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第1章
第24話 正月
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12月31日、23時30分。蒼の家のインターホンが鳴った。
「はい」
「蒼!初詣行こうぜ!!」
扉を開けると、そこには旭と暁が立っていた。
「旭さ、停学って言葉知ってる?」
「おう!休みだろ」
「停学ってね、自宅待機で外を出たら行けないんだよ」
「大丈夫だって、バレねぇって」
「そういうことじゃ…はぁ、怒られたら旭のせいね」
「おう、良いぜ!俺が代わりに怒られてやる」
神社に着き、お参りをして、甘酒を飲んで待っているとカウントダウンが聞こえてきた。
10・9・8・7・6
「5・4・3・2・1 Happy new year!!」
「あけましておめでとう」
旭と暁がはっちゃけてジャンプする。
「ほら蒼も!」
「はいはい」
笑っている旭と蒼と暁。でも、視線を感じた暁は後ろを向く。
「どうした?暁」
「なんか嫌な感じがした」
「暁の嫌な感じは当たるもんね。椿が入部する時も言ってたし」
「じゃあさ、ここ神社だし、安全祈願のお守り買おうぜ!すんませーん、げっ」
お守り売り場に居たのは、旭も蒼も暁もよく知っている顔。担任の高槻先生だった。
「お前ら、何でここに。今停学処分中だよな?停学って家から出るなって言ってんの」
「そ、そーなんすかー、知らなかったです」
旭が横を見ながら棒読みで答える。
「でも桐生、お前は常識人だ。知ってるよな?」
「知りませんでした」
高槻先生は蒼が旭を庇っているんだろうということはすぐに分かった。だが、
「お前らな、外に出ちゃ普通の休日と変わらんだろ。反省文5枚だ」
「えっ」
「えっ、じゃねぇだろ」
「ちぇー」
「それより先生は何でそこに?」
「あぁ、ここ、俺の実家」
「…え?」
「だーかーら、俺の家神社なんだよ」
「えー!?」
「まあ継ぐのは兄貴だから俺は好き勝手に教師やってるわけ。でもまあ正月とかは忙しいから手伝いに来てるって感じ」
「そ、そうなんすか。似合わないっすね」
「うっせ」
「正月だし冬休みだし遊びに行きたい気持ちは分かる。だが、停学中だってことを忘れるな。今回のことは学校に報告しないでやるから明日以降の休みの期間は家にこもって勉強でもしてろ」
「はーい」
帰宅する3人。
「暁の嫌な感じ、当たったな…」
「でも今回は旭が自ら嫌な方に行った感じだったよね」
「そう、だわ」
「でもまあ本当に担任が高槻先生で良かったね」
「それはそう」
「旭の先生を全く敬わないあの態度、許してくれるのは多分高槻先生と山田先生くらいだよ。金城先生だったら反省文書かせられるかも」
「確かに」
「気をつけなね」
「おう」
その後、毎年家族で行く挨拶回りも行けず旭と暁であーだこーだ言いながら宿題をしていると、毎年来てくれるからと祖父と祖母が来てくれた。
「じいちゃん、ばあちゃん!」
「旭!!」
旭は祖父からゲンコツを食らう。
「いってぇ」
「お前は何をしとるんじゃ。停学じゃと?」
「ご、ごめん、じいちゃん」
「男なら停学じゃなくて退学くらいせんか」
「えっ?」
「何言ってるのじいさんってば。旭ちゃん、これお年玉」
「ありがとう、ばあちゃん」
「ワシにもお礼を言わんか!」
「あ、ありがとう、じいちゃん」
ヨボヨボな祖父からの説教。いや、説教なんだろうか、これは。
「あら、今日蒼ちゃん居ないの?」
「あー、蒼も一緒に停学食らってて」
「そっかー。蒼ちゃんに会うの楽しみにしてたんだけどね」
「俺じゃなくて蒼に?」
「もちろん旭ちゃんも会いたかったけど、蒼ちゃんはいけめんっていうんでしょ。心が癒されるの」
「そう」
「ばあさんや、今から蒼くんの家に行こう」
「確かにそれは良い案ですね」
「え、ちょ」
「待って、母さん父さん、旭ごめんね。もう少し待ってて」
「…うん」
蒼宅。
「あれ?旭のおばあちゃんとおじいちゃん。お久しぶりです。あけましておめでとうございます」
「相変わらず爽やかで。おめでとうございます」
「ははは」
「笑い声も爽やかだな」
「はは、今日はどうしたんですか?」
「何って、挨拶だ。あとこれお年玉」
「えっ、そんな悪いですよ」
「子供が!!遠慮なんてするもんじゃない!!!」
「じいさん、声が大きすぎます」
「ゴホン。すまなかった」
小さい声で謝る旭の祖父。
そこへ蒼の母と朱音がやってきた
