【SS】日常・恋愛・ファンタジー

秋霧ゆう

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12.異能力

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主人公・紬。


 この世界は異能力の力で成り立っている。

 私の力は時を操る力。
 この力は世界中の時を止めることが出来る。でも代償として誰にも見えないし、誰にも声は届かない。
 普通の時間軸ではなく、私の時間軸で生きるから。

 私はずっと生きる理由を探していた。
 誰にも見つからない世界で何をしたらいいのか。目の前に人が居るのに触れないし、触られない。

 それが私の人生だった。

 だからちょっとしたイタズラもした。
 私が時間を止められるのは精々5分。5分が過ぎると人や動物。この世に生きる生物は動かないのに時間だけが動き出してしまう。
 朝にやると、全線遅延が起きたり、会社や学校に遅刻する人々が出る。
 それを見て大笑いしていた。
 でも、私は虚しかった。
 自分の腹いせに無関係な人を困らせて、自分自身に嫌気がさした。

 そんなある日私を見つけてくれた人が現れた。その人の名前は瑞希。私よりレベルが高くて異能力を2つ持つ人。
 普通は1人につき1つが常識だ。
 しかし、瑞希は水と雷を操る力を持つ。

「あー!!この遅延はあなたのせいだったのね!」

 初めて声を掛けられ驚いた。

「ねぇ!聞こえてるー?」
「…え、あ、うん」
「早く、時間を戻して!」
「…」
「何?」
「私が、見えるの?」
「見えるって何が?あなたここに居るじゃん」

 初めて私を見つけてくれた人。
 私は初めての経験にその場で泣いてしまい、瑞希は泣かせてしまったことに戸惑いを隠せなかった。
 出会いから3ヶ月。瑞希は毎朝、家から最寄り駅までの5分間、毎日私と話すようになった。

「ねぇ、紬」
「なに?」
「紬の能力で人助けをしない?」
「人、助け?」
「うん!」
「誰も私を見てくれないのに」
「私が伝える!」
「…」
「2人で皆を助けよう!」
「…うん」

 最初こそ乗り気ではなかったものの、人を助けることは気分が良かった。
 あのイタズラをしてた時よりも遥かに心地よかった。

 けれど、誰も私のことは信じなかった。
 どれだけ、瑞希が伝えても、異能力を2つ持つ瑞希が瑞希の力で助けてくれたと思われるだけだった。
 例え信じてくれる人が現れても、少し前まで時間を止めて遊んでいた私に怒りを見せる人がほとんどだった。
 自業自得ではあるけど人を助けることになんの意味があるのか分からなかった。

 ある日、昼間に私は散歩していた。

「キャー!!」

 叫び声が聞こえ、すぐに時間を止め現場に向かった。
 工事中のビルから鉄骨が降ってきて、下に居る散歩中の、異能力が開花前の園児たちに突っ込もうとしていた。開花後の人であれば助かる道はあるけど開花前だと助かる道はほとんど無い。
 今の時間は13時15分。瑞希は学校の授業中で5分で来れるような場所では無かった。

 時間を止め、4分が経過していた。

(あと1分で時間が動き出す。私が止められるのは生物だけ。5分が過ぎたら鉄骨は…落ちちゃう。どうしよう。どうしたらいいの?)

 恐怖で体が震える。

「助けて!瑞希ちゃん!!!」

 5分ジャストで鉄骨は動き始めた。
 
 …が、鉄骨は吹っ飛んだ。

「お待たせ!」
「瑞希ちゃ…」

 急に時間が止まり、何かあったのかと心配になった瑞希は異能力を駆使して私を探し回っていた。
 瑞希の異能力は水と雷。
 街中にある水を使い、看板をサーフボードのようにして雷の能力で電光石火の如く街中を駆け回った。
 瑞希が来たことへの安心感から私は能力をとき、人々は動き始めた。
 鉄骨が急になくなり周囲を確認する人々。
 そしてそれが1人の女の子によって解決されたと分かるような状況だった。

「お姉ちゃん、ありがとう!」

 いつも通り、感謝されたのは瑞希だけ。でも、

「あのね、実は君たちを助けたのは私じゃないんだよ。皆には見えないかもしれないけどね、ここに私の友達が居て、この子が君たちを助けてくれたの。だからお礼ならこの子に言ってほしいな」
「助けてくれて、ありがとう!」

 心のこもった感謝の気持ち。
 嬉し泣きしながら、返事をする。

「どう、いたしまして」

 私の声は届かない。
 それでも伝えたくて、感謝される気持ちがこんなに嬉しいなんて。
 その日から皆に見えない異能力者がピンチな時に助けてくれる。
 そんな噂が広がった。
 助けられた後は必ず皆はこう言う。

「ありがとう!」
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