愛しの君へ

秋霧ゆう

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第1章

第30話 目覚め

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 今日は3月14日。
 旭の誕生日だ。今まで通りなら、この時期旭は忙しかった。
 女子からバレンタインで貰ったお菓子をホワイトデーで返さなくてはならなかったからだ。だが、今年は違う。男子校に通う旭は女子から一切貰わなかった。だから返さなくていいということ。
 だが、蒼は貰っていた。
 先月2月14日、旭が1人で登校中の時。
 他校の女子高生が旭の方を見ながらもじもじしていた。

「早く、行っちゃうよ!」
「う、うん。行ってくる、あ、あの、これ」

 その時、旭はテンションがあがった。
 男子校に通っていても女子からバレンタインを貰うことが出来る。
 わずらわしいと思っていてもかなり嬉しい。
 旭はイキって反応する。

「なんだい?」

 暁は呆れた顔で旭を見ていた。

「あ、あの、いつもお兄さんと一緒にいるカッコイイお兄さんに渡して貰えませんか?」

 これは蒼のか…。そう残念そうに受け取った。
 ちなみに、それは腐る可能性があったので、誕生日会の際にこっそり食べた。
 その時の女子が今旭の隣でソワソワしている。これはお返しを期待している状態なのであろう。だが、お返しは来ない。
 蒼はまだ眠っていて、お菓子は旭が食べたからだ。
 学校に着くと、クラスメイトがお祝いしてくれた。また蒼の病室で誕生日会を開くか?と相談されたもそれは拒否した。
 蒼に祝ってもらいたい気持ちはあるが、病院で騒ぐのは良くないと理解している。
 そのため、授業がおわったあと妖精部の部室で旭の誕生日会が開催された。
 いつも1人しか居ないのに今日は騒がしくしすぎて高槻先生に見つかるも何故か高槻先生も参加していた。

「いいんすか、高槻先生」
「まーいいんじゃね?他の部活のやつらも混じってるけど部活の活動ってことで」
「あざす!」

 17時、解散。

「楽しかったな~」
「旭は今も昔も愛されてるな」
「はは、でも一番俺を好きでいてくれるのは暁だろ」

 チュッ。

 旭は暁のおでこにキスをした。
 暁の頬が真っ赤に染まる。

「な、ななな!?!?」
「俺から暁へプレゼント」
「馬っ鹿じゃないの!?」
「なんだよー。良いと思ったんだけどな」

 失敗したかという表情の旭に対し、旭の一歩後ろでおでこを触りながら照れ隠しをする暁。
 そんな微笑ましい会話をしながらも家に着くと、

「おかえりー!!!」

 という声と共に、クラッカーが鳴る。
 そこには、旭の父親と祖父と祖母がいた。

「また来ちゃった」
「旭、誕生日おめでとう」
「おめでとー!」

 家に入った瞬間に家族から祝われる旭。

 父親が大きなショートケーキを作り、祖父からのプレゼントは参考書。祖母からのプレゼントは引き用具だった。
 正月に来た時、ずっと勉強していたため、目覚めたのかとプレゼントされた。
 喜ぶ姿を見せたいのに、しっかり嫌そうな顔が出る旭。

「なんだ、嬉しくないのか!!」
「う、嬉しいよ、ありがとう…」
「っていうのは冗談で、私からはこれ」
「お金?」
「そう。1万円入ってるから好きな物買いなさい」
「ありがとう!!」

 いかにもな態度に嫉妬する祖父。

「わしがしっかり選んだやつが金に負けるというのか!!!」
「おじいさん、うるさい」
「何だと!!??」
「祝いの席でごちゃごちゃ言うんじゃないの!!」
「それは、そうだ!すまぬな、旭よ」
「い、いいよ」

 そして、皆でご馳走を食べ、ケーキを食べ、祖父母を見送り、夜。ベッドの上。

「楽しかったな~」
「なぁ旭、僕の誕生日プレゼント忘れてないか?」
「うん?あげたろ」
「ち、違くて、僕から旭へのプレゼント」
「おう、何くれるんだ?」

 この問いに対し暁から返事が無かった。

「?どした?」
「僕と旭が出会ってから10年」
「いや、もっと長いだろ」
「転生してからは10年だろ」
「あー、そういうこと」
「僕はな転生してからすぐに試したことがある。それは前世で使ってた魔法が使えないかということ」
「前世の魔法、ってことは暁の代名詞…回復魔法も」

