愛しの君へ

秋霧ゆう

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第2章

第37話 陰

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(俺は今、理科準備室で康太に押し倒されている)

 時はさかのぼること、数分前。

「あ、悪い。忘れ物をした」
「金城先生が…珍しいですね」
「てことで九条、B棟の理科準備室に取りに行ってきてくれ」
「えー」
「文句あるのか?」
「な、ないです」
「いってらっしゃ~い」

 クラスメイトから笑顔で送り出された。

(くっそ。何で俺がこんな。はぁ。今日は暁も居ねえのに。しかもB棟って1年の校舎だし少し前まで通ってたけど行きづらいんだよな)

「失礼しまーす。ごほっ」

(埃まみれじゃねーか。そういえば、1年の時でもここは来たことなかったからな)

 奥の机の前に到着してからあることに気がついた。
 
「あ…。何を取りに来たのか金城せんせーに聞くの忘れた。俺は何しにここまで来たんだ!!」

 やっちまった。とその場に座り込む旭。

「あれ?旭さん?」
「よー、康太」
「何してるんすか?」

 廊下から話しかけられ、その場で立ち上がる旭。

「金城せんせーから忘れ物取りに行ってこいと頼まれたんだけど何を取りにきたのか、聞くの忘れた」
「あちゃあ。しんどいっすね。A棟からは5分かかりますしね」
「あー、戻るか」
「あ、待ってください」
「どうした?」
「旭さんの足にデカイ蜘蛛が」
「ん?居ねえぞ」
「あー。旭さん、蜘蛛平気になったんすね。昔は凄い苦手だったのに」
「まあな。つか、よく覚えてるな」
「そりゃ忘れる訳ないっすよ」

 康太は理科準備室に入り扉を閉める。

「ん?何で」
「俺、旭さんのことギルベルトさんのこと、昔から大好きなんすよ」
「あー、前も言ってたな」
「尊敬してるとかの好きじゃなくて俺旭さんのことめちゃくちゃにしたいという意味で好きなんすよ」
「おわっ」

 床に押し倒される旭。

「いって」

 旭の上に乗りかかる康太。旭の腕は頭の上で交差され康太が片手で抑える。

「何すんだっ」

 康太は旭の首を舐める。

「んっ、何すんだよっ」
「だから、俺はこういう意味で好きなんすよ。前世では旭さんの周りには常にあの魔法使いがいたし、俺は兵士じゃなくて補給部隊だったから腕力じゃ叶わないし。だから俺今世ではそんな後悔しないようにずっとトレーニングしてきたんす。まぁそれだけが理由ではないっすけど。そしたら、神様が俺に褒美をくれたんすよ。あの日、俺は感動したんす。だから、今日は俺に食われてください」
「はっなせ」

 旭は腕に力を入れるも康太の腕力には勝てない。
 いくら強い旭といっても柔道で力をつけた康太には手も足も出なかった。
 足をバタバタとさせても、妙に康太の足が絡みつく。
 康太は自分のネクタイを外し、ギュッと力強く手首に結んだ。
 手首から手を離した康太。その隙に旭は上半身を上げ反撃しようとする。
 しかし、康太もそれを見逃さなかった。
 旭の上半身の上に乗り、旭のちんぽをパンツの上から撫でる。

「ふっ…ん…」

 康太は揉んで咥えてを繰り返す。
 旭からだんだんと吐息がこぼれ始める。

「そろそろオープンといきましょうか」
「やめっ…ろっ、康太」

 その瞬間、扉が開いた。
 そして扉を開けたのは、朱音だった。

「何してんの?」
「見て分かんない?襲ってんの」
「それ犯罪でしょ」
「だろうね。でも何度かやったら俺に堕ちる。これは決定事項だ」
「きっも」
「それよりさ、さっさと出てってくれない?見てわかるでしょ。今取り込み中」
「あかねっ、たすけて…」
「その声、旭くん!?」

 朱音は康太に近づく。

「女に何が出来るっていう…!?」

 朱音は康太を投げ飛ばした。

「は?」

 何が起きたか分からない康太。
 その隙に朱音は旭の手首に巻いているネクタイを外し旭を解放した。

「お前凄いね」
「そりゃあね、私も桐生の一員だし。お兄ちゃん達が喧嘩強いなら私も強くならないとだし」

(そりゃあそうだわ)

「それより、旭くんは早く自分の教室戻って」
「け、けど」
「私は大丈夫だから早く」
「悪い」

 朱音と康太を残し、旭は理科準備室を出た。
 戻る途中、矢島に遭遇した。
 服が乱れる旭の姿。

「何があった!?」
「な、なんでもねえって」
「くっそ~。俺も俺もやりたかった」
「なっ、違ぇって」
「じゃあなんでそんな乱れてんだよ」
「声がデケェよ」
「うるさい!!!」

