愛しの君へ

秋霧ゆう

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第2章

第38話 夏休み・海の家前編

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「夏休みだー!!!」
「今年も危なかったけどね」
「それは言わねぇ約束だろ」

 今年も旭は再試地獄にあっていた。
 今回のテスト、蒼は宣言通り旭に一切手を貸さなかった。だが、この海の家のバイトは決まっていたので暁が答えを暗記し再試の最中教える形で解決した。

「それより蒼、お前やってくれたな」
「何が?」
「4時に起こしにくるとは。しかも父さんに迷惑かけないように俺にだけ地味な嫌がらせ。大量のメッセージと電話。もう1時間寝れたはずなのに…」
「昨年旭が僕にやった行為だよ。やり返し成功だ」
「しかも暁も蒼に付くとは」
「まぁな!このことは先に蒼に聞いていたからな。僕はしっかり耳栓をさせてもらった」
「くそー」
「やったな、蒼」
「暁のおかげだよ。ありがとね」

 そう。旭が暁に助けを求めてもスヤスヤと眠る暁は全て無視した。しかも、耳栓をしているのに気づいた旭だったが、暁はシールドの魔法を発動しているために旭は暁にちょっかいも触ることも出来なかった。
 そんな話をしていると、昨年沢山お世話になった海の家へと辿り着いた。

「こんちはー!!」
「今年もよろしくお願いします」
「やっときたね!!」
「待っていたよ」
「お、仲直りしたみたいだね」
「あの時はすんません」

 旭、蒼、暁はじじいと松代さんに頭を下げた。

「あの時は見てるこっちが苦しかった。あんなに仲良さそうにしてたのに帰りは目を合わせようともしない。でも今は…。安心したよ」
「あざす」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、今年もどんどん稼ぐよー」
「はい」

 段取りは昨年と一緒。
 仕込みして作って販売してお姉さんの相手をして。

「あれ?昨年も確かやってたよね?」
「はい!昨年凄ぇ楽しくて今年も来ちゃいました」
「いいね。それより、8月4日なんだけど…」
「旭ーちょっと手伝ってもらっていい?」
「すんません」

 このナンパしているお姉さん、昨年も旭と蒼をお祭りに誘ったが、先約があるからと断られていた。
 今年は1番最初に声を掛けるも躱された。
 裏から蒼がやってきた。
 蒼は身体中に傷があるため、ラッシュパーカーを来ている。だが、それが夏の熱さに相まって魅力的な男に魅せていた。
 旭はすぐに察した。この女性、蒼に堕ちたと。
 旭が蒼を睨みつける。

「何?」
「お前は敵だ!!」
「いや何が!?」
「旭ー???」

 また今年もお姉さんに夢中になる旭に釘を指す暁。

「ご、ごめんて」
「あ、あの!!今年もお祭りがあるの。一緒にどうかな」

 赤面しながら蒼に聞くお姉さん。先程まで話していた旭は完全に空気となっていた。

「すみません。今仕事中なので」
「じゃあ、仕事が終わったら聞ける!?」
「うーん、どうだろ。それより旭、手伝ってもらいたいんだ。すみません、失礼します」

 蒼と旭は裏に戻った。

「旭、僕女の子に興味ないから」
「えっ、お前もなのか?」
「え?」
「もしやお前も俺のこと…」
「違うから」

 そう言いながら、キモイ発言をした旭を蒼は殴った。

「いって、お前のパンチ強いんだからやめろよ」
「旭がキモイこと言うからでしょ」
「だって蒼が女の子興味ないって。まさか松代さん!?」
「呼んだかい!?」
「松代さんじゃないし、呼んでないし」
「じゃあどういう」
「今はまだ要らないってこと。何で男子校に入ったと思ってんの?」
「俺に合わせて」
「まぁ、それもあるけど」 
「とにかく今は彼女要らないから。それに旭には暁がいるんだし。女の子にデレデレするの辞めなよ」
「そうだぞ旭!」
「ぐぬぬ…いや、そうだな」

 そんな会話をしていると売り場からお客さんの声が。

「すみませ~ん」
「あ、今行きます!!」

 そして、また女の子からナンパされデレデレする旭。

「あーさーひー!!!」

 そんな旭を見てまた怒りをみせる暁。
 旭と蒼以外見れないのをいいことに、旭の頭をポカポカと叩く。そして、暁は旭の足元に移動する。

「氷の初級魔法・雪箱スノードーム

 これは前世時代、子供でも出来る簡単な魔法で、指定した場所に雪を降らせるという魔法だ。
 それを旭の足に指定し雪を振らせていた。
 いくら暑い夏の日だとしても、永遠に足を目掛けて雪が降れば寒くなる。
 上半身は暑いのに、下半身は寒いという地味な嫌がらせを受けることに。
 それからは女性からのナンパには断るようになった。

「お兄さん、今夜暇?」
「いえ、すんません。用事があって…」
「じゃあ、明日!」
「明日も…その…」

 と断っていると、ナンパしてくるお姉さんの友達が困ってるからとナンパするお姉さんを回収してくれる。そんなことを何回か行い今日のバイトは無事に終わった。

「今年はあまり鼻の下を伸ばしてなかったね」
「松代さん。そりゃあ、俺恋人いるし」
「何!?彼女出来たのか!?あんたは?」
「僕はいません」
「そうか。まだ狙えるということだね」
「いや狙えません」
「何故だい!!」
「さすがに彼女は同年代がいいというか…」
「そうかい、私は今振られてるという訳だね」
「ていうか、旦那さんいるじゃないですか」
「昨年も言ったと思うけど、あんなヨボヨボなじじいはお呼びじゃないよ」
「そうですか」

 じじいは悲しそうにしている。

「そ、それより、俺達は昨年と同じ場所に泊まれるんすか?」
「あぁ。先月まで人が入ってたみたいだけど彼女と暮らすとかで出て行ったから、今年もあそこで寝泊まりをしな」
「はい、ありがとうございます」

 旭と蒼はあのアパートに移動する。

「ちょっと待ちな」
「はい?」

 3人は振り返る。
 松代さんは今年もお弁当を作ってくれていた。

「今日の夕飯と明日の朝ごはんだよ。レンジで温めて食べるように」
「ありがとうございます」
「松代さんの飯美味いんだよなー」

 ご飯を貰い、3人はアパートに移動した。

「おかえりばあちゃん、荷物届いてるよ。あ、じいちゃんもおかえり」
「ただいま」
「あれが明日からお前と一緒に働くことになる2人だよ」
「あれって…」
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