愛しの君へ

秋霧ゆう

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第1章

リシャール

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 僕…いや、俺の名前はリシャール。
 今は戦争のない時代で俺は仙道椿として生活している。
 前世の俺は18歳の頃から戦場にいた志願兵だ。
 血を見るのが好きだ。人の肉を切るあの感触が好きだ。傷口からジュクジュクと溢れ出し、良い大人が泣き叫ぶあの時間。
 あぁ、最っ高だ!
 俺はそんな至高な時間を味わうために戦場に出ている。国への忠誠などどうでもいい。
 だが、それから10年の月日が経った時、帝国との争いが本格化し、ツーマンセルで行動しなくてはならなくなった。
 俺とペアを組むのは12歳のガキ。
 ある日偵察のために森の中を散策していると、帝国の主力部隊、剣士ギルベルトと魔法士ロスが仲睦まじそうに話す姿を目撃した。
 魔法士は剣士に回復魔法を使用していた。
 回復魔法は初めて見た。
 あの力が欲しい。
 あの力があれば、何回だって殺せる。あれがあれば楽しみが必ず増える。

 “アレが欲しい!”

 すると、横でガキが言った。
「羨ましい…」

 ガキはすぐに口を抑え、俺を見た。
 俺とガキは目が合った。俺はすぐにその場を離れた。ガキは俺を追いかけ、必死に謝ってきた。

「羨ましい」この言葉は重罪だ。
 国に対して言うならば問題は無いが、他国、ましてや今は戦争中の敵国に対して言うならば罪は重い。
 ガキは俺に対しこう言った。

「申し訳ございません。お願いします。何でもしますから本国には連絡しないでください」

 何でも?言ったな。

「では、これから俺がお前に対し鞭打ちをする。絶えることが出来れば本国には伝えないでやる」

 ガキは鞭打ちを選んだ。
 俺は死ぬギリギリを攻め、ガキに対して鞭打ちをした。
 ここは森の中。手を縛り木の枝に吊るした。大きな音を出すと敵国にバレる恐れがあるためガキは声を出さずまいとしていた。
 俺は泣き叫ぶ音が好きだ。だが、ガキは頑なに声を出さなかった。つまらねぇ。
 翌日、俺は本国へ向かった。隊全体の副隊長をしているため、定期的に本国へ戻らなければならない。
 現状について、王に報告する。
 そして俺はあの一件を王に伝える。
 すぐさま死刑執行だ。
 ガキの人質は祖父母。今回殺すのは祖父となる。
 死刑方法は国の首都のど真ん中で上官が新兵の目の前で殺すのがルールとなっている。

「新兵は?」
「連れてきませんでした」
「何故だ?」
「あれはまだ12歳の子供です。大切な人の死には耐えられぬでしょう」
「そなたはそんな優しさを持ち合わせていたか?」
「俺をなんだと思ってるんです?」
「それなら報告しなければ良いのに」
「ははは」

 そりゃ、するだろ。
 だって報告すれば殺せるんだぞ。こんなに嬉しいことはない。
 それに、もう殺されているというのに泣きながら嘆願する姿は笑えるだろう。
 そして万が一やる気を失ってもらっては困る。「俺は何のために戦っているのか」とな。やる気を失われたら俺の実績に響く。処刑されるかもしれない。二度と人を殺すことが出来なくなるかもしれない。
 そんなのは絶対にお断りだ。

 そうして、戦いと鞭打ちの日々は続いた。

 世界の崩壊が起きる5日前、新兵共が話しているのを聞いた。
 剣士か魔法士を殺し、敵のやる気を無くさせ、この戦争を終結させるのだと。

 …この俺が、そんなことさせると思うか?

 俺はすぐに本国へ戻り、新兵共が謀反を起こそうとしていると王に伝えた。
 私の手で全ての人質を殺した。
 今思い出しても最高の時間だった。
 人質達は家族の名を呼んだ。助けてくれとな。そんな人質を俺はじっくりと時間をかけて殺した。

 そして、崩壊の日。

 俺は少し遅れて新兵共の元へ辿り着いた。
 新兵共の亡骸を踏みながらあの戦場へ向かった。そこには1人座り込んでいる魔法士ロスがいた。
 アレを手に入れれば戦争が終わっても人を何度だって殺せる。
 俺は魔法士ロスを剣で刺した。
「これで俺の夢は、」
 だが、俺の剣は剣士ギルベルトによって防がれた。けれど、ペアを組むガキが隙を見て剣士を殺した。
 この魔法士を懐柔させられれば俺の勝ちだ。
 だが、魔法士ロスは恋人を殺されたことへの悲しみか力を暴走させこの世界は滅亡した。

 そして、目が覚めると剣と魔法が存在しない世界に転生していた。
 この世界で僕は殺せない。鞭打ちも出来ない。楽しみなものは何も無い。
 だが、高校に入り見つけた。
 あの時のガキだ。見た瞬間に分かった。

 おぉ、神よ。哀れな私に褒美をくれたのですね。ありがとうございます。

 前世のように話したらきっとすぐに勘づくだろう。あのガキは頭は良いからな。
 そうだな、俺は…いや僕はにするか。
 大人しそうなオドオドした姿で近づけばあいつらはきっと油断する。
 油断しきって、僕を信頼出来る相手になった時お前らは破滅するだろう。

 ククク、楽しみだ。


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