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本編《カナリア》
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朝、目を覚ます。
隣には白衣のおばあさん。
涙目のお兄ちゃん。
室内のソファーで寄り添うように眠る父と母。
一度逡巡して思う。
ああ、また死にかけたのかと。
私、カナリア・モブハントは、モブハント伯爵家の令嬢である。
生まれつき病弱で、出来ることは本を読むことと歌うことくらい。刺繍は多少できるけど、この前吐血しちゃったせいで台無しになった数が二桁になった為、とても体調がいい時以外は出来ない。
現在、12歳である。
一応、13歳から学園入学がこの国の貴族の義務なのだけれど、恐らく難しいであろうと思われる。
だって、この5年ほど外に出ていないから。
5年ほど前から私の体調は悪化の一途。
理由を…私は知っている。
悪化し始めたのは、公爵家からの侍女リーリアがついてからだから。
彼女が入れるお茶。
多分、それが原因と思う。
でも、私はそれを言えない。
私には婚約者がいる。
カルド・デイニス公爵子息。
宰相の長男でありながら、近衛騎士団長に目をかけられていると言う文武両道の天才。彼の両親が偶然私を気に入り、私の両親が困惑する中、かなり強引に漕ぎつけられた婚約だった。勿論、私の意思は挟む隙さえ無かった。
何度か会ったデイニス公爵夫妻はとてもひょうきんな方々で、私の色と声が気に入ったと言う。
たったそれだけの理由。
一応、私は病弱だから難しいと言う旨は両親からも聞いているようだが、彼らはそれでもかまわないと言う。
彼らにはカルド様以外にも子息子女がいる。
長女 アーナス様 頭は良いし、運動神経も良いけど、それよりも騎士道よと言う。おてんば娘らしい。カルド様とは3歳上。
次男 メルド様 頭は良いけど、運動神経は微妙。カルド様とは1歳下。
皆一様に容姿にも才能にも恵まれており、引く手数多。跡継ぎに関しては心配していないとのこと。
なるほど。
長男と私の間に子が出来なくてもアーナス様もしくはメルド様のどちらかの子が生まれるだろうと言う考えなんだろう。
それなら、私からどうにか言って、説得することは非常に困難だ。うん。
でも、公爵家で一番跡取りと名高い、長男のカルド様よりも次男に嫁がせた方が良いと思うのだけど、その点に関しては、この夫妻の悪戯っ子っぽい顔から何にも言うことはできなかった。
それが私が5歳の時である。
一応、婚約者となったら、貴族なら少なくとも最低1か月に1度は会うのが普通である。
カルド様は私が婚約者になることに関して、非常に不満を持っているのは初対面で分かった。
でも、だからと言って、私からはどうにもできない。
基本的に、会うと言ってもほとんどお見舞いの形になるのだから。
カルド様が入室する。カルド様が挨拶をする。私が挨拶を返す。近況を話すと言っても、私には話せる内容はかなり少ないから聞く一方。
そんな感じである。
それでも、特に仲が良くも悪くもなかった。
カルド様は不満だけど、文句を言うほど悪くもない程度だったんだと思う。
それが変わったのが、7歳の時。
私が風邪をひいて、3日程寝込んだ時のこと。その間、彼は友人と訓練合宿に行っていたらしく、家で合宿が楽しかったと話して大声で笑ったらしい。それを宰相夫妻が激怒した。
「自分の婚約者が生死の境にいたのに、笑えるとはいい度胸してるわね。」
と。
「別に風邪じゃないか。」
とカルド様は言ったらしいのだが、
「彼女にはたかが風邪じゃない。」
と言って、こんこんと説教されたらしい。
そう、この世界の医療技術はあまり…お世辞にも発展しているとはいいがたい。
薬学にしろ、医術にしろ現在の医療技術と比べるのもおこがましいほどである。
そんな世界で風邪をひいた私は残念ながら、確かに生死の境をうろついちゃったのだ。てへぺろ。
…ここできっと読者にはわかったかと思う。
そう、私は転生者である。
と言っても、ほとんどの記憶は無い。
知っているのは、恐らく私はモブとして、学園に入学前もしくは彼の卒業後には居なくなっていると言うことくらいだ。
ここは乙女ゲームととてもよく似た世界である。誰がヒロインかは全く思い出せないけど。攻略キャラさえもうる覚えだけど。
そして、乙女ゲーム自体に私の登場は1行あるか無いか。それも読み飛ばす程度の存在である。
攻略対象者である宰相子息のカルド様が邪魔に思う元々の婚約者が私である。
長女も次男も王家や侯爵家との縁組が決まっている中、跡取りの筈のカルド様だけ伯爵令嬢が婚約者。まぁ、不満は仕方が無いと思う。
うちの家が中立派で、選ぶならまぁ、ここが妥当なのもなんとなくわかるような分からないような…。まぁ、初対面であなたの色と声に惚れましたが宰相夫妻の第一声だったしなぁ。
まぁ、うん。別に私はどうにも言えないし、言わない。
でも、ね?
