17 / 25
17
しおりを挟む「・・・はあ・・・。」
石橋さんが部屋を出て行ってしまってから、なんだか寂しくなってしまった。
ううん、迎えに来てくれるって言っていたし、家に帰ればずっと一緒にいてくれるんだからこの位我慢しなきゃ。
それからデスクに戻って仕事をした。
いつもなら叔父に罵倒されると、仕事が手につかない事が多かったけれど、今日は石橋さんのお陰ではかどった。
集中しているとあっという間に退社時間になった。
デスクを片付けていると、スマホが鳴った。
石橋さんからだったのですぐに出る。
「はい。」
「皆守、支度はできているか?」
「はい。今から部屋を出ます。」
胸がドキドキしてきた。
「ああ、慌てるな。」
「はい。」
電話はそれだけで終わって私は急いで玄関前まで降りて行った。
石橋さんはどこかしら・・・?
キョロキョロしていると、車がすぐに目の前に止まった。
石橋さんは車を降りて、助手席のドアを開けてくれる。
「皆守、慌てるなと言っただろう?」
いつから見ていたのか、私が急いでいたのを見ていたみたいだった。
「・・・だって、石橋さんを待たせたくなかったんだもの。」
私は頬が赤くなるのが分かった。
「・・・フッ。可愛い事を言う。さあ、乗れ。」
「はい。」
私が助手席に乗ると、ドアを閉めてくれて嬉しくなる。
だって、これって由美子が言っていたお迎えそのものだったんだもの!
「皆守、どうした?嬉しそうだな。」
「はい。石橋さんが迎えに来てくれて嬉しいです。由美子が自慢話をしていて、とても羨ましかったんです。」
車が発進する軽い圧力に、いつも感じる恐怖は無い。
「そうか。あの女友達には彼氏がいるんだったな。どんな自慢話を聞かされていたんだ?」
「お迎えに来てくれてそのままデートしたり、この前はプロポーズされて、結婚指輪を見に行ったんですって。それに、結婚式はどこにしようかしらって悩んでて、婚約者は一緒に住む家を探すのが先だよって言われて笑ったんですって。」
「そうか。それならこのままデートするか?海でも見に行くか?」
石橋さんは何でもないように言ってくれる。
「いいんですか・・・?」
「ああ、勿論だ。」
「嬉しい!」
石橋さんはいつも私の願いを簡単に叶えてくれる。
こんなにも好きになった人はいなかった。
ううん、そうじゃない。
私の中の壁を越えて来てくれた人は今までいなかった。
考えていると無性に泣きたくなった。
「どうした?何故泣く?」
車を運転していても、私を気遣ってくれる。
「・・・嬉しくて・・・。」
「泣くな。」
石橋さんは、左手で私の手を握ってくれる。
それだけで心が浮き上がっていく。
私は石橋さんの横顔を見つめる。
「・・・皆守、そんな顔をして煽るな。運転していなければ、襲っている所だ。」
「・・・!」
私は顔が赤くなる。
私ったらどんな顔をしていたのかしら・・・!
俯くと、フッと石橋さんが笑う。
「可愛いな、皆守は。」
石橋さんにそんな事を言われると、恥ずかしくて耳まで赤くなる。
心臓がドキドキして顔が上げられない。
「・・・皆守、少し乱暴な運転をするが、怖がるなよ。」
「・・・え。」
石橋さんがそう言うと、急に左折してすぐにまた左折する。
「・・・ちっ。皆守、どうやらデートは次の機会になりそうだ。後ろの車がつけてくる。どうやら昭夫の奴が探偵でも雇ったらしい。俺達をつけてくるのは何か魂胆があるんだろう。」
私は怖くなる。
叔父が私達の関係に気が付いたら、石橋さんと引き離されてしまうんじゃないかしら・・・!
「・・・石橋さん・・・。怖い・・・。」
石橋さんは私の小さな声に気が付いて、真剣な表情をする。
「皆守、お前は俺が守る。心配するな。」
「はい。」
石橋さんの一言で安心できる。
私は石橋さんに付いて行けばいいんだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる