愛しの君へ

秋霧ゆう

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第2章

第31話 新学期

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 新学期が始まる。
 今年から共学となるため、数多くいる男子生徒のなかに煌めく女子生徒。
 そんな煌めく女子生徒に興奮する男子生徒。そして先生に連れていかれる男子生徒。

「はよ」
「うーす」

 話しかけてきたのはクラスメイトの矢島。
 この学校は3年間同じクラスでクラス替えはない。担任も同じ。

「桐生はどんな感じだ?」
「蒼は……死んだ」
「は?」

 顔面蒼白で全身から大量の汗を流す矢島に真剣な面持ちで言う旭。

「って、冗談冗談」
「は?」
「生きてる、生きてるって」
「お前、ふざけんなよ」

 旭を思い切り殴る矢島。

「痛って」
「…元気なのか?」
「ああ、来月から復帰出来そうって」
「なら良かったわ。けど九条が桐生を殺したこと生徒会長に密告してやる」
「ちょ、待てって」

 矢島は走って出ていく。
 旭は矢島を追いかけるも矢島は陸上部の短距離走をやっていて速い。
 一瞬で姿が見えなくなった。

「こらー」

 後ろから怒鳴り声が聞こえてきた。振り返るとそこには生徒会長である蒼の兄、翠が立っていた。

「あれ?」
「どうしたの?」
「い、いや、なんでもない」
「そう?でも旭、廊下は走らない」
「ご、ごめん」

 そんな会話をしていると先程走って行った方向からしょんぼりした矢島と金城先生が戻ってきた。
 角を曲がった先に金城先生が居たらしくこってり怒られたらしい。

「そんなことより旭、明日は新入生の部活動紹介だけど大丈夫?」
「あー」
「明日の部活動紹介で良い印象残せないと妖精部は廃部になっちゃうから、気合い入れろよ」

 ずっと優しい言葉で話していたのに最後に喝を入れるような言葉で話かけてきたためドキッとする。
 
「それじゃあね、授業頑張って」

 翠は去っていった。
 矢島は帰ってきた。

「お前のせいで俺は放課後生徒指導室だ…」
「俺のせいじゃねえだろ」
「お前が桐生死んだとか嘘つかなかったら俺は生徒会長探して走り回らなかったんだ!!!」

  まだ去っていなかった金城先生に旭もこってり怒られた。そして、旭も放課後生徒指導室送りとなった。
 そして放課後、旭と矢島は永遠と反省文を書いたのであった。
 
 次の日。

「今日は新入生のために部活動紹介の日です。皆さんのために2年生・3年生はたくさん準備をしてきました。楽しそうと思える部活に入ってもらえればと思います。もう皆さんは知っていると思いますが、我が校は必ず部活に入るという校則があります。毎年必ず誰かしらその校則を把握していない人が居るので注意してください。それでは、サッカー部から」

 翠が司会進行をする。

「把握してない人って旭のことだな!」
「うっせ、暁」

 そして順番に部活動紹介が行われる。
 遂に妖精部の部活動紹介が始まる。

「続いては妖精部の紹介です」

 翠は旭に頑張れとウィンクする。
 一部の女子が湧く。

「あー、初めまして。妖精部部長の九条旭です。妖精部は昨年作った部活で3人で作ったんすけど1人は転校、1人は休学中で今は1人で活動しています。なので今年3人入ってもらえないと廃部になるので入ってもらえると助かります。活動日は基本金曜日に1時間程度。活動内容は妖精は居るのか、居たとしてどんな姿、性格をしているのかを話し合う部活です。活動時間は少ないのでバイトをしたい人や部活をやる気がない人にオススメです。よろしくお願いします」

 そして1人で喋り続けた旭だが、暁、先生、同級生、翠から「何やってんだ」という目で見られていた。

「おい!なんだあれは!!」
「何って?」
「やる気がない人だと!?旭と違ってここは必ず部活に入らないといけない校則のことは皆知ってるんたぞ!!やる気がない人なんて居るわけないだろ!!」
「あ…」
「おい、九条!お前バカか?」
「んだと!?」
「やる気がない人なんて居るわけねえだろ」
「あー」
「旭!」
「翠兄ちゃん」
「蒼が帰ってくる前に廃部にする気?」
「ご、ごめんて」

 皆から怒られてシュンとする旭。

「まあやってしまったものはしょうがない。どうにかして対策を取らないと」
「でもどうします?」
「とりあえず1週間様子を見てみよう」
「了解です」

 旭がやらなければいけないことを旭以外のメンバーによる話し合いが進められていく。

「反省しろよ旭」
「ごめんて」

 そして、次の日。
 
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