彼が送ってきた刺客がリーリアって言うのだけが不満かな?
だってね?同い年の伯爵令嬢なのよ?リーリアって。
彼女の意思なのか彼の意思なのかは知らないけど、彼女、私に毒盛ってるんだよ?
まだ、7歳の幼女にそんなこと強いるのは、可哀想じゃない?
まぁ、そんなことやろうがやるまいが、多分、私はもうちょっとで死ぬ気がするけどさ。
倒れる度に、今回の毒の種類は何かを調べるのが最近の流行り。
最近、微妙に耐性が着いちゃったらしく、マヒ関係はあんまり聞かなくなってきている気がしないでもない。
まぁ、毎日と言って良いほど盛られる毒のせいで内臓が壊れている気がするのは、否めないけど。
初めの頃、リーリアは毒を盛る時、手を震わせていた。
最近はなんか自棄になってる気さえするけどね。
本当、彼女は可哀そうな子だと思う。
そんな中、彼は最近は家に来ても私に挨拶さえしない。義務として、部屋に来て、本を読んで、帰るだけ。
勿論、私付きの侍女もカルド様の執事も知っており、聞いた話、カルド様のご両親からはカルド様に叱責があるらしいけど、それさえも無視されている模様。
まぁ、12歳になれば、反抗期も致し方ないと思う。
でも、あぁ、わたしこのままじゃ、なーんにもしないで死んじゃうなぁ…。ちょっと寂しいなぁ。
日記にちょいちょいそのことを書いていたら、ある日、兄が日記を盗み見たらしく、気付かれた。
そして、事情聴取された。
リーリアは残念ながら、衛兵に連れて行かれました。
…まぁ、仕方ないよね。
彼女は私には恨み言を言わなかった。
でも、カルド様には一杯一杯恨み言を叫んでいた。
私にはそんな熱量は無い。でも、彼女はとても可哀想だった。本当に。
だから、彼女があまり罪に問われない様に両親にも衛兵の方々にも説得をしました。彼女がまだ未成年で学園にも入っていない子なので、恐らくはそこまで問題にならないと思うのだけれど、何度か死にかけてますから、無罪は無理かなぁ…。
で、当の本人のカルド様は、
「私は何も?彼女には愚痴を少し言っただけですよ?」
とか抜かしたらしい。
そして、彼は無罪放免。
ぷっちーん。
私はキレましたよ!
これはグーパンものです!
鉄拳です!
そんな中、彼はいつも通り、うちに来て、いつも通り、挨拶もせずに本を読もうとし始めました。
ブチ切れた私は、彼の顔面に向かって正拳をぶち込みました。
ぺちん。
あまり良い音はしません。
でも、彼女の恨みつらみを私は晴らさなければなりません。
連続攻撃です。
てしてしてし!!!
(グーパンを彼に向かって繰り出し中の音)
なんか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてます。
「お前、何がしたいの?」
とカルド様が言います。
「あんな幼くか弱いリーリアをよくもよくもあんな目にあわせましたね!あなたの思考を酷く疑います。」
「お前、何言ってんの?あいつが勝手に勘違いして、勝手に毒盛っただけじゃん。あいつが悪いだろ?なんで、俺が悪いとか言うの?それにお前の家がリーリアを捕まえたんだろ?お前の家の人間のせいじゃん。」
と一気にまくしたてました。
もう一度、私は彼の顔面に正拳をぶち込みます!
