愛しの君へ

秋霧ゆう

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第2章

第32話 入部希望者

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 部室に新入生が1人やってきた。
 今年から共学になった我が校で女子が1人。

「入部します!!」
「え…なんで?」

 旭の目の前に立っていたのは、桐生朱音。翠と蒼の妹がそこに立っていた。

「何でって何?」
「いやなんでわざわざ」
「だってお兄ちゃんが戻ってきた時に廃部なんて可哀想じゃん!しかもそれが旭君のせいだとしたら余計に可哀想じゃん!!」
「俺のせい?」
「旭くんのせい!!だってこの学校はどの部活も強くて有名なんだよ!?やる気のない人なんて居るわけないじゃん。馬鹿なの?」
「あぁ」

 また怒られた。

「だから私が入ってあげるってわけ!!」
「えー」
「何?文句あるの?」
「ねえけど」

 するとそこにまた1人、元気な1年生が勢いよく扉を開けた。

「こんちはー!!妖精部の部室ってここっすか?」
「もしかして入部希望者か?」
「はいっす!!俺見た瞬間に分かったんすけど、もしかしてギルベルトさんっすか!?」
「ギルベルト?何言ってんの?」
「いやあんたには聞いてないっす」

 また前世関係者が現れたのか。

「朱音ちゃん、今日は帰ってくれ」
「はぁ!?」
「俺はこいつに話がある」

 旭の真剣な面持ちにしょうがないと朱音は帰った。
 部室で旭と暁と元気な1年生の3人になる。

「で、お前は誰だ?」
「はい!帝国軍剣士部隊補給隊員のリアンっす!!お久しぶりです」
「リアン…、リアン!!久しぶりだな~」

 旭はリアンに抱きつく。

「今は?なんて名前だ?」
「あ、はい!今は三月康太みつきこうたです!!」
「そうか、よろしくな康太」
「はいっす!!…ところで、ギルベルトさんにいつも付きまとっていたあの魔法士、今世は居ないんすね」
「はぁ?」

 康太は暁が見えないようで、暁は静かに怒りを見せる。

「はぁ。何回説明したら分かるんだ?俺とロスは付き合ってたんだ」
「あーそれはもういいっす」
「は?」
「ギルベルトさん、ここはもう戦場じゃないんすよ!?嘘をつく必要なんてないんすよ」
「だから嘘じゃねえって」
「はいはい。わかりました。わかりました」
「はぁ」

 前世時代から何十回と説明しても一向に信じようとはしない康太にため息がつく。

「それで、俺がここにいるから入るのか?」
「はいっす!」
「でもここに来たのはやりたいことがあるからじゃないのか?」
「本当は宇宙人交信部に入ろうと思ってたんす」
「宇宙人交信部にか???」
「はいっす。この高校は本当に宇宙人と交信したって話知ってるっすよね?」
「いや知らねえ」
「それで宇宙人交信…つまり別世界に住んでるいる人と話が出来るんじゃないかと思ったんす」
「別世界?」
「はい。つまり、前世の帝国のメンバーと話せないかと。でも!まさかの交信する前にギルベルトさんに会えたから目的は達成されたんす!」
「なるほどな」
「だから俺も妖精部に入れてほしいんす」
「それでギルベルトさんの」
「あーそれ、それやめろ」
「それってどれっすか?」
「ギルベルトさんっての。俺は今九条旭として生きてんだよ。お前に康太って名前があるように俺にも九条旭って名前がある」
「すんません。では旭さんと呼ばせていただきます!!」
「おー」
「それで、ギル…旭さんと一緒に設立した人ってどんな人っすか?」
「王国の軍人」
「………はぁ?」

