19 / 22
1章 親友が酷い目に遭わされたので
18話 追いかけっこですか? 追いかけっこは得意ですよ。
しおりを挟む目の前にある不気味なお城……これが魔王城のようです。
不気味なお城も面白いのですが、今から破壊されるモノですからどうでも良いのですが……。一応、城に向かい殺気を放ってみます。しかし、魔王城からは反応がありません。
殺気に気付いた魔王軍が襲ってくると思っていたんですが……残念です。
「魔王城の中で私を迎撃するつもりでしょうか。建物の中ではあまり暴れられないので少し困ります」
私は少しがっかりして魔王城に入ろうと思いました。
しかし、背後から何者かが猛スピードで襲いかかってきます。
何者かは私を殺そうと攻撃してきたのですが、まぁまぁのスピードですが、私はその程度では殺せませんよ。
私は何者かが持っていたアサシンナイフの刃をつまみへし折ります。
「な!?」
「結構なスピードでしょうが、私を殺すには少し遅いですよ。さっきは筋肉だったですが、今度は速さ……スピードさんですね」
「スピードではない! ハヤイだ!」
そっちでしたかぁー。
名前の予想が外れたので少し残念です。
私の目の前に立つのは、青い素肌の細身の男性でした。
男性と言っても魔族には性別がないんでしたね。ハヤイは髪の毛が無く、耳が長いです。これは、エルフですかね? いえ、魔族ですか……。
ハヤイは私を見て口角を釣り上げます。まぁ、気持ち悪いですねぇ……。
「ふはははは。パワーを速さを使って殺したようだが、アイツは四天王最弱だ。四天王最速のこのハヤイ様に勝てると思うなよ!」
私が速さを使って筋肉を倒した!?
「む? 何を驚いているんだ?」
「え? いえ、魔王四天王というのはアホしかいないのかと驚いていただけです」
「なんだと!?」
ハヤイはその場で足踏みをします。
その足踏みがどんどん速くなります。何をしているのでしょう。
「勇者よ! このハヤイ様のスピードについて来れるか!?」
はぁ?
私が勇者とか気持ち悪いのでやめて欲しいです。
私は勇者と呼ばれて不愉快になってしまい、ハヤイを睨みつけます。
私の不愉快な顔を見て、ハヤイはさらに歪んだ嗤いをみせています。
「……誰が勇者ですか」
「ほぅ、ならばお前は何者だ? 勇者でもないお前が何故魔族と敵対する? 我々魔族は勇者と戦う使命があるから戦うが、お前が勇者でないなら戦う必要はない」
はて?
今の話では、魔族は相手が勇者だから戦っているという事ですか?
魔王がファビエ王国と戦っているのもウジ虫がいるからという事でしょう。つまりは全てはウジ虫がいるからなんですね。
まぁ、だからと言って魔族を滅ぼさない理由にはなりませんからね。さっさと魔族を滅ぼしてウジ虫を殺しに行きましょう。
「戦う必要はありますよ。その理由は魔族が憎いからですよっと!」
私はハヤイの首を掴みにいきますが、そこにハヤイはいません。
あれ? 確実に掴んだと思ったのですが、どこに行きましたか?
「はははははは。このハヤイ様を捕まえたとでも思ったか? 魔族が憎いと言うが、そのような遅い動きでこのハヤイ様を倒せると思うなよ」
はて?
今のは掴もうと思っただけですので、遅いと言われても困るんですが……。
「お前はこのハヤイ様の速さに気付けないまま少しずつ斬り刻まれて死んでいくっていう事だ」
なるほど……。
これは追いかけっこなんですね。
私……得意ですよぉ……。
「さぁ……。貴方が逃げ切るか私が追い付いて殺すか競争です」
あ、そうです。
ハヤイに私が知っている豆知識を教えてあげましょう。
「ハヤイ。貴方は知っていますか?」
「なんだ?」
どうやら動きながらでも会話できるのですね。
会話できなくても勝手に喋る予定でしたけど。
「魔獣は本能だけで生きていると言われていますが、実はちゃんと感情を持っているんですよ」
「なに?」
「魔獣にも感情がありまして、怒りと絶望という二つの感情だけは持っているんですよ」
「な、何の話だ? それに魔獣が絶望? 怒りはわかるが、絶望とは何だ? 魔獣は死の寸前まで本能のまま戦おうとするだろう?」
ハヤイは、興味深そうに私の話を聞いています。まぁ、素早く動きながらですけど。
「貴方には魔獣が絶望を感じる状況を今から実践してあげますから、楽しみにしてくださいね。いえ……必死に逃げてくださいね?」
私はハヤイを追いかけ始めます。
ただ追いかけるだけじゃなく、一定の距離を保って走ります。ハヤイは追いつけないと思い込んでいるみたいで、なぜか笑っています。しかし、気付きませんかね。私とハヤイの距離が近付きも離れもしていない事を。
