愛しの君へ

秋霧ゆう

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第2章

第35話 退院

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 江田とマツクで会ってから1週間。
 遂に蒼の退院の日がやってきた。
 病院の外で待機していた旭、暁、江田、小鳥遊に驚く蒼。

「あれ?学校は?」
「お前の退院の日に俺が来ない訳ないだろ」
「はは、ありがとう。だとしても先輩達は何で?」
「そりゃ来るだろ。大事な後輩の退院日だろ」
「翠は?翠こそこういうの来そうだけど」
「生徒会長だし、他の生徒の手本にならなくちゃいけないから来れないって昨日言ってました」
「そうか。翠も頑張ってるんだな」

 嬉しそうに小鳥遊が呟く。

「小鳥遊ぱいせん…結局告ったんすか?」
「えっ!?兄ちゃんのこと…」
「告白した。……振られた」
「あ…」

 悲しそうな表情を見せる小鳥遊の横で大笑いしている江田。小鳥遊はそんな江田と取っ組み合いを始めた。

「ははは」
「どうした?」
「いや、何も変わってないなって」
「そりゃあ、数ヶ月で何も変わる訳ねぇだろ」
「そうですね」
「それより移動しようぜ」

 そして、5人はマツクへ移動した。
 暁は旭の飲み物を飲み、勝手に減る怪奇現象を見せ、江田、小鳥遊をビビらせて遊んでいた。
 その光景を旭は分からないふりをして、蒼は微笑んで見ていた。
 1時間後。
 旭、暁、蒼は江田、小鳥遊と別れた。

「はぁ~楽しかった」
「だね」

 蒼が立ち止まる。
 旭と暁は振り返り立ち止まった。

「どした?」
「旭、暁。ありがとう。本当にありがとう」

 蒼は2人に頭を下げる。
 旭は蒼の肩を組み、髪の毛をわしゃわしゃした。

「俺とお前の仲だろ」

 そう言うと、旭も蒼も暁も皆嬉しそうに笑った。そうして帰路に着く。

 次の日。

 今日からは蒼も再び学校生活が始まる。
 旭は蒼の久しぶりの登校に今日は自分が迎えに行こうと思っていたが、見事に寝坊した。暁が起こしたのにも関わらず寝坊した。
 蒼が旭を迎えに来て家の中からドタバタ音が聞こえ思わず笑みがこぼれた。

「旭くんってばいつもこうなの?」
「うん」

 今日は朱音も共に学校へ向かう。
 朱音は蒼の嬉しそうな表情を見て、自分も嬉しくなった。

「悪い!待たせた、蒼」

 シャツは乱れ、ネクタイもちゃんと締まってない旭が現れた。

「旭、もう少し待ってあげるからちゃんと着てきな」
「お、おう」
「はぁ~」

 旭はまた家の中に戻る。
 朱音は思わず溜息が出る。

「待たせたな!」

 今度はきちんと制服を着た旭が現れた。

「うし!行くか」

 そして、4人で学校へと向かう。
 校門に着くと、目の前から歩いてきた矢島と他クラスメイトが蒼に気づき泣きながらダッシュで抱きついてきた。

「桐生ー。無事だったか。良かった。良かったー」

 嬉し泣きで一部の生徒から「キモイ」と言わんばかりの目で見られたがお構い無しに矢島は泣いた。

「ごめん。ありが…」
「九条はさ、お前が死んだって何度も言ってくるんだ。だから本当に心配で…」
「………旭?」

 蒼が心配かけたことを謝り、お礼を言おうとしたところ、矢島が蒼に旭へとやり返しを込めて暴露する。
 お兄ちゃん大好き朱音は軽蔑な目で旭を見ていた。蒼もまた…。
 暁は「僕は無関係」という風に旭から離れた。
 旭はただひたすらに慌てていた。

「ノ、ノリだって…」
「ノリ?ノリで僕を死んだことにするんだ」
「わ、悪かった。ごめん!」

 今回の件で、旭に対してかなり迷惑をかけたことは蒼自身、しっかりと理解していた。だからこそ、今回の件は許すことにした。だが、

「次の中間テスト、絶対に答え教えないし、勉強も教えない。1人で頑張ってね」

 蒼は旭の耳元でそう囁いた。
 旭は何も言わずただ頷いた。

「おーい、皆見てんだろ。続きは教室でやれ」

 高槻先生がやってきた。

「桐生は職員室に来い。他は教室に行け」
「はい」
「じゃまた後でな」
「うん」

 皆と別れた蒼と高槻先生。

「もう大丈夫なのか?」
「はい。ご心配おかけしました」
「それでな、大事な話があるんだ」
「大事な話?」
「ああ。実は、お前が居ない間に決めるのはどうかとは思ったんだが、満場一致でな」
「な、なんですか?」
「今年の2年A組の学級委員は桐生、お前になった」
「はぁ?いや、なんで」
「1年間を通して分かったこと。それは九条と他数名が小学生にしか見えないこと」
「それは、まぁ…」
「そして、それを管理出来るのはお前しか居ないんだ」
「いや昨年から引き続きで前田でいいじゃないですか」
「前田はもう嫌だと言った」
「じゃあ、佐藤は?」
「佐藤はお前推しだ」
「いやいやいや…」
「今年は修学旅行があるだろ。まとめられるやつが必要なんだ!!」

 久しぶりの登校で皆から押し付けられた学級委員の仕事。
 高槻先生が必死に蒼に頼み込む。

「これ拒否権は」
「無い」

 蒼は渋々受け入れることにした。


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