 それまでずっと旭に懐いてる犬のような動き、話し方をしていたのに急に殺気を放つ康太。

「やめろ」

 旭は康太の頭を叩く。

「王国のやつらも転生してるんすね」

 急に低い声で話し始める康太。

「そういうのはもう解決してんだよ」
「旭さんが解決してようと俺は許せないっす」
「だけどな、あいつは可哀想なやつだんだよ」
「同情してるんすか?」
「そういうのじゃねえけど」
「じゃあなんなんすか」
「あいつは小さい頃国に家族を殺されて軍人になってなってからも不当な理由でいっぱい傷つけられてそれでも頑張ってきたやつなんだ」
「絆されたんすか?」
「こいつ…」

 蒼を庇いたい旭。そんな旭を許せない康太。静かに康太に対し怒りを見せる暁。

「で、どっちっすか?」
「どっちって?」
「言ってたじゃないすか。1人が転校、1人が入院って」
「あー……」
「どっちっすか?」
「……両方」

 ボソッと両方と言う。言われたことに対し余計に怒り出す康太。

「両方!?忌々しい王国の奴らそんなに転生してんすか?絶対1匹や2匹じゃないっすよ?」
「やめろ!!」

 旭にとっては既に終わったこと、そして椿はととにかくとして大切な幼なじみを“匹”とカウントする康太が許せなかった。
 だが、康太にとってはまだ戦場の延長戦。死んで転生し、見知らぬ国で育ち、戦争は無いと分かっていてもあの頃の記憶が脳にこびり付き離れない。
 康太が今目の前に見ている旭は昔の戦場のように殺気立つ目をしていた。

「なんでっすか!!俺はどうしてもあいつらが許せないんす」
「けど、それはもう終わったことだろ」
「終わったってなんすか!?終わってないんすよ!!!旭さん知ってますか?」
「何をだ?」
「戦争が始まったのって、俺の妹が殺されたのが始まりなんすよ」
「…!?」

 昨年、椿ともそんな話をした。
 椿、いやリシャールが帝国の少女を殺したことにより始まった最悪な戦争。
 その引き金となった少女はリアンの妹だった。

「俺、あん時の光景が未だに脳を離れないんす。だから俺も戦闘員になりたかった。でも、力も魔力も無くて、でもどうしても殺してやりたくて補給部員って形で参加したんす」

 康太は目いっぱいに拳に力を入れて下を向いて話す。

「だから、俺、王国の奴らは絶対に……」
「悪かった。でも、そんな事情があったならなんで当時話さなかった?」

 旭は康太を抱きよせた。

「だって、こんな個人的なこと…」
「個人的?違ぇだろ!俺達は帝国民のために戦ってた。そんな事情があるなら伝えるべきだろ」
「すみません」

 そして前世、自分に起きた様々なことを旭に伝えることができ、康太はやっと落ち着きはじめた。

「すみません。情けないとこみせて。…でも俺はやっぱり許せないんす。王国が」
「でもな、あいつらも結構ギリギリだったんだ」
「あいつらって?」
「王国の」
「やっぱり旭さんは」
「だーから、違ぇんだ。そうじゃねぇんだ」

 旭は昨年起こったことを一から丁寧に説明した。
 康太は信じられない様子で、その話を聞いた。

「じゃあ今、妹を殺したやつは少年院にいるんすか?」
「ああ」
「じゃあ、何も手を出せないっすね」
「出すつもりなのか!?」
「いや……出せない…っすね」
「そうか」

 空気が重い。そんななか、旭が言う。

「飯、食いに行かね?」
「…ははっ。相変わらずっすね」
「何が?」
「空気を変える方法。昔から飯食えばなんとかなるって思ってるっすよね?」
「いや~」
「思ってる思ってる」
「んだと?」

 それまで静かに話を聞いていた暁だが、やっと話に交じり始めた。
 康太は暁が見えないため、1人で喋ってるように見えたがあまり気にはしなかった。

「あー、ここに暁。ロスがいるんだ」
「ははっ、またそんなこと」
「いや本当だって」
「もう大丈夫っすよ、旭さん。俺がどうこうすることはないし、王国のやつらに何かしようとも思わない。だからそんな嘘つかなくて大丈夫っすよ」

 やはり信じようとはしなかった。
 けど、リアンと再会できたことは本当に良かったと思う旭であった。

 
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