愛しの君へ

秋霧ゆう

文字の大きさ
50 / 62
第2章

第41話 夏休み・夏祭り

しおりを挟む
 8月4日。

「今日は祭りだー」
「昨日はありがとな、蒼」
「楽しかった?」
「おう!旭が1人で大騒ぎするから注目の的だったけどな」
「あはは。想像出来る」
「あ、1人増えたこと由香里さんに伝えた方がいいかな?」
「昨日伝えといたよ」
「え、マジで?」
「蒼は昨日何してたんだ?」
「朝、出掛けようとドアを開いたら丁度大学に向かう由香里さんと千夏さんに会って、何故か僕も一緒に大学に行くことになって、午後は由香里さんの家でタコパ」
「3人で?」
「いや、あとボブさんも居たよ」
「そっか」
「旭、参加出来なかったこと悔しがってる?」

 暁の目が光る。

「そんなことないって!」
「そ?良かった。浮気願望があるのかと思った」
「な訳ねぇだろ」
「でね、あっちもボブさんが一緒に来るって」
「へ、へぇ」
「もしかしてビビってる?」
「そんなことねぇよ」

 そんな会話をしていると由香里、千夏、ボブがやってきた。
 ボブは来るやいなや、旭の目の前に立つ。
 旭は全身から冷や汗が出る。その光景に謎の緊迫感が走り、暁が旭の前に出て、いつでも魔法を出せるようにしていた。
 すると、

「昨年はごめん」

 ボブは旭に頭を下げた。

「え?」
「実は千夏のことが好きだったんだ」
「それは…知ってます」
「なんで!?」
「そんな雰囲気出てたし」
「そ、そうか。それでな、一緒に祭りを回らないか誘ったのに千夏は断ったんだ。でもいざ祭りに来たらお前が一緒に周ってたから意地悪した。すまん」
「いや別に良いっすよ。それにあの時ボブさんが俺と千夏さんの間に入ってきてくれなかったら俺は今も恋人はいなかったかもしれないし」

 旭が前世を思い出すきっかけになったのは、昨年の夏祭りがきっかけ。
 その為、ボブが旭を千夏から遠ざけなければ、あの日あの時旭は暁と蒼の話を聞くことはなかった。つまり前世の記憶を思い出すこともなかったという訳だ。そうなると今も旭と暁は親友のような関係で恋人になることもなかった。
 そうなるとボブは旭の恋のキューピットといっても過言ではない。

「お、俺はまだ独り身なのにこいつには彼女がいる?」
「はい?」

 ボブはボソボソと喋った。その声を聞き取れなかった旭は聞き返す。

「ずるい!」
「はい!?」
「ずるいんだ!!」

 ボブは旭の肩を持ちゆらゆらと揺らしている。
 暁は離せと抗議している。
 由香里はあの2人は置いといて先に向かおうと言う。由香里、千夏、蒼、近衛は先に向かうことにした。
 旭から「待って」という声が聞こえたような気がしたけど無視して向かった。

「ボブがごめんね~」
「…お2人は付き合ってるんですよね?」
「え、なんで知ってるの!??」
「なんかそんな雰囲気が」
「すごっ!」
「蒼くんと近衛くんは彼女できた?」
「いませんよ」
「お、俺も」
「すみません、千夏さん」
「何が?」
「お2人のデートに邪魔する形になって」
「別に良いよ。いつも一緒にいるし。それに君は私たちを尊重してくれるから」

 そして今年もまた大食い夏祭りが始まった。
 千夏の要望でやきそば、たこ焼き、やきとり、からあげ、ポテト、りんご飴。

「すごい、その小さな体にこんなに入るんだ」
「馬鹿にしてる?」
「してません!尊敬です」
「そう?なら良かった」
「ねぇねぇ実は花火がとても綺麗に見れるスポットがあるの!そこ行かない?」
「行きます」

 由香里の後を着いていくと、そこは昨年、蒼と暁が話し、ちょっとした喧嘩になった場所だった。

「昨年も行こうとしたんだけどね、なんか言い争いの声が聞こえて来れなかったんだよね~」
「それは、すみません…」
「え?もしかして蒼くんだったの?」
「実は…はい」
「じゃあ相手は旭くん?」
「というよりは、旭の今の恋人というか…」
「じゃあ恋人さんはここら辺の人だったんだ」
「というよりかは遊びに来てたみたいな」
「そうだったんだ」

