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第1章
第11話 夏休み・海の家前編
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旭と蒼は今、輝く太陽の下で大量の焼きそばを作っていた。
「なんで僕まで」
「ごめんな蒼。でも夏休みは稼ぎ時だろ」
「1人でやればいいたろ」
遡ること5時間前。
ピンポーン。旭が蒼の家に来た。
「はい」
「行くぞ!海」
「は?」
「ほら早く支度しろよ!」
「いやいや今何時だと思ってんの」
「ん?5時!!」
「早いって」
「でも早く行かないと間に合わないんだって」
「間に合わないって何に?」
「いいから」
そう言うと、勝手に家に上がり、勝手に蒼の支度をし、勝手に海の家へ連れてきた。
そして現在。
「これ何時まで?」
「16時!」
「そう」
「で、2週間」
「…は!?」
「ちゃんと月曜と火曜日は休みだから大丈夫」
「なにが大丈夫」
「休みながら働いて金が貰えるって最高だろ」
「いやいやいや」
蒼は動きを止め、裏に入る。それを追いかける旭。
「どした?」
「帰る」
「え!?ちょ、待てって」
荷物を持ち外に出る蒼を止める。
「勝手に連れてきて、勝手にバイト?」
「ごめん、ごめんて。でも、蒼の家今日から皆イタリア旅行だろ。帰っても1人じゃん。俺に付き合ってくれてもいいだろ」
「1人じゃないし。兄ちゃん居るし」
「いやでもいいじゃんか」
そんな話をしていると、2週間限定の条件なのに雇ってくれた店長が来た。
「九条君、桐生君。来てくれてありがとう」
この店長、見るからにじじい。
「この海の家はわしとばあさんの出会いの場所でね、ばあさんはもうお店には立つことは出来ないけどこの思い出の場所で死ぬまでこの仕事をしたいんだ」
「立つことは…そうでしたか。ご愁傷さまです」
「勝手に殺すんじゃないよ」
後ろからばばあに頭をはたかれる蒼。
「あいたっ」
「私は立ちたいのにこのじじいが立つなと煩くて」
「だってばあさんはいけめんを見るとナンパ…逆ナンというのをするだろ」
「いいじゃないか。こんなヨボヨボなじじいじゃなくて私はイケメンな男と過ごしたいんだ。あら、あんたイケメンじゃないか」
「はあ」
「そっちも」
おばあさんが旭と蒼を逆ナンし始める。
暁はハッとしたようにばばあの前に立ち、旭に手を出すなとおばあさんをポカポカと叩き、旭に抱きついている。
「って、そんなことしてる場合じゃなかった。早く2人とも店に立ちな」
ばばあの勢いが強く、帰るに帰れなくなってしまい、蒼はそのまま働いた。
そして、10分おきにばばあが若い男をナンパに来る。
そして海に遊びに来ている美女達からも。
「お兄さん、ここらへんの人?」
「いえ、夏休みで」
「そっか~バイトしに来たんだ」
「…」
「いつまでなの?」
「今日だ…」
「8月3日まで!」
「旭…」
今日この後帰ろうとしているのを感じ取り、旭が2人の会話に割り込む。
「2人はお友達?」
「そうっす」
「ふ~ん。そうだ8月3日、夏祭りがあるの。一緒に行こう?」
「行くっす」
約束をしてしまえば、蒼はすぐに家に帰ろうとはしないはずと思い二つ返事をする。
「ちょ、旭」
「じゃ、楽しみにしてるね~」
お姉さんは去っていった。
その光景を陰から見ていたばばあ。
バイトの時間も終わり、じじいとばばあが来た。
「お疲れ様。聞き忘れてたんたけど、給料は日ごとかまとめてかどっちがいい?」
「まとめてがいいっす!」
「分かった」
「君は?」
「はぁ、じゃあ僕もそれで」
「うん」
「でもあんたら、途中ずっと腰がほっそい女と話して鼻の下伸ばして、給料減らすよ」
「伸ばしてない」
「い~や、あれは伸びてたね、伸び伸びだったね」
不服な2人に対し、ばばあは続ける。
「減らしたくないなら条件がある」
「条件?」
「私にあーん♡をすることだ。もちろん、私もあんたに食わせてやる」
「え…」
どうやらばばあは蒼推しのようだ。
「嫌なら給料は減らす」
「んな無茶苦茶な」
「どうするんだい?」
「じゃあ、減らす方向で」
「え、なんでだ!あーん♡だよ。あーん♡で減らさないと言ってるじゃないか」
「大丈夫です。行くよ旭」
「お、おう」
旭は蒼に対し申し訳ない気持ちで一歩後ろを歩いていた。
「旭」
「な、なんだ」
「何で隣歩かないの?」
「わ、悪い」
旭は蒼の横に行く。
「……蒼、悪かったな」
「…」
「勝手に連れてきて俺の我儘でバイトさせてしかもあんなばばあに懐かれて」
「はぁ」
溜息をする蒼にビクッとする旭。
「旭が無茶苦茶な行動するのは今に始まったことじゃないし、ばばあの行動については旭知らなかったんでしょ」
「それは…」
「知ってたんなら怒るよ」
「いや、知らん、知らなかった」
「うん。なら許してあげる。その代わりなんか奢って」
「分かった!」
「で、僕たちは今日どこに泊まるの?」