ぺちん。
「あなたがそう仕向けたんでしょうが!」
ぺちん。
「7歳の」
ぺちん。
「幼女が」
ぺちん。
「涙をこらえて」
ぺちん。
「はぁはぁ・・・」
疲れてきました。息を整えて、少し深呼吸をします。
「本当、彼女は可哀そうな子でした。捕まった時も彼女は私に恨み言一つ言いませんでしたよ。むしろ、私に対しては申し訳ないと言う仕草でした。」
「へー。」
彼は何にも感じていないようです。
もう、本当、人間的に此奴嫌いです。
「そうですか!ならば、私は日記を衛兵に提出しましょう。」
「は?」
「伯爵家のリーリアがどう考えても手に入れられない毒がありましたもの。あなた以外の誰です?毒を彼女に提供していたのは?」
そう言うと彼はカチンと固まった。
そりゃそうだ。
12歳の浅知恵なんか穴だらけだ。それも当時は7歳だ。浅知恵も浅知恵。
公爵家であり、先代宰相であったの義理の祖父様が毒物を何も管理せずにいる筈がない。
目をこぼしてあげているだけだろう。
それの証拠に宰相夫妻がこの前謝りに来た。
そして、日記の写しを持って帰っていったもの。
その際に、カルド様との婚約は解消され、代わりに5歳下のエルド君との婚約を結ばされたんだもの。
しかも、エルド君は私を大切にしてくれるって言ってくれました。とても紳士で良い子でした。
7歳なのにね。
やっぱ思うんだけど、乙女ゲームの攻略キャラって基本クズだと思うのは、私だけなのかな?
だって、婚約者がいる高位貴族の坊ちゃんが下位貴族の娘に首ったけって話でしょ?
浮気上等ってことじゃん?
本当、軽蔑する。
下位貴族の娘にとってはシンデレラストーリーだと思うけど、親にもその婚約者にも済まないって思わないのかな?本当。
閑話休題。
この場を実は隣の部屋で両親と宰相夫妻が見ている。
彼は知らない。
宰相の私兵がドアの向こうでスタンバイしているのを。
彼は知らない。
「日記にはこれまで使われた毒とその症状について細かく記述しました。それの対処方法なども後日の日記に記述しています。」
彼の顔がどんどんこわばる。
「あなたが薬を手に入れていた場所は宰相のお父様、義理の祖父様の家のようですね?ここ王都から半日かかる場所。」
彼は、私の腕をギリッとなりそうなほど強く握って来ました。
私は思わず、顔をしかめましたが、我慢します。
「あなたが義理の祖父様の家に行った数日後に必ず私は毒を盛られました。」
更に強く握られます。
滅茶苦茶痛いです。
「私が確認に行きましょうか?義理の祖父様に。」
すると彼は体をビクンと跳ねさせ、私のことを鬼の形相で睨みます。
そのまま、私の首に手をかけました。
と同時に、ドアが開き、宰相様の私兵が押し寄せてきました。
直ぐに私は救われたけど、ほんの一瞬なのにもかかわらず、私の首には赤いあざが出来てしまいました。捕まれた腕はぶらーんとしてます。どうやら、骨折しちゃった模様。
あぁ、本当、私は貧弱です。
痛くて涙が出ます。
でも、リーリアの5年間の苦しみに比べれば、屁でもないでしょう。私が止めてあげれたら良かったのだけど、言葉が何年経っても見つからなかったの。本当、転生して、私が一番年長者の筈なのに、私は不器用極まりない。
まぁ、前世のことはほとんど覚えていないけどね。
私がもっと器用だったら、カルド様にもリーリア様にも悲しい思いや辛い思いはさせなかったのにと思う。
あぁ、出来れば、来世はどうかもっと器用に生まれますように。
いや、違うな。
考えを改める。
私は神様に祈る。
どうか、皆が救われますようにと。
隣には白衣のおばあさん。
涙目のお兄ちゃん。
室内のソファーで寄り添うように眠る父と母。
一度逡巡して思う。
ああ、また死にかけたのかと。
私、カナリア・モブハントは、モブハント伯爵家の令嬢である。
生まれつき病弱で、出来ることは本を読むことと歌うことくらい。刺繍は多少できるけど、この前吐血しちゃったせいで台無しになった数が二桁になった為、とても体調がいい時以外は出来ない。
現在、12歳である。
一応、13歳から学園入学がこの国の貴族の義務なのだけれど、恐らく難しいであろうと思われる。
