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172話「ギーゼもやっぱり女」(視点・ギーゼ→ヒロヤ→ギーゼ)
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(新ダンジョン……どんなモンスターがいるんだろうな)
昨夜、アルダさんから渡されたシャムシールを手に立ち上がった。ランニングで身体は充分温まっている。
「ヒロくんから頼まれてたんだけど、まさかこんなに早くクランのみんなで冒険に出る事になるって思わなかったから。ホントはアルダが打ちたかったんだけど……この曲刀は先日、ゼット商会経由で届いた爺ちゃんからの商品の中にあったんだ」
そう言って真新しい曲刀を差し出してくれたのだ。
アルダさん達の祖父、ロムーナ王国一の鍛冶師トルド・フリーベリ殿の作。
左腰に差し、姿勢を低くして抜刀の構えをとる。
「ふんっ!」
ヒロヤ殿に教わった『尾武夢想流』の型で、踏み込んで抜刀。
──シャッ!
朱塗りの鞘から曲刀が抜き放たれた。
(軽い。そして抜刀もスムーズで速い)
ロングソードの様な直剣では味わえない美しい鞘鳴りと流れるような抜刀。流石は曲刀といったところか。
(そして名工の手による逸品。これは良い)
何度か抜刀と納刀を繰り返してみた。うん。よく馴染む。
自分は、新しく手に入れた剣がすっかり気に入っていた。
(高かっただろうに……ヒロヤ殿に礼を言わねばな)
クランで良い働きをして、少しづつでも返済しなくてはならない。
◆
今朝の稽古は軽めにすると言っていたが、ヒロヤ殿がまだ現れない。
訓練場となっている裏庭から、彼らの屋敷の扉へと近づいた時、屋敷の影に激しい『剣気』を感じた。
屋敷の横に回ってみると、そこに抜刀の構えをとったヒロヤ殿がいた。その視線の先には『撃ち込み稽古』用の丸太。
さらに『剣気』が強くなり、次の瞬間、ヒロヤ殿が素早く踏み込み、左腰から閃光が疾る。
丸太の横を駆け抜けたヒロヤ殿が黒塗りの鞘に『闇斬丸』を納めた時、丸太が斜めにずれて上半分が地面に落ちた。
(あの太い丸太を一閃……)
驚きに声も出なかった。そして見惚れてしまった。
(美しい……)
『尾武夢想流』の型も、その技も、それを行使したヒロヤ殿自身も……
そして、自分自身が嫌悪する己の中の『雌』の部分が熱くなる。
(相手は九歳の少年なんだぞ……なのに)
剣士としてだけではなく、雄としても……惚れてしまったのだ。
■□■□■□■□
(うん。身体は良く動いている)
今日の新ダンジョン探索への手応えを感じる。
『闇斬丸』を鞘に納め、振り向くとギーゼが立っていた。
「あ、ギーゼ。ごめん、待たせちゃったかな」
少し頰を紅潮させ、惚けたようにこちらを見るギーゼ。
「どうしたの? ランニング量が多かったんじゃない? 今日はダンジョンアタックなんだから軽めにしとかなきゃ」
「あ、あぁ。……頂いた曲刀が素晴らしくて、つい稽古に力が入ってしまったみたいです」
俺が声を掛けると、ハッとしたように視線を外すギーゼ。
「?」
「いや、大丈夫です。今日はこれで抜刀の稽古を……」
「トルドの逸品だからね。とはいえ、本当なら『刀』が一番良いんだよこの『居合い』って剣技は。手に入ったらギーゼにプレゼントするから待っててね」
刀の入手はサーシャさん次第なんだけどね。
そんな会話をしているうちにアスカも現れて、俺達は軽めの稽古を始めた。
◆
「軽めとはいえ、これだけの汗をかくとやはり気持ちいいものだな」
アスカが稽古着の上着を開けて汗を拭う。下着姿の上半身を見ないように顔を逸らしたけど、その胸元に数ヶ所のキスマークを確認してしまった。
「アスカ……昨夜もお楽しみでしたか……」
「ん? アレは寝る前の愛の確認とトレーニングみたいなものだ。毎晩行うのは当たり前だろう?」
「……だね。ごちそうさま」
そんなアスカとの会話を、顔を真っ赤にして聞いているギーゼ。
「取り敢えず二人ともお風呂入ってきなよ。俺は後でいいから」
「だ、だめですよヒロヤ殿。風邪を引いたら大変です」
「え!?」
アスカから言われると思っていた言葉が、まさかギーゼの口から。キミ、前に俺のナニを見ちゃってぶっ倒れたよね?
