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未熟な関係
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「この後、どこ行きましょうか」
「どこでもいいけど、歩きたい。カロリー消費しなきゃ」
「気にしすぎですって。でも、散歩するのは賛成です。海の方に行ってみましょうか」
海とはいっても人工的な砂浜しかないが、景色は抜群だ。ゆっくり散歩をしながら朱夏に告白をして、うまくいけばそのまま自宅に連れ帰って――。
甘いデートプランの妄想を頭の中に膨らませる貴人は、大好きなスイーツの味がより甘美に感じられ、終始上機嫌だった。
ホテルを出ると、彼は当然のように朱夏の手を取り、海浜公園へ向かった。最初こそ照れていた朱夏も次第に慣れてきた様子で、貴人に身を寄せる。
どこからどう見ても、立派な恋人同士。そう思うだけで、貴人は有頂天になった。
桜は一週間ほど前に散ってしまったが、春らしい陽気のせいか、砂浜はカップルや家族連れでにぎわっている。いかにも楽しい休日と言った景色に、ふたりの心も和む。
「たまにはいいね、海」
「ですねー。風も気持ちいい」
頬を撫でていく風に目を細めていた貴人は、ふと視線を感じて、朱夏のいる方とは反対側に目を向ける。
異様に人や機材の集まったそこでは、レインボーブリッジを背景にして、なにかの撮影が行われているようだった。
「わー、なんだろう。芸能人がいるのかな」
朱夏もその一角に気づき、なにげなく呟く。
しかし、貴人は一瞬鋭く目を細めると、朱夏の手を引いて人だかりとは反対側に歩き出す。
「貴人くん? どうしたの?」
「いえ。嫌いな芸能人だったもので」
「えっ?」
朱夏は歩きながら後ろを振り返って目を凝らす。すると、中心でひときわ輝くオーラを放っている女性が見えた。
ふわふわとカールしたボブヘアは毛先だけがオレンジ色で、リップやアイシャドウにたくさんの色を使ったメイクも、ヘルシーで若々しい。
「……猪狩涼音?」
テレビや雑誌でよく見かけるその名を、朱夏がぽつりと口にした瞬間だった。
「あっ、貴人だ! 貴人~~~!」
波の音にも、砂浜の喧騒にも負けない甲高い声が、周囲に響き渡った。
貴人は足を止め、頭痛を堪えるように額に手を添える。今、一番会いたくない人物に会ってしまった。そう思いながらただ黙って俯く彼の顔を、朱夏が遠慮がちに覗いた。
「ねえ、あれって猪狩涼音よね? 呼ばれてるみたいだけど……知り合いなの?」
「はい。といっても、言葉通りただの知り合いなので、大事なデート中にこんなふうに呼び止められる筋合いはな――」
どこかムキになって説明していた貴人の背中に、突如ドンッと衝撃が走った。
思わず背後を確認すると、涼音が悪戯っぽい目をしてウエストにギュッと華奢な腕を絡め、彼を見上げた。
その仕草や表情に、朱夏は女性としての本能的な勘を働かせて、貴人と繋いでいた手をパッと離した。しかし、どんな顔をしてふたりを見たらいいのかわからない。
「どこでもいいけど、歩きたい。カロリー消費しなきゃ」
「気にしすぎですって。でも、散歩するのは賛成です。海の方に行ってみましょうか」
海とはいっても人工的な砂浜しかないが、景色は抜群だ。ゆっくり散歩をしながら朱夏に告白をして、うまくいけばそのまま自宅に連れ帰って――。
甘いデートプランの妄想を頭の中に膨らませる貴人は、大好きなスイーツの味がより甘美に感じられ、終始上機嫌だった。
ホテルを出ると、彼は当然のように朱夏の手を取り、海浜公園へ向かった。最初こそ照れていた朱夏も次第に慣れてきた様子で、貴人に身を寄せる。
どこからどう見ても、立派な恋人同士。そう思うだけで、貴人は有頂天になった。
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「たまにはいいね、海」
「ですねー。風も気持ちいい」
頬を撫でていく風に目を細めていた貴人は、ふと視線を感じて、朱夏のいる方とは反対側に目を向ける。
異様に人や機材の集まったそこでは、レインボーブリッジを背景にして、なにかの撮影が行われているようだった。
「わー、なんだろう。芸能人がいるのかな」
朱夏もその一角に気づき、なにげなく呟く。
しかし、貴人は一瞬鋭く目を細めると、朱夏の手を引いて人だかりとは反対側に歩き出す。
「貴人くん? どうしたの?」
「いえ。嫌いな芸能人だったもので」
「えっ?」
朱夏は歩きながら後ろを振り返って目を凝らす。すると、中心でひときわ輝くオーラを放っている女性が見えた。
ふわふわとカールしたボブヘアは毛先だけがオレンジ色で、リップやアイシャドウにたくさんの色を使ったメイクも、ヘルシーで若々しい。
「……猪狩涼音?」
テレビや雑誌でよく見かけるその名を、朱夏がぽつりと口にした瞬間だった。
「あっ、貴人だ! 貴人~~~!」
波の音にも、砂浜の喧騒にも負けない甲高い声が、周囲に響き渡った。
貴人は足を止め、頭痛を堪えるように額に手を添える。今、一番会いたくない人物に会ってしまった。そう思いながらただ黙って俯く彼の顔を、朱夏が遠慮がちに覗いた。
「ねえ、あれって猪狩涼音よね? 呼ばれてるみたいだけど……知り合いなの?」
「はい。といっても、言葉通りただの知り合いなので、大事なデート中にこんなふうに呼び止められる筋合いはな――」
どこかムキになって説明していた貴人の背中に、突如ドンッと衝撃が走った。
思わず背後を確認すると、涼音が悪戯っぽい目をしてウエストにギュッと華奢な腕を絡め、彼を見上げた。
その仕草や表情に、朱夏は女性としての本能的な勘を働かせて、貴人と繋いでいた手をパッと離した。しかし、どんな顔をしてふたりを見たらいいのかわからない。
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