だって、この5年ほど外に出ていないから。
5年ほど前から私の体調は悪化の一途。
理由を…私は知っている。
悪化し始めたのは、公爵家からの侍女リーリアがついてからだから。
彼女が入れるお茶。
多分、それが原因と思う。
でも、私はそれを言えない。
私には婚約者がいる。
カルド・デイニス公爵子息。
宰相の長男でありながら、近衛騎士団長に目をかけられていると言う文武両道の天才。彼の両親が偶然私を気に入り、私の両親が困惑する中、かなり強引に漕ぎつけられた婚約だった。勿論、私の意思は挟む隙さえ無かった。
何度か会ったデイニス公爵夫妻はとてもひょうきんな方々で、私の色と声が気に入ったと言う。
たったそれだけの理由。
一応、私は病弱だから難しいと言う旨は両親からも聞いているようだが、彼らはそれでもかまわないと言う。
彼らにはカルド様以外にも子息子女がいる。
長女 アーナス様 頭は良いし、運動神経も良いけど、それよりも騎士道よと言う。おてんば娘らしい。カルド様とは3歳上。
次男 メルド様 頭は良いけど、運動神経は微妙。カルド様とは1歳下。
皆一様に容姿にも才能にも恵まれており、引く手数多。跡継ぎに関しては心配していないとのこと。
なるほど。
長男と私の間に子が出来なくてもアーナス様もしくはメルド様のどちらかの子が生まれるだろうと言う考えなんだろう。
それなら、私からどうにか言って、説得することは非常に困難だ。うん。
でも、公爵家で一番跡取りと名高い、長男のカルド様よりも次男に嫁がせた方が良いと思うのだけど、その点に関しては、この夫妻の悪戯っ子っぽい顔から何にも言うことはできなかった。
それが私が5歳の時である。
一応、婚約者となったら、貴族なら少なくとも最低1か月に1度は会うのが普通である。
カルド様は私が婚約者になることに関して、非常に不満を持っているのは初対面で分かった。
でも、だからと言って、私からはどうにもできない。
基本的に、会うと言ってもほとんどお見舞いの形になるのだから。
カルド様が入室する。カルド様が挨拶をする。私が挨拶を返す。近況を話すと言っても、私には話せる内容はかなり少ないから聞く一方。
そんな感じである。
それでも、特に仲が良くも悪くもなかった。
カルド様は不満だけど、文句を言うほど悪くもない程度だったんだと思う。
それが変わったのが、7歳の時。
私が風邪をひいて、3日程寝込んだ時のこと。その間、彼は友人と訓練合宿に行っていたらしく、家で合宿が楽しかったと話して大声で笑ったらしい。それを宰相夫妻が激怒した。
「自分の婚約者が生死の境にいたのに、笑えるとはいい度胸してるわね。」
と。
「別に風邪じゃないか。」
とカルド様は言ったらしいのだが、
「彼女にはたかが風邪じゃない。」
と言って、こんこんと説教されたらしい。
そう、この世界の医療技術はあまり…お世辞にも発展しているとはいいがたい。
薬学にしろ、医術にしろ現在の医療技術と比べるのもおこがましいほどである。
そんな世界で風邪をひいた私は残念ながら、確かに生死の境をうろついちゃったのだ。てへぺろ。
…ここできっと読者にはわかったかと思う。
そう、私は転生者である。
と言っても、ほとんどの記憶は無い。
知っているのは、恐らく私はモブとして、学園に入学前もしくは彼の卒業後には居なくなっていると言うことくらいだ。
ここは乙女ゲームととてもよく似た世界である。誰がヒロインかは全く思い出せないけど。攻略キャラさえもうる覚えだけど。
そして、乙女ゲーム自体に私の登場は1行あるか無いか。それも読み飛ばす程度の存在である。
攻略対象者である宰相子息のカルド様が邪魔に思う元々の婚約者が私である。
長女も次男も王家や侯爵家との縁組が決まっている中、跡取りの筈のカルド様だけ伯爵令嬢が婚約者。まぁ、不満は仕方が無いと思う。
うちの家が中立派で、選ぶならまぁ、ここが妥当なのもなんとなくわかるような分からないような…。まぁ、初対面であなたの色と声に惚れましたが宰相夫妻の第一声だったしなぁ。
まぁ、うん。別に私はどうにも言えないし、言わない。
でも、ね?
