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B 美乃梨鎮圧7
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「あの…すみません、カゴって、どちらにありますか…」
美乃梨の声は小さく、消え入りそうだった。色鮮やかで過激なパッケージのアダルトグッズが並んでいた。艶やかな表面加工に描かれた露骨なイラストが美乃梨の白い手の隙間からちらちらと見えている。
「あ、かごはこちら…」
呼びかけに応じたのは、まだ若い男性店員だった。表情は固く、営業スマイルとは呼び難い中途半端な笑みのまま、出入口近くのスタンドを指さす。
おそらく店員の大半は次第に、こういうプレイに付き合わされることにうんざりしてくるのだろうが、この店員はまだ新人なのか反応が初々しい。その拙さがまた美乃梨の羞恥心を煽っている。
「あ、ありがとうございます…すみません、見落としていました…」
言いながら、美乃梨は小さくお辞儀した。胸元で揺れる商品たちは、かろうじて両腕の内に収まっているが、むしろ「抱えている」ような格好になっていた。その姿が自分でも恥ずかしいのか、彼女は視線を落としたまま、カゴの方へと小走りで向かった。
俺はその後ろ姿を満足げに眺めた後、足取りを速めて美乃梨に追いつく。彼女が手を伸ばしかけたその瞬間、俺が先にカゴを一つ引き抜き、彼女の前に差し出す。
「はい、全部入れて」
何でもない調子でそう告げると、美乃梨は一瞬、こちらを見上げた。その瞳に戸惑いと、わずかな緊張が走る。けれど反論はなく、ただ頬に赤みを残したまま、小さくうなずいた。
そして、手に抱えていた商品をひとつずつ、慎重にカゴへ移していく。
首輪、犬が咥える骨を模した逆ポール、手錠…どれも清楚で気品のある美乃梨には似合わないものだ。
「早く会計済ませて…」
美乃梨は小さな声で言った。視線は足元に落ちたままだ。
「いや、まだちょっと見たいのがあるですよ」
その言葉に、レジへと向かおうとしていた美乃梨の足がぴたりと止まる。
「……まだ、買うの?」
問いかける声も、怒りや苛立ちではなかった。ただ、静かな訴えのように響いた。
「もちろん。せっかくだからね」
そう言って、手に持っていたカゴを彼女の前に差し出す。
美乃梨は一瞬戸惑ったように立ち尽くしたが、やがてゆっくりと手を伸ばし、その取っ手を握った。
その瞳の奥にはほんのわずか、揺れるものがあったのを俺は感じとった。
「行こっか」
そう告げて、美乃梨の腕をガッと掴んだ。
バランスを崩しそうになりながらも、彼女はしっかりとカゴを抱え、俺の後を追った。小さく、それでも確かに足音が続いてくる。
この手応えは「勝利の感触」と呼んでも差し支えないだろう、俺はそう思った。
「あの…すみません、カゴって、どちらにありますか…」
美乃梨の声は小さく、消え入りそうだった。色鮮やかで過激なパッケージのアダルトグッズが並んでいた。艶やかな表面加工に描かれた露骨なイラストが美乃梨の白い手の隙間からちらちらと見えている。
「あ、かごはこちら…」
呼びかけに応じたのは、まだ若い男性店員だった。表情は固く、営業スマイルとは呼び難い中途半端な笑みのまま、出入口近くのスタンドを指さす。
おそらく店員の大半は次第に、こういうプレイに付き合わされることにうんざりしてくるのだろうが、この店員はまだ新人なのか反応が初々しい。その拙さがまた美乃梨の羞恥心を煽っている。
「あ、ありがとうございます…すみません、見落としていました…」
言いながら、美乃梨は小さくお辞儀した。胸元で揺れる商品たちは、かろうじて両腕の内に収まっているが、むしろ「抱えている」ような格好になっていた。その姿が自分でも恥ずかしいのか、彼女は視線を落としたまま、カゴの方へと小走りで向かった。
俺はその後ろ姿を満足げに眺めた後、足取りを速めて美乃梨に追いつく。彼女が手を伸ばしかけたその瞬間、俺が先にカゴを一つ引き抜き、彼女の前に差し出す。
「はい、全部入れて」
何でもない調子でそう告げると、美乃梨は一瞬、こちらを見上げた。その瞳に戸惑いと、わずかな緊張が走る。けれど反論はなく、ただ頬に赤みを残したまま、小さくうなずいた。
そして、手に抱えていた商品をひとつずつ、慎重にカゴへ移していく。
首輪、犬が咥える骨を模した逆ポール、手錠…どれも清楚で気品のある美乃梨には似合わないものだ。
「早く会計済ませて…」
美乃梨は小さな声で言った。視線は足元に落ちたままだ。
「いや、まだちょっと見たいのがあるですよ」
その言葉に、レジへと向かおうとしていた美乃梨の足がぴたりと止まる。
「……まだ、買うの?」
問いかける声も、怒りや苛立ちではなかった。ただ、静かな訴えのように響いた。
「もちろん。せっかくだからね」
そう言って、手に持っていたカゴを彼女の前に差し出す。
美乃梨は一瞬戸惑ったように立ち尽くしたが、やがてゆっくりと手を伸ばし、その取っ手を握った。
その瞳の奥にはほんのわずか、揺れるものがあったのを俺は感じとった。
「行こっか」
そう告げて、美乃梨の腕をガッと掴んだ。
バランスを崩しそうになりながらも、彼女はしっかりとカゴを抱え、俺の後を追った。小さく、それでも確かに足音が続いてくる。
この手応えは「勝利の感触」と呼んでも差し支えないだろう、俺はそう思った。
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