「なんじゃ、もっと小さいのがおるの」
「あ、妹です」
「こんにちはー、あ、あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます。元気で良い子だな。あ、そうだこれお年玉」
「いえいえ、そんな悪いです」
「なんじゃ、蒼くんと一緒だな。旭と偉い違いじゃ。子供は遠慮なんてするな。あげると言ったんだから貰えばいいんじゃ」
「あ、ありがとうございます」
「よろしければ中へ」
「大丈夫ですよ。もう帰るので」
「そうですか。すみません。お金まで貰っちゃって」
「お母さん!!」
「はい」
「遠慮なんてさせるんじゃありません!!!」
「じいさん、声」
「すみません」
旭の祖母と祖父は旭の父親に寄って連れて行かれた。
「あ、そうだ。蒼君!」
「はい」
「これからも旭のことよろしくね」
「はい!!」
旭の父とそんな会話をしていると、
「なんじゃ、それ、良いな。ワシもやりたい。そーうーくーん!!!!旭をよろしく頼むぞーーー!!!!」
「じいさん、うるさい!!!」
「ばあさんだってうるさいんだい!!」
「あーもー!2人とも黙って」
そんな光景を後ろから見ていた蒼と朱音。
「皆、仲良いよねー」
「だね」
「もちろん、仲良いにはお兄ちゃんも入ってるでしょ」
「…うん、そうだね」
3人の後ろ姿は見えなくなったのに声だけは聞こえてくる。そんな状況で笑いが止まらなかった。
旭宅。
「おかえりー」
「だーかーら、ワシは声が大きくない!!!!!!」
「だから、分かったから黙りなさいって」
「旭、助けて」
蒼と旭の家はとても近く、3分で行ける距離。だが、その3分間ひたすら言い合いを続ける祖父と祖母に疲労困憊の父。
「あはは」
「そうだ、旭。お年玉には5000円と10000円があるんだがどっちだった?」
袋の中をみる旭。
「5000」
「そうかそうか、じゃあ蒼くんが10000円だ」
「えっ、ずるい蒼」
「旭の迷惑料5000円だな、はっはっはっ」
「迷惑料!?」
「どうせ、いつも迷惑かけてるんだろ。蒼くんと蒼くんの妹さん凄く大人だったぞ。子供らしくなかった。ワシは残念でならない」
「待って、何の話!?」
「子供は、子供は遠慮なんて要らないんだ!!!」
「わ、分かったからじいちゃん静かにして」
「ワシはいつも静かじゃ!!」
「分かった分かった」
そうして、お正月は過ぎていった。
「はい」
「蒼!初詣行こうぜ!!」
扉を開けると、そこには旭と暁が立っていた。
「旭さ、停学って言葉知ってる?」
「おう!休みだろ」
「停学ってね、自宅待機で外を出たら行けないんだよ」
「大丈夫だって、バレねぇって」
「そういうことじゃ…はぁ、怒られたら旭のせいね」
「おう、良いぜ!俺が代わりに怒られてやる」
神社に着き、お参りをして、甘酒を飲んで待っているとカウントダウンが聞こえてきた。
10・9・8・7・6
「5・4・3・2・1 Happy new year!!」
「あけましておめでとう」
旭と暁がはっちゃけてジャンプする。
「ほら蒼も!」
「はいはい」
笑っている旭と蒼と暁。でも、視線を感じた暁は後ろを向く。
「どうした?暁」
「なんか嫌な感じがした」
「暁の嫌な感じは当たるもんね。椿が入部する時も言ってたし」
「じゃあさ、ここ神社だし、安全祈願のお守り買おうぜ!すんませーん、げっ」
お守り売り場に居たのは、旭も蒼も暁もよく知っている顔。担任の高槻先生だった。
「お前ら、何でここに。今停学処分中だよな?停学って家から出るなって言ってんの」
「そ、そーなんすかー、知らなかったです」
旭が横を見ながら棒読みで答える。
「でも桐生、お前は常識人だ。知ってるよな?」
「知りませんでした」
高槻先生は蒼が旭を庇っているんだろうということはすぐに分かった。だが、
「お前らな、外に出ちゃ普通の休日と変わらんだろ。反省文5枚だ」
「えっ」
「えっ、じゃねぇだろ」
「ちぇー」
「それより先生は何でそこに?」
「あぁ、ここ、俺の実家」
「…え?」
「だーかーら、俺の家神社なんだよ」
「えー!?」
「まあ継ぐのは兄貴だから俺は好き勝手に教師やってるわけ。でもまあ正月とかは忙しいから手伝いに来てるって感じ」
「そ、そうなんすか。似合わないっすね」
「うっせ」
「正月だし冬休みだし遊びに行きたい気持ちは分かる。だが、停学中だってことを忘れるな。今回のことは学校に報告しないでやるから明日以降の休みの期間は家にこもって勉強でもしてろ」
「はーい」
帰宅する3人。
