愛しの君へ

秋霧ゆう

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第1章

第12話 夏休み・海の家後編

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 これから2週間、じじいと危ないばばあの住む家で過ごさなければならなくなった旭と蒼と暁。

「だ、大丈夫だぞ。旭は僕が守るんだ」
「そ、そうだそうだ。俺は蒼を守る」
「守るって、わたしゃ怪獣かなんかか」
「いやそれは」
「否定しろ」

 ばばあにはたかれる旭。

「大丈夫だよ。2人が暮らしてもらうのはこの家じゃなくて、隣のアパートの一室。大家とは古くからの友達でね、お願いしてあるんだ」
「もちろん、この家で暮らすのもありだよ」
「いえ大丈夫です」

 不服そうにするばばあを横目に旭と蒼と暁はアパートへ移動した。
 部屋に入った途端に座り込み、一言発する蒼。

「………良かった」

 安心したという姿に旭も安堵した。

「蒼、飯どうする?」
「近くにコンビニあったしそれでいいんじゃない?」
「だな、あー腹減った」

 PLLL。蒼の携帯が鳴った。

「あ、ごめん、ちょっと待って」
「おー」

 そんな会話をしているとチャイムがなった。旭が玄関を開けるとそこに立っていたのはばばあだった。

「な、なんだ、何しにきた」
「何しにきたって私はあんたらの雇い主だよ」
「あ、そっか」
「それよりこれ」
「え?」

 ばばあが渡しに来たのは夕飯だった。

「あんたら今日昼もまともに食ってなかっただろ。これは私からのサービスだよ」
「ありがとう、ばばあ」
「誰がばばあだ。私の事は松代さんと呼びな!」
「はい」
「それよりあのイケメンは?」
「あー蒼は電話中っす」

 兄と電話をしていた。旭が無理矢理連れてきたため、蒼の兄、翠は家に取り残されていた。翠は外面はとても良い、そう、外面だけ。今回も蒼が居るからという理由で旅行には行かなくていいと両親から許可が出ていたのだ。

「すんません」
「…明日からも頼んだよ」

 そう言うとばばあは去っていった。隣の家に。
 部屋の中に戻る。
 丁度、蒼も電話が終わったようだ。

「誰だった?」
「あー松代さん」
「松代さん?」
「あのばばあ」
「なんだって?」
「晩飯くれた」
「え!?」
「手作りの」
「何か…入ってないよね?」
「わ、わかんねえ」

 中には米と唐揚げと魚の煮物が入っていた。それから取り皿とお茶2本。

「すげえ、豪華だな」
「うん」
「よし、た、食べるぞ」

 2人は恐る恐る食べ物は口に入れた。

「んま」

 それは想像以上に美味しい食べ物だった。
 すぐに完食した3人だが、結局コンビニに行った。育ち盛りの男子高校生には少し足りなかった。おにぎりとお菓子とジュースを買ってアパートに帰った。
 その日の夜はどんちゃん騒ぎ…とはいかず、蒼が倒れ込むように寝たため旭と暁は静かに話をして23時には皆就寝した。

 朝の6時前。

「はよ、蒼、暁」
「おはよ、旭、暁」
「んー」

 目が覚めた2人に対しまだ眠そうな暁。

「今日も良い天気だなー」
「うん、今日も頑張るかー。なに?」
「なんでもねーよ」
「朝ごはんはコンビニでいい?」
「ああ」

 もう帰ろうとはしない蒼に安堵する旭。
 部屋を出ると扉に袋がぶら下がっていた。

「これは…」
「昨日もらった松代さん家の皿と一緒」
「てことは」
「松代さん優しいな」
「だね」

 2人は部屋に戻り、お米と味噌汁と野菜の漬物を食べ、海の家へと向かった。
 お店にはじじいとばばあが準備万端で待っていた。

「ちゃんと朝ご飯食べてきたんだろうね」
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
「ふんっ。今日も若い女と楽しそうに話していたら減引きするからね!」

 2時間後。

「ねぇねぇお兄さん、今夜暇?」
「暇じゃないです」
「じゃあ、明日は?」
「空いてないです」
「そっかぁ。じゃあそっちのお兄さんでいいや。お兄さんは空いてる?」
「いいやってなんすか!じゃあいいやって!!」

 そんなやり取りを色んなお姉さんと交わし、お昼時。人がどんどん増えていく。
 忙しく話をしている暇も無いほどで、少し離れた場所にいるじじいは泣き、ばばあにはお前も仕事しろと言わんばかりにはたかれていた。
 じじいは何故泣いていたのか旭は気になった。
 それから2時間後。少しづつ人が落ち着きはじめ、やっとお昼休憩に入れる。

「蒼、先に飯行ってきて」
「うん、そうさせてもらう」

 コンビニに でおにぎりを買ってきて、木陰で食べていると見覚えのある顔がやってきた。

「あれ?蒼君?」
「椿」

 体育祭以降、旭、蒼、椿。皆、下の名前で呼ぶようになっていた。

「海水浴?」
「うん。蒼君は」
「バイト」
「そっか。海の家って大変だね」
「うん。正直もう帰りたい」
「あはは」
「……そういえば蒼君」
「何?」
「蒼ー!なんか急に人増えた、ヘルプ…。ってあれ?椿!!」
「…やっぱどこにでもいるな」

 ボソッと椿が呟く。

「ん?」
「ううん。2人はいつも一緒にいるなーって」
「まぁな!俺たち親友だから」

 3人で話していると、ばばあが呼びに来る。

「何してんだい!助けを呼びに行くと行って何であんたも休んでるんだい!」
「ご、ごめんて松代さん」
「って、ん?」
「こいつは椿。同じ部活なんだ」
「へぇ。何部だい?」
「妖精部」
「…妖精部?何する部だい?」
「妖精は居るのか研究する部」
「で、居るのかい?」
「居る」

 自信満々に答える旭。

「どこに」
「ここに」

 旭が暁を指さす。
 ばばあは可哀想な子を見るような目で旭を見つめる。

「いやいやいや、居るんだって」
「そうかいそうかい」
「いやそんな目で見ないで!」
「大丈夫、大丈夫だ」
「なにが!?」

 そんなやりとりをしていると、「助けてくれぇ」とじじいの声が聞こえてきた。

「こんなことしてる場合じゃねぇ。行くぞ、蒼。じゃあな、椿」
「うん」

 別れる時の椿の表情が少し暗かった気がしたが、2人、いや3人は仕事へと戻った。
 戻ったあとじじいは倒れた。

「ちょ、大丈夫っすか!?」
「平気平気、あとよろしく」











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