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第一話 よし、呪お!
しおりを挟むすずめがちゅんちゅん。
おひさまぽかぽか。
鼻歌なんか歌って、ラブレターかしら~なんて手紙を広げたわたしもいたのだ。
つい、数分前までは。
『本日を持って、貴殿との婚約を解消します』
手紙を持つ手が震えた。
「え、うそ、うわ、きつっ…」
うしろからのぞいた召使の声。
真っ白になる視界。浅くなる呼吸。
「の、の、の……」
「の?」
「呪ってやる!!」
第一話 よし、呪お
わたしの名前はアリア・ルフェーブル!16歳!
手紙一つで婚約者にふられた、可哀想な貴族令嬢!
「何書いてるんすか?」
へらへらと笑いながらカップを置いた召使、シアンを、睨みつける。
「見ればわかるでしょ!!可哀想なわたしの話で一儲けするために物語書くのよ!!」
「やめた方がいいって。お嬢はさ、文あんまうまくないし」
「な、な、なによ…いいでしょ……!だって、悔しいんだもの……!」
視界が滲む。
だって。
5歳の時に親の都合で格上の家の息子と婚約して。
そのせいで、何度も何度も礼儀がなんだの頭が悪いだの怒られて、それでも頑張って。
彼のことも、何回も会って、好きになって。
向こうもそれなりに好きでいてくれてそうだな、なんて、思ってたの。
このまま仲良くやれそうで嬉しいわ、なんて、思ってたの。
本当よ。
「なのに!!なによあれは!!せめて、直接会って言うとか、流行りのパーティーで断罪とかにしなさいよ!!」
思わずがくりと肩を落としたわたしを笑うシアンの声が部屋に響く。
「だからね、決めたの。よし、呪おって」
「いや精神構造どうなってる?」
シアンは遠慮なく笑ってくる。
人の不幸だと思って。
でもね、わたし、立派な御令嬢とやらになるためにたくさんお勉強したの。
その時いい本知ったのよ。
「じゃーん!世界の呪い百選」
「こわいって」
さすがに笑顔が引き攣り始めたシアンなんてほっておいて、小汚ない表紙を捲る。
シアンもうしろから覗き込んでくる。
なんだ、やっぱり気になるのね。
えーと、第一の呪い、死の呪い…
「……それはやりすぎね。死ぬほど腹は立ったけれど、わたし人殺しの罪悪感と生きていくのは嫌よ」
「そうなー。お嬢にはそういうのあわないな」
第二の呪い、爪が全部剥がれる。
怖いから却下。
第三の呪い、背中から血が吹き出す。
どういう発想なの。
「何よこの本!全然ダメじゃない!」
後ろで笑いが止まらないシアンを肘打ちで黙らせながら、ページを捲っていく。
「どれもこれもぴんとこないわ。
だって、婚約破棄はされたけど、一度は心から好きになったのよ。
嫌いなプチトマト食べてくれたし、いいところだって、あったんだから……」
あ、だめ。
また視界が……。
ぐいと頬に押し付けられたハンカチ。
シアンのにおい。
「……お嬢はさ。優しいし、まじめだし、まあ、喋んなければ可愛いし」
「あっ!!!」
「もー、聞けよ」
"そのページ"が目に入って、わたしは思わず立ち上がった。
「これよ!!」
「なんでそうなる!?」
お腹を抱えて笑いながらわたしを指差すシアン。
そうねシアン。
わたしがあなたならそうしてるわ。
だって……
「どうしてわたしが1日に4回もうんこ踏むのよ!!」
朝。
庭。
廊下。
馬車の前。
見事に全部、わたしだった。
おかしいわ。
彼がうんこ踏む呪いかけたはずなのに……!
「呪い、反射してません?」
「そんなはずないわ!!」
ヒールの先を見つめながら、わたしは拳を握る。
「もうやめとけってお嬢。呪いなんて向いてないんだからさ~」
目尻の涙を拭うシアン。
「いや、いやよ!わたし、絶対に彼を呪う!そして、うんこ踏ませてみせるんだから!!」
わたしはこの時、まるで気づいていなかった。
わたしにうんこを打ち返している存在が、いることに。
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