思想学部

ケーキ

文字の大きさ
17 / 190
一年生

過去①

しおりを挟む
お母さんはいつものように僕に言った。

「間違えてもいいの。あなたが望む未来に進みなさい。」と。

お父さんは悲観主義者。人生に絶望し、この世界に期待することを否定する。

そんなお父さんが生きてこられたのは、お母さんの支えがあってからこそ。

現在も変わらずとても優しい人。

ところで、僕の子供時代、それは、失敗だらけのそれだった。

そんな時、いつも、お母さんだけは「大丈夫、大丈夫よ」と言ってささえた。

ある日、自分も、鳥や飛行機のように空に飛べるかもしれない。
  
そう思って、崖からとんで行こうとした。

けれども、近くに居た警察に止められて、親元にかえされた。

そうして、この事をお母さんがとても注意受けているところをみる。

愚痴まじりに「ちゃんと教育してるんですか?困りますよ」と。

お母さんはただ「すみません…」とだけ言った。

そこに、僕の名前は一切出さない。

その後も、ただ、「大丈夫、大丈夫よ…」と僕に言って聞かせる。

またある日は、僕が、人のおもちゃを取って、他の人の遊びを邪魔した。

その事で、今度はその親御さんに、お母さんが注意を受けた。

しかし、裏では変わらず、「大丈夫よ…。あなたは自分の信じた道を進んで…。」と。

お父さんが「そんなことを言って、間違った方向に進んだらどうする?」

「子供は、まだ善悪の判断がつかない。」

と言った時も

「私の子供だから…信じるの。誰が信じなくても、私だけはあの子の味方でいたい」と。

あの時だってそうだった。

僕が中学校の頃、同級生の女の子に怪我をさせた。

その人には夢があって、それには必要不可欠な場所を。

その人の親はとても怒った。そんな時も、僕の名前は出さず、ずっとただひたすら謝っているお母さん。

そうして、僕の前では、その事について言及することはなく、ただ、「大丈夫」と言った。

そうして、いつも、そんな日は、1人でこっそりと泣いているのを僕は知っている。

声を出さないように必死で堪えながら、悲しみを発散している。

誰にも気付かれないように…

お母さん、それはとても強いひとだ。

明らかに人のせいでも、自分が悪いと考える…。

その強い気持ちにいつも支えられてきた。

これから、僕は、成し遂げなければいけない。

心の中にある、こうしたいと言う確固たる決意、そして、理想の未来を…。

すると、泣き声が聞こえてきた。

それは、僕が怪我をさせた女の子だった。

とても苦しそうで、座り込んで、1人で悲しんでいる。

皮肉にも、僕には、それに罪悪感がなかった。

そうして、歩み寄って言った。

「これから、僕がすること…

それは…」

彼女はそっと泣くのを辞めて、僕の方をみる。

「人が笑顔で暮らせる場所、それを作る。

誰かが悲しむことはなく、全員が楽しく…そんな場所を。」

そうして、彼女の方に手を伸ばす。

すると、そっと彼女は僕の手を握って立ち上がった。

─────

振り返れば、失敗だらけ、間違いだらけだった。

もしかしたら、物語で言う悪役。それが僕の人生だったかもしれない。

だが、これから、それを全く違うものへと変えていく。

僕の理想は、あの時の彼女の姿から決まった。

そして、心にあるあの世界を作る。

今、そして、これから作っていくんだ。

その時の僕の目の前には、子供の頃の風景が浮かんでいる。

お父さんとお母さんが笑顔で笑っている。

そうして、それにつられ僕も笑う。

そんな光景が

────────

「行こう。」

僕はそう呟いて、今日もどこかへと旅立っていく

───────
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処理中です...