愛しの君へ

秋霧ゆう

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第2章

第48話 修学旅行3日目

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 朝、鳴り響くアラーム。
 6時に起きればいいのに時刻は4時30分。
 アラームをかけたのは旭。そのアラームで起こされたのは蒼だった。
 最初は無視していたものの、大音量で鳴り響く音にしょうがなくアラームを消しに行く。
 数分後また、鳴り響く。そして消しに行く。しかし、また…。
 旭は5分ごとに設定していたのだ。
 その状況に怒りを覚える蒼。
 グースカ寝ている旭の腹に一発拳を入れる。

「ぐはっ。何…すんだ」
「それはこっちのセリフなんだけど」
「は?」
「アラーム」
「ああ」

 旭はアラームを止める。
 アラームを止めるも蒼は旭を睨み続けた。

「なんだよ」

 するとまたアラームが鳴る。そして止める。

「今何時だと思ってる?」
「ん?5時」
「僕昨日言ったよね?6時30分で良いって」
「けどそんなギリギリにセットしたら俺起きれないし」
「昨日まではどうしてたの?」
「昨日もこんな感じ。俺も矢島も眠りが深いから丁度良い時間で起きれた」
「そう」 
「じゃあ、僕が居なくても起きれるよね?」
「当たり前だろ」

 そう言うと蒼は部屋を出た。
 隣の部屋に行ったのだ。
 眠そうにする矢島を連れ蒼のべッドに寝かした。

「じゃあ、また1時間半後に。ちゃんと起きてよ」
「心配しすぎだって」

 そうして蒼は矢島の寝ていたベッドに入る。
 そして朝。

「あれ?なんで桐生こっちの部屋にいるの?」
「旭の目覚ましが煩くて早朝に矢島と部屋を交換してもらった」

 そして朝食の時間。
 居ない旭と矢島とクラスメイト数名。
 蒼、桃山、久我でバイキング形式の朝食を食べていると高槻先生がやってきた。

「あれ?九条と矢島は?」
「まだ寝てまーす」
「とうとう気が緩んだか…出発までには起こしとけよ」
「はーい」

 暁と喧嘩をしていた時はきちんとした時間に起き、朝ごはんを皆と共に食べていた。しかし、仲直りをして気が緩み寝坊したのだ。
 朝食も終わり部屋に戻る。
 明日は別のホテルになるため荷物をまとめ、7時40分頃旭と矢島を起こしに部屋に行く。

「桐生、鍵貸して」
「はい」

 扉に入ると幸せそうな表情で寝ている矢島と旭。そして旭をポカポカと叩き、頑張って起こそうとしている暁の姿があった。

「蒼~」

 涙目状態の暁の姿を見て、蒼は旭の側へと移動し思い切り頭を叩いた。

「痛っ」

 蒼は強い。旭より強い。威力も強い。
 そんな蒼に叩かれて旭は起きた。
 その横で桃山と久我にゆさゆさと揺すられて起きた矢島。

「なにすんだよ」
「それはこっちのセリフ」
「はあ?」
「時計見て」
「時計…って7時45分!?朝飯は?」
「もう時間ないから食べれない。でも自業自得だよね?」
「はあ?起こしてくれりゃいいじゃん!」
「旭が自分で起きれるって言ったんでしょ」
「言ってねぇ」
「言った」
「言ってたぞ旭」

 蒼と暁から言われた旭は少し気に食わないような顔をしていたが、矢島と共に支度を始めた。

「8時にロビー集合だから遅れないようにね」
「おう…」

 そして8時。
 遅れずにやってきた旭と矢島。

「起きれたのか」
「せんせー腹減った」
「寝坊したお前らが悪い」
「えー」
「ほらバスに乗れ」

 バスが出発して2時間、小樽に着いた。
 
「この後は自由時間とする。各班で話し合った場所を周りつつ、昼食を取り、テレビ塔に16時50分集合とする」

 予定としては家族・友達へのお土産を買いつつ気になる店があったら入店。行きたい場所は特に決めなかった。時間に縛られるのは面倒臭いし。

「なあ、腹減ったー」
「お昼まで待てない?」
「無理」
「はぁ、じゃあ2人でご飯食べてきなよ」
「それは嫌だ」
「なんで?」
「せっかくの修学旅行だろ、皆で食いてぇじゃん」
「じゃあもうちょっと待って」
「えー」

 11時。
 瀕死状態の旭と矢島。

「そろそろお腹空いてきたしご飯行く?」
「行く!!」
「じゃあどこに」
「北海道といったら?」
「ラーメン?」
「じゃあ行くぞ!」

 といい、入ったのはまさかのチェーン店。

「いや、なんでこの店!?」
「だって目の前にあったし、腹ぺこだし」
「まあまあ」
「美味しいけどさ」
「これはネタになるぞ?」
「ネタにする必要性ある?」
「大いにある!」

 久我は漫画研究会メンバー。
 今日の出来事を漫画のネタにするようだ。

「俺味噌ラーメン!」
「じゃあ、味噌が5…」
「いや俺はとんこつにする」
「とんこつ!?」
「北海道といったら味噌だろ」
「でもチェーン店じゃん。味は一緒。なら俺はとんこつが食いたい」
「あー、そう」
「じゃあ味噌が4つととんこつが1つで」

 数分後、ラーメンが届いた。
 特に言うこともなく完食した。
 その後、お土産ショップにてジンギスカン味のキャラメルや色んな味のキャラメル、お菓子やキーホルダーなどを買い歩いていた。
 ふと後ろを見ると久我がいない。

「えっ久我?」
「どこに行った?」

 来た道を戻るとゲームセンターのUFOキャッチャーの前で立ち止まっていた。
 今までに見たことないくらい興奮していた。

「何してんの?」
「こここ、これ。限定フィギュア」
「それが?」
「これ欲しくてやってもいい?」

 目をキラキラさせ、懇願してきた。
 旭は暁との喧嘩で迷惑をかけた思いからちょっとだけならとOKした。
 UFOキャッチャーで商品を獲得し、次に向かったのは時計台だった。

「しょっぼい」
「写真で見た時は凄そうだったのにな」
「ってか俺らこれ1回通り過ぎたよな?」
「うん」
「あ、時間」

 そして走って集合場所のテレビ塔にやってきた。
 そう。UFOキャッチャーで思った以上に時間を使ってしまったのだ。
 久我が限定フィギュアを獲得したしたと思ったら次は桃山が子供向けアニメの猿のぬいぐるみに本気になり、獲得したと思ったら矢島が大量の菓子を狙うと躍起になりを繰り返した結果、時間が来てしまったのだ。
 大量の景品を持ち、集合場所へと辿り着いた。

「お前ら何やってたんだ?」
「いやー、ふらっと入ったら思ったより時間食っちゃって」
「せっかくの北海道なのにか?」
「でもちゃんとお昼は味噌ラーメンにしましたよ(チェーン店だけど)」
「まぁ別にいいけど」

 今度の集合時間はきちんと集まれたようだ。
 その後、今日のホテルへと移動した。

「明日にはもう帰るのかー」
「早かったね」
「ほとんど怒られてた気が…」
「問題行動ばっかするからでしょ」
「それは…そうだな。それはそうと俺は今日オールする!」

 と、宣言していたが1日歩き回り疲れていたのか23時には就寝した。

 
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