皇國の防戦記

長上郡司

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第三章 山岳城塞奪還戦

38 開門装置

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「俺ら要らなかったんじゃないか?」




そう呟くヴォルゲンの眼前には、夥しい数の敵兵の亡骸が転がされていた。




結局、ヴォルゲン隊はほとんど動かないまま、先鋒の百人程度で城門守備隊の大多数を片付けてしまったのだ。




「お前が居ると居ないとじゃ、下の安心感が違うでな。要るよお前は、必要な人間だ。」




愚痴をこぼすヴォルゲンを慰めるグレン。




「そうか・・・」




“それは本来、ガランの役目じゃないのか?”




思うことはあれど、ヴォルゲンはそれを飲み込むことにした。
















「ヴィクトル、ブラド隊長はまだ殺り合ってるな?」




「数が多いですからね、向こうは」




「エリア、開門装置の場所は分かったか?」




「ちょっと手間取りましたけどね、事前情報の話しと違う所にありました。」




「よくやったエリア」




「こちらです、隊長」




「隊長、向こうは助けに行かなくて良いの?」




アイラがブラド隊の方向を指差す。




「あの人には余分な手助けはするなって言われとらるでな、俺らは俺らの役割がある」




「そう」




「わざわざ助けにいかんでも、城門さえ開けりゃあ結果は一緒だ」




「隊長、早く」




「ああ」
















「この中か?」




グレンはエリアに連れられ、開門装置があると思われる建屋に案内された。




「ずいぶん離れているので、だいぶ泡食いましたよ」




「改造しすぎだろ、クソが」




グレン達は、開門装室と思われる部屋の扉の前に立つ。




「じゃあ、入りますね」




「あぁ・・・」




隊員の問いに、グレンは何か妙な胸騒ぎがした。




「隊長、どうかした?」




アイラが問う




「待て、俺が先に・・・」




グレンが部屋に入ろうとする隊員を制止しようとすると










ガンッ!







激しい破壊音が辺りに鳴り響いた。










長槍が扉に深々と突き刺さっている。










あのまま入室しようとしていれば、彼が扉の代わりになっていただろう。
















「敵襲!」




ヴォルゲンが叫ぶ。




「どこからだ!」




「上だ!城壁の上だ!」




「隊長を囲え!」




隊員達がグレンを囲む。













グレンが城壁の上を見上げた。










そこには先程、帝国兵が塞将と呼んでいた男がこちらを見下ろしていた。
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