彼が送ってきた刺客がリーリアって言うのだけが不満かな?
だってね?同い年の伯爵令嬢なのよ?リーリアって。
彼女の意思なのか彼の意思なのかは知らないけど、彼女、私に毒盛ってるんだよ?
まだ、7歳の幼女にそんなこと強いるのは、可哀想じゃない?
まぁ、そんなことやろうがやるまいが、多分、私はもうちょっとで死ぬ気がするけどさ。
倒れる度に、今回の毒の種類は何かを調べるのが最近の流行り。
最近、微妙に耐性が着いちゃったらしく、マヒ関係はあんまり聞かなくなってきている気がしないでもない。
まぁ、毎日と言って良いほど盛られる毒のせいで内臓が壊れている気がするのは、否めないけど。
初めの頃、リーリアは毒を盛る時、手を震わせていた。
最近はなんか自棄になってる気さえするけどね。
本当、彼女は可哀そうな子だと思う。
そんな中、彼は最近は家に来ても私に挨拶さえしない。義務として、部屋に来て、本を読んで、帰るだけ。
勿論、私付きの侍女もカルド様の執事も知っており、聞いた話、カルド様のご両親からはカルド様に叱責があるらしいけど、それさえも無視されている模様。
まぁ、12歳になれば、反抗期も致し方ないと思う。
でも、あぁ、わたしこのままじゃ、なーんにもしないで死んじゃうなぁ…。ちょっと寂しいなぁ。
日記にちょいちょいそのことを書いていたら、ある日、兄が日記を盗み見たらしく、気付かれた。
そして、事情聴取された。
リーリアは残念ながら、衛兵に連れて行かれました。
…まぁ、仕方ないよね。
彼女は私には恨み言を言わなかった。
でも、カルド様には一杯一杯恨み言を叫んでいた。
私にはそんな熱量は無い。でも、彼女はとても可哀想だった。本当に。
だから、彼女があまり罪に問われない様に両親にも衛兵の方々にも説得をしました。彼女がまだ未成年で学園にも入っていない子なので、恐らくはそこまで問題にならないと思うのだけれど、何度か死にかけてますから、無罪は無理かなぁ…。
で、当の本人のカルド様は、
「私は何も?彼女には愚痴を少し言っただけですよ?」
とか抜かしたらしい。
そして、彼は無罪放免。
ぷっちーん。
私はキレましたよ!
これはグーパンものです!
鉄拳です!
そんな中、彼はいつも通り、うちに来て、いつも通り、挨拶もせずに本を読もうとし始めました。
ブチ切れた私は、彼の顔面に向かって正拳をぶち込みました。
ぺちん。
あまり良い音はしません。
でも、彼女の恨みつらみを私は晴らさなければなりません。
連続攻撃です。
てしてしてし!!!
(グーパンを彼に向かって繰り出し中の音)
なんか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてます。
「お前、何がしたいの?」
とカルド様が言います。
「あんな幼くか弱いリーリアをよくもよくもあんな目にあわせましたね!あなたの思考を酷く疑います。」
「お前、何言ってんの?あいつが勝手に勘違いして、勝手に毒盛っただけじゃん。あいつが悪いだろ?なんで、俺が悪いとか言うの?それにお前の家がリーリアを捕まえたんだろ?お前の家の人間のせいじゃん。」
と一気にまくしたてました。
もう一度、私は彼の顔面に正拳をぶち込みます!