この距離を保つのがいつまで続きますかね。
追いかけだして五分が経ちました。しかし、ハヤイはまだ余裕があるみたいです。
「どうした!? このハヤイ様を捕まえるんじゃないのか?」
ふふっ。
私はあえて無表情の無言でハヤイを追いかけます。
さて、そろそろ始めましょうか。
少しだけ距離を縮めましょう。
十分経ちました。ハヤイも無駄口を叩かなくなりました。疲れてきたのでしょう。
でも、私は全然疲れていませんよ。
少し距離を縮めましょうか。
さて十五分経ちました。
全く何も言わなくなりましたよ。
それどころかチラチラと私を見てきます。
目があったので笑顔で返しておきます。
「あ、貴方に言い忘れていましたが、私が貴方を捕まえた時点で貴方を殺しますよ」
「ひぃ!?」
私が笑顔でそう言うと、ハヤイはスピードを上げ始めました。
これは素直に凄いです。もう体力の限界だと思っていましたが、まだそんな力を持っていたんですね。
二十分経ちました。
スピードが上がったのは一分だけでどんどん遅くなってきました。
ハヤイは顔を青褪めさせて私に文句を言ってきます。
「い、いつまで、追いかけてくるつもりだ! いい加減負けを認めろ!」
「なぜですか? 私は疲れていませんよ?」
私は距離を少しずつ縮めていきます。
徐々に距離を縮められるのを見て、ハヤイの顔は驚愕に染まります。
そうです。
それが絶望の表情なのです。
「ふふふっ。絶望を感じるでしょう? それが絶望です。魔獣もその顔をするのですよ。まぁ、本能で生きていますから必死に逃げますけど……貴方はどうですか?」
「ひ、ひぃ!?」
ハヤイは泣きそうな顔で必死に走ります。
徐々に詰められた距離は、もう少しで手が届きます。
「ふふふっ。自分の得意分野で追い詰められている気分はどうですか? さて、もう掴めますよ」
「ま、待てぇ。お前……もしかして最初っから……」
「はい! 最初から捕まえられましたよ。あくまで追いかけっこをして遊んでいただけです。ここからは、戦いですよ。ここからは……殺します」
私はハヤイの首を掴み、剣を取り出し、腕を斬り落とします。
「ぎゃああああああ!!」
ハヤイは、猛スピードで、地面に転がります。腕を斬られるよりも痛そうにこけましたね。
「お。このハヤイ様の腕がぁあああああああ!!」
「アレ? どうしました? 逃げないのなら、ここで殺しますよ」
私は、もう片方の腕を斬り飛ばします。
でも、足は斬りませんよ。逃げようとすれば逃げられますよ。
しかし、ハヤイは逃げようとしません。
もう逃げないのであれば、ここで殺しましょう。
私は剣を振り上げます。
ん?
私は耳を澄まします。魔王城から団体さんが来るのが分かります。
私はハヤイの頭を掴み持ち上げます。
「この足音は何ですか?」
足音の事を聞くと、ハヤイの顔に明るさが生まれます。
仲間ですか?
「ブレインの精鋭部隊だ! お前はブレインの逆鱗に触れてしまった! アイツは普段は温厚だがな、一度怒ると誰にも止められん!! お前はここで死ぬしかないのだ!!」
へぇ。精鋭部隊ですか。それはそれは……。
ハヤイの頭を掴む手を思いっきり力を入れます。
「ぎゃああああああああ!!」
ハヤイは、叫びます。
私はハヤイを地面に叩きつけます。
「ごぼぉ!?」
「精鋭部隊が来るのでしょう? 早く、貴方を殺さないといけません」
私はハヤイの両足の骨を砕きます。
「ぎゃあああああ!!」
ハヤイは痛みで叫びます。
「もっと鳴いて下さいね。精鋭達に聞こえるように……」
「な、なぜだ!? なぜ、ここまで非道な事をする!?」
非道?
何を言っているのですかね。
「貴方は勇者の仲間だった聖女の存在を知っていますか? 私は彼女の親友です。彼女は勇者に酷い目に遭わされて自ら命を絶ってしまいました。私は……私から彼女を奪ったこの世界も、勇者が召喚される原因となった魔族も、勇者を呼び出した教会も、諸悪の根源の勇者も、全てが憎いんですよ。だから、私が受けた苦しみと同じ……いえ、それ以上の苦しみを全てに与えたいんです」
私が笑顔でそう言うと、ハヤイの顔は完全に絶望に染まります。
「そ、そんな……の八つ当たりじゃないか」
「そうですよ? それがなにか? 別に私にとって魔族は必要ありませんからね。さて、さようならです」
私はハヤイにとどめを刺します。
私はハヤイの死体を炎魔法で焼き尽くし、精鋭が来るのを……待っていても面白くないですね。
こちらから、魔王城に突入しますか。
0
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる