愛しの君へ

秋霧ゆう

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第1章

第9話 体育祭・後編

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 体育祭午前の部も終わり、昼休憩。

「蒼ー食堂行こうぜ」
「ごめん旭、今日は兄ちゃんと約束してて」
「翠兄ちゃん?」
「そう。旭も来る?」
「んー、今日はいいや。行くぞ暁」
「おぅ!」

 蒼は翠の元へ、旭は暁と共に食堂へ向かった。 
 食堂に着くも、人がごった返し席は無さそうだ。

「九条、1人か?」
「……」
「江田だよ、江田!チッ、忘れたのかよ」
「江田ぱいせん」
「で、1人か?」
「そっすね」
「僕が居るから1人じゃないぞ!」
「桐生は?」
「蒼は蒼の兄ちゃんとこ行きました」
「あいつ兄貴居るのか」
「はい、桐生翠っていう…」
「桐生翠!?」
「え、はい。翠兄ちゃんがどうかしたんすか?」
「まあ後輩だな」
「あー、吹部っすもんね」
「それにあいつは2年の頭だしな」
「…どういう意味っすか?」
「まぁ、そのうち分かんだろ」
「はぁ…」
「それよりお前席探してんだろ。俺の横を譲ってやろう」
「ども」
「可愛げがねぇな」
「ぱいせん可愛げが欲しいんすか。なら、ありがとうございますぅ」

 声高らかに江田に向けてお礼を言う旭。

「や、やめろ、旭。気色悪い」

 江田は凍りつき、暁からも拒絶された。
 お昼の時間も終わり、午後の部のメインイベント、部活対抗リレーの時間となった。

「行くぞ、蒼、仙道!」
「うん」
「が、頑張る」

 40ある部活、1レースに10部ずつ走る。それを4回行い、各レース1位、2位だった部がもう一度レースを行い、1位、2位、3位を決める。
 まず部活対抗リレー予選の結果がこちら。
 第1レース、野球部、バスケ部、自転車部、ダンス部、吹奏楽部、本部、パンツ研究会、映画研究会、ヒーロー部、漫画研究会が走り、1位バスケ部、2位パンツ研究会。
 第2レース、サッカー部、相撲部、アーチェリー部、剣道部、書道部、軽音楽部、ゲーム部、アイドル部、園芸部、アニマル研究会が走り、1位サッカー部、2位剣道部。
 第3レース、陸上部、卓球部、柔道部、バトミントン部、ハンドボール部、和太鼓部、美術部、宇宙人交信部、アニメ研究会、料理研究家。1位陸上部、2位宇宙人交信部。
 第4レース、水泳部、バレーボール部、テニス部、弓道部、オーケストラ部、演劇部、写真部、子供部、茶道部、妖精部。1位妖精部、2位子供部。
 という結果で予選は終わった。
 4人×50m走のこのレース。妖精部の旭達は部員数が足りないため、第1走者が100mを走ることが決まっている。

「それでは、予選を勝ち抜いた、バスケ部、パンツ研究会、サッカー部、剣道部、陸上部、宇宙人交信部、妖精部、子供部の選手は集まってください」

 1走者目がスタートラインに立ち、スタートの合図が鳴った。

「全員飛び出して行きました。まず先頭に立ったのは剣道部3年、竹原真一。彼は学年が上がるごとに剣道が弱くなった謎の男。後を追う、バスケ部、陸上部、妖精部、サッカー部、パンツ研究会、宇宙人交信部、子供部。子供部は毎日放課後、近くの保育園に行き元気な子供たちの遊び相手になっていますから体力には自信があります!そして、バトンは2走者目に渡った。妖精部は部員数3人のため、1走者目の九条旭がそのまま走ります」

 1、2走者目は旭、3走者目は蒼、ラストは椿が走る予定だ。

「順位が変わったー!パンツ研究会を抜きトップは陸上部に!やはり、走るのを得意にしてるこの部活には勝てないのか!?」

 100mの全力疾走をこなした旭が蒼にバトンを渡す。……が失敗。渡す直前旭の手からバトンが飛んで行った。

「旭!!」

 焦る旭はすぐにバトンを取りに行った。
 その間に抜かされ最下位に。

「ごめん蒼、あと頼む」

 蒼が走りだしたタイミングで先頭の陸上部はもう半分先まで走っていた。
 盛り上がる実況。爆笑する先輩達。
 蒼の頑張りもあって子供部、パンツ研究会、剣道部、宇宙人交信部は抜いたが、前に居るのは運動部、なかなか抜けない。

「桐生くん!」
「頼む!」

 そして、ラスト4走者目。
 運命の最後の直線。

「速い速い速い!!どんどん抜いてく、誰だこいつは!?」

 バスケ部、サッカー部を抜き、最後の一騎打ち。
 陸上部vs妖精部。

「行っけぇぇぇ」

 ゴールテープを切ったのはほぼ同時。

「どっちだ!?」

 ザワつく生徒達。放送委員会が下した結果は……。

「勝者は……妖精部!妖精部1年、仙道椿!!!」
「ヨッシャー!!!」
「妖精部のメンバーには賞品として、半年間学食食べ放題券が授与されます。2位には陸上部。3位はパンツ研究会。…パンツ研究会!?」

 最後の戦いは皆、椿と陸上部の一騎打ちを見ていたが、後方ではパンツ研究会が爆走していた。この4走者目の里山航大。彼は中学時代強豪校の陸上部からお声があったのだがそれを断り、一般入試で我が校に入学しパンツ研究会に入ったのだ。

「まぁパンツ研究会も人数が多いですからね。1週間の食べ放題券でも、53人のお腹は膨れるでしょう」

 その後の競技はそこまで盛り上がることなく、体育祭は終わった。
 ちなみに旭たちのクラス1年A組はボロ負けした。



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