 今はあくまで授業中。
 1年生の教室の前でデカイ声で会話する旭と矢島は授業中の先生に怒られた。

「すんません」
「で、矢島は何でここに?」
「九条がいつまでも帰ってこないから俺が心配で見に来てやったんだよ」
「あー、そうだったのか」
「で?何で何も持ってないんだ?やっぱお前やって」
「ねぇよ!!」
「だからうるさい!!!」
「すんません」
「金城先生の忘れ物が分かんねぇんだよ」
「お前が来たからには何が必要か分かってんだろうな」
「いや、知らん」
「お前なー」

 ガラッ。再び扉が開く。

「お前ら、今授業中だよな。サボりか?」
「違います!金城先生が理科準備室に忘れ物したから取りに行くようにって」
「じゃあさっさと行って教室戻れ」
「はい!」

 旭と矢島は理科準備室へと向かう。

「どした?何でそんな足取り遅せぇの?」
「いや、何でも」
「やっぱお前」
「だから違ぇっての」

 だがそんな心配はせずとも、既に朱音も康太も姿を消していた。
 安堵する旭。

「お前やっぱなんか変だな」
「いや、そんなこと…」

 旭の様子に心配する矢島。
 旭は否定していても、旭の顔は真っ青だった。

「しょうがない。金城先生の忘れ物は俺が持ってくからお前は保健室で休んでろよ」
「……。そうするわ。悪ぃ、頼んだ」
「おう!」

 旭は保健室へと向かった。
 矢島はクラスメイトにメッセージを送った。
 金城先生の忘れ物は何だったのかと。そして届いたメッセージは、『やっぱ忘れ物してなかった』だった。

 放課後。

 例の件があったのは5時間目。
 蒼は旭の鞄を持って、保健室に来た。

「旭、大丈夫?」
「お、おう」
「何かあった?」
「何かって?別に」
「理科準備室に行くまでは元気だったじゃん。矢島が体調不良で保健室に行ったって言ってたけど」
「あぁ、ちょっと体調悪くてな…」
「旭、僕にも何も言ってくれないの?僕は旭と暁に話を聞いてもらって気持ちが凄く楽になった。感謝してもしきれない。だから、今度は僕の番。話、ちゃんと聞くよ?」
「ありがとな。けど、今はまだ…」
「そっか。じゃあ、話せるようになったら話して」
「おう」
「じゃあ、僕は部室に向かうよ」
「お、おう」
 
 蒼は保健室を出ていった。

「後輩に襲われたって?言えねぇよ、こんなこと…」

 するとそこに暁がやってきた。

「探したぞ旭!って、旭どうかしたのか?顔が真っ青だぞ」
「ん?あぁ」
「あぁって、どうしたんだ?何があったんだ?馬鹿は風邪引かないんだろ!!」

 普段ならイラッとする言葉だが、今は怒る気力も起きなかった。ただ暁にはそばに居てほしかった。

「……。暁、今はただ傍に居てくれないか」
「もちろんだぞ!」

 蒼サイド。

「遅かったですね」
「バイトあるのにごめんね」
「いえ、それより九条先輩は」
「あぁ、旭は体調不良で今日は休み」
「え、大丈夫ですか?」
「うん。とりあえず今は大丈夫そう」
「そうですか。じゃあ、今日は何しますか?」
「そうだね」
「今までの部活動は九条先輩だからこそ許されてたところありますよね?」
「そうなんだよね」

 今までの部活とは、『妖精はいるのか?』という質問に対し『居ます』。『妖精の好きな物は何か?』という質問に対し『ケーキ』などこんなことしか活動していない。
 これは旭が部長だからこそ許されている活動だと皆思っている。

「あの、すみません。俺も今日ちょっと気分悪くて帰ってもいいっすか?」
「え、大丈夫?」
「はい。すんません」

 康太も帰っていった。
 その後ろ姿を黙って朱音は見送った。

「うーん、今日は3人か。近衛もバイトだし、朱音もダンス部があるし。うん!また適当に書いて提出しとくから帰っちゃって」
「いいんですか?では失礼します」

 近衛はバイトに向かった。

「ほら、朱音も」
「うん。それより、旭くんは大丈夫そう?」
「うん。顔は真っ青だったけど、旭ならきっといつもみたいにすぐ元気になると思うよ」
「そっか。うん。じゃあ、ダンス部行ってくるね、お兄ちゃん」
「行ってらっしゃい」

 朱音もダンス部へと向かった。

「ふぅ。皆、なかなか教えてくれないね」




 

 
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