ぺちん。
「あなたがそう仕向けたんでしょうが!」
ぺちん。
「7歳の」
ぺちん。
「幼女が」
ぺちん。
「涙をこらえて」
ぺちん。
「はぁはぁ・・・」
疲れてきました。息を整えて、少し深呼吸をします。
「本当、彼女は可哀そうな子でした。捕まった時も彼女は私に恨み言一つ言いませんでしたよ。むしろ、私に対しては申し訳ないと言う仕草でした。」
「へー。」
彼は何にも感じていないようです。
もう、本当、人間的に此奴嫌いです。
「そうですか!ならば、私は日記を衛兵に提出しましょう。」
「は?」
「伯爵家のリーリアがどう考えても手に入れられない毒がありましたもの。あなた以外の誰です?毒を彼女に提供していたのは?」
そう言うと彼はカチンと固まった。
そりゃそうだ。
12歳の浅知恵なんか穴だらけだ。それも当時は7歳だ。浅知恵も浅知恵。
公爵家であり、先代宰相であったの義理の祖父様が毒物を何も管理せずにいる筈がない。
目をこぼしてあげているだけだろう。
それの証拠に宰相夫妻がこの前謝りに来た。
そして、日記の写しを持って帰っていったもの。
その際に、カルド様との婚約は解消され、代わりに5歳下のエルド君との婚約を結ばされたんだもの。
しかも、エルド君は私を大切にしてくれるって言ってくれました。とても紳士で良い子でした。
7歳なのにね。
やっぱ思うんだけど、乙女ゲームの攻略キャラって基本クズだと思うのは、私だけなのかな?
だって、婚約者がいる高位貴族の坊ちゃんが下位貴族の娘に首ったけって話でしょ?
浮気上等ってことじゃん?
本当、軽蔑する。
下位貴族の娘にとってはシンデレラストーリーだと思うけど、親にもその婚約者にも済まないって思わないのかな?本当。
閑話休題。
この場を実は隣の部屋で両親と宰相夫妻が見ている。
彼は知らない。
宰相の私兵がドアの向こうでスタンバイしているのを。
彼は知らない。
「日記にはこれまで使われた毒とその症状について細かく記述しました。それの対処方法なども後日の日記に記述しています。」
彼の顔がどんどんこわばる。
「あなたが薬を手に入れていた場所は宰相のお父様、義理の祖父様の家のようですね?ここ王都から半日かかる場所。」
彼は、私の腕をギリッとなりそうなほど強く握って来ました。
私は思わず、顔をしかめましたが、我慢します。
「あなたが義理の祖父様の家に行った数日後に必ず私は毒を盛られました。」
更に強く握られます。
滅茶苦茶痛いです。
「私が確認に行きましょうか?義理の祖父様に。」
すると彼は体をビクンと跳ねさせ、私のことを鬼の形相で睨みます。
そのまま、私の首に手をかけました。
と同時に、ドアが開き、宰相様の私兵が押し寄せてきました。
直ぐに私は救われたけど、ほんの一瞬なのにもかかわらず、私の首には赤いあざが出来てしまいました。捕まれた腕はぶらーんとしてます。どうやら、骨折しちゃった模様。
あぁ、本当、私は貧弱です。
痛くて涙が出ます。
でも、リーリアの5年間の苦しみに比べれば、屁でもないでしょう。私が止めてあげれたら良かったのだけど、言葉が何年経っても見つからなかったの。本当、転生して、私が一番年長者の筈なのに、私は不器用極まりない。
まぁ、前世のことはほとんど覚えていないけどね。
私がもっと器用だったら、カルド様にもリーリア様にも悲しい思いや辛い思いはさせなかったのにと思う。
あぁ、出来れば、来世はどうかもっと器用に生まれますように。
いや、違うな。
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私は神様に祈る。
どうか、皆が救われますようにと。
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