当時はお金に対して、そこまで知識が無かったから、深く考えなかったが、よく考えれば、すぐにわかる。
婚約の支度金ごときで、屋敷3棟と牧場がつくれるはずがない。
新たな妻と3人の妾を迎えられるはずがない。
いや、まだ、大丈夫だ。
だって、まだ誰も死んでいない。
父を止めることが出来る筈だ。
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