愛しの君へ

秋霧ゆう

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第1章

第10話 期末試験

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 体育祭も終わり次の大きなイベントは、夏休み!!!

「その前に期末試験だろ」
「その言葉は聞きたくないです~」
「旭、前に僕が言った約束ちゃんとやってるよね?」
「も、もちろんだぞ。蒼。だよな暁!!」
「約束って何のだ?」
「旭がちゃんと勉強するって約束」
「う~ん。してないな」
「旭?」

 蒼が旭の方を見る。慌てる旭。

「……ちょっと待て蒼、暁の言葉わかるのか?」
「え?」
「今、暁と会話してたよな」
「……。そう?会話してた?」
「してたしてた。お前見えてたのかー」
「みえてないよ…」
「いやでも今」
「暁ならしてないって言うと思っただけ」
「なんだよそれ」

 内心かなり焦る蒼。見て見ぬふりをすると決め、6歳の頃から10年間隠してきたのに初めてやらかした。

「蒼ー?どうかしたか」

 ついその場で立ち尽くしてしまった蒼に旭は声をかける。

「なんでもない」
「そっかー」

 蒼は旭と暁を追いかける。
 数十分後、学校へ着きHRが始まる。

「来週から期末試験が始まる。それに伴い、今日から1週間部活動、バイトを禁止する。分かってんのか九条ー」
「何で俺なんだよせんせー」
「お前が1番破りそうだからだよ!」
「えー」
「桐生、監視しとけよ」
「はーい」
「桐生蒼に代わって僕が旭を監視してやる」
「んだと」
「文句あるのか、九条」
「ないでーす」

 暁が周りには見えいないことを忘れていた。暁に返答したつもりが先生に喧嘩を売ったような図になってしまった。

「それから今回のテストだが、赤点を取ったら補習があるからちゃんと勉強しとけよ。それじゃあ授業を始める」

 そしてあっという間に1週間が過ぎた。
 今回は英数国理社の他に音楽、美術、技術家庭、保健体育を含めた9教科行われる。

「じゃ、いつも通りよろしくな、暁」
「おぅ!」

 いつもと同じように暁が飛んでカンニングをし、旭に伝える戦法で9教科全てのテストが終了した。

「疲れた~」
「ありがとな暁」
「僕ちゅーしてほしいな~」
「い、嫌だ」

 しょぼんと悲しそうな表情をする暁。
 
「それ以外ならなんだって叶えてやっから」
「言ったね?」
「おま、まさかわざと!」
「騙される方が悪いんだよ~」
「はぁ。何が良いんだ?」
「ショートケーキ頂戴!!!」
「相変わらず大好きだな」
「えへへ」

 出会いは6歳だが、7歳の頃。暁と旭が再会した日を暁の誕生日とし、旭が貯めたお小遣いで小さなショートケーキをプレゼントしたのだ。

「いつものショートケーキが良いな~」
「わかったわかった」

 嬉しそうな満面の笑みを浮かべる暁に嬉しくなる旭だった。
 しかし、月曜日。テスト返却日。

「惜しかったな九条。解答欄がズレていた」
「どんまい、旭」

 教卓の前で立ち尽くす旭に高槻先生が席に戻す。席に戻っても魂が抜けたように微動だに動かない。

「先週も伝えたが、赤点を取ったメンバーは毎日放課後テストを受けるように。夏休みに入る前までに合格ラインに到達出来なければ夏休み中も補習となるからちゃんと勉強すること。まぁ、九条は解答欄がズレてただけだからすぐ合格出来るだろう」
「は、はい」

 カンニングで成績を出してる旭。合格出来る日は来るのだろうか、そう思う蒼だった。
 それからというもの、毎日毎日再試の日々に疲れきってる旭。

「全員バカだからカンニングが出来ねぇ」

 旭が廊下で頭を抱え悩んでいる。

「テストって同じ内容なんだろ」
「そうだけど」
「答え覚えていけば良いじゃん」
「順番が違ぇんだよ」
「…丸暗記するしかないね」

 もっと表情が暗くなる旭。

「大丈夫だぞ旭。僕も一緒に暗記するから、覚えるのは半分で大丈夫だぞ」
「暁、ありがとな」

 再試を受けはじめてから5日。先生にも怪しい目で見られる。

「九条、お前なんでそんなに合格したがらないんだ」
「いや~、せんせーに会いたくて?」

 旭と暁が半分ずつ覚えてテストに挑むも正解するのは暁が担当した部分だけ。旭が担当した部分は一向に正解しない。

「だあー!もうどうしろってんだよ!!」
「だから勉強しなって」
「してるしてる!!毎晩復習してるって!だよな、暁」
「ん?復習ってあの5分テスト用紙と睨めっこしてる時間のことか?」
「5分じゃねぇって!3時間ぐらいやってるだろ」
「5分だよ!旭は机に向かって5分でやる気がなくなって本棚にある漫画を読み始める」
「そ、それは」
「旭、5分しか勉強してないの?」
「いや、それはだな」
「旭、約束?」
「わ、分かったってば…」

 それから毎日のように再試を受けていたが、今日は夏休みに入る最後の日。今日の再試に受からなければ夏休み補習決定である。
 そして、気づけば30人いた再試試験者も5人まで減っていた。

「蒼、蒼さん、蒼様。お助けください」
「はぁ、頑張ってほしかったんたけど」

 目の前で土下座をしながら頼み込む姿に蒼も呆れ、1つ案を出すことにした。

「いいか、今回の再試に合格出来なかった者は夏休みも学校に来てもらうこととなる。毎日、補習授業を受けたあと必ず再試を行い満点を出せなければ永遠に続くと思え。それでは、試験開始」

 そして再試地獄から抜け出すことが出来た旭。

「ありがとな、蒼」
「今回だけだからね」
「おう!」

 蒼が出した案。それは、暁が旭の再試の問題を確認し、廊下で待つ蒼の解答用紙を見て旭に伝えに行くという方法だ。
 
「今回は先生にも感謝だな」
「どうして?」
「再試の問題が期末と同じ順番だったんだ」
「へぇ」
「だから暁の負担も減ったしテストを見返す時間も出来た。でも蒼の力が1番だな。助かった。ありがとな」
「うん。でも次は助けないから」
「えっ」

 残念そうに下を向く旭と笑顔な蒼。

「僕の力があってこそ旭は合格出来たんだぞ」

 と文句を言う暁であった。
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