素晴らしい世界から脱却を

秋霧ゆう

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第3話 ギルドへ

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 先輩の言葉が気になった拓海は、ログインしてすぐに町へと向かった。

 町への門はとても大きな壁で囲まれていた。入口すぐに屋台が広がっていて、食べ物屋台、武器屋台と沢山の屋台と沢山の人が居た。

 コソコソと何か言われてることに気がつき、耳を研ぎ澄まして聞いてみると、

「初心者か?」
「そうだろ。変な名前の奴はだいたい初心者だろ」

 ハッとさせられた。
 プレイヤーの頭の上には名前が表示されるのだ。拓海の名前はゴリラエンジン。今更ながら恥ずかしい思いに駆られた。

「けど、俺この前もっとやべぇのに会ったぞ」
「なんて名前?」
「オ○二ーソード」

「ぶはっ」
 想像だにしない名前に笑ってしまった。

「名前変えられないこと、知らないってことないよな」
「さすがに知ってるだろ」

 この瞬間拓海は焦り始めた。

「え?名前、変えられないの?」

 あの時はストレスが分かるゲームだと信じていなかったからゴリラエンジンを採用してしまったが、今このゲームを本気でやることを決めた拓海は名前を変える術を模索していたのだ。
 
 あれほど、柴田とフレンドになりたかった拓海だがこの名前で柴田とフレンドになりたくないと思い、プレイヤー名は全力で隠すことを決めた。

 そんなことを思いつつ歩き続けていると、冒険者ギルドに辿り着いた。
 建物に大きく冒険者ギルドと書かれていたのですぐに分かった。

「入ってみるか…」

 中に入ろうとすると騎士の格好をした大型の人に止められた。

「貴様に質問する」
「なんだテメェ、偉そうに」
「貴様はこの世界をどう見えている?」
「は?」
「答えろ」

ゴリラエンジンはイラつきながらも答えた。

「綺麗に見えてる」
「では、入ることを勧めない」
「何で?」
「ここは闇が深い」
「ん?どういうこと?」
「普通、ギルドとは互いに切磋琢磨してモンスターを狩ったり、情報共有したりすることを想像するだろうが、BWOに関しては違う。現実世界で限界を迎えた者達で互いに慰め合う。そんなところだ。…つまり、愚痴が飛び交う」
「お、おぅ」

 柴田が言ってた「気をつけて」という言葉。これを指していたのか?

「逆に質問なんだけど…」
「何だ?」
「このゲームってギルドに入らなくても遊べんの?」
「もちろんだ。あいつらは慰め合うために入ってるだけだ。ここは冒険者ギルドであるが冒険者ギルドではない」
「じゃあ、俺は入らなくていいや。あんたは入ってんの?」
「入ったが、すぐに抜けた」
「そっか、じゃあな」

「お、お、お、お前ー!!!!」

 騎士の横に立っていたローブ姿のツインテールのロリが拓海に指を指し声を上げた。

「何?」
「お前!何故タメ口なのだ!この方をどなたと心得る!?」
「誰?」
「チッ。これだから初心者は。この方はな、元このギルド、社畜のメンバーでSランク冒険者となった凄いお方だぞ!」
「それは、…凄いね」

 そう。このゲームにおいては、レベルが高ければ高いほど精神状態が壊れてるということになる。

 普通のゲームであれば、「凄いね!」だけで済むのだが、このBWOでは「大丈夫?」の方が適切だろう。

「だーかーらー!何故、お前はタメ口なのだ!」
「落ち着け、ナナ」
「でも!」
「すまないな。ゴリラエンジン」
「いや、別に。俺の方こそ、すみません…でした」
「気にするな。言葉遣いも先程のままで大丈夫だ。私は弓月。よろしく」
「よろしく、お願いします」
「ナナだ。よろしく」
「よろしく」
「ナナがお前に慈悲を与えてやろう!フレンドになってやる。ギルドへの参加を辞めさせてしまったからな。困ったことがあれば、チャットを送れ。答えてやる」

 拓海は弓月とナナとフレンド交換をし、別れた。
 拓海は正直、ギルドどうこうより、まともな名前が羨ましかった。

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