旭の顔が青くなる。
「旭?」
旭に連れてこられたのは、
「待っていたよ♡」
じじいとばばあの家だった。
「なんで僕まで」
「ごめんな蒼。でも夏休みは稼ぎ時だろ」
「1人でやればいいたろ」
遡ること5時間前。
ピンポーン。旭が蒼の家に来た。
「はい」
「行くぞ!海」
「は?」
「ほら早く支度しろよ!」
「いやいや今何時だと思ってんの」
「ん?5時!!」
「早いって」
「でも早く行かないと間に合わないんだって」
「間に合わないって何に?」
「いいから」
そう言うと、勝手に家に上がり、勝手に蒼の支度をし、勝手に海の家へ連れてきた。
そして現在。
「これ何時まで?」
「16時!」
「そう」
「で、2週間」
「…は!?」
「ちゃんと月曜と火曜日は休みだから大丈夫」
「なにが大丈夫」
「休みながら働いて金が貰えるって最高だろ」
「いやいやいや」
蒼は動きを止め、裏に入る。それを追いかける旭。
「どした?」
「帰る」
「え!?ちょ、待てって」
荷物を持ち外に出る蒼を止める。
「勝手に連れてきて、勝手にバイト?」
「ごめん、ごめんて。でも、蒼の家今日から皆イタリア旅行だろ。帰っても1人じゃん。俺に付き合ってくれてもいいだろ」
「1人じゃないし。兄ちゃん居るし」
「いやでもいいじゃんか」
そんな話をしていると、2週間限定の条件なのに雇ってくれた店長が来た。
「九条君、桐生君。来てくれてありがとう」
この店長、見るからにじじい。
「この海の家はわしとばあさんの出会いの場所でね、ばあさんはもうお店には立つことは出来ないけどこの思い出の場所で死ぬまでこの仕事をしたいんだ」
「立つことは…そうでしたか。ご愁傷さまです」
「勝手に殺すんじゃないよ」
後ろからばばあに頭をはたかれる蒼。
「あいたっ」
「私は立ちたいのにこのじじいが立つなと煩くて」
「だってばあさんはいけめんを見るとナンパ…逆ナンというのをするだろ」
「いいじゃないか。こんなヨボヨボなじじいじゃなくて私はイケメンな男と過ごしたいんだ。あら、あんたイケメンじゃないか」
「はあ」
「そっちも」
おばあさんが旭と蒼を逆ナンし始める。
暁はハッとしたようにばばあの前に立ち、旭に手を出すなとおばあさんをポカポカと叩き、旭に抱きついている。
「って、そんなことしてる場合じゃなかった。早く2人とも店に立ちな」
ばばあの勢いが強く、帰るに帰れなくなってしまい、蒼はそのまま働いた。
そして、10分おきにばばあが若い男をナンパに来る。
そして海に遊びに来ている美女達からも。
「お兄さん、ここらへんの人?」
「いえ、夏休みで」
「そっか~バイトしに来たんだ」
「…」
「いつまでなの?」
「今日だ…」
「8月3日まで!」
「旭…」
今日この後帰ろうとしているのを感じ取り、旭が2人の会話に割り込む。
「2人はお友達?」
「そうっす」
「ふ~ん。そうだ8月3日、夏祭りがあるの。一緒に行こう?」
「行くっす」
約束をしてしまえば、蒼はすぐに家に帰ろうとはしないはずと思い二つ返事をする。
「ちょ、旭」
「じゃ、楽しみにしてるね~」
お姉さんは去っていった。
その光景を陰から見ていたばばあ。
バイトの時間も終わり、じじいとばばあが来た。
「お疲れ様。聞き忘れてたんたけど、給料は日ごとかまとめてかどっちがいい?」
「まとめてがいいっす!」
「分かった」
「君は?」
「はぁ、じゃあ僕もそれで」
「うん」
「でもあんたら、途中ずっと腰がほっそい女と話して鼻の下伸ばして、給料減らすよ」
「伸ばしてない」
「い~や、あれは伸びてたね、伸び伸びだったね」
不服な2人に対し、ばばあは続ける。
「減らしたくないなら条件がある」
「条件?」
「私にあーん♡をすることだ。もちろん、私もあんたに食わせてやる」
「え…」
どうやらばばあは蒼推しのようだ。
「嫌なら給料は減らす」
「んな無茶苦茶な」
「どうするんだい?」
「じゃあ、減らす方向で」
「え、なんでだ!あーん♡だよ。あーん♡で減らさないと言ってるじゃないか」
「大丈夫です。行くよ旭」
「お、おう」
旭は蒼に対し申し訳ない気持ちで一歩後ろを歩いていた。
「旭」
「な、なんだ」
「何で隣歩かないの?」
「わ、悪い」
旭は蒼の横に行く。
「……蒼、悪かったな」
「…」
「勝手に連れてきて俺の我儘でバイトさせてしかもあんなばばあに懐かれて」
「はぁ」
溜息をする蒼にビクッとする旭。
「旭が無茶苦茶な行動するのは今に始まったことじゃないし、ばばあの行動については旭知らなかったんでしょ」
「それは…」
「知ってたんなら怒るよ」
「いや、知らん、知らなかった」
「うん。なら許してあげる。その代わりなんか奢って」
「分かった!」
「で、僕たちは今日どこに泊まるの?」
旭の顔が青くなる。
「旭?」
旭に連れてこられたのは、
「待っていたよ♡」
じじいとばばあの家だった。
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