屍王の帰還~元勇者の俺、自分が組織した厨二秘密結社を止めるために再び異世界に召喚されてしまう~

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屍王様、再臨

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「じゃ、ちゃちゃっと送り出そっか」

「そんな軽い感じなの!? もうちょっとなんかない!?」

「ないよ、二回目だし説明なんていらないでしょ?」

 黒歴史に悶える俺を両手で揺すった神が指を鳴らすと、白一面の空間に青い光の球体が現れる。
 前もこれに触れた瞬間、俺達を召喚した神聖国に送られたんだ。

「……今回はどこに送られるんだ?」

「ランダム。座標の指定なんてできないし……君ならどこからスタートしても何とかなるでしょ?」

「無茶言うなぁ!?」

「最低限空気と地面がある場所だから気にしない気にしない!」

「ちょ、待て待て! 異能は!? 魔法は!? 前の状態を引き継ぐんだよな!?」

「リセットされま~す。君が神髄まで極めた氷魔法も……屍王たる所以の『あの異能』もね」

 その言葉に、なんとも言えない感情が巻き起こる。
 別に、今さら強さに未練はない。まあ本当にヘルヘイムの奴らが暴れてるんだとしたら、弱いままじゃダメだけどさ……。

 俺の異能の進捗もすべてリセット……。これはちょっとクるものがある。
 
「仕方ないんだよ。一回世界を離れた人間はそうなっちゃうんだ」

「…………ああ、わかったよ」

「君のクラスメイトへの恩返しは悪魔王を討伐した時に終わってるんだから、あんま落ち込まないで」

 神の言葉に返事は返さない。
 割り切ろうにも割り切れないものは、俺にもある。
 
 まあ、行くんだけどさ、異世界。
 ヘルヘイムの奴らが暴れてるんだとしたら、俺に責任あるし。
 勘違いだとしても、何も言わずに消えたからそれなりの反応もあるだろう。

「――――よし!」

 頬を両手で叩いて覚悟を決める。
 過去の清算と、ヘルヘイムの名前を使って好き勝手する奴への報復。
 
 また、家族には心配かけちゃうな……。
  
「安心しなよ。今回は時間の齟齬がほとんど起こらないように調整してあげるから」

「マジかよ。じゃあ、気にすることもないか」

 自分の感覚がずれてることも自覚してる。
 異世界から帰ってきてから、なんとなく周りとの致命的なずれを感じることが多くなった。
 屍王なんて恥ずかしい名前を名乗ってる間に、そっち側にひっぱられてたんだろうな。

「あー……今回は屍王って名乗るの止めよ……」

「その決意、意味ないと思うけどなぁ……」

 不穏なことを俺の背中に投げかける神を無視し、青い球体の前に進む。
 あとは触れるだけだ。

 あれ? そう言えば…………

「なあ」

「ん?」

「俺の異能がリセットされたって……あいつらの封印ってどうなってる?」

「消えてるよ」

「――――――お、終わった……」

「大丈夫だよ。あの子たち、封印が消えた後も君を信じて自力で約束を守ってるみたい」

「そ、そうなのか?」

「うん」

 神は自信満々に頷いた。
 ああ、そうか。

 だとしたら、

「やっぱヘルヘイムが暴れてる、ってのは納得いかねえな」

 あいつらが俺を裏切った訳じゃない、ってことだ。
 なんだよ……黒歴史とか言っておきながら、やっぱ大事なんじゃねえかよ。

 青い球体に手を伸ばす。

「――――屍王」

「その名前で呼ぶなッ!!」

しかばねを積み上げ、その上に君臨する凄惨の王よ―――――その力を、天上の者として讃えよう。……世界を一度救った君への、ちょっとしたご褒美だよ」

「……そうかよ……」

 やっぱ、黒歴史には変わりないな。

 球体に触れた瞬間、部屋を光が埋め尽くす。

「――――再臨だ」

 神が臨場感たっぷりに宣言した。
 昔の俺だったら、めっちゃテンション上がったんだろうなぁ。

 俺の意識は、青い光に刈り取られた。



■     ■     ■     ■



「…………ん」

 木の葉の擦れる音。風の音。木漏れ日に、鳥の声。

 光に慣れていない眼で懸命に状況を確認すると、どうやらここは森の中だ。
 回りに生き物の姿はない。

 転移は無事成功したみたいだな。

 上体を起こして、久しぶりなのに身体に染み付いた所作で『魔力』を身体に流す。

 この世界の生物のほとんどには、血管に沿うように『魔力路』と言われる器官があり、そこに流れる魔力の量は個人差がある。
 増やす方法も当然あるが……今はそれよりも確認が先だな。

 巡る魔力を感覚的に理解すると、脳に情報が流れ込んでくる。


―――――――――――――

 シオー・ヒザキ

 使用可能魔法
 【氷魔法】・Lv1

 異能
 【死の祝福】
  1.命を奪った生物の総数に応じて、権能開放。 0/100
  2.命を失った友好的な存在の総数に応じて、異能習得。 0/1

 称号
 【屍王】
  神によってその偉業を認められた証。
  魔法成長率に絶大補正。

――――――――――――――


 これである。
 この異能こそすべての元凶。
 かつて中二病を患っていた俺の心に火をつけてしまった、最悪にして最強の武器。

 【死の祝福】

 一つ目の条件はまだ良い。
 生物を倒せば倒すほど自分の力が解放されていくってな感じだ。
 生物っていうのは、この世界に蔓延る悪魔でも……もちろん人間でもいい。
 単純明快で、強力無比な異能だ。

 だが、二つ目。

 死んでしまった友好的な存在の数に応じて異能を増やすっていう、最低の異能でもある。
 友好的な存在……俺にとってはクラスメイトだった。

 クラスメイトが死んだ瞬間、そのクラスメイトの異能が俺に流れ込んできた時は狂うかと思った。

 今回は、二つ目の条件の出番はない。

「さて……とりあえずここどこだよ」

 辺りを見回しても何もない。
 進まないことにはどうにもならなそうだな。

「えーと……氷剣グラギウス

 魔力が霜を纏って顕現すると、俺の手のひらには氷で出来た剣が握られていた。
 軽く振っても問題なさそうだ。

「ひとまず、探検と行くか!」

 冷静を装っても、再び呼ばれた異世界に浮足立つ心はどうやら昔のままみたいだ。
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