「大丈夫です。あの時は、は、初めて見たから……も、もう倒れる事はありません」
「だそうだヒロヤ。さぁ、行くぞ」
アスカに手を引かれる俺。大丈夫なのかなぁ……
■□■□■□■□
(以前は……目にした途端に気を失ってしまったからな……)
なるべくヒロヤ殿を見ないようにして、洗い場で身体を洗う。
その分、チラチラとアスカさんの身体を目で追ってしまう。
(手練の剣士だけど……身体はなんというか……色気があるのだな)
もっと筋肉質かと勝手に思っていたが、意外に女性らしい丸みを帯びた身体つき。いつもは後ろで縛り上げられている黒髪が降ろされ、背中までまっすぐに伸びている。
胸は決して大きくはないが、バランスの良いボリューム。腰は括れ、お尻と太ももは剣士らしく発達して見える。が、それでも女性らしいやわらかそうな丸みを主張していて……
(羨ましい……な……)
ふと頭をよぎった言葉に、自分でもギョッとした。
確かに自分の身体に女らしさはあまり無い。乳房もそれほど大きくなく、カリン皇女と比べても小さい。
身体を洗うついでに手で触ってみると、手のひらで包み込める程度。確かにふんわりと柔らかくはあるが……
鍛えているからか、腰は細い。ただ、お尻から脚にかけてはアスカさんと同じで、剣士らしく大きく張り出している。足腰はしっかりと鍛え上げているつもりだ。
騎士団時代、上官からよく触られて「ギーゼラの尻は安産型だな!」と言われた。大きいという事なんだろう。
女らしさが足りない自分の身体を嘆いた事など、今までに一度たりとも無かった。筈なのに、アスカさんの身体を『羨ましく』思ったのだ。
身体を流し、湯船に浸かる。相変わらず、ここの湯は気持ちが良い。温泉場から特別にお湯をひいてきてるだけあって最高の心地良さだ。
やがて洗っていた身体を流したアスカさんとヒロヤ殿も立ち上がって湯船に入ってくる。
今度はしっかりと見た。その年齢に似つかわしくない程に鍛え上げられた少年の肉体を。そして──そのペニスを。
(やっぱり大きい……よな……)
知識として知っている一般の成人男性より大きい気がする。湯船に浸かるまでの短い間の確認だけで、ヒロヤ殿の肉体が脳裏に焼き付き、身体の中から熱くなる。
(この感覚も……アスカさんの身体を羨ましく思ってしまった事も……)
おそらくは自分がヒロヤ殿を『男として意識』してしまい、自らが『女である事を認識』してしまったせいなのだ。
「どうしたギーゼ。逆上せてないか?」
不意に正面で湯に浸かるアスカさんが立ち上がって声をかけてきた。ヒロヤ殿は気を遣ってか、自分達より離れたところで湯船に身体を沈めている。
「大丈夫です。今日の出発に備えて、朝稽古の疲れを完全に取っておきたいので……もう少し浸かってようかと」
「そうか、長湯はせんようにな。アタシは先に上がる」
「俺も上がるよ!」
ヒロヤ殿も湯船から立ち上がって脱衣所へと向かうようだ。
「ギーゼ、浸かりすぎて逆上せないでよ?」
「……もう少ししたらあがります」
「わかった。じゃあお先に」
ヒロヤ殿はそう言ってアスカさんと脱衣所へと向かった。
(まさか自分が男を意識してしまうとかね……しかもあんな小さな少年に)
自分は肩まで湯に浸かり、ふぅとため息をついた。
昨夜、アルダさんから渡されたシャムシールを手に立ち上がった。ランニングで身体は充分温まっている。
「ヒロくんから頼まれてたんだけど、まさかこんなに早くクランのみんなで冒険に出る事になるって思わなかったから。ホントはアルダが打ちたかったんだけど……この曲刀は先日、ゼット商会経由で届いた爺ちゃんからの商品の中にあったんだ」
そう言って真新しい曲刀を差し出してくれたのだ。
アルダさん達の祖父、ロムーナ王国一の鍛冶師トルド・フリーベリ殿の作。
左腰に差し、姿勢を低くして抜刀の構えをとる。
「ふんっ!」
ヒロヤ殿に教わった『尾武夢想流』の型で、踏み込んで抜刀。
──シャッ!