 ハッとしたように目を輝かせる旭。

「待て待て待て、それもあるけど他にも使えないかって」
「おう」

 ベッドに寝転がっていた旭は座って話を聞きはじめた。

「それで僕は魔法を、一切使えなかった」
「…そっか」
「でも半年後、光の初級魔法ライトが使えた。もしかしたら、こっちにも前世とは別の魔力があるんじゃないかと思ったんだ。それで、日に日に増えていく魔力を実感することが出来て今日僕は前世の姿を取り戻すくらいに魔力が溜まった」
「…マジ、か」

 旭は立ち上がり、両目にいっぱいの涙を溜めていた。

「暁、ロス、本当に、あの頃の姿に…」

 暁は再び黙り下を向いた。

「どーした??」 
「それでな、ここからが本題だ」
「は?」
「僕は僕を取り戻すくらいには魔力が回復したわけだけど、この魔力で桐生蒼を目覚めさせる回復魔法も使うことが出来る」
「え?」
「つまりこの魔力を使う選択肢は2つ。1つ僕の肉体を取り戻すこと。1つ桐生蒼を目覚めさせること。どっちかしか出来ないってこと」
「悪い暁。蒼を起こしてくれ…」

 間髪入れずに旭が暁にお願いする。

「俺はもちろんロスに会いたい、会いたいけどさ、暁は傍にいてくれるわけで、俺は親友を早く叩き起して、一発ぶん殴りたい」
「良かった~」
「え?」
「僕も桐生蒼を起こしたかった。だからもし、旭が桐生蒼じゃなくて僕を選んだら心底軽蔑けいべつしてた」
「えっ!?」
「じゃあ旭、これから病院に侵入したいんだけど、一緒に来てくれる?」
「ああ!けどこれから行くのか?」
「うん。決まったことは早く動かないと気が変わっちゃうかもしれないでしょ」
「おう!じゃあ行くか」

 深夜2時。

「で、どうやって入る?」
「それは闇の中級魔法暗影で」
「ああ、あれね、姿を消すやつ」
「そうだ」
「でも、そんなに魔法使って大丈夫か?」
「桐生蒼を起こすにはおそらく最上級魔法を使わないといけない。初級中級くらいならどんなに使っても大丈夫だろう」
「そっか」
「じゃあ行くぞ」

 どうにか病室に辿り着いた。途中、旭の足音がうるさかったせいで夜勤の看護師さんが幽霊を見たという表情で怖がっていたようにも見えたが、そんなことを気にしている余裕も無かったので颯爽と通り過ぎた。

 ガラッ。

 扉を開け、蒼の側に近づく。

「よう、お目覚めの時間だぜ、プリンセス」
「それじゃあ、始めるぞ」

 暁は蒼の寝ている体の上に移動し両手を前に出した。

「回復の最上級魔法、エクストラヒール」

 すると蒼の体が光に包まれた。とても綺麗な光。
 暁は辛そうな表情をしている。

「暁!」
「旭、動かないで。大丈夫、大丈夫だから」

 そう言うと、暁はゲームのバグ画面のように実体がぶれ始めた。
 この世の理から外れた行為に対する神からの攻撃なのか、これ以上魔法を行使したら暁は消えてしまうのではないか、そんな不安が頭を過ぎり、暁に手を伸ばす。

「僕はな!」

 旭は動きを止める。

「僕はな、帝国最強の魔法士なんだ。こんな、こんな最上級魔法ごときに負けるもんかー!!!」

 光が強くなる。目も開けられないほどに。でもその瞬間、一瞬だけロスの、暁の前世の姿が見えた。

「ロス…」

 光は収まり、暁も無事のようだ。蒼の体の上で汗をかき、息が乱れている。
 蒼はというと、

「起き、ない」
「僕の、僕の10年の魔力が…。クッソー!」

 帝国最強の魔法士が放った最上級魔法・エクストラヒールが効かない。
 最強の魔法でも効かないとなると蒼は二度と目を覚まさないことを意味する。
 絶望的なこの状況のその時、

「………ん」

 暁と旭は蒼の顔を見る。

「あれ?旭と暁?」

 ずっと眠っていたこともあり、声は掠れていたが、やっと蒼は目を覚ました。

「おせぇよ」

 旭は蒼にそう伝えると、しゃがんで静かに涙を流した。暁はホッとしたように後ろに倒れた。



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