12 / 53
俺から見た世界
八日目
しおりを挟む「おはようございます」
早起きをして支度を済ませ、会社に行く。
朝ごはんを会社で食べることにした俺は課長の机に先日仕上げた書類を置き、付箋で要件を書きまとめた。
昨日できなかったか自分の仕事を早めに終わらせて早く帰りたい一心でパソコンを起動し、システムを入力していく。
後ろが何やら騒がしくなっていく、パソコンから目を離して室内を見渡すと結構な人数が出社していた。
「ねぇ……あれ……ふふ」
「え? あ! ほんとだ……くすくす」
チラチラと視線が送られる。
何か嫌な感じがしたが、俺は仕事を片ずけることを優先させた。
肩を強めに叩かれ、驚いた俺が見上げると課長が後ろに立っていた。
「君。ちょっといいかな?」
「あ……はい」
資料の確認だろうか? 俺は課長の席に言われるがままついて行った。
「資料作成お疲れ様! 後で確認しておくよ」
「え? あ……ありがとうございます」
「ところでさ」
さっきまで笑顔だった課長が打って変わって険しい表情で耳打ちしてくる。
「君。女性社員に手を出して泣かしたって本当か?」
「え???」
俺が女性社員に手を?? そんなわけない。今まで彼女がいたことすらない俺にそんな勇気はない。
必死に違うことを伝えようとするが、上手く言葉が出てこない。口下手な俺が何を話しても言い訳にしか聞こえなかった。
「ある女性社員がな? お前に手を出されたと言ってきたんだ。証拠もあるから下手に嘘つこうとしたらすぐ分かるからな」
証拠も何も俺は本当に何もやっていなかった。
肩を強めに押さえつけられ威圧される。俺はただ頷くことしか出来なかった。
「次からは絶対やらないように。あと女性社員がお前のこと警戒してるからむやみに近づくなよ」
課長は言いたいことだけを言い残し、俺に席に戻るよう伝えた。
全く訳が分からない。二日連続で課長から呼び出しを食らうなんてなんて不運なんだ。俺は自分の運勢を呪った。
朝から無駄に精神を消耗したので珈琲を飲んで切り替えようと休憩室に向かうが、室内から大きめの話し声が聞こえてきた。
「お前聞いたか? あの話」
「あー! 知ってる! あれだよね!」
「あいつも不憫だよなぁ(笑) セクハラ疑惑なんて(笑)」
「そうそう(笑) しかも資料全部やり直しのやつさ! 元々の資料って別の企画に回したんだろ? 課長の小野田さんもよくやるよなー(笑)」
楽しげに俺の悪口を話している。資料が別の企画に……?
俺が頑張って作った資料が俺以外のやつが自分が考えたものとして発表したのか??
俺は休憩室に背を向けて自分の席に戻る。嘘だ。絶対に嘘だ。俺の話じゃない。そうだよ。だいたい俺の名前も出していたかったじゃないか。
自分の心を宥めるように別の人間だと思い込むようにした。
だが、別の人間が俺と同じような目にあっているとは思えない。
俺は自分の仕事に没頭してさっきまでの話を聞かなかったことにした。
「っしゃ!! 終わった!」
自分の仕事が終わり、久しぶりに定時で帰れる喜びをかみ締めていた。
外はまだ明るいし、社員の方も何人か残っている。
「お先に失礼致します! お疲れ様でした!」
そう言うとカバンを持って足早に退勤する。
以前、終わったあとにのんびりコーヒーを飲んでいたら仕事を追加されたからだ。もう二度とそんな役はごめんだ。
「おーい!!」
後ろの方から声をかけられたが、俺は無視して早足で家に帰る。
「待ってってば!! ねぇ!」
しつこいと思い俺は鬼の形相で振り返る……が
そこには小さい足で息を切らしながら必死に走っている死神の姿だけであった。
「もう! 待ってってば!! ちょっ……もう無理……」
パタッと地面に倒れ込み息を切らしている死神に俺は心配になり、駆け寄って抱き抱えてやる。
「置いてくなんて酷いなぁ……今日もざんぎょー? かと思って待ってたのに」
「ごめんって……」
あの時は会社から逃げるしかなかったことを伝えると、死神は分かったふうに頷いて許してくれた。
「ところでさ? お願いがあるんだけど……」
死神は目をきらきらさせながら俺の腕の中でオネダリポーズをとっている。なにか企んでないといいが……
俺は無愛想に返事を返した。
「なに? 俺ができないことはダメだからな?」
「僕ね! レシピ本が欲しい!!」
「レシピ本?」
「そう!!」
俺はいまいちピンと来なかったが、死神がキラキラした顔で話し続けた。どうやら社内で彷徨いていた時に偶然料理の話が聞こえたらしく、聞いたことの無い料理で一度作ってみたいのだとか……
料理本には色々な料理の作りかたがわかりやすく書いてあるから是非とも欲しい! との事だった。
別に俺としては美味しいご飯を作ってくれるに越したことはないし、二つ返事でOKした。
帰る途中近場の本屋に寄って死神が色々な料理本を吟味した後買ってあげた。
家に帰ると、死神が嬉しそうにページをめくる。次はどんな料理を作ってくれるのか……
明日からのご飯が楽しみだ。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