朱塗りの鞘から曲刀が抜き放たれた。
(軽い。そして抜刀もスムーズで速い)
ロングソードの様な直剣では味わえない美しい鞘鳴りと流れるような抜刀。流石は曲刀といったところか。
(そして名工の手による逸品。これは良い)
何度か抜刀と納刀を繰り返してみた。うん。よく馴染む。
自分は、新しく手に入れた剣がすっかり気に入っていた。
(高かっただろうに……ヒロヤ殿に礼を言わねばな)
クランで良い働きをして、少しづつでも返済しなくてはならない。
◆
今朝の稽古は軽めにすると言っていたが、ヒロヤ殿がまだ現れない。
訓練場となっている裏庭から、彼らの屋敷の扉へと近づいた時、屋敷の影に激しい『剣気』を感じた。
屋敷の横に回ってみると、そこに抜刀の構えをとったヒロヤ殿がいた。その視線の先には『撃ち込み稽古』用の丸太。
さらに『剣気』が強くなり、次の瞬間、ヒロヤ殿が素早く踏み込み、左腰から閃光が疾る。
丸太の横を駆け抜けたヒロヤ殿が黒塗りの鞘に『闇斬丸』を納めた時、丸太が斜めにずれて上半分が地面に落ちた。
(あの太い丸太を一閃……)
驚きに声も出なかった。そして見惚れてしまった。
(美しい……)
『尾武夢想流』の型も、その技も、それを行使したヒロヤ殿自身も……
そして、自分自身が嫌悪する己の中の『雌』の部分が熱くなる。
(相手は九歳の少年なんだぞ……なのに)
剣士としてだけではなく、雄としても……惚れてしまったのだ。
■□■□■□■□
(うん。身体は良く動いている)
今日の新ダンジョン探索への手応えを感じる。
『闇斬丸』を鞘に納め、振り向くとギーゼが立っていた。
「あ、ギーゼ。ごめん、待たせちゃったかな」
少し頰を紅潮させ、惚けたようにこちらを見るギーゼ。
「どうしたの? ランニング量が多かったんじゃない? 今日はダンジョンアタックなんだから軽めにしとかなきゃ」
「あ、あぁ。……頂いた曲刀が素晴らしくて、つい稽古に力が入ってしまったみたいです」
俺が声を掛けると、ハッとしたように視線を外すギーゼ。
「?」
「いや、大丈夫です。今日はこれで抜刀の稽古を……」
「トルドの逸品だからね。とはいえ、本当なら『刀』が一番良いんだよこの『居合い』って剣技は。手に入ったらギーゼにプレゼントするから待っててね」
刀の入手はサーシャさん次第なんだけどね。
そんな会話をしているうちにアスカも現れて、俺達は軽めの稽古を始めた。
◆
「軽めとはいえ、これだけの汗をかくとやはり気持ちいいものだな」
アスカが稽古着の上着を開けて汗を拭う。下着姿の上半身を見ないように顔を逸らしたけど、その胸元に数ヶ所のキスマークを確認してしまった。
「アスカ……昨夜もお楽しみでしたか……」
「ん? アレは寝る前の愛の確認とトレーニングみたいなものだ。毎晩行うのは当たり前だろう?」
「……だね。ごちそうさま」
そんなアスカとの会話を、顔を真っ赤にして聞いているギーゼ。
「取り敢えず二人ともお風呂入ってきなよ。俺は後でいいから」
「だ、だめですよヒロヤ殿。風邪を引いたら大変です」
「え!?」
アスカから言われると思っていた言葉が、まさかギーゼの口から。キミ、前に俺のナニを見ちゃってぶっ倒れたよね?
