クジ引きで選ばれた勇者

ふるか162号

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0章 クジ引き

3話 みつきはおかしい?

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「ぜ、絶望の村!? ま、まさか、あの……魔大陸にある、あの村の生き残りなの!?」

 え? 生き残りって何? 僕の村は平和そのものなんだけど?

「みつきちゃん!! 魔大陸の絶望の村は、どんな状態なの!?」

 リリアンさんは、必死な顔で僕の肩を掴む。

「痛いよ。大体、生き残りって何? 僕の村は、比較的平和だよ?」

 リリアンさんは、僕の言葉に肩から手を離す。

「へ、平和?」
「う、うん。魔物だって、そこまで危険な魔物はいないし、近くには、もあるし」

 僕の村のすぐ近くには、魔王城があって、うちの村からもその城下町まで、出稼ぎしている人もいるくらいだ。
 ちなみに僕のお母さんも、魔王城の城下町でお総菜屋さんを開いている。

「ち、近くの町ですって!? 近くに町があるの!?」
「うん。そこのと仲が良いんだ。お母さんも城下町で働いているし」

 リリアンさんは茫然としている。
 美人さんなのに、そんな顔をしちゃいけないと思う。
 僕がリリアンさんの顔を、じっと見ていると、「そ、そう言えば、あの部屋からはどうやって出たの?」と聞かれた。
 うぅ!!?
 誤魔化せると思ったのに、やっぱり説明しなきゃいけないよね……。

「このまま出れないと、餓死すると思って、思いっきり蹴ったら扉が開いた」

 僕は、正直話す事にした。
 どうせ、怒られるなら、素直に話した方が、怒られる量が少ないかもしれない。
 あ!!
 べ、弁償とか言われたらどうしよう……。
 僕が、ビクビクしながらリリアンさんを見ると、リリアンさんの顔が青褪めている。
 も、もしかして、めちゃくちゃ高価だったの!? これは不味いよ……。

≪リリアン視点≫

 いま、この子はなんて言ったの?
 扉を蹴ったら開いた?
 そ、そんな馬鹿な。
 この扉には、強力な魔物や魔族が侵入してこない様にするために、何重にも結界が張られているのよ?
 この結界は強力だから、この国の英雄である、勇者バトスさんでも、破れない代物なのよ? それを、こんな幼い子が?

「どうしたの?」

 みつきちゃんが不安そうにしているわ。
 でも、この子のが本物だというのなら……。

「な、なんでもないわ。しかし、簡単に扉が破れてよかったわね。もし、あの音に気付かなければ、みつきちゃんは暫くあの部屋に閉じ込められていた筈だから……」

 簡単に……ね。
 自分で言うのもなんだけど、簡単に破れるわけがないのよ。

「へへへ……。うちの村の人ならば、大体の人が、あれくらいの事は出来るよ?」

 ……え? 今なんて?
 あのくらいの事なら、大体の人が出来る!?

 そ、そんなわけないじゃない!?

 こ、この子、みつきちゃんは何かがおかしい!!
 もしかしたら、もっと口を滑らせてくれるかもしれない。 

「そう言えば、さっき言ってたアレって何? 僕は来なくていいのにこんな所に飛ばされてきたの?」

 みつきちゃんが、不安そうにしているわ。
 ……これ程の力を持っているのにも、かかわらずに?

「ちょっと待ってね。少しだけ考えを整理するから……」

 本当に、どうなっているのかしら……。
 いえ。余計な事は考えないでおきましょう。

「逆に質問して悪いんだけど、みつきちゃんはどういう方法で転移してきたの?」
「え? 僕の場合、引いた瞬間、転移させられたよ?」

 え? ちょっと待って?
 引いた瞬間?
 クジ引きに仕込まれている転移魔法は、呪文を唱えないと発動しない筈。どういう事?

 とはいえ、みつきちゃんが嘘をついているとも思えないし、これは一度調べてみる必要があるわね。

「みつきちゃん。ちょっと待っててね」

 私は、応接部屋から出て、私直属の部下であるゲイルさんに王城の宮廷魔術師に伝言を頼む。

「リリアンさん。あの子は?」
「正直分からない。でも、嘘を言うような子には見えないのよ。もしかしたら、もしかするかもしれない」
「それはどういった意味で?」

 そうね。
 これは、ギルマスや、私達、冒険者ギルドの上位幹部しか知らない事実だったわね。

「本物の……女神に選ばれた勇者かもしれないという事よ」

 私が呟くような小さい声でそう言うと、ゲイルさんは「分かりました。陛下にも報告をしておきます」と小さい声で答えてくれた。
 きっと、周りに聞こえないように声を落としてくれたのね。本当に、この人は頼りになる人だわ。

「お願いね……」

 私は、再びみつきちゃんのいる部屋に入る。
 みつきちゃんは、キョロキョロとしている。どうしたのかしら?

「みつきちゃん。どうしたの?」

 私が声をかけると、みつきちゃんはビクッとする。

「え? いや。綺麗な部屋だな~。って思って」

 ふむ。やっぱりこの子は嘘を吐くような子に見えないわ。

「ふふっ。ありがとう。さて、さっきの話の続きだけどね、兵士に騙されて送られてくる人が、たまにいるのよ。みつきちゃん。クジ引きの箱はどうだった?」
「汚かった」
「そう……。不快な気分にさせて、ごめんなさいね。長く使っているから、古くなっていたのかもしれないわね」

 ……間違いない。
 この国が用意したクジ引きの箱は、無駄に豪奢に作られている筈。
 まぁ、その箱を売りに出す、馬鹿な兵士もいると聞いた事があるけど、そういう奴は陛下が許すわけがないからね。
 まして、あの箱にも転移魔法が仕込んであるから、クジだけでは転移魔法は発動しない筈。
 この子を手放しちゃダメね……。

「どちらにしても、暫くはこの国に留まってもらうしかないわね」

 心苦しいけど、魔大陸に村がある以上、逆転移は出来な
いからね。

「僕は自分の村に帰らせてもらえないの?」
「ごめんね。みつきちゃんの出身地は魔大陸でしょ? 魔大陸には強力な結界が張られて、転移魔法は使えないのよ」
「じゃあ、僕は帰れないの?」

 うぅ……。泣きそうな顔をされると、心が痛むわ。
 ……でも……。

「そうなるわね。でも、みつきちゃんなら、冒険者としてやっていけるわ」

 私がそう言うと、みつきちゃんは驚いた顔になる。

「え? でも、僕はタダの村娘だよ?」

 そうね。
 その村では、ただの村娘かもしれないけど、アロン王国ここでは、ただの村娘じゃないのよ。
 私はみつきちゃんの肩を掴む。

「大丈夫よ」

 絶対、手放さないから……。
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