 話していると、大きな花火が上がった。
 昨年はちゃんと見れなかった花火。
 それはそれはとても綺麗なものだった。
 何故だろうか。今までに見た花火よりも断然綺麗なものだった。
 ラストスパートになり、花火が連射され、夜空には大きな花火が舞い、今年の夏祭りは終わりを告げた。

「今年も凄かったね~」
「だね。来年も一緒にどう?」

 まさかの千夏が蒼と近衛に声をかける。

「是非」
「よ、よろしくお願いします」
「硬い、硬いぞ近衛くん」
「あはは」
「じゃあ帰るか!」
「あ、待ってわたあめ買い忘れた。買ってくる」
「じゃあ私も一緒に」
「大丈夫!ちょっと待ってて」
「…よし、じゃあ近衛くん警護頼んでもいい?」
「はい!」

 近衛は千夏を追いかけた。

「警護?」
「うん。ちーちゃん可愛いでしょ?1人でいると必ず声をかけられちゃうの。基本的には興味ないから素通りなんだけど変なやつってちーちゃんの腕や肩を掴んで離さないから私がいつも一緒にいるんだけどね。今日はこれ…」
「あっ…靴擦れ」
「さすがだな~。私のこと大好きってのが伝わってくる」
「すみません…。気がつかなくて」
「あーごめん。気を遣わせたくて言った訳じゃないの」
「それは分かってますが…」
「じゃあすぐそこのコンビニで絆創膏買うからそこまでおんぶして!」
「良いですよ」

 そんな話をしていると千夏と近衛がわたあめを2つ持って帰ってきた。

「あれ?近衛も買ったんだ」
「あ…千夏さんがくれて」
「へぇ、ちーちゃんが!珍しい」
「うん」

 戻ってきた近衛の目は赤く、少し涙を浮かべているようだった。
 そして約束通り、蒼は由香里をおんぶした。
 千夏は頬を少し膨らませ蒼を睨み、近衛は自分が代わりますと言ったが蒼と由香里が断った。
 コンビニに着くと、コンビニの前の椅子でボブと旭が仲良くアイスを食べていた。

「あれ?旭。来ないなーと思ってたらこんなところにいたの?」
「ってかボブ酔ってない?」
「そうっすね」

 時は戻って1時間前。
 蒼たちが神社に向かって5分後、旭、暁とボブはゆっくり歩き出した。

「俺は産まれてこの方彼女が居たことないんだ」
「はぁ」
「カッコイイと言われても付き合うのは無理と言う人ばっかで」
「はぁ」

 突然語り出すボブにただ静かに聞く旭。

「俺の地元田舎でな。周りは山と田んぼで、海の近い大学に行けば陽キャだらけで彼女も出来ると思って選んだけど、出来ないんだ」
「彼女作りたくて選んだんすか?」
「そうだよ、悪いか!」
「いえ、全く!」
「あ、ちょっと酒買っていい?」
「どうぞ」
「欲しいものある?」
「いえ特には」
「じゃあコーラでいい?」
「あ、はい!あざす!」

 そして缶ビールとコーラを手に持ち外に出て向かうと思ったらボブはコンビニ前の椅子に座り酒を飲み始めた。

「…行かないんすか?」
「ちょっと飲んでから」
「うす」

 その結果、缶ビール1本で潰れたボブをそのままにしとく訳にもいかず、旭と暁はコンビニ前で潰れたボブを介抱しながら花火を見ることになった。
 そしてその後潰れたボブは旭、蒼、近衛で協力し大学の寮の前まで運んだ。
 次の日、目を覚ましたボブは寮に住む仲間たちに身ぐるみを剥がされ、パンツ一丁で玄関(外)で目を覚ましたという。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

この手に抱くぬくもりは

R
BL
幼い頃から孤独を強いられてきたルシアン。 子どもたちの笑顔、温かな手、そして寄り添う背中―― 彼にとって、初めての居場所だった。 過去の痛みを抱えながらも、彼は幸せを願い、小さな一歩を踏み出していく。

サラリーマン二人、酔いどれ同伴

BL
久しぶりの飲み会! 楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。 「……え、やった?」 「やりましたね」 「あれ、俺は受け?攻め?」 「受けでしたね」 絶望する佐万里! しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ! こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

処理中です...