素晴らしい世界から脱却を

秋霧ゆう

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第6話 魔法の特訓へ

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 それから数日が経ち、拓海は魔法を飛ばすことが出来るようになっていた。

「今日は良い事を教えてやるぞ!」
「良い事?」
「そうだ。魔法を飛ばす時、火球ファイアーボールと唱えるんだ!」

 何故、言う必要があるのか拓海は分からなかったが、ナナが教えてくれることは基本的に役立つことばかりだ。
 深呼吸をし、手を前に向け放った。

「ファイアーボール」

 すると、今までで1番でかい火の玉が出た。地面に焦げ跡がつくような威力のものだ。
 威力もそうだが、いつもよりすんなり魔法が発動した。

「は?なに今の…」
「詠唱だぞ」
「詠唱?最初から教えろよ」
「それはダメだぞ。何故かは分からないが、最初から詠唱して練習してた人と詠唱せず練習してた人だと圧倒的後者の方が強くなるんだぞ」
「へぇ。なんかそんなデータあんの?」
「お前、ちょっとウザイな。まぁ、いい。ナナが始めた当初、息子と一緒にやってたんだ」
「息子!?…ナナ、息子居んの?」
「居るぞ。話を続けるぞ。一緒に始めて一緒に遊んでたんだ。ナナは何となく想像だけでやってて、息子は詠唱がカッコイイからと詠唱しながら練習してたんだぞ。そしたらナナの方が強くなって、息子は辞めちゃったんだ」
「あ~。そっか~」

 息子という単語がかなり気になるものではあるが、寂しそうなナナの姿に拓海は気まずくなっていた。

「でもさ、今は弓月さんだって俺だって居るし寂しくないだろ」
「さ、寂しいなんて一言も言ってないぞ!お前がデータがあるのか聞いてきたからデータを教えてやっただけだぞ!!」
「ははっ」
「わ、笑うな!」

 少し前まで寂しそうなナナだったが、一瞬で明るくなった。

「ナナはこんなに良い奴なんだ。きっと良いお母さんなんだろうな~」
「ん?何言ってるんだ?」
「え?」
「ナナはお母さんじゃなくてお父さんだぞ」
「え?ええぇぇぇぇぇ!?!?!?」

 今日、一番驚かされた真実かもしれない。

「…ナナ、オトコナノ?」
「そうだぞ。見た目に惑わされちゃダメだぞ!」
「あ、うん」

 息子というのも衝撃だが、この見た目でこの喋り方で男というのはなかなか受け入れられない事実だった。

「ところでゴリラエンジン、話があるぞ」
「…何?」

 状況が状況なので、少し泣きそうになっている拓海に淡々と話し続けるナナ。

「明日から少しの間一緒に居られないぞ。エルフの会合がある」
「会合?」
「まぁ、ギルドの集まりみたいなもんだ」
「あれ?でも、抜けたんじゃ」
「それは弓月さんの話だぞ。入れるギルドは種族ごとに違うんだ」
「へぇ、エルフの方も大変なの?」
「そんなことはない。1番ギスギスしてるのは人間のギルド社畜だ」
「そういや、初めて会った時も言ってたな。弓月さんが冒険者ギルド社畜の元メンバーだって。社畜ってなんなの?」
「ギルド名だぞ。人間は社畜。エルフは自由。獣人は狩り。魚人は魚群。この名前は初期メンバーが適当に決めたやつだぞ」
「なるほど…。なんか、良いな!エルフのギルド名」
「あぁ。だが、どこもそんな変わらん。人間のとこは多分本当に社畜だったんだろう。エルフは自由になりたい。そんなとこだと思う」

 疲れてる人ほど楽しく感じるこのゲーム。ギルド名をつけた人はかなり病んでいた模様だ。

「じゃあ、伝えなきゃいけないことも伝え終わったしこのまま魔法の特訓を始めるぞ!」
「おう!」
火球ファイアーボールが使えるようになったから次は火槍ファイアーランスにするぞ!」
火槍ファイアーランス?」
「今までの火球ファイアーボールより威力が上がるぞ!スピードも上がってスライム以外とも戦えるようになるぞ!」

 火槍ファイアーランスを使えるようになったらこのゲームはもっともっと楽しくなる。
 衝撃発言こそあったもののここで終わる拓海ではない。
 息子とナナが男だった話は一旦置いといて、今は魔法の特訓に打ち込むことにした。




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