「大丈夫です。あの時は、は、初めて見たから……も、もう倒れる事はありません」
「だそうだヒロヤ。さぁ、行くぞ」
アスカに手を引かれる俺。大丈夫なのかなぁ……
■□■□■□■□
(以前は……目にした途端に気を失ってしまったからな……)
なるべくヒロヤ殿を見ないようにして、洗い場で身体を洗う。
その分、チラチラとアスカさんの身体を目で追ってしまう。
(手練の剣士だけど……身体はなんというか……色気があるのだな)
もっと筋肉質かと勝手に思っていたが、意外に女性らしい丸みを帯びた身体つき。いつもは後ろで縛り上げられている黒髪が降ろされ、背中までまっすぐに伸びている。
胸は決して大きくはないが、バランスの良いボリューム。腰は括れ、お尻と太ももは剣士らしく発達して見える。が、それでも女性らしいやわらかそうな丸みを主張していて……
(羨ましい……な……)
ふと頭をよぎった言葉に、自分でもギョッとした。
確かに自分の身体に女らしさはあまり無い。乳房もそれほど大きくなく、カリン皇女と比べても小さい。
身体を洗うついでに手で触ってみると、手のひらで包み込める程度。確かにふんわりと柔らかくはあるが……
鍛えているからか、腰は細い。ただ、お尻から脚にかけてはアスカさんと同じで、剣士らしく大きく張り出している。足腰はしっかりと鍛え上げているつもりだ。
騎士団時代、上官からよく触られて「ギーゼラの尻は安産型だな!」と言われた。大きいという事なんだろう。
女らしさが足りない自分の身体を嘆いた事など、今までに一度たりとも無かった。筈なのに、アスカさんの身体を『羨ましく』思ったのだ。
身体を流し、湯船に浸かる。相変わらず、ここの湯は気持ちが良い。温泉場から特別にお湯をひいてきてるだけあって最高の心地良さだ。
やがて洗っていた身体を流したアスカさんとヒロヤ殿も立ち上がって湯船に入ってくる。
今度はしっかりと見た。その年齢に似つかわしくない程に鍛え上げられた少年の肉体を。そして──そのペニスを。
(やっぱり大きい……よな……)
知識として知っている一般の成人男性より大きい気がする。湯船に浸かるまでの短い間の確認だけで、ヒロヤ殿の肉体が脳裏に焼き付き、身体の中から熱くなる。
(この感覚も……アスカさんの身体を羨ましく思ってしまった事も……)
おそらくは自分がヒロヤ殿を『男として意識』してしまい、自らが『女である事を認識』してしまったせいなのだ。
「どうしたギーゼ。逆上せてないか?」
不意に正面で湯に浸かるアスカさんが立ち上がって声をかけてきた。ヒロヤ殿は気を遣ってか、自分達より離れたところで湯船に身体を沈めている。
「大丈夫です。今日の出発に備えて、朝稽古の疲れを完全に取っておきたいので……もう少し浸かってようかと」
「そうか、長湯はせんようにな。アタシは先に上がる」
「俺も上がるよ!」
ヒロヤ殿も湯船から立ち上がって脱衣所へと向かうようだ。
「ギーゼ、浸かりすぎて逆上せないでよ?」
「……もう少ししたらあがります」
「わかった。じゃあお先に」
ヒロヤ殿はそう言ってアスカさんと脱衣所へと向かった。
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