チェリーは今宵色づく

奏月

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⑫はこにわのあるじ

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 ☸神界エルメキア☸

 

 白くしなやかな裸体を一枚布で覆った、眩いほどの金の豪奢な髪に、全てを見通す蒼の瞳を細め、その人、──否、神は麗しい唇からほぅ、と吐息を吐き、下界を覗くことのできる宝玉から意識から外し、馬に似せた駒を氷で出来た盤の上で動かし、傍らで寝そべる伴侶に目をやった。

 だらんと寝そべるだけで絵になる(実際人間社会では多少不細工になってるがモデルとなり多くの芸術作品が作られている)伴侶たるハーシュラに、女神ラテルマは、自分が加護を与えた人間の行く末がようやく正常に動き出したことの安堵と、苦労を伝えようとして止めた。

 どうせこのオトコに言ったって、興味の一篇も示さないのだから。

 虚しい、と、ラテルマは んペッと、舌を出し、華奢な背中から純白の羽根を出し、滑空した。

 ああ、これでようやく心残りが無くなった。

 己を特別だと思い込んだ歪な泥人形の排除、歪められた運命の修正、全てが完璧な箱庭をもとに自ら歩き出した箱庭の住人達。

 ラテルマは頬に透明の雫を侍らせ、淡く発光し、やがて、最初から何もなかったかのように消え失せた。

 愛と粛清の女神・ラテルマ。

 彼女の伴侶、時と運命を司るハーシュラ

 二神の言い伝えは極めて少ない。だが、それは人々の営みには影響はない。

 ラテルマの消失時刻と同時刻、ラテルマの居室で寝そべっていたハーシュラは、ひっそりと涙を流し、伴侶の消失に胸を痛め、彼もまた、身体から淡い金色の光を発し、消え失せた。

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