愛しの君へ

秋霧ゆう

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第1章

第22話 再々々々々々々々々試験

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 再々々々々々々々試験をしている旭。今回は蒼は学校に来られないため、カンニングは絶対に出来ないのだ。
 そして、ゾンビのように徘徊する旭を何回か目にしていた蒼は、仕方がないと思い旭に電話した。

「このままじゃ、大晦日、元旦もテストを受けることに…」

 PLLL。旭の携帯が鳴った。

「はい…」
「暁に代わって」
「お前な、親友が大変って時に暁に代われだって!?」
「うん。だって2択問題を間違い続ける旭が悪いじゃん。どうやったらそんなに間違い続けられるの?2択なんだから答え覚えていきなよ。それに旭は、」

 止まらない蒼からのお言葉。
 旭は嫌になり暁に代わる。暁はクッキーを食べていた手を止め蒼の電話に出る。

「ん?なんだ?」
「旭はどんな調子」
「結構参ってるな」
「それでさ、お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「うん。僕が殴ったあの日、部室に大切な小説置いてきちゃって旭は忙しいだろうから暁が取りに行ってくれない?」
「おー、良いぞー」
「じゃあよろしく」

 蒼と暁は電話を切った。
 机に突っ伏している旭は顔を横に向けて暁に話しかける。

「蒼、何だって?」
「部室に忘れ物したから取ってきてって」
「俺については?」
「特には」
「あの野郎」

 次の日。学校。

「じゃあ、俺再々々々々々々々々試験に向かうから」
「おぅ!頑張れ」

 暁は部室。旭は再々々々々々々々々試験の会場に向かった。
 ここまで残ったのでは、旭と他2人。

「お前らなんで合格出来ないんだ復習してんのか?」

 下を向く3人の生徒。

「それじゃあ再々々々々々々々々試験を始める。今回は前回同様90点以上で合格。本来なら100点満点で合格のところを優しくしてやってんだから絶対に今日合格しろ。それでは、始め!!」

 一方、暁。

「うわ、部室綺麗になってる」

 あの日、机も椅子も倒れてドアも外れていた部室は、綺麗に元通りになっていた。

「蒼の本、蒼の本、あっ!これか。あいつ僕が小さいこと忘れてないか?これを持ってこいだと?」

 A6サイズではなく四六判サイズの本。
 
「これは旭に頼まないとだな~」

 そして戻って旭。
 先生が可哀想な目で旭を見る。
 それに気づいた旭は、答えをAからBに変えた。先生は場所を移動した。

「旭、旭ー!!!」

 暁が教室に入ってきた。
 返答が出来ない旭はテストの端に「なに?」と書いた。

「蒼がな、本の中に蒼のテスト用紙を挟んでいてくれたみたいなんだ。だから前みたいに僕が行き来して答えを教えるからそれ通りに書け」

 死んだような旭の目が輝きはじめる。

「最初の答えはAだ。次の問題は…待ってろ」

 そして、暁の力を使って今回もやっと合格出来た。

「九条、合格!」
「よっしゃ!」
「さっき様子だと絶対に合格出来ないと思ったけどな、よく盛り返した」
「あざす!」

 ちなみに、他2人は1人合格、1人不合格だった。不合格の彼は全ての教科が赤点だった。残すは社会のみだが合格はいつ出来るのだろうか。

「九条、今後のことだが。明日、桐生と来てもらっていいか?」
「…分かりました。伝えておきます」
「頼んだ」

 帰り道。下駄箱で上履きと靴を履き替え、外に出ようとすると、

「旭、止まれ」
「どうした?」
「あれ、あの男の母親」
「あの男?」

 見ると、椿と椿の母親がいた。

「椿、どうしたんだ?」

 椿の表情は2人にとって見覚えのある目をしていた。殺気に満ちた目。
 椿と椿の母親は学校の正門前からタクシーに乗って帰って行った。

「よし、行くか」
「おう!旭、今回も僕の力が大きいだろ?」
「ショートケーキな?」
「頼んだぞ!」

 ケーキ屋でショートケーキとチーズケーキとチョコケーキを買って帰った。

「旭も食べるのかー?」
「おー、久しぶりにな」

 ピンポーン。

「はい」
「よっ、蒼」
「旭、合格出来た?」
「ああ、ありがとな!これから時間あるか?」
「え?うん、まあ大丈夫」

 旭、蒼、暁はあの公園へと向かった。

「これ一つやるよ」
「ケーキ?」
「あー、ショートケーキは僕のだからな!」
「今回は暁じゃなくて蒼優先な」

 頬を大きく膨らませる暁。

「はは、じゃあこれで」

 蒼が選んだのはチーズケーキだった。
 嬉しそうな表情で暁は旭をみる。

「はいはい、暁はショートケーキな」
「おう!」

 3人は公園のベンチでケーキを食べ始める。

「それでどうしたの、これ」
「今回のテスト、蒼のおかげで助かった。だからお礼だよ、お礼」
「今回のテストだけ?」
「あー、いつも。いつもお前のおかげで助かってるよ!」

 蒼は笑った。

「それでな蒼。明日今後のことで話があるから学校に来いって」
「うん、聞いてる」
「誰から?」
「誰からって昼間に学校から電話があって」
「じゃあ俺が伝える必要性ねぇじゃん」
「二段構えじゃない?」
「二段構え?」
「そう。きっと僕は退学だから、それに耐えられなくて逃げるかもしれないとか思ってるんじゃない?」
「…そうか」

 そう。今、蒼は停学中ということになっているため今後についてまだ何も分からない状態なのだ。

「ところで暁、小説は?」
「ん?」
「いやだから小説。取ってきてって頼んだよね?」
「え、あれはテスト用紙を見て旭に伝えろってことじゃ…」
「それはあくまでオマケ」
「あー、じゃあ忘れた」
「はぁ。じゃあ明日取りに行くか」

 そして、ケーキも食べ終わり旭はまた蒼を送り届ける。
 蒼の家の玄関前にて、学校から帰宅した朱音と遭遇した。

「あー!ケーキの箱」
「朱音ちゃん?」

 朱音は旭の持つケーキの箱を開ける。

「何も、入ってない…」
「今度買ってあげるから」
「3つあるよ?お兄ちゃんと旭君と…あとは、あの妖精さん?」
「そう」

 プクっとした表情で蒼を見つめる朱音。

「今度を楽しみにしてるからね!お兄ちゃん」
「わかったわかった」
「それじゃあ、また明日な、蒼」
「うん。また明日」

 蒼と朱音は家に入り、旭は家へと帰って行った。




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