「暁の嫌な感じ、当たったな…」
「でも今回は旭が自ら嫌な方に行った感じだったよね」
「そう、だわ」
「でもまあ本当に担任が高槻先生で良かったね」
「それはそう」
「旭の先生を全く敬わないあの態度、許してくれるのは多分高槻先生と山田先生くらいだよ。金城先生だったら反省文書かせられるかも」
「確かに」
「気をつけなね」
「おう」
その後、毎年家族で行く挨拶回りも行けず旭と暁であーだこーだ言いながら宿題をしていると、毎年来てくれるからと祖父と祖母が来てくれた。
「じいちゃん、ばあちゃん!」
「旭!!」
旭は祖父からゲンコツを食らう。
「いってぇ」
「お前は何をしとるんじゃ。停学じゃと?」
「ご、ごめん、じいちゃん」
「男なら停学じゃなくて退学くらいせんか」
「えっ?」
「何言ってるのじいさんってば。旭ちゃん、これお年玉」
「ありがとう、ばあちゃん」
「ワシにもお礼を言わんか!」
「あ、ありがとう、じいちゃん」
ヨボヨボな祖父からの説教。いや、説教なんだろうか、これは。
「あら、今日蒼ちゃん居ないの?」
「あー、蒼も一緒に停学食らってて」
「そっかー。蒼ちゃんに会うの楽しみにしてたんだけどね」
「俺じゃなくて蒼に?」
「もちろん旭ちゃんも会いたかったけど、蒼ちゃんはいけめんっていうんでしょ。心が癒されるの」
「そう」
「ばあさんや、今から蒼くんの家に行こう」
「確かにそれは良い案ですね」
「え、ちょ」
「待って、母さん父さん、旭ごめんね。もう少し待ってて」
「…うん」
蒼宅。
「あれ?旭のおばあちゃんとおじいちゃん。お久しぶりです。あけましておめでとうございます」
「相変わらず爽やかで。おめでとうございます」
「ははは」
「笑い声も爽やかだな」
「はは、今日はどうしたんですか?」
「何って、挨拶だ。あとこれお年玉」
「えっ、そんな悪いですよ」
「子供が!!遠慮なんてするもんじゃない!!!」
「じいさん、声が大きすぎます」
「ゴホン。すまなかった」
小さい声で謝る旭の祖父。
そこへ蒼の母と朱音がやってきた
「なんじゃ、もっと小さいのがおるの」
「あ、妹です」
「こんにちはー、あ、あけましておめでとうございます」
「おめでとうございます。元気で良い子だな。あ、そうだこれお年玉」
「いえいえ、そんな悪いです」
「なんじゃ、蒼くんと一緒だな。旭と偉い違いじゃ。子供は遠慮なんてするな。あげると言ったんだから貰えばいいんじゃ」
「あ、ありがとうございます」
「よろしければ中へ」
「大丈夫ですよ。もう帰るので」
「そうですか。すみません。お金まで貰っちゃって」
「お母さん!!」
「はい」
「遠慮なんてさせるんじゃありません!!!」
「じいさん、声」
「すみません」
旭の祖母と祖父は旭の父親に寄って連れて行かれた。
「あ、そうだ。蒼君!」
「はい」
「これからも旭のことよろしくね」
「はい!!」
旭の父とそんな会話をしていると、
「なんじゃ、それ、良いな。ワシもやりたい。そーうーくーん!!!!旭をよろしく頼むぞーーー!!!!」
「じいさん、うるさい!!!」
「ばあさんだってうるさいんだい!!」
「あーもー!2人とも黙って」
そんな光景を後ろから見ていた蒼と朱音。
「皆、仲良いよねー」
「だね」
「もちろん、仲良いにはお兄ちゃんも入ってるでしょ」
「…うん、そうだね」
3人の後ろ姿は見えなくなったのに声だけは聞こえてくる。そんな状況で笑いが止まらなかった。
旭宅。
「おかえりー」
「だーかーら、ワシは声が大きくない!!!!!!」
「だから、分かったから黙りなさいって」
「旭、助けて」
蒼と旭の家はとても近く、3分で行ける距離。だが、その3分間ひたすら言い合いを続ける祖父と祖母に疲労困憊の父。
「あはは」
「そうだ、旭。お年玉には5000円と10000円があるんだがどっちだった?」
袋の中をみる旭。
「5000」
「そうかそうか、じゃあ蒼くんが10000円だ」
「えっ、ずるい蒼」
「旭の迷惑料5000円だな、はっはっはっ」
「迷惑料!?」
「どうせ、いつも迷惑かけてるんだろ。蒼くんと蒼くんの妹さん凄く大人だったぞ。子供らしくなかった。ワシは残念でならない」
「待って、何の話!?」
「子供は、子供は遠慮なんて要らないんだ!!!」
「わ、分かったからじいちゃん静かにして」
「ワシはいつも静かじゃ!!」
「分かった分かった」
そうして、お正月は過ぎていった。
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