初恋をぶち壊した友人(仮)が周り回って報いを受けました!気分も新たに恋を始めるつもりが…えっ?やり直し⁈

花椰菜

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第一章・始まりは…

21・アラットロ侯爵の憂慮

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 普段は抱える仕事の性質上不在がちなアラットロ侯爵が珍しく屋敷に居る。

 それだけでも見慣れぬ光景であるのに、寛いでいたであろう自らの書斎へとオリフェウスを呼び出し声を掛けてきた。


「オリフェウス、大丈夫なのか?」

「御心配とは如何なることでしょう、父上」

「ノワール伯爵令嬢のことだ。さる筋から情報を得てな…ノワール伯爵、クレピュス辺境伯両家の間には正式な婚約話も出ているとか。
 その両家の婚約話をコームプシェ男爵令嬢が妨害したらしく父の男爵自らが両家に詫びを入れに行ったそうだ」

「フェルに…正式な婚約話……」

「クレピュス辺境伯の跡継ぎが大変執心しているらしいな、ノワール伯爵令嬢に。
 流石のクレピュス辺境伯もそれほど息子が執心するならば是非会いたいと思われたらしく顔合わせの場が設けられたと聞き及ぶ」

「クレピュス辺境伯が顔合わせの機会を設けられるほど心を動かれたとは本当なのですか、父上?」

「ああ、このまま順当に行けば婚約話の本決まりも近いのではないか?…オリフェウス、お前はノワール伯爵令嬢に叶わぬ想いを寄せていたと記憶している」

「叶わぬは余計です、父上!
その情報は確かなものなのでしょうか?」

「私の耳に入るくらいには確かだ。本来ならば、いくら息子といえども知らせる事はできないのだが…オリフェウスは昔からノワール伯爵令嬢に想いを寄せておるのに、このまま何も知らぬうちに婚約が本決まりになれば余りにもお前が不憫。
 と言う訳で、今回は特別に親心からお前に知らせたのだ」

 因みに、アラットロ侯爵は王国のあらゆる情報を統括する諜報部門の長の立場であり、それ故に、アラットロ侯爵がもたらす情報はかなり正確なものと言える。

 職権濫用紛いのことをしてまでオリフェウスへ知らせたのはアラットロ侯爵の行きすぎた親心からである。

 また、公けにできない情報ではなかったことも理由のひとつだ。アラットロ侯爵は仕事の判断を見誤る人間ではない。

 ただ末っ子オリフェウスの幼い頃からの想いを知る親だけに放ってはおけなかったのだ。


「オリフェウス…振られたのならば潔く諦めるのも一手だが、諦めきれぬならば本決まりになる前に儂がノワール伯爵へ申し込みを行ってやろうか?」


 オリフェウスはアラットロ侯爵の次男であるが、長兄とは10歳も離れており、遅くに産まれた子のならいとしてアラットロ侯爵はそんなオリフェウスを子というより孫のように大層可愛がっているのだ。


「何故、振られたことまでご存知なのですか!…形式的には確かに振られましたが、実際には振られていませんので!!御安心ください!」

「…そうか?複雑な何かがあるのかもしれぬが、希望的観測に基づいて真実を見誤ってはならぬぞ、オリフェウス」

「僕は、僕は…そこまで未練がましい男でも、ましてや勘違いもしていません!
 その件に関しては、クレピュス辺境伯子息に直接事情を尋ねてからでも宜しいでしょうか?」

「恋敵に直接事情を尋ねるとは信じられぬ行いだが…大丈夫なのか?常ならば、お相手のノワール伯爵令嬢に尋ねるべきではあるまいかのう、オリフェウス」

「フェルには今は事情を聞くことが出来ない理由があるのです。その代わり、ヴィクトァール・クレピュスを問い詰めてやります!」

「オリフェウス…お前は方向性を誤っているのではないかという懸念がヒシヒシと感じられ父は非常に心配なのだ。
 これはお前達の関係が複雑な故か、お前がヘタレな故なのだろうか」

「父上!!」

「すまぬ。お前は幾つになっても手の掛かる幼子のように儂には思えてならぬ。
 込み入った事情についてはよく分からぬが、父はお前の健闘を祈っておる」


 アラットロ侯爵の親心はオリフェウスにとって有難くはあるが、身内であるだけに容赦なくズブリと刺してくる時がある。

 オリフェウスのことを思う故だと分かるからこそ、かえって堪えるものがある。

 とは言うものの、最後には味方してくれる人間がいることはオリフェウスにとって幸せなことだった。

 内密の件だが、アラットロ侯爵はノワール伯爵にクレピュス辺境伯から婚約申込みがあっても受けないよう伝え了承を得る。

 単なる親馬鹿の体裁を取ってはいたが、アラットロ侯爵の役職の重さがノワール伯爵の背中を押したことは間違いない。

 

 後日、ヴィクトァールと対面の機会を迎えたオリフェウスは内心気が気ではなかった。

 焦りを募らせるオリフェウスはヴィクトァールに会うなり思わず詰め寄る。


「ノワール伯爵とクレピュス辺境伯との間には正式な婚約話が持ち上がっていたのか?
 しかもヴィクトァールの御父上クレピュス辺境伯とフェルの顔合わせまで行われたというのは真実か!」

「何処から仕入れた話かは知らないが、我が父クレピュス辺境伯がリュシフェル嬢と会ってみたいと考え、その機会を設けたのは事実だ。
 両家の婚約話についてはコームプシェ男爵辺りから漏れ聞こえた話であろう?」

「あ、会ったのか?まさかフェルのことを気に入られ将来の辺境伯夫人にと望まれたとか?」

「父の考えは私には分からぬ。だが、感触としては父はリュシフェル嬢を好ましく思われたようだ」

「…終わった。俺のフェル……」

「気が早いぞ、オリフェウス!しっかりしろ、先ずは話を聞け。
 コームプシェ男爵家とは融資話の件があっただろう?私とリュシフェル嬢は『願いの泉』にて告白と誓約を行なっている。つまり、正式な婚約の申込みと同義だ。
 正式な申込みを妨害してしまったことをコームプシェ男爵令嬢本人の口から聞いた父のコームプシェ男爵が危機感を募らせて動いた結果がこの話の顛末だ」

「もう少し詳しく説明を頼む!」

「何と言っても正式な婚約申込みと同格扱いが『願いの泉』での誓いだ。その神聖な場をコームプシェ男爵令嬢は妨害したのだから明確な妨害意思が認められる。
 この事実を重く見たノワール伯爵家、我がクレピュス辺境伯家の両家から高額な慰謝料を請求されたとて、コームプシェ男爵家ではとても支払いきれるものではない。
 そこで、当初持ち出されていた融資話自体を最初から無かったことにすること、二度と男爵令嬢に無謀な振舞いをさせないことを条件に、コームプシェ男爵家が両家へと詫びを入れることにより慰謝料の請求を行わない旨、話が決まったのだ」

「うまく話がまとまって良かったな」

「ああ…あの令嬢が絡んでいたとは思えぬ程、無事に終えることができ私も安心している。
 ノワール伯爵家、クレピュス辺境伯家両家から話が持ち上がったことが原因で、大方、両家の婚約話も確かな話として広まったのであろう」

「…それだけ、なのか?」




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