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しおりを挟む翌日慧一様がお迎えに来られ、私は退院致しました。
慧一様が優しく労って下さるのが、とても申し訳なく思いますが、それでも嬉しいのです。
帰りの車の中で、慧一様が嬉しそうに言います。
「お婆様も許してくれた。だが、半年待てと言われてしまってな、済まないが半年待ってくれ。」
「はい。私は待ってます。慧一様がお側にいてくれれば。」
「ああ、側にいる。離れない。約束だ。」
その言葉だけで私は幸せでした。
家に着くと、家族全員で出迎えて下さいました。
「香織、お帰り。身体は大丈夫か?」
「香織さん、無理しないで部屋で横になっていなさい。」
「ええ、そうですね。香織、布団を敷くまで少し待っていなさい。」
お母様はそう言うと私の部屋に行きました。
「さあ、お上がりなさい。」
お婆様に促され、居間に行きます。
「香織さん、慧一に聞いていると思いますが、美弥子と離婚してから半年間結婚は我慢なさい。弁護士に正式に離婚の手続きを頼みました。これまでの事もあるし、すぐに離婚できるそうです。家に帰って来ないし、家事もしない、嫁の役目を果たしていないからこちらの言い分が通ると、弁護士に言われました。向こうが弁護士を立てても、同じ事を言われるだろうとも言っていたから、大丈夫でしょう。」
お婆様に言われて、少し安心しました。
「はい、お婆様。私は待てます。」
「私は待ちたくないですが、仕方無いですね。」
慧一様が言いますが、お義父様が宥めておられます。
「慧一、結婚できない訳ではないのだから、待っていなさい。」
「分かっています。」
「香織、君が娘ではなく嫁になるとは思いもしなかったが、良かったのかも知れない。慧一には香織が似合うんだろうな。隣にいて違和感が無い。これからは、嫁として接しよう。」
お義父様のお言葉に、私は泣きそうになります。
決して理解して頂けないと思っていたのですが、お義父様は許して下さるのですから・・・。
「香織、そんな顔をするな。私達はお前達の見方だ。何があっても守るから泣くな。」
「はい。お義父様。ありがとうございます。私、慧一様に相応しいお嫁様になれるようがんばります。」
「香織さんはそのままで十分慧一に相応しいですよ。最初から香織さんをお嫁に迎えていれば良かったわね。」
「お婆様・・・。」
「本当にそうですね。私が浅はかでした。もっと考えてから結婚すれば良かったですね。香織、済まない。」
慧一様は私に謝って下さいますが、仕方がありません。
慧一様は最善の事を考えて下さっていたのですから。
その時、お母様が居間に来られました。
「香織、疲れたでしょう。早く横になりなさい。慧一さん、連れていって下さい。」
「はい、お義母さん。香織、行こう。」
慧一様に促されて、私は居間を出ます。
その時遠くから祥弌ちゃんの泣き声が聞こえてきました。
「慧一様、祥弌ちゃんの所に寄って行きたいのですが良いですか?」
慧一様は私の身体を気にして渋い顔をしていますが、どうしてもと我が儘を言い祥弌ちゃんのお部屋に行きました。
祥弌ちゃんのお部屋に入ると、緒方さんが泣き止まない祥弌ちゃんに困り果てていて、祥弌ちゃんは私を見ると手を伸ばして来ました。
「祥弌ちゃん、大丈夫よ。安心して頂戴。」
緒方さんから祥弌ちゃんを受けとり抱っこすると、祥弌ちゃんはヒックヒックと泣き止み私の胸にしがみついてきます。
「香織さん、良かったです。祥弌ちゃんがぐずって泣き止んでくれなくて。」
緒方さんが困っていましたが、私も反省します。
祥弌ちゃんを一人にして可哀想な事をしてしまいました。
「祥弌ちゃん、ごめんなさいね。心配させてしまったかしら。」
「祥弌はまだ子供だからわからないさ。でも、香織の事を母親だと思っているんだろう。顔が見えなくて不安になったのかもしれない。これから香織の事を母親だと教えていこう。私の妻になるのだから、お前が母親だからな。」
「はい。」
私はなんだか幸せな気持ちになりました。
私には子供が産めないと主治医に言われたのが、十四歳の時でした。
その日から私は子供とは無縁だと思っておりましたが、こうして祥弌ちゃんという子供ができてなんて幸せな事でしょうか。
幸せ過ぎて怖くなります。
「慧一様、私祥弌ちゃんのお母様になれますか?私、私・・・。」
泣き出した私に、慧一様は力強く頷き私を抱き締めて下さいました。
「勿論だ。香織以外に母親はいない。何も心配せずに祥弌を育てろ。」
慧一様の腕の中で、祥弌ちゃんもいます。
私はなんて幸せ者でしょうか・・・。
~美弥子視点~。
離婚だって!
冗談じゃない!
約束が違うじゃないのよ!
許せない!
あの女に仕返ししてやる!
子供はどうでも良いけど、金は貰わないと!
絶対に許さないからね!
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